タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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2-3-3 「東京で最後にあった人があなたでよかった。」

 しばらくウキウキした後、そういや報連相は大切だ、という話を怜から何度も聞かされていたし、怜の戻りも遅いので、自分のスマホを確認してみると、通知が来ていた。

 

 榊怜

[ガラナどこにもないんだけど] 12:11

 

 榊怜

[ねえ、調べたら北海道限定らしいじゃない。本当にこれが飲みたいの?] 12:13

 

 榊怜

 ―不在着信― 12:15

 

「・・・やっべ、完全に忘れてた。」

 

 てか、ガラナって北海道限定だったんだ。道外に出たこと全然なかったから知らなかったな。

 

「問題ない。怜には私の方から連絡しておいた。しばらく遠くから様子をうかがっておくとさ。」

 

 竜崎はそういった後、抱っこの姿勢を俺に見せてきた。俺は竜崎をつまみ上げカバンの中に隠した。流石に見知らぬ人と会うっていうのに、竜崎とぺらぺら話している姿は見せられないから。

 

「確かに、怜が隣にいるといろいろ厄介か。告白券が効いている可能性があるならなおさら・・・。」

 

 なんてことを、カバンの中の竜崎と話していた。視線はカバンの中に向けていたから、周りなんてまったく目に入っていなかった。だからこそ、眼前の接近も許してしまっていたのだった。

 

「あのー、もしかして私のスマホを拾ってくれた人?」

「え?」

 

 反射的に顔をあげた。そこには、地雷系ファッションに身を包んだ、ツーサイドアップの超絶かわいい女の子がいた。彼女と目が合う。彼女はハッと表情を俺に見せた。急に顔をあげたから、驚かせてしまったのかな?それとも・・・これが告白券が効いた瞬間なのか?

 

「―――――もしかして、戸隠さん?」

 

 俺は落とし物のスマホを見せてみる。すると、彼女は、

 

「―――――あ、はい!そうです!」

 

 と、ワンテンポ遅れて返事をした。そして彼女は、俺に手帳を見せてきた。それは生徒手帳であり、確かに戸隠桜子と名前が書いてあった。高校は・・・やっぱり東京の高校だ。住所が東京都だもん。

 

「確かに問題なさそう――――――って、高2?自分と同じですね。」

「え?本当に?じゃあ敬語じゃなくてもいい?あんまり得意じゃなくて・・・」

「全然いいよ。俺もタメで話すね。―――――このステッカーって・・・」

「ごめん引いちゃった?でも好きなんだあミクのこと。」

「いやいや、引くどころか俺も好きなんだよ。これだって札幌の会場限定のやつでしょ?」

「すごい!初めてこれのこと知ってる人に出会えた!君って何者?」

 

 ぱあっと表情が明るくなり、好意的な態度を俺に見せてきた。

 

「俺もミクが好きなんだ。そのイベントにも行ったし。」

「えー!そしたら会場で出会ってたかもしれないですね。運命感じちゃうなあ。―――――そうだ、見つけてくれたお礼にどこかご飯にでも行かない?私が奢るから。」

「俺もこんな可愛い子とご飯いけるなんて嬉しいよ。」

「へ?――――やだもう!照れること言わないでよ~」

 

 戸隠さんは顔を赤くして肩を小突いてきた。―――――これで告白券聞いてないとか嘘だろ?さすがに信じさせてくれ。こんなに可愛いのに非処女って漫画みたいなことが現実に起きたんだ!てか、俺さらっとキモイこと言っちゃったな?告白券が効いている(と思われる)せいで、恥ずかしげもなくいろいろ言えてしまっている。どうせ今日限りの関係だし、しばらくすれば記憶からなくなるってことを踏まえると、気も大きくなる。

 

「あはは、ごめんごめん。でも戸隠さんのその恰好は、オタクへの攻撃力が高すぎる。」

「なるほど、弱点特攻してたわけか~。」

 

 なんてトークをしながら、俺らは公園を出たのち、近くのオシャレカフェに入っていったのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 カフェに入ってから軽食をつまんだ後、俺はずっと戸隠さんとしゃべっていた。話をしてみると、戸隠さんのことがいろいろわかってきた。まず、普段からそんな恰好をしているわけじゃないということ。隣にいる人に応じて、ファッションを変えるんだと。まあ、質素な格好をしている人の隣にこんな格好でいられると、どちらも悪目立ちするだろう。そして、かなり胸がでかい。コルセットでシャツを抑えているからより際立っている。静乃よりは無いけど、会長と同じくらいのインパクトはある。のくせして、身長は150cmくらいで、有希よりも小さい感じがする。厚底のローファーで、ちょっと高く見せているらしい。サブカル系のオタクで、この格好もその影響らしい。だから、話がとにかく合ってしまっていた。これが告白券の効力によるものなのを完全に忘れてしまっていたほどに・・・。

 

「あー楽しかった。君って本当に面白いね。ここで解散が名残惜しいなあ。」

 

 戸隠さんと店を出た後、彼女はちょっと切なそうにそうつぶやいた。ほんと、告白券ってすごすぎる。こんなにしゅきしゅきオーラを出してくるなんて・・・正直たまらんて!

 

「俺も同じ気持ちだよ。この後もどっかいかない?ゲーセンとか好きって言ってたよね?」

「そうなんだけど・・・」

 

 彼女はそういって、左手につけられている腕時計を確認していた。俺もつられてスマホで時間を確認すると、時刻は2時を過ぎていた。

 

「私、親の都合で引っ越しするんだ。もうすぐ東京を発たなければいけないの。いま空港に向かわないと、飛行機に間に合わないんだあ。」

「そっか・・・」

 

 その言葉に、俺も残念に思っていた。初対面の女の子にこう思うなんて、俺も情欲に突き動かされているなあ、と感じた。

 

「本当は連絡先も聞きたかったけど、会えそうにないのに聞いちゃったら、未練が残りそうで・・・」

 

 そのセリフを聞いて、俺はハッとした。そうだ、今日限りの関係なんだ。だから、楽しく会話できてよかった、で終わらせるべきなんだ。下手に深入りして、もし好感度が規定値に達しなかったらどうする?俺のことが、記憶から抹消されてしまう。なのに、俺は気になっているまま。こんな切ないことがあるかよ。俺が忘れられないのに、相手は忘れてしまうかもしれない。―――――怜がやたらと()()と言っていたのもよくわかる。

 

「―――――――まあ、今日の出会いがまず運命みたいなもんだし、きっとまたどこかで出会えるよ。そんときはまたよろしくな。」

「―――――うん!」

 

 そういって彼女は、俺に手を振って駅のほうに向かっていった。俺はそれを見送ろうと立っていた。だが、彼女は駅の改札前まで行った後、Uターンしてこちらに向かって走ってきた。

 

「―――――ごめん、最後にこれだけさせて!」

 

 そう言って彼女は俺にぎゅっと抱き着いてきた。甘い香りが鼻腔をくすぐった。つぶれる胸の感触もたまらん!と思う一方、俺は彼女を抱きしめ返すべきかどうか逡巡していた。告白券は濃厚接触を行うと、相手の記憶が強制的に消されてしまうらしい。怜の話だと、対象者はその行動をとらないよう思考プロテクトがかけられているとのことだ。だから、今回のように抱き着かれた場合、どうすればいいのか全く分からなかった。俺が戸惑いながら抱き返そうとしたときに、戸隠さんは離れていった。

 

「―――――ありがとう、東京で最後にあった人があなたでよかった。またどこかでね。」

 

 そういうと、彼女は今度こそ駅に向かっていった。改札を通りぬけ、彼女が見えなくなった後、俺は大きなため息をつき、駅内のベンチに座った。そしてスマホを見ると、怜からの通知がたった今来ていたことが分かった。

 

 榊怜

[お疲れ様。今からそっち向かうわ。そのあと、反省会がてら、人気のないところに行きましょうか。] 14:15

 

 遼

[了解] 14:15

 

 俺はベンチに座ったまま、怜の到着を待った。正午の時とは異なる悲しさを覚えながら・・・

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