タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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4-1-3 「―――――やっぱり有希ちゃん、ゲー研入ろうよ!」

 8/8(土)  

 

 

 静乃と出かけたあの日以来、だらだらとしたLINEでのやり取りが続いていた。返事が翌日にもつれこむことで、その日一日また、だらだらとラインが続く。それこそ、一昨日叔父さんの担当編集が来ていた時も、通知自体は来ていた。最も、目の前の美女にドギマギしていたせいで、何にも返事はできなかったが。――――でだ、5日に静乃とマッサージ受けに行った時に、静乃が『時間が合えば(アミューズメント施設に行っても)いいよ』と言ったことに対し、俺は真面目に回答をするかどうか悩んでいる。ずっと悩みつつ、解を出せないまま時ばかり経っていた。

 

「あれは冗談で言ったことだったのだろうか・・・・・・」

 

 ぽつりと言葉が漏れる。竜崎は今日は怜の家でやることがあるらしいので、早々にいなくなっていた。だから部屋には俺一人だ。勿論家の中には人はいる。リビングに降りると、有希と遊びに来ていた柄谷が格ゲーにいそしんでいた。机の上には宿題が広げられていたので、一応勉強する気はあったのだろう。――――最も、うちの学校に来るような生徒は宿題なんて出さなくても勉強するだろうし、逆に宿題を出しすぎて拘束するのは、自習の幅を狭めることにつながってよくないだろう、ということで、さほど量はないんだがな。

 にしても、柄谷がしれっと遊びに来るのももう慣れたものだな。二人とも楽しそうで何よりだ。

 

「――――ガイル対ベガか・・・」

 

 二人はストVにいそしんでいた。有希がガイル、柄谷がベガ。二人とも待ちキャラだから、画面が全然動かなかった。動かないけど、裏ではしっかり考えて動かしているんだろうな・・・。俺はテレビ横に置いているものを取るふりをして、彼女らの顔をのぞいてみた。有希は人を殺しそうな目をしていた。お前、もしかして俺とゲームするときいつもこんな表情《かお》を・・・?俺がゲームでボコボコにしすぎたから、憎しみを相手にぶつけているのか・・・?一方、柄谷は可愛らしく舌なめずりしていた。同じ女子とは思えんな。なんて思っていたら、展開が動いた。柄谷が操作するベガが大ぶりの技を繰り出してしまい、生じた隙に遠慮なく切り込むガイル。あっという間にガイルに流れを持っていかれ、柄谷はまけてしまった。

 

「―――――フー」

 

 有希は天を見上げ、大きく息を吐いた。そうして再び前を向いたときには、綺麗な目に戻っていた。いやほんと、一挙手一投足まったく可愛げないな。ガチの行動じゃん。――――いや待てよ、これ俺やってるな?いつもの俺のルーティンだな?俺がやりすぎてこいつに移っちまったのか・・・。

 

「先輩が視界に入るから負けちゃったじゃないですか!」

 

 ぷりぷりと怒る柄谷、こいつちょっとかわいいな・・・

 

「甘いよ栞ちゃん、ちょっと視界に汚物が混じったからといって、集中を切らしてしまうなんてね。」

「おい待て有希、汚物ってまさか俺のことか?お前静乃からよくない影響受けてるぞ?」

「――――まあ、これくらいで集中を切らしてしまう私がよくないですね・・・。リードしているんですから落ち着かないと・・・。」

 

 柄谷はしゅんとして―――いや、ふつふつと闘志がわき出ているように見えた。うむ、それでこそゲー研部員だぞ。

 

「ちなみに、柄谷は何勝なんだ?」

「今7ですね。有希ちゃんが3です。」

「おい有希、ボコボコにされてるじゃねえかよ。俺はそんな子に育てた覚えはないぞ。」

「兄さん、まあ見ててよ。知ってるでしょ?私は後半追い上げ型だってこと。」

 

 いや、初耳だが・・・。とりあえず、バイトの時間まで彼女らの対戦を見ていることとした。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 後半追い上げ型という言葉を、その時はさらりと流していた。しかし、有希 vs 柄谷が5対8まできたとき、俺でもはっきりわかるくらい、柄谷にプレイングミスが増えてきた。――――柄谷はメンタルがプレイングに反映されやすい。FLDは俺がカバーしていたからあまり表面化しなかったが、一対一だと・・・。逆に有希は、基本的に俺がボコボコにすることが多いから、いつも後半追い上げ型だ。だから、ちょっとずつちょっとずつトランス状態に入っていく。思えば、ストVも最後のほうは俺とトントンくらいの勝率になっていた。だいたいそのあたりまで行くと、疲れてやめてしまうから、あまり気にしなかったのだが・・・俺以外の人とやっているのを見ると、さすがにわかってしまうな。だが、確認してみるか――――――。俺はまた、物を取るふりをして彼女らの顔をのぞいてみた。柄谷は泣きそうな渋い顔をしており、有希はもう修羅となっていた。連載後期のはねバドかな?これはもう察してしまった。柄谷はもう勝てねえ。

 

「―――――っしゃあ!」

 

 試合が終わると、有希が拳を強く握っていた。喜び方がマジで男児のそれ。一方柄谷はコントローラーを握ったまま俯いていた。

 

「ゲーム研究部が、帰宅部に負けちゃった・・・。」

 

 プルプルと肩を揺らしていた。お前、そんなに悔しいのか・・・?

 

「―――――やっぱり有希ちゃん、ゲー研入ろうよ!」

 

 柄谷は有希の握りこぶしを手に取って、グイっと迫っていた。歓喜の震えだったのか?でもまあ、確かにやつはゲームが強い。で、こいつが入部すれば部長が抜けた後の人数問題も解決する。でも、こいつと放課後も同じ場所にいるのは・・・

 

「兄さんがいるからなあ・・・遠慮しておこうかな・・・」

 

 うん、有希よ、思っていても言わないことがいいことだってあるんだぜ?俺は黙っていたのに・・・。

 

「でもそれ本心じゃないじゃん!だって本当に先輩が嫌なら、ここまで強くなるほどゲームを一緒にしないでしょ?」

「まあそうだけどさあ~。」

 

 有希の思わぬ一言に、素っ頓狂な声をあげそうになったが、聞こえなかったふりをしてコーヒーを啜った。お前、もしかして俺のことを・・・?

 

「ちょっと考えさせてほしい。でも前向きに検討しとく。」

「やった!約束だよ?」

 

 俺は二人がきゃぴきゃぴ喜んでいるのを、にっこりしながら見ていた。うん、コーヒーも進むぜ!―――――ただ、そういやなんでこいつはなにも部活に入らなかったんだろうか。もしかして、()()()()()()()()()()()()()()()()()この件、柄谷がどこまで知っているかはわからない。親友だから、喋っている個所もあるだろう。有希がこの家に居候するきっかけとなったアレ。もしそれが原因なら、俺はなんと声をかけるのが正解なのだろうか。最も、その問いに解があったとしても、この百合ん百合んフィールドをぶち壊したくないから、何も言わないんだが。

 

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