タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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4-1-10 「誰にでも優しいって、誰にも興味がないことと同じだと思うけどなあ、俺は。」

 8/14(木)

 

 昨日は精神的に疲れがたまっていたせいか、早くに寝た。そうして、目覚まし時計が鳴る前に起きた。休みの日だから、目覚まし時計をかけなくてもいいのだが、最低限この時間には起きよう、というデッドラインを決めていたのだ。竜崎は朝からしっかりと活動しており、中に浮かぶ電子モニター上で、文字がせわしなく動いていた。

 

「おや、おはよう。」

「――――おはよう。」

 

 俺はゆっくり体を起こす。スマホの画面上には、特に通知は来ていなかった。――――いや、正確には来ていた。伊藤からニコニコ動画のリンクが張られていたが、どうせろくでもないことはわかっていた。だから、これは実質通知がないことと同じなのだ。

 部屋を出て、リビングに入ると、両親と叔父さんが仲良く話していた。俺に気が付くと、皆、朝の挨拶をしてきた。俺はそっけなく返事をして、すでにコーヒーメーカーで作られていたコーヒーをカップに注ぎ、ブラックのまま胃に流し込んだ。淹れてからかなり時間がたっていたのか、えぐみが口の中に広がった。だが、これでいい。()()()()()()いつもの日常だ。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 俺が気が付いたときには、有希は家からいなくなっていた。俺が出かける身支度をしていると、竜崎は「家にいなくていいのか?」といらんことを聞いてきた。正論だ。だけど、その正論は聞かない。が、奴はしれっと俺のカバンの中にもぐりこんでいった。お前も一緒に来るんかい。玄関では母親が「どこに行くの?」と尋ねてきた。俺は「ちょっと外せない用事があってさ。申し訳ないけど出かけてくるわ。」と返した。外せない予定なんて、もちろんなかった。

 

 あてもなかったから、とりあえず街に出て、行きつけのゲーセンへと向かった。気がまぎれるだろうと思ったからだ。ただ、ゲー研のメンツはいないだろうから、FLDはできないな、と思った。お盆休みの最中に声をかけるほど、俺は野暮ではないのだ。

 

「あれ?先輩奇遇ですね!」

 

 ・・・なんで柄谷いんの?と言いかけて、とまった。その言葉は、そのまま俺に跳ね返ってくるからだ。マジで暇か?こいつ。行きつけのゲーセン、マキシムに行くと、そこには格ゲーにいそしむ柄谷がいた。彼女はたまたま待機時間だったから俺に話しかけられたのだろう。すぐさま、ガチャガチャスティックを動かし始め、こちらを一瞥もせず集中モードに入ったのだった。なかなかやるなあ、と思いながら見ていると、ふと肩を誰かに叩かれた。ハッとして振り返ると、そこには最近名前を知ったマキシムの常連がいた。

 

「やあ国広君!お盆なのに暇なんだな。」

「銀城先輩、ご無沙汰しています。」

 

 俺より少し大きいくらいの背丈の男性、銀城鉄《ぎんじょうてつ》先輩がそこに立っていた。彼はすぐ隣の大学、北海道大学の工学部の大学二年生。マキシムの常連で、ゲー研がいつもボコボコにしているチーム――――FLDの大会で初戦で当たったチーム、"Intermetallics"のメンバーの一人だ。そして、ギャルゲー研究会というサークルのメンバーでもある。なお、戸隠研に所属するポスドクもそのサークルに在籍している。戸隠教授からの頼まれごとを、そのサークル部屋にいたポスドクにしに行った際、その場で先輩と鉢合わせたことで知り合ったのだ。何なら、俺の在学する高校、北山高校の先輩でもあったようで、先輩呼びは妥当なのである。

 

「あれ?残りの二人はどしたん?」

「ああ、部長とハムですか?今回はふらっと寄っただけなんできませんよ。」

「なるへそ。いつも遊んでるわけじゃないんだな。」

「先輩だって、残りの3人どうしたんですか?」

「あああいつらね、帰省中。あのチームで道産子は俺だけなんだよ。意外と少ないんだぜ?北大生の北海道民って。」

 

 やれやれといった風に、先輩は手をひらひらとさせた。

 

「そういうもんなんですねえ。」

「だから、君も受かってしっかり道民比率を上げるのに貢献するんだぞ。」

「や、そもそも北大受けるかどうかわかりませんから。大学よく調べてないんで、とりあえず第一志望にしてるだけなんで・・・。その役割は、部長がきっとやってくれますよ。勉強しているそぶり見せませんけど、ポテンシャルの塊なんで。」

「ああ、あの女の子ね。飄々としてやることやってんのねえ。」

「なーんか、聞いてる限り部長の兄貴もすごいらしいんですよ。なんかベンチャー企業の社長みたいで・・・」

 

 俺がそう話した途端、銀城先輩は手を額に当てて何かを考え込んでいた。

 

「――――ちょっとまった。もしかして・・・・・・君らの部長って宮永って言う?」

「ええ。そうですよ。宮永龍華さんです。言いませんでしたっけ?」

「――――世の中は、狭いな・・・」

 

 先輩は腕を組んで、空を仰ぎ見た。なお、天井は照明しかないため、仰ぎ見たところで何もないのだが。

 

「その子の兄貴と知り合いなんだ。宮永玄っていって、高校の時の部活の先輩後輩の関係だな。」

「え?マジですか?―――――ってあれ?そしたら部長の兄貴って何歳で起業したんですか???」

「先輩は2年で立ち上げてたよ。で、今先輩は4年生なんだけど、大学生と社長の両輪で動き回ってる。マジで超人だよ。―――――そうか、その先輩の妹さんとなれば、ハイスペなのも頷ける。積んでるCPUが違うんだよ。メモリも多いから、常人よりもマルチタスクができ、かつ要領よくこなせる。どうして東大に行かなかったのか不思議でならなかったよ。当時はね。」

 

 ――――驚いた。まさかそこまですごい人が身内にいただなんて。部長も実は裏でいろいろやっているのだろうか・・・。

 

「だから今日は彼女と一緒にゲーセンデートってわけな。」

「・・・いや、彼女とはそんな関係じゃないですよ。」

 

 銀城先輩がいきなりぶち込んできたものだから、とっさに否定した。俺はちょっとあせって柄谷を見たが、彼女は俺らのことを意に介さず、目の前の敵に全集中していた。よかった―――――――――あれ、なんで俺は、ほっとしたんだ?

 

「ごめんごめん。じゃあ大学に一緒に来ていたあのぴえん女子の方が彼女か。」

「・・・いや、彼女もそういう関係じゃないっす。」

「―――――え?じゃあ君は、ただの友達の付き添いで、わざわざ大学まで来たってわけ?お人よしすぎん?」

 

 先輩は本気で不審に思っていた。

 

「ははは、自分、紳士なんで。」

 

 俺が笑っておどけて見せると、先輩もそれにつられてははとわらった。

 

「誰にでも優しいって、()()()()()()()()()()()()()()()()だと思うけどなあ、俺は。国広君がお人よしの理由は―――――ま、いいや。高校生なんだし、俺ができなかった青春を楽しんでくれ。俺みたいになるんじゃないぞ。」

 

 先輩はがっしりと俺の肩をつかんで、そう力説した。―――――これは、俺の未来なのかもしれん。勉強は頑張ったけど、頑張るために人間関係の構築を先送りにし、気が付けば同類とばかり馬鹿をやる。・・・肝に銘じておこうと、思ったのだった。その決意と同時に、先ほどの先輩の言葉がボディーブローのように効いてきた。人を選んで優しくするということは、いわば特別視しているということの裏付けだ。それって、その人に興味を持っている、好意があるということ。FLDの大会の時は、落ち込んだ柄谷のために動いた。戸隠さんに告白券を使ってしまったときも、彼女のためを思って行動した。そして直近だと静乃・・・。呆れられこそしているが、不誠実なことはしないようにしていたつもりだ。―――――いったい、なぜ?

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