タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-2-4 「とりあえず戸隠が飴、萩原が鞭担当なのはわかった。」

 7/29(水) 

 

 照りつける日差しは相変わらず燦々と降り注ぎ、疎ましく思ってしまうのはいつもなのだが、今日に限ってはその暑さはむしろ好都合。

 

「夏だ!水着だ!プールだ!」

 

 今日は待ちに待った新設のアミューズメントパークに行く日だ。部長からただ券もらってから早2週間、話をもらった時こそこまで気乗りしなかったが、

 

「フッ・・・私に抜かりはない。少年を前にして粗相をしてはならないから、昨日だしきっておいて正解だった。」

「おいおいハム、逆だろ逆、むしろ今日のために貯めておくべきだろうがよ。本番は夜になってからだぜ。」

「でぇじょうぶだどうせ刹那の水着姿見たら再チャージされる――――って、身近な人でそういう話は生々しいからやめるっピ!」

 

 パークを目の前にして、俺とハム、そして朱鳥はくだらない話をしていた。

 

「その通り。二度いうが、粗相をしてはならないからな。直近は大会もあってなかなか自己を律するトレーニングをする暇もなかったから気を引き締めなければならない。」

「残念な結果だったけど、やり切ったと思うよほんと。」

「あれ、全道大会どこまでいったんだっけ?」

「準決勝敗退だね。そこに勝てば全国大会の切符を手に入れられたんだけど、残念。優勝チームに当たっちゃったから、もうしゃーなし。」

 

 そう、先週末、準備に準備を重ねて臨んだFLDの全道大会。俺たちはそこで準決勝まで進んだのだが、相手のチームが強すぎた。youtubeによくプレイ動画をあげる有名チームだった。部長のチームも、俺のチームも完全敗北。ただ、手も足も出なかったわけではない。練習したことは全部出せた。出したうえで負けたので、部員みんな、悔いは残っていない。3位決定戦はなんとか勝てたので、無事全道3位の肩書を得ることができた。その日の晩は梓先生のおごりで盛大に打ち上げを行った。部活存続は梓先生はしっかりプレゼンしてくれるとのこと。全道大会3位ならば変な問題を起こさない限り部活を存続できるらしい。

 

「ま、お疲れさん。俺も先週はずっとボクシングのインハイで忙しかったし、お互い今日は羽伸ばそうぜ。」

「丸々一週間なんてすごいよね。しかもそこでしっかり結果を残してくるなんて。」

「ゆうて俺も3位だぜ。同じだ同じ。」

「全道3位と全国3位じゃブロンズの重みが違うよ~~~!!!」

 

 朱鳥は一週間ボクシングの全国大会で東京に行っていた。なんとそれにより学力テストも回避できている。一部の人からはふざけんなと言われていた。なお、朱鳥はその事実を知らない。インハイ開けは一度も登校していないのだから。――――そう、一回も登校していないから、俺が先週いかに大変だったかを、こいつは知らないのだ。内容が内容だけに、自分からは決してその話はしないが・・・。

 

「本当に朱鳥はよく頑張りました。おめでとうございます。」

 

 後ろから急に話しかけられたものだから、びっくりして一同振り返った。そこには、会長と部長、そしてカトル先輩が並んで立っていた。

 

「会長!カトルさん!ご無沙汰です!宮永も久しぶりだなぁ!」

「ねえ結衣、こいつなんで私にだけタメ口なの?そこも()()してよ~。」

「―――――私とカトルに敬語を使わせるので精一杯でした。もう手に負えません。彼の心を突き動かす何かがなければ・・・」

「僕らじゃもうどうにもならないんだよね・・・」

 

 会長とカトル先輩はやれやれと手をあげた。そんな顔を見て、部長も頭を抱えていた。にしても、会長でもダメならこいつを言い聞かせるためには何をしたらいいんだろう。

 

「おーい遼ー!」

 

 今度は俺を呼ぶ声が横から聞こえてきた。そちらに目を向けると、怜と静乃、刹那、そして戸隠さんがこちらに寄ってきていた。今日までに刹那が気を利かせて、怜や静乃と戸隠さんとを引き合わせて遊びに行ったりしていたらしい。怜から聞いた話だが、なんとか良好な関係は築けているらしい。最も、隣に住んでいることがわかると、かなり羨ましがられたみたいだが・・・。

 

「あれ、早くについたつもりだったのに待たせちゃったかしら?」

「いや、俺らもついさっき来たとこだよ。」

「おう中河も久しぶり―――――――ちょっとまて、中河の隣の美少女たちは・・・」

 

 朱鳥は怜と戸隠さんを指さしていた。そういや、朱鳥と怜って初対面だったか。完全に紹介するの忘れてた。

 

「え?ぼくのこと?」

 

 ニヤニヤしながら静乃はボケをかましてきた。朱鳥は静乃の顔を見るなり、すごく嫌そうな顔をするのだった。―――――眼球取り換えてから出直してこい、くらいなら、初期のコイツなら言いかねないが、言わなかった。刹那によると、生徒会に入ってモラルを叩き込まれたおかげで、かなり改善されたらしい。

 

「この陰険ドS女ではなく、金髪サイドポニーの子――――国広のクラスの榊怜と、ちんまいくせしていろいろでかい黒髪たれ目の子のことを言ってんだよ。」

 

 結局静乃のことをいじっているのだが、静乃はそれを意に介さず、ニヤニヤしながら朱鳥と怜たちのことを見ていた。

 

「黒髪のたれ目の方は前に話した新しい生徒会役員ですよ。」

「いや話は聞いていたけど、こんなに可愛いだなんて聞いてないぞ???」

「朱鳥、お前は知らなかっただろうが、先週我々のクラスに転入してきたぞ。」

「あはは、刹那ちゃん、もしかしてこの人が生徒会役員の朱鳥真一君?」

 

 戸隠さんは朱鳥の言葉に全く動じず、さらりと刹那に話しかけていた。言われ慣れてるのかね?なお、今日に限ってはいつもの地雷風コーデではなく、さわやかな白のワンピースを着ていた。大方、着脱が面倒だから簡単な服装にしたのかなあ。

 

「そうですよ。――――朱鳥、彼女が東京から転校してきた戸隠桜子さんです。」

「ご紹介にあずかりました戸隠です!どうやら同じクラスみたいだね。夏休み明けからよろしくね~。」

 

 手をひらひらと振って挨拶をした彼女。朱鳥のいつもの悪い癖が出るんじゃないか?と俺は内心ひやひやしていた。―――――このひやひやは、決して盗られそうになったからとかそんなんじゃない。そもそも自分のものでも何でもないし。でも、さんざん好き好きオーラを浴びせ続けてきた人が、自分以外の人にもそのオーラを浴びせる可能性があるという事実は、ちょっと脳が破壊されかねないお・・・。

 

「よう、俺は朱鳥真一。気軽に真一と呼んでくれていいぜ。よろしくな。」

 

 朱鳥はそういって戸隠さんにナチュラルにボディタッチしようとしてきた。戸隠さんは伸びる手をさらりと払いのけ、そして―――――

 

「私に手を出したいならまずいよわさんの楽曲を全部聴いて考察文出してからにしてね。」

「いよわ・・・え?何?」

 

 キョトンとする朱鳥。そりゃそうだ。ボカロ知らない人にとっていよわさんなんてわからん。そこはせめてYOASOBIとかヨルシカとかにしてあげてよ・・・と謎の同情をするのであった。

 

「朱鳥、残念だけど戸隠さんは遼のお手付きだから。」

 

 ずっとニヤニヤしていた静乃は、ここにきて爆弾を俺に投げつけてきた。俺がぎょっとして彼女を見ると、ニヤニヤが嘲り笑う顔へと変貌していくのが分かった。お前、これがやりたかったのか~~~!!!

 

「は?おい国広どういうことだ。聞いてないんだが?」

 

 朱鳥は俺の胸ぐらをつかんでぐわんぐわんと揺らした。

 

「手なんて付けてないもん・・・」

「てかお前この一週間でなにやった!?俺以上に手が早すぎるだろ!なんでこんな面白いこと言ってくれなかったんだよ!」

「いうわけないじゃん、絶対めんどくさいことになるってわかってたんだもん・・・」

「あはは、手を付けられてないのはほんとだよ。遼君がタイプってだけ。オラオラ系の細マッチョよりももやしやゴボウのオタクのほうが好きなんだー。」

 

 戸隠さんはそういって俺の腕を組んできた。彼女は薄着だ。だからこそパイパイのぬくもりがダイレクトに肌に伝わってくるお!?!?!?!?!?

 

「ちょっとまって、それは褒めてるのかけなしているのかどっちなんだ?」

「あれ?静乃ちゃんから聞いた話だとマゾだから言葉責めされたいって・・・」

「おい静乃?何吹き込んでくれちゃってるの?」 

「うーんちょっとキレが弱いかな。体も思想も貧相な童貞クソオタクくらいじゃないと。」

 

 腕組みして戸隠さんの俺いじりを講評する静乃。お前は悪口の専門家か何かか?

 

「ちょっとまって、それは言葉責めじゃなくて悪口の域に入ってるぞ?」

「うーん・・・だめだ、私にはちょっと難しいや。()()()()()()()()()()()()()()()・・・静乃ちゃんはすごいね。」

 

 俺が戸隠さんの光に焼かれているとき、静乃の嘲り笑う顔が若干ピクついた。

 

「―――――まあぼくはこいつのこと好きでも何でもないから出来たことかな。」

「さすがの俺でも傷つくぞ・・・。」

 

 俺は苦しくなってその場にうなだれるのだった。そんな俺を見て、戸隠さんは組んでいた腕を解き、よしよしと頭をなでるのだった。戸隠ママ、ちゅき・・・

 

「とりあえず戸隠が飴、萩原が鞭担当なのはわかった。戸隠についてはもういいとして、榊がここにいるってことは・・・中河とかと友達ってこと?」

 

 朱鳥は戸隠さんにこれ以上話を吹っかけてもしゃーないと判断したのか、あきれて俺らを見ていた怜に話しかけてきた。

 

「初めまして、榊怜です。6月に転校してきました。刹那や静乃とは仲良くさせてもらっているわ。つい最近だと桜子ともね。」

「なるほどなるほど、いやー、中河の周りに集まる女子は美少女ばかりで眼福だぜ―――――いやまてよ?中河じゃなくて国広の周りに集まっている説ないか?もしかして榊も・・・」

「そういう話だと、私の家は遼の隣になるわね。」

「国広てめぇどういうことだ???」

 

 朱鳥は体育座りをしている俺の肩をつかみ、グラグラと揺らしてきた。怜、お前面白がってやってるだろと思って奴のほうを見ると、あいつも静乃と同じ顔をしていた。確信犯じゃねーかよ。

 

「なに?お前はラブコメの主人公か何かか?対して何もしてないくせして美味しい思いしすぎだろ!俺が女と遊ぶのに試行錯誤しながら四苦八苦している傍ら・・・なんて野郎だ!」

「むしろなんで今まで聞いてこなかった???一か月以上経ってるぞ?俺そこそこ怜と一緒にいたぞ?女に目ざといお前がむしろなんで今まで碌に接触してなかったんだ?」

「ちょっとまって遼君、そこそこ怜ちゃんと一緒にいたってどういうこと?私そんな話怜ちゃんから聞いてないんだけど?」

 

 戸隠さん、これ以上話をややこしくしないでほしいお・・・(´;ω;`)

 

 

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「―――――はいはい、コントはもう終わりにしましょう。後は一年生組よね?遼、有希たちについて何か聞いてないかしら?」

 

 怜は流石に俺のことが不憫に思えてきたのか無理やり話を切り上げてくれた。

 

「あ、はい・・・なんか神前の連れだしのために早くに出ていったみたいです・・・。」

「国広君元気出してください。一日はまだ始まったばかりですよ。――――にしてもよかった、神前君にも友達はいたんですね・・・」

 

 会長は別のところで心配していた。あの中性的な男の生徒会役員、友達いないと疑われているのか・・・まあ無表情キャラだったし、人とあまり接触してなさそうだからなあ。

 

「というか、一年生の役員ってもう一人いなかった?その人はどうしたの?」

「ああ、林君なら今日は部活があるから来られないんだ。」

 

 ・・・その人も来れる日をセッティングしなかったの?と言いかけて、俺は止まった。俺はちらりと戸隠さんを見た。彼女は苦笑いをして、この件に首を挟もうとはしなかった。思ってたことをズバッと言っちゃう性格の彼女が、何も言いたがらないということは、おそらくその林という男、かなりめんどくさい奴なのかもしれない。

 

「まあしょうがないですよね~~~」

 

 俺は取り繕う言葉を並べた。アハハと笑って横を見ると、こちらに近づいてくる人影が3人見えた。あのちんまくて小うるさそうなシルエットたちは・・・

 

「お待たせしました~!」

「先輩方、おはようございます!」

「・・・どうもです。」

 

 柄谷の顔は晴れやかだった。よかった、先週末の大会のことはもう引きずっていないようだ。

 

「神前、久しぶりだな。お前私服もパーカーなのな。大好きかよ。」

 

 朱鳥は神前を見かけるとなれなれしく肩を組んだ。神前は若干顔が引くついた―――ように見えたが、気のせいかもしれない。

 

「・・・大好きだから着ているんですよ。あと暑苦しいから離れてくださいよ。」

「そんな暑苦しいもの着てるのにか?」

「ノースリーブだからいいんですよ。」

 

 そう言って神前は朱鳥の腕をよけた。真っ白な細腕、本当に中性的という言葉がよく似合うやつだなと思うのだった。

 

「じゃ、全員そろったことだしいこうか!」

 

 部長はあたりを見回したあと、先頭に立ってパークの入り口に向かって行った。なんかすごく長かった気がする。ようやく水着イベントが始まるんだ!と、すでに消費した体力と気力を根性で立ち直らせようとするのであった。

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