タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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2-1-2 「オレは平岡を駆け回る荒くれの雄鹿、『Emperor Buck Deer』。」

 7/3(金) ~結衣視点~

 

 

「えー・・・本日をもちまして、2人を正式な生徒会役員となることを承認します。」

 

 今回採用されたのは2人。いや、今回も、というのが正しい。何故ならば3年、2年とどちらも2人ずつだからだ。生徒会に入る方法は3種類、立候補して入るか、強制的に入れられるか、生徒会役員ないし教員による他薦だ。幸か不幸か、生徒会役員を志望する人は毎年多い。というのも、内心が欲しい人から、特定の人目当てまで様々。特に今のメンバーは、気恥ずかしいけど、自分を含めハイレベルな人が集まっているから、人目当ての人がかなり多い。学園生活をよりよくしたいという崇高な志を持つ人を探し出すのは本当に大変だ。だから、立候補の場合、ある程度の学力基準を設定して、足切りを行っている。一年生の学力基準としては、第一回定期考査において上位50%に入っていることがまず求められる。生徒会業務はなかなか忙しいので、両立できる最低ラインを決めているわけだ。とはいえ、道内二番目の進学校である北山高校に合格できている時点である程度の実力があるのは間違いないのだが、あくまでも相対評価で決める。ともあれ、これで希望者の1/3は落とすことができる。その後、残った人を私と副会長、そして顧問の先生3人で面接して、複数人に絞るわけだ。なお、今年は該当者なしということで、立候補による採用者はいない。次に強制的に入れられるパターンとしては、将来の見込みはあるものの、素行に問題がある人だ。これは昔からの習わしらしく、ありがちなのはスポーツなどの一芸に優れているが、授業中寝てばかりで教員にマークされるパターン。生徒会にいれさせて、根本から矯正させていくのが目的だ。また、優秀な人ばかりで構成すると、意見の偏りが生じる可能性もあるので、多角的にものを考えるという副次的な目的もある。さらに会長職にとっては、どんな人の手綱を握る訓練ともなっている。とはいえ、全員にとって有難迷惑な話ではあるのは間違いない。しかし、素行不良者が更生した際には、立候補で入ってきた人よりも活躍するパターンが多いため、未来への投資だと思ってあきらめることとしている。そして推薦枠は、新役員メンバーが足りない場合のみ埋まる。入り口を絞りすぎたせいで、人が足りなくて業務が回らない、といったことを防ぐためだ。

 

「はい!ありがとうございます!これで会長の下で正式に働けるとなるとまことに嬉しい限りです!」

 

 この、無駄に爽やかで、丸坊主の彼の名前は林鹿夫。今回の矯正枠は彼だ。彼は身長が187センチメートルという高身長で、一年生ながら体格もいい。運動部の中でもとりわけ忙しい野球部に所属しており、中学時代も清田区の中学校でいい成績を残していたらしい。スペックだけで見れば申し分ないが、どうやら素行の問題点は、対人関係にあるらしい。面談をした限りだと、まだその危うさには触れていないけれど・・・。

 

 「・・・承知です。」

 

 無表情を維持したまま挨拶をした彼は神前月《こうさきつき》という。彼は教員からの推薦枠だ。緑色の髪、肩に達するほどの長髪、正直なところ、学ランを着ていることから男性であることは察せるのだが、中性的な顔立ち、声も高く、160cm程度の身長かつ華奢な体つきのため、女装したらきっと女性だと誰もが疑わないだろう。彼は学校指定のワイシャツではなくフード付きの私服を着ており、人と話さないときはフードをよくかぶっている。とまあ、いろいろと変わった彼だが、推薦枠を埋めるために働かされている、彼のクラス担任の梓先生曰く、「服装はさておき、授業態度も良好、成績も申し分ないし、部活も特にやっていないから時間もある。試しに誘ってみたら、二つ返事で了承してくれたよ~~!」とのこと。無口な人で、空き時間は読書をすることが多い。彼についてはこれくらいしかわからないけど、これから知っていこう。役員を深く知ることも会長職の務めだから。

 

「ところで会長、僕たちはこれから生徒会という名の家族、つまりはファミリーですよね?」

「は?ええ、まあ・・・そう定義するならそうですけど・・・いきなりどうしたんですか林君?」

「フッ・・・ファミリーなら親しみを込めてファミリーネームで呼び合うのが世の常ってやつじやつじゃないっスかね?」

 

 林は急になれなれしく私に絡んできた。あまりに唐突だったので、私も面食らってしまった。書類整理をしていた刹那も手を止めて林を見ていた。

 

「オレは平岡を駆け回る荒くれの雄鹿、『Emperor Buck Deer』。故にオレのことは”ディーア”、もしくは苗字からとって、”Rin”って呼んでくれても構わないっスよ?」

 

 一人荒ぶる彼を残して、生徒会室内にいるほかの人間はすべて、彼の言動や行動に引いていた。顧問である正宗先生のみ、腕組みして笑っていた。

 

「おい林、ちょっと落ち着けってーの。」

 

 そんな林に待ったをかけたのは、刹那と同じ2年の役員である朱鳥真一《あすかしんいち》だ。彼は林と同じ矯正枠である。彼は格闘技に強く、将来も有望なのだが、女癖が非常に悪く、卒業後に炎上する可能性が非常に高い。なので、生徒会にいれてその手癖の悪さを無理やり矯正させる必要がある、ということでいれられた。本人もやる気などさらさらなかったが、私がきっちりと()()したので、手癖のほうは炎上しない程度には落ち着いた。仕事については、激情的な性格をうまいこと業務に落とし込ませることに成功し、難航する議題について、突破の糸口を作ってくれるようになった。もめごとも彼が前に出てくれるので、すべて穏便に片付いている。私が出るまでもなくなったのが、非常に助かっている。

 

「なんですかアスカ先輩?俺のreal partに何か問題でも?」

「り、りあ・・・は?なに?」

「リアルパート、真実の部分。すなわちこれがニュートラルなオレってことッス。」

「じゃ、じゃあ・・・なんで君は今までそれを隠していたんだい?」

 

 我慢できず、副会長である岩砂《いわさ》カトルが話に割ってきた。彼は日本人の父親と、イギリス人の母をもつハーフだ。身長も高く、母親譲りのクリーム色の髪、甘いマスク・・・容姿端麗で、成績も優秀、温厚な性格で、非の打ち所がなく、ゆえに女生徒から大人気だ。しかも組織を束ねる統率力も兼ね備えており、クラスの中心人物で、誰とでも分け隔てなく接する。だから男子からも人気があり、正直、彼が会長でもおかしくない。実際、去年の会長選挙では、私と彼でほぼ票が二分され、その差はわずか10票しかなかった。

 

「知り合って間もない人にはこんな姿見せられないッス」

「は、はあ。」

「ともかく、オレのことはディーアもしくは―――」

「・・・林君、ちょっと黙ってもらえます?」

 

 私はしびれを切らしてしまい、笑顔を保ちつつも、つい乱暴な言葉をぶつけてしまった。私の()()を経験した朱鳥だけが、肩をびくつかせ、ちらりとこちらを見た後に「林!マジで会長を怒らせたらだめだぞ。」と肩を抱きながらそう喋っていた。

 

「リンはともかくディーアはありえませんよ。ダサすぎです。というか、会長になれなれしすぎです!立場をわきまえてください!」

「そ、そんなぁ!・・・月!月ならわかってくれるよな!?」

 

 そうして神前の足に縋り付くが、

 

「・・・五月蠅いな、離れろ馬鹿。」

「ファッ!?」

 

 神前君は足を乱暴に振り払った。ちょっとかわいそうになってきたので、しょうがないからフォローを入れることにした。

 

「ま、まあそんなに気を落とさないでください。そういうこともあります。」

 

 私がそうして床にはいつくばっている林に近寄ると、林は立ち上がって私の肩をがっしりとつかんだ。高身長に強い握力に、ちょっとびっくりしてしまった。

 

「会長!ありがとうございまっス!こんなオレを唯一庇ってくれる・・・さっすが相思相愛なだけあるッス!」

「はい?」

「面談のときにオレ、気づいたんス。誰かが俺にホットな視線を送ってくる人がいるって。それがいったい誰なのか、ずっと考えていたんスけど、今やっとわかった。視線の正体は会長なのだって!」

 

 語気を強めてまくしたてる林、彼の唾が顔に飛ぶ。林の後ろに立つ朱鳥が、無理やり林を引き離してくれた。カトルは私が何も言っていないのに、ゆっくりとハンカチを差し出した。私はもらったハンカチを使って、飛んだ唾をぬぐった。刹那は林に対して説教をし始めたのだが、林はその説教にたじろぐことなく、どこ吹く風とい言った感じだ。神前君は一部始終を、黙ってみていた。

 

「・・・・・・林君、ちょっと一緒に()()()に来てくれます?私の愛を教えてあげたいので・・・。」

「―――――――じゃあ、相思相愛な君らの邪魔をしちゃいけないね。刹那君、朱鳥君、月君、“わかったかい?”」

「でも、会長が――――」

「中河、頼む、今はカトルさんの言う通りにしてくれ。」

 

 全ての意図を察したカトルと朱鳥は、刹那をなだめた。正宗先生は相変わらず、腕組みして笑っていた。

 

「せ、先輩方・・・ありがとうございまッス!これから先輩と、熱く愛を語らせてもらうッス!」

 

 そうして私と林は、いっしょに面談室に入ったのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は裏表のない素敵な人です。会長は―――――――」

 

 私の()()により、林をおとなしくさせることに成功した。刹那は、「会長の素晴らしさが理解できたようで何よりです!これからはなれなれしくしないことですよ!」と言っていた。朱鳥は、脂汗をだらだらと流していた。カトルはにこやかな笑みを浮かべ、正宗先生はかわらず腕組みして笑っていた。この教員ブレなさすぎるでしょ。教員が容認していいのかな?別に生徒会室内は治外法権ではないのですが・・・。

 

「さ、ではさっそく会議を始めましょうか。」

 

 私は、何事もなかったかのように会議を始めるのだった。

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