タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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3-3-7 「プレイヤーは我々だけで十分だ。」

 8/4(火)

 

 覚悟を決めて帰宅して、夜はこれまでの現状把握を行い、戸隠さんと明日以降どうかかわっていくかを思案していた。勿論、竜崎の助言を借りながらだ。怜は夜遅くに呼びつけるのもあれだし、竜崎が「自分一人で大丈夫。怜には私から連絡する。」と伝えたものだから、その言葉に乗っかることにした。でだ、一晩経って、朝何気なくスマホを見ると、LINEに通知が来ていた。その差出人が―――――

 

「―――――なんで?」

 

 記憶を失っているであろう、戸隠さんからなのだった。俺は十数秒思案した。

 

 ①告白券は、対象となる相手の名前を書いた後、24時間以内に自分のことを認知させる必要がある。

 ②今回の場合、国広君が戸隠桜子の名前を書いてから、ちょうど24時間たつ頃に、戸隠さんが俺を認知した。

 

 どちらが先かは、ずっとあやふやなままだった。となると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これまでの俺の気苦労は、すべて取り越し苦労だったのだと知り、大きなため息をついて、ベッドに横になった。

 ――――――ただ、だからといって、彼女のことを狙って接していくか、と言われると、そんな気には到底なれなかった。だってさ、昨日までは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としたんだぜ?これから好きになっていく、という何の保証もない気の持ちようだけで付き合うのは、彼女の好意を踏みにじりそうで、不誠実だと思ったんだ。

 ――――――とはいえ、俺が誰かと年内中に付き合わないと、俺もしくは俺の周囲が殺されてしまう。自称神を気取るこの一見ただの美少女フィギュアにしか見えない男にだ。義務感からではなく、心の底から人を好きになれるよう、俺も意識しないといけないな、と、告白券にまつわる事件を通じて、認識したのだった。

 俺はベッドから起き上がると、以前怜から渡された告白券をすべて取り出し、机の引き出しの奥底にしまった。何がサポートアイテムだ。こんなものを使おうとするのが間違いだったんだから。その行為を竜崎は止めなかった。というか、見向きもせず中空に浮かんでいるモニタをピポパと動かしていた。あれだけサポートアイテムのごり押しをしていたのに、そっけないんだな。告白券をしまった後は、戸隠さんのLINEに返事をして、再度眠りにつこうとした。が、そこで追加の連絡が静乃から来た。

 

「――――そうだ、明日だっけ、静乃と出かける約束したの。」

 

 自分本位な行動が、最悪な結果を招きかけた。だから、明日の遊びからは、自分を少しずつ変えて、接していこう。そう強く決意して、瞼を閉じた。

 

 

 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

「怜、この数日間でいろいろわかったことがある。もっとも、そのためにいったん憑依を解除したりしたがね・・・」

 

 本日の定期連絡は、怜の家で直接やることにした。国広君に万が一聞かれでもしたら、面倒な内容が入っているからだ。

 

「え?―――――憑依をいったんオフにすると、元の体への負荷が酷いと聞きます。だから、基本周りの人が代わりに元の世界でのやるべきことをやってくれていますよね?わざわざ竜崎さんが動かれるということは――――まさか―――」

「こちらの世界の言葉であえて言うなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 怜は「このおじさん、俗世に染まってきてるわね・・・」とこぼしたが、私は構わず続けた。

 

「二週間前、告白券を使用するために、我々の世界とこちらの世界を空間結合しただろう?それで、国広君が我々の世界に足を踏み入れた時、いわばルート分岐が起こったんだ。国広遼という主人公が世界からいなくなったんだ。物語は、彼のいないルートを描く。その影響は、次元震という形で現れた。」

「―――――空間結合により、遼は現代→こちらの世界→現代の順に移動したから、少なくとも、一回目の移動では、ルート分岐は二回起こっていた。私は遼に先導して歩いていたから、そのルート分岐の瞬間に立ち会ってしまった。まあ、検証目的もありましたからね。これにより、次元震を回避するには、遼を先導させればよいということもわかったので、よしとしてはいますが・・・」

 

 怜は、当時のことを思い出しているのか、非常に渋い顔をしていた。私はその時憑依していたから、その影響は受けていない。憑依体に痛覚はないからだ。

 

「でだ、戸隠桜子と接触後、秋葉原観光を経て再度空間結合による移動をしただろう?その時は覚えているよな?」

「ええ。こちらの世界に戻っても、私は次元震を頭痛という形で認知しなかった。遼がいない世界にルート分岐したはずなのに・・・けれどそれも結論が付いていますよね?」

 

 怜はまどろっこしそうな声色で念押ししてきた。ことは順序良く話したい、という私の性格をまだ理解していないようだね・・・

 

「ああ。国広君が戸隠桜子と関係を持った時点で、ルートが分岐したんだ。分岐後のルートが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、次元震を認知できなかったんだ。あの時点で、いわば桜子ルートに入った。―――――念のため、その日の晩に憑依解除して確認したが、次元震が起きた(ルート分岐した)タイミングは、彼と戸隠さんが出会った時間と大体一致した。」

「ルート分岐を起こす条件は、我々のような外界の人間が、直接遼というプレイヤーを動かすか、もしくは、遼自身が動くか、ということですね?」

「そうだ。とはいえ、遼自身の行動で、本当にルートが分岐するかは、まだ仮説段階だった。戸隠桜子と接点を持ったとはいえ、そのきっかけは告白券使用によるものだったからだ。外界のモノ――――我々の関与の影響と言うこともできなくもないからな。けれど、今日我々の世界の駐在員から信じがたい報告を受けた。憑依解除して直接確認して分かった。今日の午前中に、ルート分岐前の世界―――――”バッドエンドのルート”に戻ってしまっていたんだ。」

 

 怜はその報告を神妙な顔つきで受け止めていた。そして手を口に当て、数秒思案した。

 

「これで確定ですね。午前中、我々は遼に何もしていない。なのに、ルートが戻ってしまっていた。つまり、我々が直接介入をせずとも、遼自身の行動や、気持ちの在り方で、ルートは分岐する。」

「そうだ。途中までは桜子ENDが見えていた。しかし、告白券にまつわる一連の事件のせいで、自らフラグを折ってしまった。だから、戻ってしまったんだろう。最も、とりあえず仮で桜子ENDとしているが、本当に彼女と付き合うまで行くかどうかは、わからないがね。あくまでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということしかわからない。」

「じゃあ、桜子がシロとはまだ断定できないわけですね・・・。」

 

 怜はがっくりと肩を落としていた。残念がる気持ちもわかる。私もそうだ。

 

「うむ。我々も相手を絞らず、引き続きサポートしていこう。」

「承知しました。―――――で、報告はこれで終了ですか?」

「いや、これは一つ目だ。問題はもう一つある。」

「と言いますと?」

「私が憑依解除をしたのは、二週間前の告白券を使用した日、そして今日だ。目的はルート分岐の有無の直接の確認。で、一回目の憑依解除日は、大規模なルート分岐が起こっていないかの確認だけにとどめていた。だから、今日まで気づくのが遅れた。今日は、遼の行動によるルート分岐が起こっていないか、過去の遼の行動と照らし合わせ、詳しく確認してみた――――――――するとだ、遼やその周囲の女性も特に行動せず、我々も特に介入していない時間帯、ちょうど怜が水着を買いに行って、蘇芳結衣の家に集まっていたころだろうか、ギリギリ次元震発生に至らないほどの、ルート分岐が起こっていたことが分かった。」

「――――――おかしい。遼自身の行動か、我々の行動でなくて、どうやってルートを大きく変えることが――――――まさか?」

「気づいたようだね。―――――――――プレイヤーは我々だけで十分だ。変数が多いと管理できないからね。だから怜、これから君に、我々の世界から違法に降りてきた人物―――――ロックの所在の確認及び捕獲を命じる。」

 

 

 第3部 完

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