タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
俺は怜の家から戻った後、さっそく差分回収装置を起動しようとした。しかし、そこに竜崎が待ったをかけた。
「なんだかんだ、私はずっとカバンの中に押し込まれていたから詳しいことは君から聞いた話ベースの知識なんだ。私も現状把握をしたい。この目で見ないことには、認識違いを正せない。だから、起動する前にちょっと待ってくれないか。」
そう言うと竜崎は、竜崎の頭のサイズにあうヘッドギアを、彼のハウスから引っ張り出してきた。
「いつの間にそんなものを用意していたんだ。」
「ずっと前からあったさ。使う機会がなかっただけだよ。自分のしたことを盗み見られるのって嫌じゃないか?だから、よほどのことがない限りは使う気はなかったんだけど・・・」
竜崎は慣れた手つきでヘッドギアに何かしら操作した後、それを被った。
「さ、もう大丈夫だ。これで君の視界を私に共有できる。起動してくれていい。」
「OK」
俺は慣れない手つきでヘッドギアを被り、コントローラーを手に取った。
【遡行時刻を設定してください】
俺はさっそく、先日の正午を入力した。そして、視界には東京の公園、噴水に座ったときの周囲の景色が広がってきた。
【怜、教えてくれ。俺はあと何回告白券に名前を書けばいい?俺はあと何回、経験豊富な女性相手にピエロを演じればいいんだ?】
そうだ、俺はこんなことを愚痴っていた。今思えば、本名の開示をしてなかったから当然の帰結だったわけだ。そうしてしばらく会話を進めていると、戸隠さんから件の電話がかかってきた。
A 電話に出る
B 電話に出ない
眼前には、選択肢が浮かび上がってきた。なるほど、ここで電話に出れば、戸隠さんとの接点が生まれて、今の現状につながったわけだな。
「国広君、先に下の選択肢を選んでみてくれないか?」
言われるがままに、Bの選択肢を選んでみる。すると、そのあとはただアキバを観光して終わった。ただ、違ったのは、シコって寝てないせいか、普通に起き、授業も途中で抜け出すことなく普通に受けた。そして昼は、週末のFLD大会の対策を練りたいと思ったのか、すぐ教室を出て、部室へと向かっていた。だから、戸隠さんとの接点はその日には生まれなかった。
「戸隠桜子との出会いは、不可避の運命ではないということはよくわかった。―――――一応聞くけど、出会わない方がよかったかい?」
竜崎のその言葉に、俺は迷わず答える。
「まさか、それだけはない。あんな可愛いくて話が合う子と出会わない方がいいだなんて、絶対そんなことないさ。」
「それなら、安心だ。そう言える君なら、無責任なことは、きっとしないだろうさ。」
眼前には竜崎は見えないが、その表情はきっと、慈愛に満ちているのだろうと思った。俺は直前の選択肢まで戻り、Aの選択肢を選んだ。すると、昨日体験した出来事が、そのまま再生された。
【本当にありがとうございます!―――――そういえば、お名前をまだお聞きしていませんでした。私は戸隠桜子って言います。スマホを受け取るときに身分証も出しますね。だから、違う人にスマホ渡しちゃだめですよ?】
【ええと――――すいません、もう一度お聞きしてよろしいですか?】
【えっと、私はまず、戸隠桜子っていいます。網戸の戸に、隠れる、桜は簡単な方の桜で、子は子供の子です。今の服装は、簡単に言えば地雷系ファッションです。きっと見ればわかります。今から10分後くらいに、そちらに着きますので、私を見かけたらスマホをそれらしく見せてくれれば、話しかけに行きますので。一応証拠として身分証も見せますので、別人にスマホを渡さないでくれると・・・。】
そうして手元の告白券に戸隠さんの名前を記入していった。その時の時刻は・・・12時13分。秒数表示まではされていなかった。
「なあ竜崎、秒数まではわからないのか?」
「残念、そこまではどうしても再現できなかった。まあ、そこがネックになるほど同時刻ではないと思うがね。」
「そんなフラグを立てないでくれよ・・・」
俺は恐る恐る時間を進めた。そしてついに学校で戸隠さんとの邂逅シーンについた。
【――――――国広・・・遼君・・・・・・って、言うんですね・・・。】
俺はそのシーンの時間を確認する。時刻は12時―――――
「・・・13分・・・・・・」
俺はコントローラーを手放した。
「――――――そんなことってあるかよ。まったくの同時刻って・・・」
「厳密にいえば、秒まで一致しているとは考え難い。現時点での差分回収装置じゃあ、これが限界か・・・ただ―――――」
俺と竜崎は、二人して黙りこくってしまった。そして、差分回収装置で見た出来事をゆっくりと反芻した。戸隠さんからの電話を取り、告白券に名前を書いて――――――
「国広君は、戸隠桜子をどうしたい?距離を取る?近づく?告白券のことは度外視して、いったん考えてみてくれないか?」
沈黙を破ったのは竜崎だった。その表情はいたって真面目で、仮想の話にしては真剣みを帯びていた。
「そりゃ、伊藤や柄谷とは違ったベクトルでのオタ友になれるかもしれないし、仲良くしたいよ。しかも可愛いし。」
「その言葉が聞ければ十分だ。――――――じゃあ、君がやることは一つ、怜はいろいろ言っていたが、
「でも――――」
簡単に言ってくれるが、戸隠さんの記憶を守るためには、戸隠さんと付き合わなければならない。今の俺にその覚悟があるかと問われると・・・。
「―――――
「は?そんなことできんなら早く言ってくれよ!それならもうなにも気にしなくていいぜ!」
「はは、まあ決断の先送りに過ぎないけどね・・・。」
そんな重要情報、なぜ竜崎は黙っていたんだよ。怜もそんな選択肢を知っているなら、あんなに俺を脅さなくても――――――ん?待てよ?もしかしてこれはうだうだしていた俺に発破をかけるための竜崎らの罠か?ははーんなるほど、完全に理解したぜ。俺は頭がいいから気づいてしまった。回りくどいことしちゃって・・・
「―――――おっけー。竜崎のその言葉、信じるよ。」
俺はサムズアップし、きらりと歯を輝かせながら最高の笑顔を振りまいた。そして竜崎は、そんな俺を苦笑いで流すのだった。
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「―――――竜崎さん、差分回収装置を使ってわかったこと、なにかありますか?」
深夜一時、国広君が寝静まったころ、私は怜と通信による定期連絡を行っていた。怜は真っ先に、差分回収装置のことを聞いてきた。
「そうだね・・・ひとまず、国広君は戸隠桜子との交流を前向きに考えることになったよ。」
「―――――竜崎さん、質問の回答になっていません。わざとはぐらかしていますか?」
鋭いな、さすが多数の中から選ばれたエージェントなだけある。
「いやなに、でもこれが一番重要な情報じゃないか?告白券の効力下において、前向きに交流するってことの意味を知らないわけではなかろう?」
「それはわかりま―――――あれ?となると、日曜日の
「その可能性が高いだろうね。
「・・・なるほど。承知いたしました。では、戸隠桜子と交際する前提でサポートを続けていきますね。」
「そこについてだが、戸隠桜子への限定はまだ避けてほしい。ちょっと日曜日の東京転移の件で検証したいことがいろいろとあるんだ。これは上司命令だ。」
怜は納得のいっていない顔をしていたが、しばらく黙ったのち、首を縦に振った。そうして、本日の定期連絡はこれで終わった。
―――――日曜の東京への転移でいろいろとわかったことがある。予期していた展開は、あらかじめ決められた運命のものではなく、我々が干渉する、もしくは、国広君自身の行動によって、リアルタイムで展開が変わりうる可能性が高い。それが、救いでもあるが、我々のサポートを安易に終わらせられない原因でもある。国広君が無事彼女を作って、我々が元の世界に戻ったあと、数年たって彼女と別れて、