タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
今日のバイトのシフトは会長も入っていた。というか、自分が入る時は大体いるような気がする・・・。この人、俺なんかよりずっと忙しいよな?なんでだ?――――まあそれはそれとして、時刻は昼のピークタイムを過ぎた午後2時半、今は二人とも休憩中。店内に人が全然いないことから、キッチン、フロアともに店長と副店長の山吹さんが担当してくれていた。会長が入れてくれたコーヒーを、じっくりと味わうとともに、静乃への返事を決めあぐね、スマホを起動しては頭を掻いて電源を落とす、ということを繰り返していた。
「なんだか落ち着きないですね。どうかしましたか?」
「いやその・・・」
俺があいまいな返事をすると、会長は手を顎にあて、何か考えているようだった。相変わらず、そのしぐさは様になっていた。にしても、今の俺の返事から何か考えることがあったか???
「・・・・・・なるほど、そういうことですか・・・。」
「いや待ってくださいよ、何がなるほどなんですか?」
俺がそう尋ねると、会長は「それはすなわち――――」とまでこぼしたが、「―――――――やっぱり胸の中に秘めておきましょう。」と口をつぐんだ。
「ともあれ――――迷いがあるなら、勇気を出してしまったほうがいいと思いますよ。―――――あと、これは女の勘ですが、悪い結果にはならないと思います。」
会長は珍しく、からかうような笑みを浮かべていた。―――――竜崎が来てから周囲の女性について考える機会が増えた。その中にはもちろん会長もいる。会長と触れ合う機会はここしかないから、休憩中はよく会長を意識して見るようになった。すると、いろいろとわかってくる。実は些細なポカはよくやる。仕事に関するポカはないが、自分に関することは意外とやらかしがち。頭痛がすると言って薬を持ってきて、それを机の上にまで置いたのに、結局飲まないで仕事に戻ってしまったり、やっているソシャゲのイベントガチャ終了日を一日間違えて、落ち込んでいたりした。会長がやっているソシャゲを聞き出せたときは、俺も仲良くなれたものだと感激した。しかもロマサガRS、アクションゲームだけでなく、硬派なゲームもやるのだなとより感激したのだった。で、俺にロマサガやっていることが知られてからというもの、バイトの休憩中は俺のことなんていないかのようにロマサガにのめり込む日もあった。やっぱ生粋のゲーマーなんだな、完璧超人なんかじゃないんだな、と思った。
「女の勘ですか?」
会長のからかいに、俺は乗っかることとした。
「ええ。―――私の勘は信用なりませんか?」
冗談にあえて乗ったのに、むしろまだまだ冗談をやめない会長であった。なぜこんなに強気?
「いや、まさかそんな・・・」
まあでも、静乃への返事を迷っていても仕方ない。やきもきする時間がもったいない。流れに乗って言ってしまえと思い、俺は単刀直入に『5日に言ってた来週も行くって話、12日でよい?』と送ると、すぐに既読が付き『わかった』と返事が来た。誘うことにうじうじしていたのがあほくさく思えるくらいサクッと予定を決めることができた。
「その顔を見るに、いいことがあったみたいですね。」
安堵が漏れていたのか、会長に指摘されドキッとした。何も悪いことはしていないが、なんか・・・同年代の女性の前でデートの日取りを取り付けるのって・・・。会長は片手でコーヒーを飲みつつ、もう片方の手でスマホを操作していた。会長だって、スマホくらいいじるよな・・・。
―――――今俺は、ナチュラルに静乃との約束をデートと認識していた。これはデート?いや、より健康になるための手段に過ぎないんだ。―――――そうだよな?
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国広君と休憩時間がずれていたので、一足先に私はキッチンに戻った。さきほどの女の勘という言葉は、完全に雰囲気で使った。でも、ちょっと自分を悩ましていたことの裏どりができたのだから、興が乗ってしまっても仕方ない。学園祭に向けたバンド練習日を静乃さんとすり合わせしようとしたら、どうも予定が入りそうで入らない、というものだった。遊びに行く用事とかですか?と詮索してみると、肯定する返事が返ってきた。いつもなら○○と遊ぶ、まで言うのに、今回はそれがない。ということは、おそらくデートか、遊びというのはまっぴら嘘であるか。これまでの彼女との付き合いだと、彼女は言いたくないことは嘘ついてごまかすよりは、黙っていることが多かった。だから、おそらく前者があっている。で、彼女と遊びに行ってもおかしくない相手って、国広君しかいないでしょう?――――そして、静乃さんが国広君との約束を、私たちの練習より優先しようとしているということは、このデートをすごく大切にしているということになる。―――――私の知らないところで、関係は進んでいるのですね・・・と、しみじみとしたのだった。
「いらっしゃいませ~!あ、刹那ちゃんおひさ!今日は初めて見るお友達だね!」
どうやら刹那が来たらしい。有地店長の声が聞こえてきた。私はキッチンからホールをのぞいてみると、そこには確かに刹那がいた。ただ、隣にはよくいる静乃ではなく、
「初めまして、戸隠と申します!つい先月刹那ちゃんと同じ高校に転校してきたんですよ!」
私は胃がキリキリとし始めるのを感じた。デートの約束をとりつけて一安心している国広君を、国広君LOVEの戸隠さんは何を思うのか・・・。
―――――――いや、ここは静観しましょう。国広君、これも経験です。頑張ってくださいね・・・。