タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?― 作:すうどんたくろう
全校集会が終わって教室に戻ると、担任の千歳先生から学年順位表が配られた。総合及び各教科の順位が記載されていた。怜の名前は、理数において一番上に記載され、2位と30点くらい差がついている。2位以下は団栗の背比べだった。圧倒的すぎるだろ。なお、怜は英語もランクインしていて、150点と学年10位だった。だが、それでも総合3位。合計点から逆算すると、彼女は国語で30点くらいしかとってないことになる。――――おそらく、古文漢文が手も足も出なかったのと、受験国語で求められる解答を作れなかったことによるのだろう。なお、俺は夏休み前に静乃と総合順位で競うことを約束していた。だから、俺と彼女の名前を必死で探した。するとどうだろう、俺の名前の上に、彼女の名前があるではないか。俺は頭を抱えた。授業の合間の休憩時間で、彼女はそのことを猛烈に煽ってきた。
「じゃあ遼になにしてもらおうかなあ~~~~~」
「――――何の話か全く分かりませんねぇ?」
俺がすっとぼけると、静乃はスマホを取り出し俺に向けて動画を見せてきた。
『お?おお?散々人を煽った挙句勝負となると逃げるのか?おいおいそりゃあないぜ。でも、そうだな俺が負けたらなんでも言うこと聞いてやるよ?』
「それは・・・・・・・まぎれもなく俺の声・・・・・・」
こいつ・・・あの時の言葉を録音してたのか・・・なんて奴だよ、、、。椅子に座って頭を抱えている俺の周りをぐるぐる回る静乃。しかも、ご丁寧に俺の録音音声をループで再生してやがる。おいおいそりゃあないぜ(´;ω;`)
「このお願いは大切にとっておこうかなあ。じゃあ、遼、ヨ・ロ・シ・ク・ネ」
腕をひらひらさせて、静乃は教室を後にした。まあどうせトイレか何かだろう。
「あんなに楽しそうな静乃、久しぶりに見ましたね・・・・・・」
「ええ・・・でも、かなり邪悪だったわよ。」
刹那と怜が俺の横で軽く引いていた。煽られたことはうざい。だがまあ、ここまで感情をあらわにした彼女をみたのはいつぶりだろうか。ただ、それでも怜には勝てていないのだから、悲しい話である。怜、マジでコーディネーターやニュータイプのそれなのか?どんな遺伝子ならそうなるの?神のチート?でもそれなら国語にも適用されるよなあ・・・
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怜は一躍有名人へと躍り出た。もともと外見の可愛さは学年中に知られていた。ただ、この学校には、3年は会長、2年は刹那とべらぼうに可愛い生徒がいるものだから、容姿を理由に有名になることはなかった。だがそこに、中身が伴ってくると話は変わる。校内で最も難しいテストである学テにおいて、理数系で満点をたたき出すという快挙、瞬く間に全校に広がった。しかも、本人はその自覚はないだろうが、まだまだ余裕ですと言わんばかりのインタビュー、いい意味でも悪い意味でも注目を受けてしまうであろう。けれど、幸い悪い意味でとられることはなかった。むしろ、高難易度の問題で我々をいじめていた(もちろん、悪意はない)先生たちに一矢報いたわけだから、英雄扱いである。ジャンヌダルクかな?ともあれ、そんな彼女、学年の行き来が自由になる昼休みになると、やじ馬が一気に増したのだった。怜が昼食中、教室の外から遠巻きに彼女を見る人たちが数名。直接話しかけに来たチャラ付いた男もいた。怜は刹那、静乃と昼食を取っていたため、相乗効果でより注目を浴びてしまったのだろう。ただ、怜が一蹴し、静乃がガンを飛ばしてみんな退散していったのだった。何とかご飯を食べ終えた後、怜は大きなため息を吐いた。
「―――――そんなに注目されることなのかしら?たかがテストでしょう?」
「怜、お前はもっと自分の価値を自覚した方がいいぞ。頭がいいうえに可愛いって、完璧じゃん。」
「あーはいはいどういたしまして。」
俺の誉め言葉も軽くあしらい、怜は机に突っ伏した。静乃や刹那もお疲れのようで、スマホをポチポチといじり始めていた。
「――――これはぼくの興味なんだけど、学テの問題は簡単だった?正直に教えてほしい。」
静乃はスマホをいじりながら、怜に問いかけた。そして怜は、机に突っ伏したまま答えるのだった。
「・・・正直に言うと、数学や理科のように、自然法則にのっとった科目に関しては、間違える気がしないわね。」
「―――――遼が言うなら調子いいこと言ってるな、で終わるんだけど、怜が言うなら本当なんだろうなあ。。。」
「その言葉、大変興味があるなぁ!」
俺たちはハッとして声のする方に目を向けると、明らかにこのクラスの人ではない男の人が立っていた。眼鏡をかけ、髪も特に遊んではいないようだ。制服もきちっと着ている。真面目な方なんだろうな。
「・・・あれ?虎井先輩?」
刹那が、驚いたように声を漏らした。虎井―――――ああそうだ、学年順位の掲示板で見たことあるぞ。自分の名前を探す時に、よく見かけた人だ。・・・・てか、会長が表彰されてないときはこの人が上がっていたような気が・・・
「失礼、自己紹介がまだだったね。虎井五郎と言います。数学研究会の部長をしてるんだ。突然だが、君の数学力は素晴らしい!ぜひ数研に入らないか?」
目をキラキラとさせて虎井先輩はそういった。怜は明らかに嫌そうな顔をしていた。そんな暇はない、といった感じだ。まあそりゃそうだ。自分でいうのもあれだが、彼女はそんなことにうつつを抜かしている場合じゃないから。ただ、俺としては怜には俺のことを気にせず青春を満喫してほしいとも思っている。友達と遊ぶことは、静乃や刹那と達成できているとみなそう。じゃあ、部活は?もちろん、入らないパターンだってあるだろうが、彼女の場合、そもそも画面上に”部活に入る”という選択肢が表示されていない。なら、表示させるくらいのことは、してもいいんじゃないか?ただ、それが数研、っていうのはちょっと違う気もするが・・・
「いや、申し訳ないけど私は―――――」
「せめて我々数研が練りに練った、この問題を解いてみてくれないか?」
そういって彼は、怜の前に一枚の紙を差し出した。俺は近づいて、その紙に書かれた問題の詳細を見た。そこには整数に関しての証明問題が書かれていた。パッと見た限り、俺には全く分からなかった。
「なあ静乃、これわかるか?」
「――――いや、ちょっとすぐには・・・刹那は?」
「フッ・・・私にそれを聞きますか、万年平均クラスの私に・・・。そもそも、高2までの知識じゃ解けないんじゃないですか?」
「そんなことはない。私が高2のときに解けたのだから。それに中河さん、きっちり平均を維持できている、というのもすごいことじゃないか。」
「あはは、ありがとうございます。」
刹那はちょっと気まずそうに返事をしたのだった。そして、問題用紙を怜に返した。―――くそ、少し悔しいな。少なくとも、虎井先輩の高2時点に、俺と静乃は及んでいないってことなんだから。二人して渋い顔をした。一方怜は、その問題を十数秒眺めたのち、
「―――――どうせこれ解かないと帰ってくれないんですよね?」
と言い、その辺に転がっていたボールペンで、頬杖を突きながらもらった紙に答えを書き始めた。そのボールペンはよどみなく動き、紙面の半分ほどをものの数分でかき終えて、虎井先輩につき返したのだった。虎井先輩はニコニコでその解答を見ていたのだが、途中から「いや、まさかそんな・・・」と驚愕しながら食い入るように数式を見たのだった。
「・・・この問題を作ったのは先代の先輩方で、私が高2の時に解いたときは1時間かかった。それを、たった数分、しかも迷いなく・・・まさしく天才と言うほかない!一度部室に来てくれないか?この通りだ!」
虎井先輩は90°にお辞儀をしたのだった。流石に教室内でどよめきが起きる。怜も目立つことは嫌だったのか、「わかりましたから、頭をあげてください。」と思わず言ってしまったのだった。
「そうか!ありがとう!じゃあ連絡先を教えよう!」
そういって虎井先輩は半ば強引に怜とLINEを交換したのだった。そうした後、「詳細はまた後で連絡するから!」と告げてその場を後にした。嵐のようだった。怜は大きなため息を吐き、机に再度突っ伏したのだった。俺は怜の作った解答を見た。どうして、そんな発想になるのかわからない、わからないが、使われている公式、定理はすべて既知のものだった。―――――あらためて、理数の化け物だと思った。
「そういや、刹那はあの先輩と知り合いみたいだけど、どういう―――――ああ、生徒会つながり?」
教室内の喧騒が少々収まった後、静乃はそう刹那に問いかけた。
「ですね。部の予算会議する際に、各部活の部長を呼びますからね。」
「――――そういや、部長も呼ばれてたな、そんなの・・・」
去年の一月くらいだっただろうか、宮永部長がプンプンしながら部室に入ってきたことがあった。なんでも、会長に予算くれと言ったのに、まともに取り合ってくれなかったらしい。まああの時は柄谷居なくて研究会どまりだったし、部室もらえてるだけでも奇跡じゃないか、と思ったのだった。
「誠実な方ですよ。理路整然としています。会長に聞いた話だと、医学部医学科目指しているようですね。」
「まあ、この学校で頭いい人はそこ狙うよなあ。」
妙に納得して、俺は自席に戻ろうとしたのだった。だが、また誰かが俺らを呼んだのだった。
「国広!後輩がお呼びだぞ!」
「今度は俺か・・・」
有希か、柄谷か?と思って教室の入り口を見ると、フードを被った一人の男、神前がいたのである。
「―――――ドラム君?遼と何か接点あったっけ?・・・・・・まさか、男にまで手を出すような人だったの。確かに彼は中性的な顔立ちだとは思うよ?男子校だったら、やりようによっては姫になるかもしれない――――でもここは共学だよ?戸隠さんもいるのに―――――遼も難儀な性癖持ってるね。」
刹那は彼にひらひらと手を振ると、彼は軽く会釈をした。一方、静乃は相変わらずボロクソに俺をけなし、あからさまに俺から距離をとった。戸隠さんの名前をそこで出すのは卑怯じゃあないか???俺が何も言えないことをいいことに・・・。まあでも、本当にこの件決着つけないといけないんだよな・・・。彼女の好意に気づいていながら、結論を出さず先送り。手を伸ばせば届く位置に宝がある。なのにそれを取る勇気がないんだ。資格もないんだ。勿論、それは俺の考えすぎで、とりあえずやってみればいいじゃん、と背中を押してくれる人がいるのもわかっている。だが・・・
「うるせー俺の性癖を決めつけるんじゃない。俺はなあ―――――って何言わせとんじゃ!接点はなあ・・・・・・あれ?なんだ?まあ、いいや、行こう。」
「私も行きます。私にも関係のある話なので。」
「「え?そうなの?」」
俺と静乃はほぼ同時にそう発した。刹那は何か知っている?
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彼につれられて、校内の人気のないところにいくと、ようやく彼は口を開いた。
「――――――――今日の午後、カフェに行きませんか?」
・・・・・・なんか、モジモジして、頬を赤らめながらそんなことを言ってきたのだった。フー、落ち着け、ここからの発言に気をつけろよ、俺。今の時代珍しくないじゃないか。ただ、俺がその当事者になるとは思っていなかったが・・・。相手が勇気を振り絞った女の子だと思え、俺。よく見ればかわいい顔じゃないか。うん、そうだ!
「――――――オッケー分かった。カフェね?了解了解。」
俺は動揺を抑えきれなくて、若干声が上ずってしまった。
「何か勘違いしていたらごめんなさい。誘いたい人がいるんですけど、たぶん、あなたが来てくれた方が来てくれそうだったものですから。」
あーそういう。つまりダシってことですね。俺の葛藤は一体・・・
「・・・・・・あのなあ、そういうのは自分で誘うものじゃあ――――――――」
「ちなみに、会長と刹那さんも来てくれます。」
「ないの――――――――え?会長?」
そういやこいつ、生徒会役員か。だから刹那がここにいるわけだな。てか、会長と刹那じゃだめで、俺がいたほうが成功確率上がるって、どんなやつだよ?
「はい。」
「―――――で、誰を呼びたいんだ?」
「ええと―――――」
それから数秒彼は唸って、やっと口が開かれたと思うと、そこから発せられた言葉に俺は一瞬、面食らってしまった。
「萩原先輩です。」