タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
7/11(土)
いつものように俺はバイト先のカフェでせっせと料理を運んでいる。普段なら、来店客を気にすることはあまりないのだが、今日ばかりは事情が違う。というのも、見知った人たちが来店していたからだ。
「涼しい~冷房が最高にいいですね~ほんと最近の北海道は気候がおかしいですよ~・・・」
「わかるぜ中河・・・俺も外の暑さにはうんざりしていたからな・・・だから今現在、最高っす。」
「朱鳥君の言う通りだね・・・にしても、月君はこんな気温でよくフードをかぶっていられるね。大丈夫なのかい?」
「・・・慣れていますので。」
生徒会の面々が訪れている。俺のシフトがもうすぐ終わるという頃、彼らは来店した。こういったことは過去にも何度もあって、決まってすることといえば生徒会の会議だ。それならこんなところでせずに学校でやればいいのでは?と蘇芳会長に一度尋ねたことがある。すると「会議半分雑談半分ですね。雰囲気を変えたいときあるんです(笑)」と返された。彼らは多いときは毎週来る。副会長のカトル先輩、刹那、そしてハムと同じクラスの問題児、朱鳥。メンツが美形ぞろいだが、朱鳥が輩ムーブをするもんだから、男女問わずグループ内には誰もよりついてこない。・・・ちなみに、俺はギリギリその輪に入ることができている。最も、コーヒーを届ける際に一言二言話す程度でしかないが・・・。
「だれだあの月とか言う………人。」
俺は仕切り版越しに彼らを見ていた。生徒会の面々と同席しているということは、新しい役員か?確かにもうそんな時期か・・・そうだよな。月・・・月さん?月くん?確か今週頭に出た広報誌に載っていたような――――――――駄目だ!普段読み飛ばしてるから覚えてねえ!――――でも最低2人採用だったよな?なんであの場には新規役員が一人しかいないんだ?もう片方どうしたの?もう既にはぶられちゃったの?――――――――まあいいか。月という人だ。フードをかぶっているから遠くから見るだけじゃ顔は判断がつかない。服装はノースリーブっぽいパーカーを着てるから、腕が露出しているわけで・・・きれいな白い腕だなあ・・・。下は――――ダメだっ!カトル先輩が隣に座ってて見えねえ!
「・・・国広君、何やっているんですか?」
反射的に体がびくつく。ゆっくりと後ろを向くと、そこには両手にトレイを載せた蘇芳先輩が立っていた。
「いったい何をしているかと思えば・・・・いったい貴方は何を――」
そこで、先輩はさっき俺が見ていた方向へ目を向けると、
「ふふっ、ああ、そういうことですか。」
「え?まさか俺が何を考えているか分かったんですか?」
「大方、あのフードを被った人は何者なんだろうって思ったんじゃないですか?」
「・・・おっしゃる通りです。」
そうだ、最初から先輩にきいときゃいいじゃないの。
「彼は新しい役員で、神前月というんです。一応男ですよ。」
「へ?男?」
てことは、俺は男の腕に見とれていたのか・・・いやまて、一応って言ったよな?トランスジェンダー?男の娘?どっちだ?ってどっちでもないだろ!美形な男なだけじゃん!
「はい、驚くのもわかります。彼、中性的な顔立ちしてますし、声のトーンもどことなく・・・ってそんなことより、これ、4番テーブルに運んできてください。後ニヤニヤするのもやめてくださいね。」
「アッハイ、すんません。今行きます。」
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シフトを終え、着替えを済ませた後、裏玄関にて会長を発見した(上は胸元がリボンの形をした可愛らしいデザインをしている白色のトップスカットソー、下はスキニ―ジーンズ。ふつくしい。ふつくしい!大事なことなので二回言った。)ので、会議の内容をそれとなく聞いてみたところ、なんとあっさり教えてくれた。
「文化祭のバンドの楽曲を考えるだけですよ。」
「ああ、この学校の恒例ですもんね、生徒会がバンドやるやつ。去年は刹那のボーカルが光ってましたね。V系バンドっぽい衣装も似合ってましたし、そりゃ熱狂的なファンもつくだろうなあって思いましたよ。曲も厨二心をくすぐられました!」
「厨二・・・・・・やっぱそう思います?――――――ああそうだ、どうせなら曲目候補考えてくれません?」
「え?曲目?いいんですか?」
「ま、候補ですから。採用するかどうかは別ですけどね。まあこの後暇でしたらついてきてください。」
そのとき、俺は戸惑っているかのように演じていた。が、内心は、ついに会長からお誘いを受けた!と心を弾ませていたのであった。
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「ええと、どうも国広です。」
「おおー国広!こんなとこで会うなんて奇遇だな!」
「いや朱鳥、お前俺が給仕しているところをちらちら俺のことみてたよな???」
そういって、俺は何にも考えず刹那の隣に座った。そして会長が、俺の目の目の前に座った。ちらりと刹那を見やると、テンションがぐんぐん上がっていった。刹那は会長が絡まなければただの清楚な女の子なんだけどな、刹那の知能を下げてしまう会長も悪い人だよ。ハムが魔女呼ばわりするのもわからんでもない。
「でもなんで今日は遼君がいるんです?」
「では、国広君、何か一言お願いします。」
な、なんだその無茶振り!?
「えー・・・まず生徒会会議にお呼びしていただけたことを光栄に思います。一生徒としての意見を提供できるよう努めますので、何卒宜しくお願い致します。たとえ望んでいないとしても、できれば露骨に嫌そうな顔をしないで、遠回しに俺に去るように言ってくれれば俺のメンタル的にもうれしいというか・・・。」
「ちょっ、そんなにネガティブになるなって。俺とお前の仲だろ?そのくらい俺は構わないぜ。」
朱鳥・・・お前はなんていいやつなんだっ・・・!今のお前、最高に輝いて見えるぜっ・・・!だから、俺の目の前に空のグラスを置いてきたことなんて全然見えねえぜっ・・・!
「僕たちの趣味って偏ってるから、一般的な意見も聞きたいしね。歓迎するよ。」
カトル先輩・・・!なんて優しい先輩なんだっ・・・!今の先輩、最高に輝いて見えますっ・・・!だから、伝票を俺の目の前に寄せてきていることなんて全然見えません・・・!
「はやくおごってくださいよ。社員割とかあるんじゃないですか?」
刹那・・・!さすがにそれはダイレクトすぐる・・・・・・ケーキの皿を露骨に指ささんといてくれ・・・!
「・・・こういう場って、普通先輩は後輩に奢ってくれるものですよね?期待しちゃっていいんですか?」
神前・・・!お前まさか、真顔でちょけてくるタイプのやつなのか・・・?可愛いじゃないの・・・男だけど・・・!
俺は苦しくなって、対面の会長にコールサインを出そうと――――すると、先輩がにっこり笑っているのがわかった。このスマイルっ・・・!先輩っ・・・天使やっ・・・!これは俺を助けてくれるってとらえていいんだな!?
「私はアイスティーを飲みたいですね。さ、早く従業員を呼んできてください。」
先輩っ・・・悪魔やっ・・・天使の皮を被った悪魔や・・・
「あ、あはは……」
目をぱちくりさせたところで、空のグラスが2つ、皿が一枚、伝票という現状は変わらない。もう苦笑いしかできなかった。
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出会いがしらの茶番は、結局冗談だってことがわかった。落ち着いた後、会長が神前に自己紹介をするよう言った。神前は俺に小さく会釈をした。
「・・・神前月です。」
「よろしくね!んで、多分会長とかから説明受けているだろうから、必要もないかもしれないけど、まあいっか。俺は国ひ――」
「こいつは国広遼。可愛ければ性別など関係なく食い散らかす澄川の両刀遣いだ。お前も括約筋を引き締めておけよ?」
「ファッ!?」
ちょっ・・・真なにいってんすか?
「でもまあ、普段は大丈夫ですよ。とはいえ、会話しれっと下ネタを盛り込むのはいただけませんが。」
「刹那さん???なにいってんすか?」
「・・・なるほど。わかりました。とりあえずヤバイ人だってことがよくわかりました。朱鳥先輩の手癖の悪さとどっちがやばいんですか?会長。」
そうやってあからさまに椅子を遠ざけるのやめてもらえません!?てか朱鳥のことも無表情でいじってくるとかやるなこいつ。――――可愛いじゃないの。
「・・・・・・はあ、神前君、今のは出鱈目ですから、信じてはいけませんよ。あと、国広君は行動に移さず、朱鳥は行動してくる分、朱鳥の方がたちが悪いですね。」
「なるほど、そうなのですか。」
彼は遠ざけていた椅子をもとの位置に戻し、座りなおした。
「国広!やばい奴ら同志なかよくしようぜ!」
「サムズアップするなし。」
結局このあと、同じような会話がループしかけたところをカトル先輩がとめ、本題に入った。それは学際のバンドの楽曲決めというもの。一般人からの意見を求めようと俺は呼ばれていたが、俺ははまってたボカロ楽曲をお勧めしたが、会長はどれも渋い顔をしていた。会長はボカロをまあまあ聴くらしいのだが、どうもバンドは気乗りしないらしい。結局、去年と同じで今年も俺の知らないV系バンドの曲をやることとなった。決めた後は普通に解散。途中まで刹那と帰ったが、まあ特に変わったこともなく、普通に別れた。・・・なんだか、今日は本当に疲れた。帰ったらすぐに寝ようそうしよう。