タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
7/21(火)
戸隠さんのことでいろいろあった月曜を終え、翌日を迎えた。身だしなみを整えて、いつものように学校へ向かう。勿論有希は先に家を出ており、竜崎は家で留守番している。玄関の戸を開けると、そこには風にたなびく金色の髪が特徴的な女性が一人立っていた。
「おはよう、怜。」
「おはよう遼。さ、学校へ向かうわよ。―――――昨日いろいろ言ったけど、竜崎さんと話して、当面はいつも通り接することにしたわ。」
「あ、もう話いってるの?竜崎は仕事が早いな~」
二人並んで学校へ向かう。そうしてしばらくすると、周りに邪気を放ちながら歩いている静乃を発見した。
「よっす静乃、元気そうだな!」
「おはよう静乃、相変わらず暗いわねー」
「おはよう怜。低血圧なんだ、テンション上がらないよねー朝は。遼は一回死ね。」
ナチュラル罵倒を混ぜ込んでくる静乃、なんだかんだエンジンかかってるんだよなーこいつ。
「ねえ、ぶっちゃけな話していい?」
「どうしたのかしら?」
静乃も交えて駅へと向かって歩いていく。そうして静乃は、怜に珍しく問いかけをしてきたのであった。
「昨日の転校生・・・その・・・戸隠さん?ってさ、なんか訳ありなの?」
静乃は俺と怜の関係性についていろいろ感づいている。そんな質問をするということは―――――怜の関係者と思っているのだろう。あながち間違いではない。告白券を使ってしまった相手という意味では、関係者だ。ただ、彼女が神界の人だとは、正直思えない―――――待って?彼女がサクラだったらさすがに泣くぞ?俺。
「―――――戸隠さんって誰?」
「・・・そっか、そうだよね。ごめん。」
怜のすっとぼけに、静乃はちょっと間を置き、謝罪した。客観的に見れば、怜は昨日休んでいるから、戸隠さんのことを知っているのはおかしい。勿論、二人で東京観光に行った事実はもう知れ渡っている。だから、戸隠さんの顔くらいなら見ていてもおかしくないけどね。
「――――日曜東京観光行ったじゃん?その時に俺が奇跡的に仲良くなれた女の子いたじゃん?あの子、戸隠さんっていうんだって。その子がどういう運命か、昨日うちの高校に転校してきたんだよ・・・」
俺がさっと助け舟を出す。そういう設定に乗っていこうぜ怜。
「あーいたわねあの超かわいい子。私は邪魔しちゃいけないと思ってしばらく別行動取っていたのだけど、その子が転校してくるなんて・・・遼も持ってるわね・・・」
「あの子、遼のこと大好きっぽいじゃん。すごいね、類友ってやつ?」
「照れるぜ。」
「遼はあの子のこと好きなの?」
「ダイレクトに聞くじゃん・・・いや、好きか嫌いかだと好きだよ。けど、正直オタトークできる友達が一人増えたって事実に喜んでいるのであって、彼女にしたいかというとちょっと別問題というか・・・」
俺は正直な気持ちを静乃に吐露した。静乃は、大きなため息をつき、
「ま、そんなことだろうとは思ったよ。昨日の遼の煮え切らない、どこか彼女を避けているような反応を見ていたら、そうとしか思えないからさ。――――彼女、生徒会に入るみたいだし、刹那との交流も増えると思ったら、ぼくも話す機会が増えそうだ。がんばるかーぼくも。」
はは、と笑って、それきり静乃は戸隠さんの話題をしてこなかった。
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~静乃視点~
「えー、ですから角加速度を持つ物体は・・・」
担任の千歳先生は壇上に立ち、黒板にチョークを走らせて 物理の授業を進めている。ぼくはぼんやりとそれを眺めていた。戸隠さんを怜側の人間だと疑っていたけれど、いろいろ話を聞く限り、どうもそうではないっぽい。親が大学教授っていうのも本当だった。調べたらしっかりと名前が出てきて、結構新進気鋭の学者っぽいことが分かった。そこを偽装できる、というのであれば、怜たちはすごいけれど、さすがにこれまで出した論文とかも捏造するのは考え難い。――――いや、オーバーテクノロジー、スピリチュアル、可能性はいろいろあるけれど、現代の常識で考えても仕方がない。大切なのは目的だ。手段じゃない。―――――遼の話だと、怜がこの高校に来たのは遼の恋愛のサポートであることはほぼほぼ間違いないだろう。ということは、彼女の行動はすべて最終目的である遼の彼女づくりにつながっているはずだ。となると、日曜日に東京に行ったのも、それが理由の一つであるはずだ。戸隠さんはたぶん、思ったことを結構喋っちゃうタイプだから、おそらく言葉に嘘偽りはないはず。だから、スマホを落とした云々のくだりはすべて本当で・・・となると・・・。なんて考えを巡らせていたとき、ふと、誰かがぼくの名前を呼んでいる気がした。前を向くと、千歳先生が困惑を浮かべてこちらを見ていた。
「・・・珍しいね、君が本当にぼーっとしている時があるなんて。」
「あ、はい・・・すみませんハル――――千歳先生。」
本当にぼーっとしていたものだから、
「一応この問題について、物体に働く力を聞いていたんだけど・・・答えられそう?」
「―――すみません。どのページの問題でしょうか。」
「うーん、たぶんすぐ見て解けないだろうから、萩原にはその次の問題を頼もうかな。ちゃんと話聞いてるんだぞ?じゃあ代わりに伊藤に聞こうかな?」
「先生っ・・・!俺がわかると思いますかっ・・・!」
「わからないことを開き直るんじゃないよ!」
「ぐっ・・・」
「・・・というか、そもそも話聞いてなかったよね?またライトノベル読んでない?」
「へ?ちょっ!まってきちゃらめええええ!」
千歳先生は伊藤に近づくと、伊藤は挙動不審に机の中に何かを突っ込んだ。そして案の定、先生にそれを没収されてしまう。先生はそれをぱらぱらとみると―――――
「――――伊藤、さすがにこれはアウト。本を読んだ行為自体も悪いけど、読んでいる本の内容が駄目。TPO的に。後で職員室に来なさい。」
伊藤はうなだれながら、突っ伏してしまった。いや、授業聞けよ。あんた。