タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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4-1-2 「むほほw美人すぎワロタw」

8/6(木)

 

昨日はしっかりマッサージしてもらったおかげか、とっても寝覚めがよく、とっても活動的な気持ちになってきたので、俺は普段やらないゲームをがっつりやろうと思い立った。そうだ、叔父さんの部屋にあるスーファミをやろう。小学生のころ、たしかやらせてもらったけど難しすぎてできなかったやつとかあったんだよな。時刻を見ると、まだ朝の六時。竜崎はまだハウスの中から出てきていないようだった。そりゃそうだろう。カーテンを開けると、朝日が差し込んできた。―――――そうだ!まず散歩すっぞ!俺はジャージに着替え、外に出た。

うん、いい天気よね~~!なんか、いつも歩いている道が、こんなに輝いて見えるなんて!うん、ちょっと天神山緑地まで歩いてみよっかな~~!こうして、俺は変なテンションのまま、最寄り駅の近くにある大き目な緑地公園に足を向けた。

 

 

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緑地公園はウォーキングにいそしむ人が多かった。気持ちはよくわかる。今の俺ならよくわかるぜ!とってもすがすがしいぜ!うん、気持ちいいんじゃ!お、向かいからハムっぽい奴が走ってくるぞ!うんうん、ランニングにもいいよな、ここは!でもたぶん違うな!隣に刹那っぽい奴が並走してるから、絶対に違うな!――――――――え?違うよね?

俺は思わず足を止めて、振り返った。もうハムと刹那と思しき人はいなくなっていた。―――――うん、いや、ないか。この前麻雀したときに、冗談で刹那とのデートの予定はないのか?と聞いたら「予定があったらこんなところに来ていない」と、悲しそうに返事をしていたからさ・・・。俺はその時、刹那とデートという夢みたいなイベントなんて起こるわけがないから、そういったのだと解釈した。けれど、実は、文字通りの意味だった・・・?いつもデートしてるけど、その日はたまたま予定がなかったってだけ・・・?

すがすがしい朝だったのに、一つの疑念によりとっくに平常モードに切り替わっていた。そして、なんでこんなところに来てしまったんだと、軽く後悔した。時刻は七時。とりあえず、今度ハムに会ったら事の真偽を確かめようと思ったのだった。

 

 

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家につくと、有希が幽霊でも見たような顔をこちらに向けてきた。従妹よ、そんなにおかしいか、俺がウォーキングしていたのが。

 

「・・・兄さん、どうしたの?嫌なことでもあった?」

「おい、俺を何だと思っているんだ。」

「家の中では発散できないこともあるよね。わかるよ。私も昔はよく外で遊んでいたから・・・」

 

有希は見当はずれなことを俺に告げて、すぐ視線をテレビに戻した。なお、リビングには叔父さんもいた。職業作家だから、働く時間は不定である。平日は俺らに合わせて早起きしているが、夏休み期間中は合わせる必要もないから、生活リズムがぐちゃぐちゃになりがちだった。そんな中早起きするということは、何か公的な仕事があるのであろう。やたらかしこまった服装をしていたのがその証左。ただ、いつもと違うのは、ひげも剃り、髪型も整えている点だ。そこまでするのは珍しい。

 

「――――叔父さん、なんでそんなに決めてんの?」

「ん?ああこれか?俺が毎月短編小説を乗せている雑誌があるのは知っているよな?」

「知らないが?」

「私も知らなーい。」

 

叔父さんは、かなりしゅんとしていた。ごめんよ、家主の仕事にあまり興味がない親戚ばかりで。

 

「――――で、話を戻すとな?先月でちょうど一区切りついたもんで、担当編集が卒業されたというか、まあそんな感じだ。で、今月から俺の担当編集が変わってね。なんと家がまあまあ近いこともあり、今後はこの家で原稿のやり取り、仕事の話をすることになったんだ。」

「――――ちょっと待って、聞いてないぞ?」

「私も聞いてない!」

「うん、今初めて言ったからなあ。」

 

叔父さんは、コーヒーをグイっとあおった。――――今まで編集者の人この家に来たことはあった。けれど、それは本当にごくまれであった。それもそのはず、たいていの人は東京の編集者であり、空を飛んで札幌まで原稿取りに来るなんてナンセンスだろう。

 

「なんでも、札幌からリモートワークしていたから、ちょうどよかったんだと。ふふふ、俺が世間の厳しさを教えてやらんとな・・・!」

 

その編集者さん、外れくじを引かされたかも、かわいそうに。。。

俺と有希は目配せし、ともに合掌したのだった。

 

「そんなわけで、その編集者が来る時間帯は、なるべく静かにしていてくれな。10時に来るから、そのつもりで。―――――いやまて、遼はあいさつはしとこうか。」

 

思わぬ流れ弾が俺に飛んできた。どうして俺?

 

「遼には悪いが、お茶淹れ係になってほしい。バイトでその辺鍛えられているだろう?」

「いや、俺ホールばかりでキッチンやらないんですけど・・・」

「しらばっくれても俺にはわかる。いつも朝にいれるコーヒー、ちゃんと手が込んでいるだろう?」

 

俺がひそかにやっていたことを、しっかり見抜かれていた。みていないようで見ているな、このおじさん。

 

「確かにお茶淹れるのは兄さんの方がうまいと思う。私はおとなしくしてるよ~」

 

有希はニッコニコでそんなことを言ってきた。お前、めんどくさいからやりたくないだけだろ。まあでもそうだよな、おっさんにお茶淹れたくないよな。

 

「しょうがない。やってあげるよ。」

 

俺はしぶしぶ承諾するのだった。

 

 

 

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その日の晩、

有希は、かつてないほどに悔しがった。

叔父さんと俺は、かつてないほどに喜びに満ちていた。

事の顛末はこうだ―――――

 

 

10時前、有希は柄谷と遊びに行くとかで出かけて行った。

俺はというと、キッチンで粛々とコーヒーの準備を進めていた。インターホンが鳴った。テレビはついていなかったから、よくその音は響いた。叔父さんはいそいそと玄関に向かっていった。キッチンからは玄関はもちろん、廊下も見えない。リビングの扉はとじられていたから、来客者も叔父さんの声もわからない。――――そういや、何人だ?一人だけで来る?引継ぎの人とかもいる?わからなかったから、とりあえず3人分の来客用カップにコーヒーを注ぎ、お茶請けを用意して、叔父さんの書斎へと向かった。俺は部屋をノックした。すると、「遼か?入って大丈夫だ。」と叔父さんの声が聞こえてきた。俺はお盆を左手に乗せ、右手でドアノブをひねった。

 

「失礼しま―――――」

 

瞬間、俺は固まってしまった。叔父さんの書斎は、さすが仕事部屋というべきか、まあまあの広さを持つ。あたり一面は本棚で、奥に仕事用の机が一つ、部屋の中央には小さめの円形テーブルがぽつんと置いてある。そのテーブルを挟んで、叔父さんと、その編集者―――――とんでもない美女が座っていた。

 

「はは、遼、言いたいことはわかるぞ。でもまあ、とりあえずコーヒーをいただけるかな?」

 

俺はハッとして、すぐやるべきことをやった。お盆をすぐさまテーブルの上に置き、コーヒーを眼前に用意した。

 

「常和さん、こちらが自分の甥です。少々訳があって自分の家で預かっているんですよ。」

「国広遼と申します!」

「初めまして、常和まひろと申します。ふふ、元気がよろしいんですね。」

 

常和まひろというこの女性は、若干橙色のような髪色をし、ちょうど肩にかからないくらいのボブカット、ただ毛先は若干パーマがかかっていた。つり目とジト目の中間くらいの目、それでいて大きさもあってかわいらしい。森ガールと表現するのがいいのかわからないが、全体的にゆるふわな服装。だが、それでも擬態できないほどのスタイルの良さ。体のラインがはっきり出る服を着れば、死人が出そうだ、と思った。テーブルの上で手を組んでいたが、彼女の左手の薬指には指輪がはめられていた。――――そりゃそうだ、こんな美人に男がいないわけない。俺は強く納得した。

 

「はい、元気が取りえですからねぇ!」

 

俺はテンションが爆上がりしてしまった。けれど、俺はあくまでお茶淹れ係、常和さんと叔父さんの前にコーヒーを置いたあと、自分のコーヒーとお盆をもって立ち上がろうとした。

 

「あれ?遼君も一緒にお茶するものだと思っていました。」

「あ、これですか?何人来るかわからなかったので、とりあえず多めに入れてみたんですよ。でも必要なかったみたいですね。」

 

俺は内心下の名前で呼ばれたことにドギマギしていたが、なんとか表に出さないように努めた。そうか、叔父さんは本名で作家やってるから、国広呼びだと叔父さんと被るのか。なんてことを思っていると、叔父さんが俺のほうににじり寄り、肩を組んでささやいてきた。

 

(頼む、こんな美人が来ると思っていなかった。俺だけじゃ間が持たない・・・)

(情けない大人・・・)

(でも、お前、嫌じゃないだろ?)

(好きっす!)

 

「はは、今日は顔合わせですし、遼は何かと自分の手伝いをしてくれているんでね。常和さんが問題なければ、彼も同席させていいかな?もちろん、このコーヒーを飲み干すくらいまでの雑談の間だがね。流石に仕事の話に彼を混ぜるのは、酷だろうから。」

「はい、全然かまいませんよ。ワタシもあまりこういう場に慣れていないので、人が多い方がありがたいです。」

 

常和さんはにっこり微笑んで返事をしてくれた。これはエンジェルだ・・・

 

「じゃ、お言葉に甘えて――――」

 

そうして、俺は叔父さんの横に胡坐をかき、腰を据えて常和さんとのおしゃべりに興ずることとなった。

 

 

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「叔父さん!次は絶対私を紹介して!」

「むほほw美人すぎワロタw」

「ワロタw」

 

常和さんが帰ってからずっとこんな感じだった。常和さんは雑誌編集者ということもあり、たくさん本を読んでいたようで、書斎にある本についての話題で盛り上がっていた。もちろん俺はそれにはついていけず、愛想のよい相槌をしていたのだった。で、プライベートなことも聞くことができた。これは高校生の特権だろう。叔父さんが聞くとセクハラになりかねないが、高校生ならセーフ理論でジャブを打ってみた。すると、結構教えてくれた。家は宮の森にあり、旦那は高校教師。札幌の高校教師なら、ワンチャン俺の高校にいるかも!と思って聞いてみたが、「秘密です」と可愛く断られてしまった。また、いとこがいるらしく、札幌の高校に通っているんだと。そこも突っ込んで聞いてみたが、これもまた「秘密です」と可愛らしく断られてしまった。また、言葉の端端から、頭の良さを感じさせるような、知的な雰囲気を感じ取れた。なんと有意義な時間だったことか・・・。

でだ、コーヒーを飲み終えた後、俺はいったん部屋に戻り、先ほどの時間をかみしめるように、物思いにふけっていた。いつの間にか起きていた竜崎が凄く怪訝そうにこちらを見ていたが、ガン無視を決め込んだ。そうして一時間ほどたった後、下からどたどたと音が聞こえてきた。ちょうど帰る時間だったらしい。俺は御見送りをすべく、下に降りていった。

 

「本日はありがとうございました。そして先生、これからよろしくお願いいたしますね。」

「こちらこそよろしくお願いします。仕事はwebでも対面でもやりますので、ケースバイケースでやっていきましょう。―――――お、遼も降りてきたか。」

「うん。常和さん、本日は貴重なお話ありがとうございました。楽しかったです。また機会があればよろしくお願いします!」

 

俺は90°近く深いお辞儀をした。

 

「ふふ、ワタシもいとこ以外で若い子と久々にお話しできて楽しかったです。また会ったときはよろしくお願いしますね。」

 

常和さんもぺこりとお辞儀をした。そして、扉を開け、家から出ていったのだった。

 

 

ちなみに、その会う機会というのが、意外と早く訪れたのは、また別の話である。

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