タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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2-2-2 「ウホッ!!いい女!!」

 7/18(土) ~静乃視点~

 

 ぼくらが向かう総合娯楽施設には、目玉施設として巨大なプールがある。非常に長いウォータースライダーや飛び込み台など、あらゆる客層の目を引くもので埋め尽くされている。蘇芳会長も宮永先輩もプールに行く気満々のため、ぼくも必然的にいかざるを得ない。となると水着が必須となるわけで・・・。昔のものはサイズが合わなくなっているので、新しいものをこうして買いに来たわけだけど・・・

 

「あ、これは刹那さんに中々よさげな感じですね!」

「確かに・・・この色合いは中河先輩にぴったりです。」

 

 青と白のビキニを手に取ってキャッキャしているのが、遼の従妹の天海有希と、同じクラスの友達であり、ゲーム研究部一年生の柄谷栞。

 

「まあ青と白だからね~。あ、紐?紐なの?うっわ布面積せっまwwwなかなか大胆なものを選びますなあ~」

「龍華、思ってたとしても黙ってるべきですよ・・・」

 

 その後ろから冷やかすのが宮永先輩、そしてその宮永先輩を窘めていたのが蘇芳会長。

 

「実際問題、この水着着てウォータースライダーとかやったら脱げそうよね・・・。」

「まあ間違いないでしょうね。でもそもそも、私は買うなんて一言も言ってないのですが・・・」

 

 そして客観的に現状把握を行っていたのが刹那と怜。結局ぼくを含めた女子7人の大所帯の、にぎやかなショッピングとなってしまった。もともと最初は、ぼくと刹那と怜で買いに行く予定だったのだけれど、最寄りの澄川駅で有希と栞ちゃんを発見し、札幌駅につき、いざ店に入って、宮永先輩と蘇芳先輩に遭ったわけだ。 

 

「でもまあ・・・とりあえず着てみたら?色合い的には最高なんだからさ。」

「静乃がそういうなら・・・」

  

 刹那はその水着を持って試着室へと向かった。なお、刹那以外は既に水着は選び終えている。刹那がかなり時間をかけてしまっていたため、手持無沙汰で暇なみんなが刹那の水着選びを手伝い――――もとい楽しんでいるわけである。

 

「この水着ならハムも悩殺されること間違いなしだね。」

「制服の時でさえあんなだから、ましてや水着で、しかもそれが攻め攻めのデザインだから・・・襲わないわよね?」

「大丈夫ですよ。ハム先輩はああ見えて紳士ですからね。」

  

 なんて会話をしていた時、シャっと試着室のカーテンが開かれ、刹那の水着姿が露になった。ぼくでさえも息をのんだ。そもそもの素材がダイヤモンド級なのに、素材の良さを際立たせる鮮やかな白と青のコントラスト。視線が誘導されたその先には、均整の取れたプロポーションがある。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。身長がそこまで高くないからモデル体型とまではいかないものの、いわゆる”キレイ”なスタイルだ。男女問わず、通りがかったら、必ず一度は目を引かれてしまうだろう。周りをの反応としては、後輩たち二人は目をキラキラさせており、宮永先輩が目をギラギラさせ、蘇芳会長と怜はぼくと同じで息をのんでいた。そうして、周りから絶賛の嵐を受け、刹那もちょっとテンションが高くなっていた。

 

「――――ねぇ?刹那ちゃん。ちょっと白ニーハイ履いてくれない?あ、水着姿はそのままで。」

「え?まあいいですけど・・・」

 

 普段ならこんな遼が言うようなヘンタイ的要求なんて聞き入れないのだが、珍しく会長抜きでテンションが上がってしまっていたせいで、まともな判断ができなくなってしまっているような。 

 

「ちょっ、竜華!店内で撮影って――――」

「止めないで結衣、これを売りさばいてゲー研の活動資金にするんだから!」

「竜華さん!せっかくなので私にもそのデータくれませんか?」

「私も欲しいです・・・」

 

 スマホをかざす宮永先輩と、それを止める会長、データをせびる後輩たち。もうめちゃくちゃだよ。

 

「当事者を差し置いてとんでもない話してますね――――」

 

 気が付くと、そこには腕組みしてじとっとした目でこちらを見ている刹那がいた。――――白ニーハイを履いて。

 

「はい、じゃあ目線こっち向けてくださいねー」

「嫌です。」

「そんなぁ!!」

「でも中河先輩!この場の三人は写真を望んでいるんですよ!」

「え?数の問題ですか?私の意志はどこへ?」

「刹那さん!!潔くなってください!」

「・・・栞はこういう時は強気よね・・・」

「――――一応聞きますけど、ほかの3人は反対ですよね?会長が欲しいっていうなら、すごく恥ずかしいですが、頑張りますけど・・・」

「もちろん結衣も怜ちゃんも賛成――――」

「「そんなわけないでしょ。」」

 

 二人からツッコまれる宮永先輩。たははと笑っても、スマホは決してしまおうとはしなかった。

 

「・・・で、静乃はどうなんです?」

 

 刹那の一声で、一斉に視線がぼくに向けられた。

  

「―――――実はぼくもちょっとほしい。」

「キッタアアアア!!これで過半数こえたよ刹那ちゃん!」

 

 刹那は非常に、非常に大きなため息をついた後、その場にへたり込んでしまった。

 

「過半数を超えたといっても、当人の意志が一番大切では?」

「結衣、正論だけでは物事はうまくいかないことは、時には詭弁も暴論も必要だってことは、朱鳥への指導で学んだことじゃないのかな?かな?」

「・・・耳が痛いですね。」  

「決まりだね!!じゃあ早速―――――」

 

 宮永先輩がカメラを構えたその時、

 

「お客様、店内での撮影はご遠慮ください。」

 

 店員からのストップがかかったのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「じゃ、今から結衣の家で撮影会しようか!!」

「その理屈はおかしいと思うのですが。」

 

 店を出て、とりあえず落ち着けるところに行こうと言うことで、駅内のスタバに入った。皆がトッピングマシマシのラテを頼む中、ぼくと蘇芳会長だけは、ブラックコーヒーを注文した。

 

「あの写真撮影の話は生き残っていたんですね・・・」

「忘れるわけがないじゃない!校内のオタクどもに売りさばくこと、諦めてないからね?」

「すみません宮永先輩、せめて内輪だけにしてもらえませんか?男子にばらまかれるのは・・・」

「・・・仕方ない、それで手を打とうじゃないの。」

 

 宮永先輩そういってラテを啜った。そのしぐさを見ていたぼくに気づくと、先輩は一瞬にやりと笑って、また会話に戻っていったのだった。―――――おそらくこれは宮永先輩の計算だろう。初めに無理難題を提示しておいて、その後ろに本命を忍ばせておく。そうすることで、本命を通しやすくする――――という交渉術。やはり先輩は、抜け目だらけのようで、その抜け目は意図して作ったものなんだということを改めて知る。みんなそれに騙されているんだろうが、ぼくはそうはいかないぞ、と心の中で思うのだった。

 

「いや、だって広いじゃん。」

「その理屈はおかし――」

「刹那ちゃんも会長の家にお邪魔したいよね?」

「行けるのなら行ってみたいです!!」

 

 刹那、欲望に正直すぎでしょ。先輩の家に行く=自分のコスプレ撮影会ってことわかってるのかな?というか、宮永先輩、刹那をダシに使うのは禁止カードでは?会長に関しては全肯定なんだからさ。

  

「それなら私の―――――」

「・・・広さだけでいえば、怜ちゃんの家にお邪魔させてもらうってのも考えたんだけどさ。結衣と私を除いて、家が違いのもそっちだし。けど、何度もお邪魔しちゃうのは申し訳ないなって。たまには先輩らしい所見せないとなって思ったんだよ。」

「いや、部長はなにもしてないじゃないですか!」

「たはは、ばれたか。」

 

 宮永先輩はそういって、怜の申し出を無理やり遮らせた。怜は開いた口を閉じ、再度開かれると、すぐにストローを加え、アイスティーを飲み始めるのだった。こういわれてしまうと、怜も引き下がらざるを得ないのだろう。怜には大義名分やメンツをちらつかせる。そして隙をあえて作って、人にツッコませるように誘導させる。こうすることによって雰囲気はそのまま変わらない。人によって説得のさせ方を変えてくるあたり、やはり油断ならない。

 

「――――――――わかりました。行きましょう。」

 

 あ、折れた。 

 

「さすが結衣、生徒会長は伊達じゃないね!――――じゃ、ここ出たらさっそく向かおうと思うけど、みんなはほかに回っときたいところある?」

 

 そうして宮永先輩中心に、今日の今後を話し合い始めたのだった。ぼくはブラックコーヒーに口をつけ、グイっと流し込んだ。苦味が全体に広がる。凝った思考がクリアになっていく。人付き合いを避けていた時期があったせいで、つい暇つぶしで人を観察してしまう。ぼくが腐っていた時期の悪い癖だ。――――――――ただ、幸か不幸か、自分の嫌な癖のおかげで、気づいたことがあった。なにやら隅の方に座っている男性二人組が、こちらをじっと見ていた。席の都合で、顔が見えるのは刹那と会長とぼく。刹那と会長は特に目を引くから、視線を集めてしまうのは仕方ない。とはいえ、全身を舐め回されているような嫌悪感を覚えた。こちらもじっと見返すとあちらに気づかれて変なことになりかねないため、ぼくは横目でチラチラと様子を伺った。ぼくの右隣に座っている蘇芳先輩は気づいているかもしれないが、刹那は、どうせ会長のことで頭がいっぱいだから気づいていない。―――――折角の楽しい雰囲気をぶち壊したくないから、黙っていよう。ぼくは気づいてしまったから、もう純粋に楽しむことはできないけれど・・・。

 

 

 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

  

 

「ウホッ!!いい女!!」

「やべーっす、あのテーブル、絶対全員可愛いだろ・・・」

 

 俺は敬愛する先輩と出かけており、ちょいと歩き疲れたのでスタバに入った。男二人で遊ぶことは楽しくはあるのだが、なにゆえ女っ気のない野郎どもなので、いつもわびしい思いをしていたのだが、今日はあまりにも目の保養になる女性たちを見れたもんだから、テンションがおかしくなっていた。

 

「キモタク先輩。あの3人の中で誰が一番かわいいと思います?」

「そ、そうだなあ・・・。俺はあ、あの髪を二つ縛りにして、頭に白いヘ、ヘアピンつけてる娘かな・・・。な、直紀はどうなんだ?」

「俺っすか?俺は黒髪ロングストレートのお姉様がいいっす。あの澄ました顔はそそります。グレーの髪の娘は、目が死んでて、正直近寄り難いですが、乳がクソでかいんで、揺れる乳を見ながら顔の見えない立ちバックでガン突きしたいっすわ。今日のおかず確定ですね。めっちゃシコれますよ。」

「はぁ・・・帰って一人でシコ・・・シコするんじゃなくて・・・あ、あんな娘とお近づきにな、なってただれた日々を送りたいものなんだな・・・」

 

 先輩が額から流れる脂汗を手拭きでぬぐっていた。その時ふと、ある計画を思いついた。

 

「―――――実際にアタックしてみます?」

「な、直紀!正気か!?」

「どうせこれきりの関係なんですし、ダメもとで行ってみましょうよ。」

「だが・・・はっきりいって俺はブサイク・・・」

「そんなことないっす!!先輩のそのがっしりとした体つき!いけますって!」

「そ、そうか・・・よし!じゃあ行くぞ!!・・・店内でやる勇気ないから、女の子たちが店から出てからにしようぜ・・・」

「ですね。もっとみていたいですし。」

 

 

 もちろん先輩のナンパなんてうまくいくわけない。普通の女の子とろくに会話すらできないんだから、水から話しかけ、さらに相手に興味を持ってもらうトークなんてできるわけがない。だから先輩、利用させていただきます!

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 

 

 

 変な野郎たちに見られていたことは最後まで伏せ、店を出た。幸い、最後までその事実にみんな気づいていないようで、よかった。駅に徒歩で向かう途中、前方のショーウィンドウの前で、にどこかで見たことがあるような人が立ち止まっていた。

 

「あれ、あそこにいるのってハムじゃない?」

「ですね。部長さんよく気づきましたねー。」

 

 ハムは紳士服売り場の前で、マネキンが来ていた服をじっと見つめていた。・・・ハム、私服結構オシャレだ。一人で外歩く時って結構キメて来る奴だったんだ。

 

「うげ・・・・・」

 

 案の定刹那は嫌そうな顔をしていた。

 

「大丈夫。まだ気づかれてないわ。」

「このまままっすぐ行くと、絶対気づかれます。だから私は別の道から向かいます。あの男がなにか言ってきても、適当にはぐらかしておいてください。頼みましたからね!!」

 

 刹那は来た道を急ぎ足で少し戻り、左折して人通りの少ない区画に入っていった。

 

「あ、刹那、ちょっとまってください!!」

  

 続いて蘇芳先輩も刹那の後を追いかけ、別ルートに走っていった。

 

「あらら…警戒しすぎだっちゅーのに…」

「そうだよね…」

  

 刹那が入っていった通りの方を見ていたら、視界に不吉なものが入った。

 

「あれはさっきの野郎ども・・・」

 

 どこか急いでいた様子だった。―――――確証はないけれど、もしぼくが想像している通りのことなら――――― 

 

「おお!宮永ではないか!それに柄谷も!榊に萩原!こんな多人数でいったい————————————————はっ!少年、少年はいないのか!!」

 

 いつの間にかハムがこちらに向かっていた。

 

 

「ハム・・・落ち着きなさいよ・・・。残念ながら刹那は―――――」

「そこを左に曲がっていったよ。ちょっと急ぎ気味だったから、走れば間に合うんじゃないかな。」

 

 みんな驚いた顔をしてぼくを見ていた。無理もない。さっき刹那が言ったことをまるっきり無視したことなのだから。

 

「なるほど!恩に着る!うおおおお!!少年!!待っていろ!」

 

 ハムは刹那の通った道を走って辿っていった。ハムが見えなくなった後、怜が困惑しながら訪ねてきた。

 

「静乃、これどういうこと?」

「確かに、静乃さんが刹那さんをかばわないなんて・・・。いじめる相手は兄さんだけだと思っていました。」

「————————まあ、みんながそう思うのは理解できる。ぼくも理由もなしに刹那をいじることなんてしないよ。」

「てことは、理由ありなんだ。――――ハムと刹那ちゃんを近づけるのは、まだ時期尚早だと思うけどなあ。」

「それはぼくも思ってます。今回は、どちらかといえば、ハムの暴走が事態をいい方向に向かわせるんじゃないかって、思ってるんですよ。―――――――これ言わないでおこうと思ってたんですけど、さっきのスタバで、こっちをじろじろ見ていた二人の男がいたんです。その二人が、たった今、刹那を追いかけていったんですよ。」

 

 ぼくがカミングアウトすると、皆が「そういうことかあ」と納得した顔をしていた。

 

「確かにそれは・・・ハム先輩の暴走に期待するしかないですね・・・。」

「ま、ハムが暴走しなくても、結衣がいるなら大丈夫だよ!」

 

 あははと笑う宮永先輩。

 

「じゃまあ、ちょっと様子を見に行ってみよっか。ハムの暴走が行き過ぎたせいで警察沙汰になって月末の大会がパーになるのだけは避けたいし。」

 

 そうして、一同が刹那の入っていった小道に向かったのだった。

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