タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
俺のクラスに戸隠さんが来た時点で、かなり目立っていた。そりゃ、転校したてでまだ新しい制服がないのか、昔の制服だからってのもある。加えて、刹那や怜とは違ったタイプの可愛い子っていうのも、拍車をかけていた。そんな子が、クラスの男子ともう遊んでいて、しかもその相手がキモオタ野郎っていうのが、もう、ね・・・
「りょ、遼っ・・・!どういうことだってばよ・・・?」
伊藤が見るからにうろたえていた。でも、俺も気が気じゃなかった。
「いや、それはちょっと語弊があるんだって!」
「そ、そうそう!ちょっと喫茶店でお話ししただけだよー。
戸隠さんも俺のうろたえ方をみて、助け舟を出してくれた。サンキュー。
「まあ、とりあえずご飯食べよっか。――――えっと、戸隠さん―――でいいのかな?初めまして。萩原静乃って言います。こいつとは腐れ縁です。よろしくね。」
静乃が自己紹介、そういやこの場にいる誰も自己紹介をしていなかったなあと思った。やけににこにこしているのが、俺には不気味で仕方なかったが・・・
「そうです!戸隠桜子です。前は東京の高校に通ってました。刹那ちゃんとは実は一週間前から知り合いだったんだ。」
戸隠さんは、机の上に弁当箱を広げて、ご飯を食べ始めた。なお、もちろん俺の机の上である。周りの視線が突き刺さり、かなり気まずい。
「え?そうなの?」
刹那に視線を向けると、彼女は黙ってうなずいた。
「まあ会長から口止めされていたので・・・。改めて自己紹介しますね。私は中河刹那です。この学校の生徒会に入っています。―――――彼女は前の高校で生徒会に入っていたので、この学校でも入ってもらえないかと頼んだところ、了承してくれたんです。――――考えてもみてくださいよ。二年の役員は私と朱鳥ですよ?不安でしょう?」
「・・・そういわれると納得だ。」
すまん朱鳥、お前の信用はあんまりないんだ。刹那が次期会長になるとして、じゃあ副会長は?と言われると、朱鳥じゃ不安で仕方ない・・・。
「え?朱鳥君ってそんなにやばい人なの?」
「あいつは・・・女癖が悪すぎるっ・・・!戸隠さんも気を付けてっ・・・!」
「大丈夫!そこらへんはちゃんと考えてるから。・・・ところで君は?」
「ご、ごめんっ・・・。俺は伊藤修二、遼のオタ友だっ・・・!」
「そしたらきっと私とも話が合うねー。アニオタ?ライバー好き?」
戸隠さんが伊藤に優しく話しかけてくる。伊藤はこれまで受けたことのない扱いをされ、脳がバグっているのか、オタク特有の早口で愛を語っていた。刹那と静乃、そして俺は置いてけぼりになっていた。
「―――――伊藤君も面白いね~。今度私の推しアニメもみて、感想聞かせてね?」
「も、もちろんだとも!」
伊藤は骨抜きになって、「戸隠ママ・・・ちゅき・・・」とつぶやきながら、その場からふらふらと離れていった。
「―――――ぼくの身の回りには、こういうタイプはいなかったなあ。」
「だよねえ。東京の高校でもそういう人は少なかったなあ。だからオフイベで集まったりとかしなくちゃでさぁ。」
俺は息をひそめ、ひたすら弁当を食らっていた。静乃の追及がいつ向くかわからない。この場をやり過ごすのに必死だった。
「東京なら人多そうなものですし、そういう相手くらい高校にもいると思うんですけど、違うんですね。」
「そうそう!みんな勉強勉強って感じで、そんな空気じゃなかったんだよね。私には窮屈で仕方なかったよ。」
「なるほどねえ。じゃあ遼みたいな人はちょうどよかったわけだ。しかも昨日偶然会ったんでしょ?すごいね。」
「そうなんだよ~。
俺でもわかる。戸隠さんはいま、余計ことをしゃべってしまった。そしてもちろん、静乃は聞き逃さなかった。
「――――ねえ遼、昨日東京に行ってたの?」
「――――ああ、そうだよ。怜の引っ越しを手伝ったじゃん?その借りを返すとかで、東京旅行をプレゼントしてもらったんだ。なんでも株で一山当ててるから金はまあまああるんだと。」
俺は怜が用意した嘘をぺらぺらとしゃべった。東京に行ってた件は絶対にツッコまれると思っていたからね。
「はあ・・・すごい偶然もあるんだね。」
静乃は俺が饒舌にしゃべった姿を見て、これ以上は何も掘り起こせないと察したのか、俺を興味なさげに一瞥した後、自身の弁当をつまみ始めた。これでもう、俺に追及の刃が向くことはないだろう。
そうして談笑しながら弁当を食べ終えた後、刹那と戸隠さんは立ち上がり、
「そしたら、約束通り校内を案内しますよ。会長のところにも挨拶に行かなくちゃですし。」
「了解!―――――じゃあ遼君、行くよ?」
「ほわわ???」
「何驚いているのさ。約束忘れてないよね?」
「―――――よしいくぞう。」
俺は腹をくくり、刹那と戸隠さんの後をついていくことになった。頼む!話題にならないでくれ!!!
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「初めまして戸隠さん。私が生徒会長の蘇芳結衣です。―――――あれ?どうして国広君がいるんですか?」
刹那は取り急ぎ、会長のいる三年生のフロアに上がり、教室まで一直線で向かった。
「戸隠桜子です!これからよろしくお願いします!―――――遼君については、私がお願いしたんです。ねー遼君?」
「へぁ!」
「もう照れちゃってー。女の子耐性ナシじゃん。かわいい~」
戸隠さんは俺の扱い方がだんだんわかってきたのか、蘇芳先輩の教室に来るまでがっつりいじってきた。なお、いじりはいじりでも、静乃や有希のような皮肉や罵倒のオンパレードではなく、甘い言葉と直接的な好意をぶつけて、俺の反応を楽しむ――――からかいの類だった。これが高木さんからからかわれる西方の気持ちか・・・と、思うのだった。
「―――ねえ刹那、これは・・・?」
「なんでも、前日に会ってるらしいですよ?その結果がこれというのは―――――私も困惑しています。今は時間がないので、今度の会議の後にでもじっくり聞きましょう。」
「え?何何?刹那ちゃんどうしたの―――あれ?隣の子は?」
面白い雰囲気をかぎつけたのか、ゲーム部部長の宮永龍華先輩が、教室の奥から出てきた。
「新しい生徒会役員ですよ。龍華。朱鳥のクラスに転入してきた戸隠桜子さんです。」
「初めまして!結衣のマブダチの宮永龍華でーす――――――――は?なんで国広いんの?」
「部長、聞かないでください・・・」
「遼君LOVEなのでお願いしてついてきてもらっちゃいました(笑)」
「・・・国広、後で事情聴取ね?」
「はい・・・」
部長は超絶ニヤニヤしながら、会長の肩を組んだ。
「さ!これから回るところいっぱいあるだろうし、お姉さんたちの時間はここまでかな~~そんじゃね、刹那ちゃん、桜子ちゃん、そして国広。」
そうして先輩方は教室を出ていったのだった。
「――――――じゃあ、いろいろと見て回りましょうか。」
「だね~。遼君もうなだれてないで行くよ~」
「はい・・・」
「なになに?そんなに昨日私と会ったのはいけないことなの?」
「え?それは、そんなことないよ!それだけは絶対にない。」
「ふふ、うれしい。」
「――――――いちゃついてないで行きますよ。」
刹那があきれ顔で俺らに向けてそう言葉を投げかけた。刹那のあきれ顔って、そういやあんまりないかも、と思ったのだった。てか、刹那の眼には俺らがいちゃついているように見えているのかよ。ああもう、俺はこういう目立ち方は好きじゃないんだよ!みんなの記憶から俺を消し去ってくれ・・・なんてことを思ってしまった。だが、その願いは、実現可能性があるというのに気づくのは、その日の晩のことである。