タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-2-8 「―――――良くも悪くも、こいつは変わらないんだなって思ったよ・・・」

 〜怜視点〜

 

 みんなとプールを楽しんだあと、元気があまり残っていなかったカトルさん、月、静乃と私はマッサージルームにむかった。マッサージルームは男女別になっていたため、静乃と二人で奥へ進んでいった。プールは確かに楽しかったのだが、そもそも使命を背負ってこの世界に来ているのだから、身体と精神への負荷は、自分が想像している以上にかかっている。日中は遼のサポート、家に帰ると竜崎さんや組織への定期報告、事務処理・・・。静乃や刹那と一緒に遊びに行ってリフレッシュすることもあるけれど、半分彼女らの本音を聞き出すことも目的になっているから、純粋な意味で楽しめているかと言われると・・・。だからこそ、マッサージルームがあると聞いて嬉しかった。マッサージを受けている間だけは、任務のことを忘れていられるから・・・忘れちゃだめだってのは、よくわかっているけれど。現に私だけ受けるわけじゃなく、隣に静乃もいるわけだから、結局また半分仕事なんだけどね・・・。私の使命は、遼に恋人を作らせることと、()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして――――――いや、これはまだまだ先の話だからいまはいいや。ともあれ、今日、私や会長たちがプールで遊んでいる最中、静乃が一人でいるところに遼を回収に向かわせた。そうしてしばらくたった後、二人並んで戻ってきていた。静乃の顔は無表情だったが、遼は若干照れていたことから、おそらく何かしらのイベントがあったに違いない。好感度の変動が起こったかもしれない。だからこそ、ここはチャンスだ。

 私たちは二人してマッサージチェアに座った。旧世代のマッサージチェアとはいえ、なかなか気持ちよかったのですぐにとろけてしまった。ハッとしてちらりと静乃に視線をやると、目を瞑って恍惚な表情をみせていたのがわかった。その姿はあまりに美しく、このとき改めて彼女の隠れている魅力を認識した。

 

「ほんと、目を閉じていれば綺麗よね・・・」

「・・・それ、よく言われるよ。」

「ああいえ、ごめんなさい。決して目を開けるとダメだとかそんなんじゃないんだけど・・・。―――――そういえばちゃんと聞いたことなかったけど、その目って昔からなのかしら?」

「――――いや、小学生の頃のぼくは光り輝いていたさ。けれど、いろいろあってさ――――」

「てことは、中学に入ったころにはもうすでにってことなのね・・・」

「そうだねぇ・・・。いやーでも、この目のおかげで面倒ごとを回避できたりするから、結果的にはプラスかも。ま、あえて自分をよく見せたいときはサングラスで目を隠したりするんだけどね。」

「確かに、刹那と一緒に遊びに行った時も、サングラスかけていたわね・・・。」

「メイクやファッションにこだわる理由って、極論、自分を高めたいから、というのがあるじゃない?ぼくは自分の長所も短所もわかっている。いかに短所を消して長所を伸ばすか、ということは、結構中学時代に気遣ったなあ。――――いっておくけど、別にナルシストなわけじゃないからね?」

「わかってるわかってる。自己認識が進んでいるってことでしょ?――――にしても、その目、治したいとかは思わなかったの?」

「もちろん思ったさ。けれど、何をやっても駄目だった。精神的な問題なんだろう。原因が全く分からない。だから、無理に直そうとするのではなく、ぼくはこの目と付き合っていくことを選んだのさ。」

「――――ねえ、前から気になっていたのだけれど、一人称が『ぼく』なのは、何かの影響?」

 

 私がその質問を投げかけると、静乃はうーんとうなり、それからしばらく何も言わなかった。

 

「まあ、そんなところかな。」

 

 それから会話はストップした。ここまでそれなりに饒舌だったのに、打って変わって黙りこくってしまった。これはきっと、気軽に踏み込んでいいところではないのだろう。それこそ、彼女の内側にしっかりと入り込める人――――刹那くらいしかできないんじゃなかろうか。遼がその役回りをできるようになれば、きっと―――――

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

  

 マッサージ終盤、眠気が私を襲い始めてしばらくたっていた頃、

 

「・・・楽しかった?」

 

 ずっとだんまりだった静乃はふと私にそんなことを聞いてきた。

 

「・・・楽しかったわ。静乃は?」

「ぼくも楽しかったよ。普段のぼくなら、こんなとこ絶対来ないだろうしね。いい経験だった。」

 

 その声色は、なんだか複雑に気持ちがまあ座っているように感じた。

 

「――――街中で声をかけられることはこれまでもあった。だから、今日も多少はあるだろうと思っていた。けれど、けれど、目論見は外れて、望んでもいない奴らがわらわらと寄ってきてしまった。ちょっと自己認識を改めないとなって思ったよ。―――――でね、サングラスを取るとさ、一気に周りの熱が冷めていくのが分かったわけ。流石にここまで露骨だと、嫌な気持ちにもなるさ。けれど、一人のおかしなやつは、自分の見た目で態度を変えず、接してくれた。―――――良くも悪くも、こいつは変わらないんだなって思ったよ・・・」

 

 それは長い独り言のようだった。私はかける言葉が思いつかなくて、しばらく考えていた。そして思いついて話しかけたけど、返事はなかった。ちょうどマッサージも終わったから、立ち上がって彼女の顔をのぞき込むと、目を閉じ、すやすやと寝息を立てていたのがわかった。私はみんなが迎えにくるまで寝かせてあげようと思い、彼女を起こさなかった。

 

「遼、貴方は貴方でいることが、彼女の隠れている心を開くカギとなるのでしょうね・・・。」

 

 遼を静乃のもとに向かわせたのはいい選択だと安堵する一方、若干の違和感もくすぶっていた。静乃には何があったのか、男性の一人称としてよく使われる『ぼく』を使う理由はなにか・・・。もし、その謎を解き明かすことが、遼と静乃の距離を近づけることにつながるのなら、私も尽力しなければならないなと、思うのだった。

 

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