タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-1-6 「遼は、彼女の想いを人質に取られているのよ。」

「・・・どうしてそうなっちゃったかなあ・・・」

「それは俺が聞きたいよ・・・」

 

 竜崎はこめかみを抑える仕草をした。勿論、憑依した身なのだから、痛くはないんだろうけども、そう感じさせてしまうほど事態が複雑になっているのだろう。

 

「でもまあ、謎は解けたからいいかな・・・」

「謎?」

「ああいや、こっちの話。・・・とりあえず、怜の家に移動しようか。話はそこで使用。もう彼女も本調子に戻っているだろうから、問題もない。」

 

 竜崎は俺の質問をはぐらかすと、抱っこの姿勢をとった。これは、回収して胸ポケットにいれろ、という意味だ。

 

「じゃ、れっつらごー!」

 

 竜崎はやけにテンション高くそう言ったのだった。―――――なんか、こんな竜崎は違和感あるな・・・と、俺はその時思った。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「私が休んでいる間にそんなことが・・・さすがにそれは予想できなかったわ・・・」

 

 怜の家で同じように事の顛末を話すと、竜崎と同じような反応を返したのだった。

 

「やっぱり神界経由の移動って疲れるの?」

「ええ、そりゃもう酷いものよ。」

「―――――言われてみれば、神界に入った瞬間、怜、すごくつらそうにしてたな。」

「そうね。人間界から天界へ移動するのが凄い負荷なのよね。逆は問題ないのだけれど・・・。だから、この技術は基本使いたくないのよ。やりすぎると、脳みそがつぶれてしまうから。」

 

 怜は大きなため息を吐いた。

 

「―――――とはいえ、想定よりは酷くなかったけどね。どうしてだろうと思っていたのだけれど、納得ね。」

「なんか思わせぶりな発言だな・・・。」

「まあいいじゃない。―――――でね?ここからが非常に重要なんだけど・・・」

 

 怜は手元のコーヒーカップに口をつけ、ぐいっと流し込んだ。そのあと大きく深呼吸して、俺をまっすぐ見据えてきた。あまりにも真剣な表情に、俺はたじろいでしまう。

 

「まず、戸隠さんに告白券の効力がかかっているかどうかを確認するべきね。」

「ああ。国広君が戸隠桜子と接触したのが本日12時10分くらい、戸隠桜子の名前を告白券に書いたのもほぼ同時刻。――――――どちらが先かを確認しなければ、対処の仕方も変わってくるんだ。」

「そんなこといっても・・・俺の記憶を頼りに決められるならとっくにやっているというか・・・」

 

 俺が困っていると、二人してにやりとこちらを見てきた。

 

「あげたじゃないか。とっても便利なサポートアイテムを。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「――――――そうか、《差分回収装置》があったか!」

 

 差分回収装置、それは竜崎が俺にくれたサポートアイテム。ギャルゲーの選択肢回収のように、過去の自分で大きく悩んだところ、未来の分岐とでも言えばよいのか、ともかくそれを確認することができるのだ。毎回やるのは大変だから、放置していたが、確かにあれならわかる。画面上に時刻表示があったはずだったから。

 

「ともかく、遼は家に帰ったらそれで確認をすること。―――――でね?ここからは、遼にとってもしかしたらつらい選択をすることになるかもしれないんだけど・・・」

 

 怜はどこかばつの悪そうな顔をしていた。言おうか言わないか、迷っているように見えた。ただ、視線の先にいた竜崎が大きく頷いたから、覚悟を決めたのか、俺をじっと見た。そうして、重く口は開かれたのだった。

 

「――――――告白券がかかっていないなら、戸隠さんへの対応は遼の好きにしたらいいと思う。幸い彼女は遼のこと大好きみたいだし、彼女と結ばれるのなら、私たちとしても本望だから。けれど、もし告白券がかかっている場合、遼は彼女と真剣に向き合う必要があるわ。」

「え?まあそりゃそうなるだろうけど・・・」

「――――――そうじゃなくて・・・」

 

 怜はさっきからずっと歯切れが悪い。そして「私の仕事だから、私が言わないと」とつぶやき、

 

「――――――ねえ遼?告白券を2週間使った後ってどうなるか前に説明したわよね?覚えてる?」

「え?ああ。確か・・・好感度が規定値に達してなければ記憶操作、達していれば、交際延長か、もしくはやめて記憶操作――――――――――あれ?記憶操作?」

 

 俺は自分の体の芯が冷えていくのを感じた。なにか恐ろしいことに気づいてしまった。そんな感じだ。

 

「戸隠さんと付き合えなければ、戸隠さんの記憶から俺が消える・・・?」

 

 俺が恐る恐る言うと、怜はゆっくりと頷いた。

 

「告白券が作用している場合、二週間後までに規定値まで好感度を上げられなかった場合は、すべて記憶操作が行われる。彼女は遼に告白券なしで惚れていた。そして今日一日、彼女はとても幸せだったでしょうね。大好きな人と運命的な出会いをし、そして何度も一緒にいることができたんだから。そこに告白券の記憶操作が入った場合、もちろん今日の記憶はなくなるわ。彼女の記憶の中のあなたは、東京でスマホを拾ってくれた名前も知らない優しい人であり、廊下で出会ったのはただの同じ学年の人、というカテゴライズになる。そこのつながりは絶たれてしまう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()残酷な言い方をするとね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってこと。」

 

 そのとき、怜はあくまでも告白券は練習であること、知り合いに使うべきではないということを強調していた真の理由が分かった気がした。こんなこと言われたら、生半可な気持ちで彼女に近づけない。だってさ、半端に近づいて好感度不足になったら、彼女の記憶から俺はいなくなる。けれど俺の記憶には残り続けるわけだろ?逆に本気で近づくって、それは本気で彼女にしたいと思わないとできないじゃんか。今の俺に、そこまでの覚悟はぶっちゃけない。本当にいいのか?という思いでいっぱいだ。言ってしまえばこれは勝ち戦。だけど、安易に乗っていいのか?うまい話に。じゃああと思いつくことは・・・

 

「これから二週間、彼女と接触しないでいれば、記憶操作は今日一日だけで済む。それなら傷はまだ浅い。幸い、東京での記憶は残るのであれば、また関係構築すればいいだけだ。」

「―――――もちろん、そういう選択もありよ。どうするかは、遼がしっかり考えて。この件については、私からのサポートはかなり慎重になるわ。同性の私が遼に引っ付いてアシストすると、戸隠さんが妬いちゃって、かえって逆効果になるかもしれないから。」

 

 そうして怜は、ぬるくなったコーヒーを飲みほしたのだった。その光景をみて、俺も机の上にある手つかずのコーヒーに口を付けた。苦くぬるいコーヒーが、俺をゆっくりとまどろみに落としていく。俺は一体、彼女にどう接すればいいんだろうか。

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