タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-2-5 「サングラスで眼光デバフを消すのは、本末転倒な気もするが・・・」

 

 どっと疲れた早朝のやり取りを経て、いろいろの手続きを終えたのち、いよいよプールに行けると俺らは意気込んでいた。男女分かれて更衣室へと向かい、野郎どもは各々水着に着替える。

 

「カトルさんの肌すっげー綺麗っすね。いつも手入れして―――――いや、手入れせざるを得ない、って感じっすか?」

「そうなんだよ朱鳥君・・・ちょっとでもさぼるとすぐに赤くなってしまうんだ。だから夏の体育の時はいつも大変でね・・・」

 

 そういってカトル先輩は、カバンの中から日焼け止めを取り出し、体全身につけ始めた。そのあと、パーカーを羽織った。準備を終えたのち、カトル先輩の視線が一点に固定されていたのが分かった。

 

「・・・ハム君はなんか、すごいね・・・」

 

 カトル先輩がハムのことを話題に出したので、俺と朱鳥はハムへと視線を向ける。なんかすごい、と表現したのは、適切と言えよう。なぜなら―――――

 

「ブーメランっ・・・パンツっ・・・俺には真似できないぜっ・・・!」

 

 そう、三角形で、布面積の最も少ないあの水着を恥じることなく穿いているのだ。朱鳥は大げさにリアクションを取っていた。

 

「でも、似合ってるんだよなあ。ハムって細マッチョだしな。リアルでブーメランパンツを履きこなすやつ初めて見たよ。」

「少年に見合うよう日々トレーニングしているからな。」

 

 そうしてハムはポージングを取った。彼の胸筋がぴくぴくと動き、ボディビルダーしかできなさそうなやつを軽くやってのけていた。

 

「鍛え上げた肉体を生かす時は果たしてくるのかねぇ、前から思っていたが、あの中河がお前に落ちるところは想像つかないんだがなあ。」

「フン、大事を成すためには自分が動かなければな。振り向かせるまで頑張るさ。」

 

 やだ、ちょっとかっこいい・・・なんでこんないい男なのに彼女が今までいなかったんだ?

 

「ま、色白の先輩やブーメランパンツのハムがいるおかげで、俺らの普通さが際立つもんな、国広。」

 

 そういって朱鳥は俺に肩を組んできた。確かにこいつの水着は普通だが、格闘技でなまじいい結果出してるだけあって、こいつもしっかりムキムキなんだよな・・・

 

「俺をダシにするんじゃあねえぜ?この中で一番平凡なのは俺―――――いやまて、神前はどうした?あいつどこ行った?」

「言われてみればいねえなあ。―――――あれ?どこまで一緒にいたっけ?」

「確か一緒に更衣室には入ったぞ。そのはずなんだが・・・」

 

 男三人はあたりをぐるぐる見回した。確かに奴はいない。――――え?実は女説やっぱり当たってた?そんな漫画みたいなことあるか???

 

「―――――何バカみたいなことしているんですか、先輩方。」

 

 声のする方に体を向けると、そこにはパーカーを羽織った神前が立っていた。こいつ、いつの間に・・・

 

「や、お前の姿が見えなかったからてっきり実は女子でした的なやつかと・・・パーカー来て乳首も隠してるし・・・」

「――――先輩、あのですね、これはラッシュガードといって、水にぬれても大丈夫なやつなんです。いくら何でも世間を知らなさすぎですよ。よく周りを見てください。むしろ上半身裸の人は少数派でしょう?みんな女性になってしまいますよ。」

 

 神前は鼻で笑って、大きく伸びをした。そうして、ロッカーを開けて、中身をごそごそとまさぐった後、ロッカーを閉じた。そうしてパーカーのポケットに手を突っ込んで、先に更衣室を出ていった。俺は言われた通り周りを見わたすと、確かに上半身裸はあまりいなかった。なぜ気づかなかったんだ。

 

「・・・なるほど、じゃあカトル先輩も実は女だったわけか・・・」

「さすがにそれはないぜ。俺、しっかりカトル先輩の着替えの時ムスコを確認したぜ!」

「――――朱鳥君、今のは聞かなかったことにしますからね。」

「す、すみませ~ん(笑)」

 

 こうして馬鹿なやり取りをしながら、残された男四人もプールサイドへ向かっていくのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 女子の着替えを待っている間、俺と朱鳥は周囲の女性を遠巻きに眺めていた。なお、カトル先輩はベンチに座っていて、ハムは何も考えず近くのプールで泳いでいた。

 

「あのポニテ女子の乳でかくね?」

「うむ。」

「しかも結構かわいくね?細身なのにあの乳は反則だと思わねえか?」

「うむ。」

「でもまあ、萩原のほうがでかくね?」

「うむ・・・・・・え?何?」

「お前・・・何にも考えてなかった口か?」

「うむ・・・」

 

 実際にプールサイドに立つと、ちょっと緊張してきてしまっているのだ。そりゃ、陰キャ男子にはぶっちゃけ縁のない場所だと思っていたし、なにより女子がいっぱいいるっていうのも緊張を加速させる。話し慣れてるからセーフだろと思っていたが、ここにきて気が引けてしまっているのだ。ああ、こんなことなら伊藤を連れてくればよかったかもしれない。あまった券をさっさとあいつにあげてしまえばよかったか?もしかして、俺が知らなかっただけで、もうルート分岐に入っているのか?

 

「―――――あんたら仁王立ちして何してんの?」

「おう萩原、もう着替え終わ―――――」

 

 俺がぼーっとしている間に、どうやら静乃が来ていたらしい。俺は遅れて振り向いた。そして、隣の朱鳥が固まっている理由がわかった。静乃の水着は上下黒のビキニ。しかもサングラスを胸元の留め金のところにかけており、そのクソデカバストにしっかりと視線誘導もさせている。さらに、やつは腕組みもしているもんだから、腕にしっかりと乗っている。ドスケベすぎんだろ・・・想定以上のものをお出しされたのだ、朱鳥が固まるのもわかる。――――前々から思っていたが、学校では目立たないようにふるまっておきながら、外では強気な姿勢を取るよな。昔からこうだったっけか・・・?

 一方刹那の方は白と青を使った鮮やかなビキニ。静乃よりほんの少し布面積が少ないが、スレンダーなスタイルのおかげで、エロさよりもきれいさが勝っている。なお、いつものおさげは下で組まれている。水に濡れたらへたっちゃうもんな。そりゃ下で組むわな。

 

「そこの男子二人、まじまじと見てくるあたり、やっぱり気持ち悪いなー」

 

 静乃に指摘されて、二人はハッとした。

 

「み、みてねーし。なあ朱鳥?」

「おうよ。俺らはアンタら二人の後ろにいる女性客の乳を見ていたもんな。なあ国広?」

「うむ。」

「女の子はね、そういう視線には敏感なんだよ。ねえ刹那?」

「そうですね、でも、その視線はほとんど静乃の胸に向けられていましたね。やっぱりすごいなあ。」

「―――――てへぺろ☆」

「あと、苦し紛れの言い訳もクッソキモイから、注意した方がいいよ。いや、そんなことに気を付けられるなら今ごろ・・・っと、ごめんごめん、これ以上は誹謗中傷になっちゃうからやめておくね。」

「おいちょっと待て、最後の一言絶対いらないだろ!」

 

 俺がプンプンしていたとき、プールサイドからハムが上がってきたのがわかった。察し良すぎだろ。引き締まった体に水が滴り、ブーメランパンツがてかる。濡れた髪を手でかきあげる姿も様になっていた。客観的に見てもハムはハンサムな方だから、この体躯、しぐさにより、周囲の女性客の目を奪っていた。

 

「少年!今日の君は本当に素敵だ。素敵すぎて直視できない。」

「・・・ほめてくれてうれしいですけど・・・今のあなたも十分目に毒というか体といい水着といい・・・ねえ静乃?」

「ぼくに振らないでよ・・・」

 

 静乃はたまらず目をそらしていた。

 

「少年のために体づくりしているからな。」

「だってさ刹那。」

「いや、振らなくてもわかりますから・・・」

 

 静乃は呆れている刹那を見てにやにやしながら

 

「え?だってこの前『細マッチョってやっぱり最高ですよね!』って言ってたじゃん。」

「言ってませんよ!ねつ造しないでください!」

「よかったねハム、努力が実って。ちょっと二人で遊んで来たら?」

 

 なんかやたらグイグイ来るね、今日の静乃。こんなに積極的にあいつらをくっつけようとしてたっけ?むしろ刹那を男の魔の手から守ろうとするタイプじゃないっけか。

 

「そうか!ではゆくぞ少年!」

 

 ハムは嬉々として刹那の手を取り、早々とこの場から去って行った。刹那はそれを振り切る間もなく連れてかれて行った。

 

「・・・萩原って刹那とハムをくっつけようとしてるの?」

 

 不審に思った朱鳥は静乃にそう聞いた。なるほど、変に思ったのは俺だけじゃなかったみたいだ。

 

「いやなに、ぼくと刹那が一緒にいると、ほぼ間違いなく刹那目当ての下心丸出しの輩がきそうじゃない?そうしたらさ、ぼくも巻き込まれるじゃない?それってすっごく面倒くさいことにならない?」

 

 いや、輩が来るのはどちらかといえば、高校生に見えないドスケベボディの静乃のほうに行くんじゃないのかな、なんてことを思ったが、言わなかった。これ以上話がこじれるのは勘弁だ。

 

「じゃ、ぼくは近くのチェアに座ってのんびりするね。」

 

 そういって静乃は胸元に下げていたサングラスをかけ、俺たちの横を通り過ぎて行った。

 

「自分の平穏のためには友をも売るのか・・・萩原、とんでもない女だぜ・・・」

「でも、サングラスで眼光デバフを消すのは、本末転倒な気もするが・・・」

 

 朱鳥は、その俺のつぶやきに、大きく頷くのであった。

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