タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
ハムは刹那を連れさり、静乃は一人でどこかにいってしまい、俺と朱鳥は取り残されてしまった。てか、みんなで遊びに来た体だよな?こんなにばらばらに行動しちゃっていいものなのか?もっと集まってキャッキャウフフするものだと俺はてっきり・・・
「・・・みんなで遊びに行くのって、こんな感じだっけ?」
「国広、気持ちはわかるぜ。というか、完全に忘れていたが、神前の野郎もどこに行ったんだよ。あいつも単独行動組かよ。」
「・・・確かに。そういやまったく気にしてなかった。」
そうしてあたりを見渡したところ、パーカー姿の男を発見した。ただ、その隣には小柄な水着少女が二人ほどいた。その水着少女たちは、こちらに気づくと、とてとてと駆け寄ってきたのだった。
「兄さん〜!」
「先輩方、お待たせしました~」
そこには有希ともう一人、柄谷がいた。神前は多少うんざりしながら、彼女らの後ろをついてきた。有希の水着はショーパンのデニム、上はストライプの可愛らしい水着。一方柄谷はビキニだったのだが、下はフリルのついたスカートっぽい形、水玉模様の可愛らしい水着。当然のごとく、双丘はなかった。柄谷は自分の水着姿が恥ずかしいのか、有希の後ろに隠れ気味だった。なので、実質縦3列にこいつらは並んでいた。列車かな?
「ねえねえどう思う?なかなかいい感じじゃない?」
有希は俺を覗きあげるように顔を向けた。手は後ろに組んで、上体は少し下げて――――
「まあいいんじゃないかな。似合ってるぞ。可愛いぞ。うむ。」
「だってさ!よかったね栞ちゃん!」
「え、ええ!?私の話だったんですか!?」
あたふたして縮こまる柄谷はさらに可愛さを重ねていた。
「いやまあ――――うん、似合ってるよ。可愛いと思う。」
可愛いかそうでないかと問われれば、間違いなく可愛い。ただ、なんだろう。あいつが可愛いと認めるのに、多少の抵抗があった。有希のことはためらいなく思えるのに・・・
「多少間があったけど・・・まあいいよ!ところで・・・刹那さんたちは?」
キョロキョロと有希は周囲を見回した。
「中河はハムに連れてかれてここにはいないぜ。」
「静乃は一人でどっか行ったわ。」
「あーなんか想像つきました。にしても、大丈夫かなあ。」
有希は腕組みして唸っていた。こいつもこいつで思うところがあるのな。
「ん?刹那が?確かにハムのことを毛嫌いしてるから、今かなり辛い状況にあるとは思うが・・・」
「いや、そっちじゃなくて。静乃さんの方。だって、静乃さんってサングラス持ってきてたじゃん?それであの目を隠したとなると・・・静乃さんの抱えるバッドポイントがなくなるわけじゃん?そうなるとさ、人寄せ付けない理由がなくなると思うのさ。」
「そうですね・・・静乃さんは・・・こういうのも失礼なのはわかっているのですが・・・あの目以外はパーフェクトですもん。スタイルも・・・ううっ・・・」
神前以外のメンツは全員大きく頷いた。あいつへの評価は、やはりみんな同じなんだ。男子の目から見ても女子の目から見ても・・・。―――――あいつ、今の印象が強烈だから忘れてたが、目が濁る前はクラスの中心的存在だったりしたっけ。小学生の頃の話だから忘れてたけど―――――ん?じゃあ、いつから濁り始めたんだ?
なんて思考をぶった切ったのは、朱鳥の一声によるものであった。
「あ、榊に戸隠、宮永に会長さんじゃねえか!おーいこっちだぞ!」
俺は朱鳥の向く方向に目線を向けると、そこには水着姿の会長達がいた。男女を問わず視線を奪っているあたり、さすが会長とでも言うべきか。(それとも、部長と怜もいることで相乗効果を生み出しているのだろうか)
「あら、もう皆さんいらしてたんですね。」
にこやかな笑みを浮かべる会長はなかなかにすごい格好をしていた。長い黒髪は2つおさげにされ、静乃と同じ黒いビキニだが、胸元で布が交差する形という攻めの姿勢。美しすぎる。部長の水着は淡いピンクの水玉のセパレートタイプの水着であり、完全に遊びまくることを意識していた。また、怜はビキニの上からカトル先輩が来ていたようなノースリーブのパーカータイプのものを着ていた。どんだけパーカーが好きなのさ。そして戸隠さんは・・・真っ白のレオタードタイプの水着で・・・いや、うん、でかいわ。直視できねえ。
「ねえ遼君、水着どう思う?」
「どうって、その・・・ええと・・・」
戸隠さんは前かがみになり、上目遣いにこちらを見てきた。すきまからちらりと除く谷間がドスケベすぎる。ムスコに悪いよ~~~~~!!!!
「ふふ、顔真っ赤にしちゃって可愛いんだから~」
「国広、お前のことがうらやましいぜ。」
「さ、漫才はここまでとして、とりあえず刹那ちゃんたちと合流しよっか。彼女たちどこ行ったの?」
「静乃はどっか行って、刹那はハムに連れてかれました。カトル先輩はそこのベンチに座ってます。」
宮永部長は軽く辺りを見回したが、いないことがわかると「刹那ちゃんはともかく、静乃ちゃんは大丈夫かなあ」と声を漏らした。ここまで考えることが同じだと、不安もわいてくる。
・・・これは探しに行った方がいい?
・・・いや、それはおせっかいだろうか。あいつは望んで1人になりにいったんだ。
・・・でもそれは面倒ごとを避けるためだよな?俺と合流することと、その辺の男に絡まれるの、どっちが面倒なんだろうか?
「――――やることはひとつなんじゃないかしら?」
いつのまにか、怜が俺の近くに寄っていた。ハッとして怜をみると、彼女は呆れた眼差しをこちらに向けていた。そして、周りには俺らしかいなかった。知らない間に、熟考していたようだ。
「って、他の奴らは?」
「はぁ?何言ってるの?そこで遊んでいるじゃない。」
怜が指差す方向に、プールに入って遊んでいる有希、柄谷、戸隠さん、そして朱鳥に部長。それを眺めるように会長とカトル先輩、神前がプールサイド近くの椅子に座っていた。
「手を顎に当ててかれこれ5分近く経ってるわね。声かけても反応ないから、私が残って他の人には先に行っててもらったのよ。」
「そんなにか・・・」
「よほど静乃のことが気になるのね。」
「え?」
「だって、静乃の話題になってからずっと黙りこくっているじゃない。」
「・・・いや、そんなことは―――――」
「あるでしょう。なんで否定するの?」
――――怜の指摘はもっともだ。なんで俺は今否定しようとした?認めるのをどうしてためらった?
「悩むくらいなら行ってみたら?いかないで悶々とするくらいなら、行って蔑まれた方が気持ちいいんじゃないの?」
クスクスと怜はこちらを見て笑ってきた。
「いや、気持ち良くはねえよ。」
まあでも、怜の言うことには一部納得できる。ここで行かないことを選んだら、そのことが心残りとなって楽しむに楽しめなくなりそうだ。せっかくの休日なんだ。楽しみたいさ。
よし、と心に決めると、俺は静乃が消えていった方角に足を向けた。
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静乃を探しに歩いたはいいが、いかんせん人が多く、なかなか見つからん。足も自然とはやく動き、じれったく感じはじめた。そんなことを思いながら辺りを歩いていると、ふと聞き慣れた声が聞こえてきた気がして、そちらに目を向けると、屈託のない笑みを浮かべながらプール内でパシャパシャとはしゃいでいるハムがいて、それをプールサイドなら眺め、苦笑いを浮かべる刹那がいた。―――――刹那、まんざらでもないのな・・・
刹那も可愛いので、人が寄ってくるかと思ったら、そんなことはなかった。でも、遠巻きに見ている人はどうやら多いらしい。耳を澄ましてみると、「あの娘レベル高いなあ・・・男持ちじゃなければなあ…畜生。」「男の方もいい体してるじゃないか♂」などと聞こえてきた。なるほど、ハムの魔除けが有効に働いているのな。遠巻きに見ざるをえない―――――
――――ん?まて、明らかに刹那ではない方向に目を向け――――しかも結構な人数がそちらを見て――――そっちは休憩スペース――――あ、あれは…
「静乃じゃないか・・・」
間違いない。椅子に座り足を組み、トロピカル感あふれるジュースを飲みつつだらけている静乃がいた。サングラスをかけているから目で判別はできないが、あのサングラスにはそもそも見覚えあるし、髪型も水着も同じだし・・・。確かに、眼光デバフさえなければ見とれてしまう美しさだ。でも、どうしてほかの男どもは遠くからしか見ないのだろう。今時ナンパなんて流行らないのか?いやいや、こんなDQNいっぱいいるエリアでそんなことないわけがない。
なんてことを思うと、ガタイのいいモリモリマッチョマンが静乃の方へ歩いて行った。ほら、言わんこっちゃない。――――って、そんなこと言っている場合ではない。止めないと―――――
―――――止めないと?
もし、静乃はこういうのを望んでいたとしたら?
みんなといるとナンパされないから1人になりたかったとしたら?
―――――もしそうなら、それは――――
俺は言葉にできない不快感を飲み込み、マッチョマンを観察していた。彼は静乃に話しかけていたが、すぐ帰って行った。彼は去り際に「んだよあいつ・・・」と漏らしていた。
「ほら、どうせこうなると思ってたんだよ。」
「これで何人目だ?」
「お前で4人目だよ。全く、なんでガードの硬さだ。」
彼は友達と思しき人のところに向かうと、そう話していた。・・・やっぱりナンパしてくる人は多かったんだな。想像は、悪い意味で当たっていたわけだ。
「って、いかん。俺も行かなきゃ。なんのためにここに来たんだよ。」
俺は静乃の方へ近寄った。後ろの方で「お?5人目がいったぞ?」と声が聞こえてきたが、無視した。静乃はこちらを見向きもしなかったが、近づいてくる人がいままでのような輩ではないと気付いたのか、こちらの方に顔を向けた。
「・・・・どうしてここに?」
「うーん、なんか面倒なことに巻き込まれてないかどうかと心配になってさ。きちゃったゾ。」
てへ、と渾身のスマイルを送ったが、勿論それを見て静乃は嫌そうな顔を向けた。サングラスで目は覆われていたが、ゴミを見る目つきであるのは確かだろう。そうなることがわかっていながらやってしまうのは癖であろうか。
静乃はため息をついてテーブル上のジュースを手にとったが、残り少ししかないとわかると、グイッと飲み干した。そして、再びため息をついてこちらを向いた。
「・・・まあ確かに、のんびりするはずがいろんな輩が声をかけてきて面倒ではあったな。」
「俺と絡まれるのと、その辺の男に言い寄られるのと、どっちがめんどくさいって思うかなあって考えたら、後者かなって。その格好だとナンパ凄そうだったし。」
「へえ、ぼくの姿を見てそう思ったんだ。それは客観的な見解?それとも個人的な感想?」
「その両方かな。せっかく静乃も来たんだったら、少しでも楽しんでほしいなと思ってさ。面倒ごとが避けられないのなら、よりましな方がいいかなって。」
「――――こういう時、遼はさらっと言うよね。まあ、一人でいた"おかげ"でわかってしまったことあったし。ここに1人でいてもより面倒になることがわかったから合流するよ。」
静乃は椅子から立ち上がり、空のグラスをカウンターに戻した。そしてこちらに戻ってくると、サングラスを外してビキニの中心の紐に吊り下げた。
「じゃ、行こっか。」
静乃はそう言うと俺の腕を自分の胸に引き寄せ歩き始め――――――――ほわああああ!?!?ふにふにしたものが当たっとるやんけ!?
「ちょ、ちょっと―――――」
「周りうざいからいまは"そういう体"でよろしくね。」
「で、でもだからと言ってそこまでく、くっつかなくても」
「あててんのよ。たかだかこれくらいであたふたしないで。童貞乙。」
「ど、どどど、童貞ちゃうわ!」
「そうだね、童貞じゃないで。だってぼくたちはヤリまくってる中だもんね。」
「ファッ!?」
「だから、そういう体って言ったじゃん。いい加減わかって。呆れるよまったく・・・」
そんなやりとりをしていたが、できる限り平静を装い、この場をあとにした。
まさか静乃がこんな大胆なことを・・・でも、確かに効果覿面であったと思う。テンパっておちつかなかったが、まわりの取り巻きから「男いたのかよ」「あんなフツメンよりも俺のがいいだろ・・・」「きっとイケチンなんだろうなあ・・・」と聞こえてきたのがわかった。いや、本人に聞こえないようにぼやいてくれよ、悲しくなるだろ、俺が。また、「サングラス外すと意外と・・・」「あんなに生気のない目だとチンポも萎え萎えだわ。」「ダウナー系美女、最高!」という声も聞こえてきた。俺に聞こえるってことは静乃にも聞こえてるよなあ・・・あまりいい思いはしないよ。さっさと合流してしまおう。
俺と静乃は会長達の元へ急いだ。勿論、静乃に腕を組まれたまま。
―――――ドキドキしてるの、知られたくないなあと思ったが、無駄だろう。俺の心臓の拍動は、きっと捉えられているに違いない。せめて静乃も、何かしらを感じ取ってくれていればいいのだが・・・。