タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

41 / 81
2-3-4 「――――――なんて運命なの!」

「遼、よくやったじゃない!すごく話が弾んで―――――どうかしたの?――――――まさか・・・」

 

 怜の指示した人気のない路地裏に移動した後、怜と合流した。怜は笑顔でこちらに話しかけてきたが、俺の様子を見るなり、心配げな顔から、怪訝そうな顔へとシフトしていった。

 

「・・・いや・・・その・・・」

「――――何度も言うけど、これは”練習”だからね。勿論、本番として向き合ってもいいわ。けれど、少なくともそれはいまじゃない。今後会う可能性のない人に入れ込んだところで、結果は見えているから。」

「――――図星のようだね。」

 

 すでに俺の胸ポケット内に移動していた竜崎は、俺を見上げてそういった。

 

「まあ、私はカバンの中に入っていて、会話はよく聞こえなかったけど、国広君の反応を見る限りだと、よほど残念そうに見える。そんなに戸隠桜子のことがよかった?」

「そりゃ、いつも俺はぞんざいな扱いを受けてばかりだったのに、今日はそれが全くなく、しかも話も合う。残念にも思うさ。」

「確かに、静乃しかり、有希しかり、私もそうだし、みんな当たりきついわね。それに女体慣れしていない遼が抱き着かれでもしたら、好きになってもおかしくはないわね・・・」

 

 怜が腕組んで頷いていた。そんな様子をみて、竜崎は俺にこう問いかけてきた。

 

「・・・抱き着かれた?その話は本当かい?」

「ああ。恥ずかしいけどさ。でも、告白券って俺からの濃厚接触はダメでしょ?濃厚接触の線引きがわからなかったから、抱き返しはしなかったけどさ。」

 

 俺がそう答えると、竜崎は黙り込んだ。そして、その光景を、怜も怪訝そうに見ていた。

 

「――――――一応聞くけど、国広君、彼女に自己紹介した?というか、今日告白券を使った相手に、()()()()()()()()()()?」

 

 そういわれると、彼女に名乗った覚えはない。彼女も、俺のことを名前で一度も呼んでいない気がする。

 

「――――――すまない、国広君、そして怜。私のミスだ。」

 

 竜崎はポケットから這い出て、地面に着地すると、俺ら二人に頭を下げた。

 

「告白券は、相手からの認知が必要だ。この認知というのは、()()()()()()()()()()()を指す。つまり、どれだけ名前を書いても、君が名乗るもしくは、名前を示すものを見せないと、永遠に効果は働かない。」

「ちょ、ちょっと待って?私そんなの聞いてないわよ?」

「告白券をむやみやたらに使わせないよう、情報を絞っていたから、知らないのも無理はない。本来なら、私が説明すべきだったのだが、そのほかの懸案事項にリソースを割かれ、漏れていた。」

「・・・となると、前半は失敗すべくして失敗したというわけか―――――――あれ?そうなると?」

「・・・戸隠さんは、素であなたに惹かれていたことになるわね・・・」

 

 ほ、ほわわ!!!生まれて初めてどちゃくそ可愛い子に掛け値なしに惚れられたってコト!?!?!?!?!?

 

「――――――とりあえず、名乗っていないことが不幸中の幸いかな。好感度がある程度高い相手に告白券を使った場合も、同様に好感度が底上げされる。そして、記憶維持をさせるためには、通常と同様、好感度を規定値まで上げなければならない。ただ、これが難しい。テストの点も、50点を80点にするよりも、70点を100点にする方が大変だってことは、国広君もよくわかるはずだ。そうなると、国広君がこれから二週間、戸隠桜子に入れ込んだとしても、規定値が高すぎるせいで、目標未達となり、相手の記憶操作が起こる可能性が高いだろう。」

 

 竜崎の指摘はもっともだ。既に好感度が高い(だろう)戸隠さんに告白券が効いていたとして、それで俺が万一好きになってしまっても、俺が戸隠さんの好感度を上げられなかった場合、相手だけがその記憶を失ってしまう可能性がある。その可能性を考慮すると・・・

 

「―――――俺はもう、彼女ことは忘れたほうがいいんだな・・・。」

「まあ、そうするのが自然よね。―――――ねえ竜崎さん、ちなみに告白券って、その効果は名前を書いてから24時間たつと無くなるで、いいわよね?」

「そうだ。」

「そうなの???」

「事前に名前をやたら書いておいて、いつ対象者が現れてもいいように備えておく、といったことを防ぐための処置だ。――――戸隠桜子の名前を書いたのは、だいたい12時過ぎだから、それまでの間に彼女に会わなければ不発のまま終わる。そうなると、記憶操作も起こらない。きれいな思い出のままで終わらせたいのなら、絶対に会わない方がいいだろうね。」

「・・・わかった。今日のことは教訓として覚えておこう。そしてなおさら、近くの人には使えないなと、よくわかったよ。」

 

 俺はしみじみとそうつぶやいた。

 

「―――――で、どうする?まだやる?それとも秋葉原行く?」

「だな!切り替えていくぜ!」

 

 俺は二人を引き連れて、路地裏を出た。戸隠さんのことはいったん心の片隅に置いておくことにしたのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 アキバをしこたま観光した後、怜に連れられて、多目的トイレに入った。そしてまた目隠しをされて、神界経由の移動をして札幌に戻ってきたのだった。怜は移動後、疲れたから横になるといって、すぐ自室に戻っていった。そんな怜を放っておけないと、竜崎も珍しく残った。一人で家に戻った後、有希にはアキバで勝ったVtuberのお菓子をあげると、すごく嫌そうな顔をしていた。勿論、そうなるとわかっていたから、きちんと東京ばななも添えてあげた。そして自室に戻って横になった後、ふと、竜崎もいないならしこれるなと思ってしまい、すると、戸隠さんのドスケベボディを思い出してしまい、しこたま抜いた。ナマモノではしこらない主義だったが、どうせ今後会わないだろうと思ったら、手が勝手に動いてしまったのだった。そして、賢者タイムでひどい罪悪感にかられ、憂鬱な気持ちで寝たのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 久しぶりにシコったことで、変なサイクルに入ったのか、ものすごくはやく起きた。携帯を開くと、時刻は6時と表示されていた。その日は二度寝する気分じゃなかったので、洗顔し、トイレで漫画でも読みつつクソしていたら、扉越しで有希の声が響いて来た。

 

 【伯父さん!兄さんが・・・兄さんが消えたっ・・・!朝起こしに行ったらいなくて…アラームがガンガン鳴ってて・・・それで・・・それで・・・!】

 

 あ、アラーム止め忘れてた。

 

 【お、落ち着け有希!ヤツはトイレにこもっているだけだ!】

 

 俺がトイレにいるとき叔父さん来たしね、わかるよね。

 

 【な、なんだ・・・】

 

 って、俺が一人で起きただけでうろたえすぎでしょ、有希は俺をなんだと思っているんだ・・・。

 俺はクソを終えると、再び部屋に戻り、制服に着替えた。そして、竜崎をカバンに入れようと―――――したところで思い出した。あいつは怜の家にいるんだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「じゃ、いって来ますわ。」

「伯父さんいって来ますね。」

 

 俺と有希は一緒に家を出た。そしていつもなら玄関前では怜が待ち構えているのだが・・・

 

「あれ?怜さんいないね。」

「あー、なんか昨日帰ってきたとき、体調悪そうにしてたから、今日は休むのかも。」

 

 俺は彼女に連絡しようとスマホを開くと、怜からメッセージが来ており、今日は休むとのことだった。お大事に、とメッセージを返し、学校へと向かったのだった。 

 学校に到着後、階段にて有希とわかれた。そして教室に向かっていると、なにやらハムのクラス――――二年五組がちょっとガヤついていた、ような気がした。俺は自分のクラスの六組に入り、カバンを置いた後机に突っ伏して寝た。早く起きたせいで、その反動が来て、がっつり寝てしまったのだった。その日の授業もつつがなく進行していたが、俺はとにかく眠くて、休憩時間はすべて睡眠に費やしていた。そんなことを繰り返していたもんだから、トイレに行くのも忘れてしまい、昼休み前の最後の授業中はトイレに行きたくてしょうがなくなっていた。

 

「梓先生!すみません、ちょっと腹痛くてトイレ行っていいですか?」

「いいですよ。早く戻ってきてねー」

「ほんと助かりますわ。大好き!ちゅっちゅ!」

「―――――――次その気持ち悪いのやったら説教ね♡」

 

 クラスの笑いも取ったうえで、俺は颯爽と教室を抜けていったのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「あれ?ない。生徒手帳がない。」

 

 トイレから戻る途中、何気なくポケットに手を突っ込むと、そこにあるべき生徒手帳を落としていることが分かった。普段あまりポケットに手を突っ込まないものだから、ポケットに穴が開いていることに気づかなかったのだ。そして俺は、がっつりウンコしたかったから、人に出会わなわそうな職員室付近のトイレまで遠出していた。

 

「こんなことなら、二年の階のトイレにいっときゃよかった。探すのたるいな~」

 

 俺は足元に注意しながら、ゆっくり戻ることにした。職員室は下のフロアだったから、階段をじっくり見ながら上っていった。だから、またしても俺は気づかなかったのだ。人がすぐ近くまで来ていたことに。

 

「あのー、もしかして生徒手帳探してます?」

「え?」

 

 そうしてまたも、反射的に顔をあげる。すると、ツーサイドアップのめっちゃ可愛い、絶対にこの場にいるはずのない女の子が、眼前にいた。その女の子は、俺の顔を見るなり、ハッとして、その場から動かずにいた。俺も全く同じだった。

 

「――――――国広・・・遼君・・・・・・って、言うんですね・・・。」

「と、戸隠さ―――――」

 

 そしてハッとした。名前を知られている?――――まて?今何時だ?俺は焦ってスマホを見た。ゆっくりクソしすぎたせいで、もう時刻は12時を過ぎていて―――――――――

 

「――――――なんて運命なの!」

 

 昨日東京で会った女の子、戸隠さんがそこにいた。そしておそらく、告白券の効果範囲に、入ってしまっている。今の彼女の好感度は、高止まりを知らないことに・・・。だから、また彼女が抱き着いてくるのも、そのあと国広遼の人生で生まれて初めて「好き」って言われたことも、納得のいく行動だなって、他人事のように思ったのだった。

 

 

 第2部 完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。