タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-3-3 「そこから恋が始まったら笑えないんですけどー」

 札駅付近で出会うのはまあわかる。戸隠さんの家は札駅付近だから。けれど、ここは違うだろ。コーチャンフォー行かずとも、札駅付近の紀伊国屋行くだろ、普通。ということは・・・

 

「――――なーんか変なこと考えてるでしょ?」

「へ?いやまさか・・・」

 

 告白券が効いているからストーカー気質になっているのでは?と思ってはいたが、とてもじゃないが言えるわけない。

 

「哲学書、しかもハードカバーの本なんてのは、でっかい書店じゃなきゃ売ってないんだよ。でね?哲学書の中でもメジャー、マイナーがあるから、お目当ての本がでっかい書店の中にも、なかったりするんだよね。マニアックな本も置いてあって、かつそんなに遠くないところを――――って、頑張って探したら、ここがみつかったってわけ。」

「なるほど・・・」

 

 そういわれるとそうかも・・・。学校帰り、一回だけ叔父さんのおつかいを紀伊国屋で済ませようとしたことがある。だけど、指定された本のうち、1冊だけ在庫がなかった。やむをえずコーチャンフォーまで来ると、そこには複数冊置いてあったため、事なきを得たのだ。

 

「とりあえず目的の本目当てでここまで来たのはわかった。でもわからないんだよな、そんなニッチな本を探してたの?」

「前の学校では1年で倫理をやっててさ、その影響で哲学書をちょっと読むようになったんだよね。だからこうして、お目当ての哲学者の本を探しに来てるってわけ。」

 

 戸隠さんはそう言った後、棚を物色し始めた。そうして複数本手に取ると、わきに抱えた。

 

「にしても、遼君も哲学書読むなんて運命感じちゃうなー」

 

 彼女は目をキラキラとさせて、ぱあっと笑顔を見せた。うん、可愛い。ただ、俺は今から君をがっかりさせないといけない。

 

「ごめん、これは俺のじゃないんだ、、、」

 

 そうして、俺はここまで来たいきさつを説明した。俺の趣味ではなく叔父さんの仕事道具と知っても、彼女は別にがっかりした顔は見せなかった。

 

「てことは、これから好きになる可能性があるってことじゃん!ふっふっふ、おすすめの哲学者を教えてあげるよ・・・」

 

 戸隠さんはフンスと得意げに語るのだった。なんてポジティブシンキング、そして貪欲な布教活動。流石です。とことん、自分の好きを周りに広げていきたいんだな。

 

「まあその話はいったん置いておいて、遼君の買い物を先に済ませよっか。まだお使いあるんでしょ?」

「あ、ああ、もち。ちょい待ち、あとは・・・」

 

 俺はメモを取り出すと、戸隠さんは隣に並んでメモをのぞき込んできた。ふわりと柑橘系の香りが漂ってきた。香水なのか、シャンプーの香りなのか、俺にはわからなかった。有希はその辺あんまりやらないから俺には判別するための基準はない。情けないことに。にしても、いいにほひ―――――

 

「――――これは文庫本だね。だからこっちにはなさそうかな。ついてきて!」

 

 そういうと彼女は俺の手を取ってずんずん進んでいった。告白券、効いてるか効いていないかずっとわからなかったけど、本当は効いていないんじゃないか?こんなボディタッチ、許されんでしょ、と思ったが、それ以上に、自分の手を介して感じる彼女の体温にドギマギし、懸念はどこかにすっ飛んで行ってしまったのだった。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 お目当ての本をすべて手に入れて一緒に会計を済ませた後、戸隠さんは「じゃあおすすめの哲学者を教えてあげるよ~」といってきた。あの話は冗談じゃなかったのか、と思ったが、野暮なので口にしなかった。だけれど腹は減ったので、何か口にしたかった。だから、「じゃあ飯を食いながらでも聞こうかな。腹減ったし。」と俺は提案するのだった。

 

「戸隠さんは何を食べたい?」

「うーん、とりあえず今の格好で入ってもあまり浮かないお店がいいかなあ。」

 

 そして戸隠さんの全身を見やる。ごつめの厚底ブーツにミニスカート、オフショルダーかつゴシック系のトップス、モノトーンなカラーコーデ・・・とりあえず、駅前のみよしのは絶対にないと思ったのだった。その場でうなった後、こんな時こそグーグル先生に尋ねるべき!と思い立ち、俺はカバンをごそごそと漁ったが、スマホは見つからなかった。どうやら俺は、今の今までスマホを忘れて過ごしていたらしい。

 

「――――戸隠さん、ちょっと俺のスマホに電話かけてもらえない?」

「あれ、もしかして落とした?」

「その確認だね。誰か拾ってくれたらうれしいなって。」

「やだもー私と同じじゃん。そこから恋が始まったら笑えないんですけどー」

 

 戸隠さんはニヤニヤしながら俺にスマホを渡してきた。俺はアハハと苦笑いするのだった。これ、どんなリアクション取ればいいんだよ!からかっているだけなんだろうけどさあ!心臓に悪いお、、、。俺は戸隠さんからスマホを受け取って、自分のラインに電話をかけたのだった。十数コール後、電話がつながった。

 

『はいもしもし、国広遼のスマホです。桜子さんごめんなさい。兄さんスマホ忘れて出かけちゃってるみたいなんですよー』

「お、有希か、オレオレ、遼だよ。」

『え?兄さん?なんで戸隠さんのスマホから?――――え?もしかしてデート?』

 

 有希は俺が出たとわかると、声色を一気に変えたのだった。かなり戸惑いが混じっていたのがわかった。戸隠さんは大きめの声で「そうでーす!」と言ってきたので、俺は焦って彼女の肩をつかみ、距離を取らせたのだった。有希の声が周囲に漏れている・・・

 

「違う違う、たまたまコーチャンフォーで出くわしただけ。」

『いま桜子さん肯定したけど?』

「頼むよ有希、信じてくれよ。もしデートだったらさ、もっと気合入れて俺だっておしゃれするさ。見ただろ俺の今朝の様子を。」

『――――確かに、栞ちゃんが来てたのに、着替えた後も割とラフ目な格好だったし、デートの格好じゃなかったね。それに、いかに兄さんがスケベでクソオタクでも、一般的なデートで出かける場所くらい知ってるよね・・・じゃあ本当に偶然なんだ―――――偶然ある?』

「それは俺も思ってる。でもね、事実陳列罪ってあると思うんだ。お兄ちゃん傷ついちゃう。うるうる。」

『なにがうるうるだよ。そういうこと言われたくないなら、少しは身の振り方を意識したらいいよ。もう高2でしょ。』

「せ、正論は、時には人を傷つける・・・。まあいいや、なんにせよ、落としたわけじゃなさそうで安心した。じゃな~」

 

 俺は電話を切った。俺の耳に触れていたせいで若干ぬめっていたので、手のひらでぬぐってから戸隠さんにスマホを返した。彼女は「そんなの気にしなくていいのに~」と言いながら、カバンの中にスマホをしまった。

 

「で、ご飯どうしよっか?せっかくここまで交通費かけてきたし、この辺で美味しい店があるならいってみたいなあ。」

 

 くそ、地元民の意地を見せなければ・・・。俺は頭をフル回転させた。シャレオツなカフェ・・・ランチに最適な場所・・・

 

「―――――よし、俺に任せたまへ~!」

 

 俺はコーチャンフォーを戸隠さんとともに出ると、駅に一緒に向かうのだった。その間、戸隠さんから哲学のレクチャーを受けるのだった。別に頼んでいなかったが、彼女の”好き”が抑えられなかったのだろう。オタク特有の早口だったが、もちろんついてこれている。俺もオタクだからさ、、、。ひとまず、倫理は哲学者が心や人生観をどう”解釈”しているかが大切そうである、ということはわかった。オタクもそうだよな、解釈違いでよくケンカになるもんな。うんうん。

 そうこうしているうちに、最寄り駅に到着した。俺の目的はその裏側。駅の反対側のホームに出、少々歩いたのちに目的地にたどり着いた。

 

「あえて聞かなかったけど、ここは何のお店?」

「ここはこじゃれたハンバーグを出してくれる店だよ。」

「はえ~」

 

 ずいぶん前に休みの時に昼飯食うためにうろうろしていた時、偶然この店にたどり着いた。俺はラフな格好で入ったが、店内は思いのほか小奇麗で、若干俺が浮いてしまっていたのだった。で、幸い今日の俺は、家に柄谷が来ていたこともあり、(有希にはラフ目と指摘されてしまったが)比較的まともな格好をしてきている。ここに入っても問題はなかろう。

 

 

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 ご飯を食べ終わった後、戸隠さんを駅まで送っていった。と言っても、目と鼻の先にあるので大したことではないのだが。で、飯を食っている間にしていた話なんだが、どうやら戸隠さんは俺の叔父さんのファンらしかった。俺は叔父さんの小説を小さい頃に読み、難解でとても読めたものではないと放置したせいで全く知らなかったのだが、話によれば、小説は20世紀の哲学者の思想の流れを汲みつつ、現代の価値観にチューンナップされたものらしく、界隈では有名らしい。――――まあ、そこそこでかい一軒家に一人で住むくらいだし、金に困っているそぶりも見せなかったから、儲かっているんだろうな、とは思っていたけど。でだ、憧れ小説家が身近にいるとわかったから、「サイン欲しいな~!」とねだってきたわけだ。スマホは家だし、何なら締め切り近かったはずなので、すぐには渡せないかもよ、とだけ伝えた。戸隠さんは俺に向ける顔とは、別種の喜びを露わにしているように見えた。――――もしかして、これが彼女が心から喜んでいる顔であり、普段俺に見せる顔は別物なのではないか、と一瞬思ったのだった。最も、俺の気のせいだと思ったので、すぐに流したのだった。そして、彼女は俺の言葉を聞いた後、一瞬悩んで、そしてちょっと言葉に詰まりながら、「じゃあ、今ど――――の、月曜に会えないかな?その時にサインもらえたら嬉しいなって。。。ね、今日のお昼のお礼もしたいし、私がお父さんの付き添いでこっち来てた時によく行っていたお店を教えてあげるよ!遼君を見ている限り、行ったことなさそうだし!」といったのだった。彼女は最後まで喋った後、どこかばつの悪そうな顔をした。そんなにおどおどしなくてもいいのに、どうせ俺は暇だしさ。ただ飯食えるなら喜んでいくぜ!なので、「あ、マジ?じゃあ行こうか。」と二つ返事で了承したのだった。

 ――――もっとも、家に帰ってスマホを確認し、来ていた通知を見た際に、非常に申し訳なくなるのだったが・・・先約を優先することにした。そして俺はこの時は全く忘れていたのだった。戸隠さんが指定してきた次の月曜は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・

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