タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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4-1-8 「ついにお人形さんとおしゃべりするようになってしまうとは・・・・・・・・・」

 コンビニにアイスを買った後家に戻ると、見慣れない靴が二足増えていた。恐る恐るリビングの扉を開けると、そこには叔父さん以外の大人が増えていた。

 

「おおー遼!会いたかったぞ!久しぶりだなあ!元気にしてたか!」

 

 案の定、俺の父がそこにいた。ソファには俺の母が座っていた。叔父さんは、キッチンでコーヒーを淹れていた。

 

「本当久しぶりだね。何ヶ月ぶりさ。」

「3月末以来会ってないから約4ヶ月半?多分それくらいねえ。」

 

 久しぶりに聞く母の肉声。両親はともに、満面の笑みだった。そんな姿を、どこか俺は冷めた目で見ていた。

 

「遼、有希たちは部屋に戻ったぞ。」

 

 叔父さんの言う通り、リビングにいたはずの有希と柄谷はいなくなっていた。確かに親族がいるのにもかかわらずリビングにいる道理はないわな。むしろいれんやろ。

 

「てか、親が来るとわかっていたら有希もあいつを呼ばなかったろうに。」

「――――驚かせてやろうと思ったが、それが裏目に出てしまったみたいだな。」

「――――だろうね。ま、積もる話は後で。」

 

 俺はそう言ってアイス片手にリビングを出て、二階へと上がった。

 

 

 別に仲が悪いわけではない。

 仕送りだってしっかりもらっている。

 不自由と感じたことはない。

 ただちょっと、距離感がつかめないんだ。

 イギリスと日本はあまりに離れ過ぎている。

 物理的にも、心の距離も・・・

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 コンコンと有希の部屋をノックして、有希の部屋の扉を開けた。

 

「あ、兄さんお帰りなさい。」

「おかえりです、先輩。」

 

 送り出す前はブチ切れていた有希も、すっかり元の機嫌に戻っていた。

 

「柄谷すまんな、急に親が来てしまって。アイスはここにある。好きなものを選ぶといい」

 

 二人はわらわらと俺に群がってきた。ふふ、多少は気分がいいぜ。俺は残ったアイスを手に取り、有希の部屋の扉を閉めて、自室に戻った。部屋に戻ると、そこにはヘッドホンを付けて動画を見ている竜崎がいた。勿論、フィギュアサイズのミニチュアのヤツ。コードレスだった。

 

「――――おや、国広君おかえり。」

「ただいま。というか、出かけていたのわかっていたのか?」

「窓から君が出ていくのが分かったからね。」

「なるほど―――――てか、何してたの?また映画?」

「いや、今日は音楽鑑賞だ。」

 

 竜崎は中空に浮かぶモニタを操作すると、音が部屋に鳴り響いた。この曲って・・・

 

「これ、火竜の『嘔吐』じゃん。」

「お、さすが国広君、ボカロは詳しいね。」

「まあ、最近ボカロオタクの知り合いも増えたし・・・」

 

 戸隠さんと知り合ってから、自分の音楽ジャンルがそっち側に引きずられているのを薄々感じていた。ちょっと前まではアニソン中心でボカロはそこそこだったが、戸隠さんと雑談しているうちに、徐々にそっちがメインとなっていった。ただ、この曲に関しては、もともと知っていた。たまたまニコニコ動画に上がっていたのを聴いた。歌詞もサウンドもかなり来るものがあった。ニコ動では結局再生数10万行かないくらい。youtubeでは20万くらい、といった感じ。ニッチ寄りのラウドロックだ。

 

「にしても、この曲よく見つけたね。ディグるの大変だったでしょ。」

「これは怜から教えてもらったんだ。」

「怜が?どうして―――――もしかして戸隠さん経由か?でもあいつって戸隠さんとそんな仲良かったっけ?」

 

 と口に出してからすぐに、あいつも仕事と割り切れば人間関係の構築位するか、と思い直した。―――――まさか某バーチャルシンガーにクリソツなうやつとボカロの話をする日が来るとは思わなんだ――――――

 

「・・・そういや、竜崎は今日下に降りたのか?」

 

 俺はガリガリ君を食べ切った後、竜崎に問いかけた。

 

「いや、今日はこもりっきりだな。」

「実はいま、俺の両親がイギリスから帰って来てるのさ。」

「なるほど。」

「でだ、普通フィギュアは喋らないんだ。」

「なるほど。君が言いたいことはよくわかった。―――――――――もっとも、その話は扉を閉めてからするべきだったな。」

「え?」

 

 俺は慌てて振り向くと、そこには目を見開いた俺の父親が立っていて・・・

 

「遼・・・・・・ごめんな・・・・・・。お父さんたちが関わってやれないばっかりに、ついにお人形さんとおしゃべりするようになってしまうとは・・・・・・・・・」

「あ、あはは・・・」

 

 俺はもう笑うことしかできなかった。

 

 

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 以前叔父さんに竜崎を見せた時、驚きはしたもののすぐ慣れた。その時と同様に、父もすぐ慣れた。こんなところまで兄弟で似る必要はないだろうと思った反面、面倒なことにならずに済んだ安心感を得られた。事情を説明したところ、そういうこともあるのかと納得してしまったのである。それから馴れ馴れしく竜崎に話しかけているあたり、この兄弟の適応力は計り知れないな、何てことを思った。竜崎はいま、ソファの前の長テーブルの上で動き回りながら、俺の父と叔父さんと談笑している。俺はそれを遠巻きに見ながら、食卓の椅子に座ってテレビを見ていた。別に用もないから部屋に戻っても良かったのだが、竜崎を一人ここに残しておくのはなんとなく嫌だったのと、久しぶりに両親に会ったのだから―――――――――特に話すこともないけれど、同じ空間にはいようという思いがあり、残ることに決めた。

 

「・・・学校の方はどう?」

 

 食卓テーブルの真向かいに座っている母が俺に話しかけてきた。差しさわりのない話題。薬にも毒にもならない。そんな話題。

 

「まあ普通だよ。とりわけ変わったことも――――ああいや、あいつの存在があるから変わったことはあったか。あと隣に新しい人が引っ越してきたくらい。」

「へえ、そうなの。」

 

 母はそう相槌をして、それきり会話が途切れてしまった。俺もそうだが、こんなに会わない日が続くと、普通お土産話で盛り上がるものなのだが、そうはならない。ならない理由にはそもそも仲があまりよくないというのがある。俺をイギリスへ連れていきたい親の気持ちを振り切って日本に残ることを選んだ。叔父さんが子供欲しがっていたのを利用する形を取らせてしまった。かなり無理を言ってこうなっているので、それから若干しこりの残った関係が続いてしまっている。もちろん嫌いになったわけじゃない。けれど、適切な距離感を―――――親と子の距離感を見失ってしまったのは否定できない。

 

「その隣のひとも結構変わっていてね、竜崎と同じように特殊な人なのさ。ここと同じくらい大きな家だけど、住んでいるのはたった一人、しかも俺と同じ年の女の子。」

「確かにそれは不思議ね。」

 

 またしてもそこで会話が途切れてしまった。話が続かない。コミュ障同士の会話だ。

 

「それはそうと、ロンドンの生活はどう?」

「そうねぇ。治安がそれほどよくないから、手荷物をひったくられないように気をつける――――くらいかしら。」

「そうか。」

 

 俺も思わず、適当に相槌をしてしまった。―――――だって、その話は3月にも聞いたよ、聞いたんだよ。

 俺はもう気まずい空気に耐えられなくなって、席を立った。

 

「じゃあ俺、勉強しに部屋に戻るわ。」

「そ、そう。わかったわ。勉強、頑張ってね。」

 

 ぎこちなく返事をする母を置き、俺は自室に足を向けた。

 相手の心にどこまで踏み込んでいいのか、互いに手探りの状態。それはあたかも、初対面の人であるかのように―――――。部屋に戻ったが、実際はとても勉強する気になどなれなかったので、俺はベッドに寝転んだ。

 

「明日か明後日には墓参りか・・・」

 

 有希は大丈夫だろうか、と、ふと思った。なんせ墓参りのメインは・・・。

 もやもやしてても仕方ないと考え、諦めて寝ることにした。寝てしまえば、すぐに時間は過ぎていく。ゲームやったりアニメ観たりしてもよかったけど、そんな気にもなれなかった。何も考えたくなかった。早く時間が過ぎてほしかった。

 

 

 

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 目を覚ました時、部屋は真っ暗であった。携帯を開いて時刻を確認すると、21時とか表示されていた。夜の9時なら、当然だろう。体をむくっと起こした。晩飯のときには起こしてくれよマイアンクル・・・

 恨めしく思いながらリビングに降りると、そこには酒を飲みながら話にふけっている叔父さんと父、そしてその中に混じって仲良くはなる竜崎がいた。――――そうか、精神年齢的には叔父さんたちに近いのか!どうりで・・・

 

「おはようさん!いやあ長い昼寝だったなあ!」

 

 その叔父の声は普段の2倍くらい出ており、なれなれしく肩を組んできた叔父からはアルコールの香りが漂ってきた。酔っ払いから脱出するのに少々手間取り、やっとの思いで逃れてソファに座ってぐったりしてると、まだそこまで酔いの回っていないと思われる父が、

 

「遼、墓参りは明後日ね。」

 

 なんてことをいってきた。俺は適当に相槌し、明日が暇になったので何かしようかなと思ってた最中、ふと気になったことがあった。

 

「・・・そういや有希は?まだ部屋?」

 

 俺はすぐ近くにいた母に問いかけた。母は全く酒を飲んでいないようで、素面だった。

 

「ええ、有希の友達が帰ったあと、ずっと部屋にいるわ。夕飯食べに一度降りてきたけど、すぐに上に戻ったの。」

 

 なんとなく察した。おそらく、誰とも喋りたくないのだろう。もうすぐ墓参りとなると、思い出したくないのに、思い出す羽目になるからだ。

 俺は適当に返事をして、食卓テーブルに向かった。そこには、ラップのかかった料理の品々。俺はラップを剥がし、ご飯とみそ汁を盛った。

 

「いただきます。」

 

 ひとまず飯を食おう。有希のことは、そっとしておいておこう。今は触れないことが大切だ。

 

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