タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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4-2-4 「遼が風邪?ないない。だってあなた病気にならないでしょ。」

 最後の授業が終わり、後は帰りのHRを残すのみとなった。約束のカフェの時間が近づいてきた。ハムと刹那を初めから一緒にいさせると、刹那が逃げかねないと思ったので、先に神前が場所取りに行き、刹那たち女性陣、俺とハムのセットで別々に行こうということになった。―――午後の授業時間は、あまり集中できなかった。神前が静乃のことをどう思っているか、ということを考えると、どうにも―――。千歳先生が連絡事項を話している間、ふと、静乃の「戸隠さんもいるのに」という言葉が脳裏をよぎってしまった。・・・静乃は俺の彼女じゃない。俺のものじゃない。他の男が仲良くする分には、なんの問題もない。俺に口出す権利なんてない。なんなら、その気になれば俺だって――――といった、傲慢な考えが、よぎってしまった。猛烈な不快感・嫌悪感が身を襲った。思わず頭を抱えていたことに気づいた。

 

「――――国広、準備はいいか?」

 

 久しぶりに会ったハムは、一見変わっていないように見えたが、少し変わっていた。刹那をダシにして今日の話をしたが、勢いよく食いつくわけでもなく、「まあ、かまわない」といった対応だった。これが夏休み前なら、「少年!?!?もちろん構わんよ!」と嬉々とするのだが・・・。やはり、何か、裏がある。そんなハムは、わざわざ俺の教室の中に入ってきて、俺の座る席まで来た。ハッとして周囲を確認すると、かなりの人が教室内から消えていた。静乃も刹那もそこにはもういなかった。不快感・嫌悪感にさいなまれて、長時間が過ぎていたのだ。

 

「ああ。わかってるよ。わかってるけど・・・」

 

 煮え切らない思いが体の奥底から消えてなくならない。約束したことだ。行かなくちゃいけない。これは刹那とハムの関係を確認するというのが本命だ。だから――――俺はただの・・・。俺は葛藤を奥にしまい込んで、帰り支度をした。カバンに教科書を詰め込んで、ハムとともに教室を出た。

 

「あれ、遼君も今帰りー?」

 

 すると、ちょうど今から帰るところの戸隠さんと出くわした。屈託のない笑顔を俺に向けてきた。―――やめてくれ。最低なことを思ってしまった自分が見ていい顔じゃない。俺は自己嫌悪から、猛烈な吐き気に襲われた。

 

「・・・・・・あれ?遼君大丈夫?」

「――――――――――――――――私の方から話をしておこう。今日はもう休んだほうがいい。保健室まで一緒に――――」

 

 ハムは、俺の体調が悪いと思ったのか。そんな気遣いをしてきた。その言葉に俺は――――――――

 

「いやいい、それくらい自分で行ける。・・・・・・あいつらには、ごめんと伝えてくれ。俺がいないと話が盛り上がらないかもしれない。申し訳ない・・・・・・」

「何を言っているんだ。もとよりお前に話の盛り上げ役など、期待していない。」

「ハム・・・それはちょっと、ひどいお・・・(´;ω;`)」

 

 そう突っ込んできたハムの目は、穏やかだった。ありがとう、俺のボケをしっかり拾ってくれて・・・。ハムは俺の返事を聞くと、俺を置いて先に進んでいった。振り返らず、手を振って別れを告げるその姿に俺は救われた気持ちになった。その場には、俺と戸隠さんが残された。

 

「―――――遼君、本当に大丈夫?」

「大丈夫だから、ほんとに気にしないで、ちょっと吐き気がするだけだから!」

 

 俺は急いでその場を後にした。今戸隠さんに優しくされる資格は、俺にはない・・・。トイレで吐き気を収めた後、保健室のある一階へとゆっくり向かった。すると、一階には、ちょうど教室掃除のゴミ出しだろうか、それから戻る柄谷を発見した。

 

「――――国広先輩お久しぶりです。盆休み以来ですかね?」

 

 柄谷は一旦足を止めて、俺に挨拶してくれた。わざわざそこまでするなんて律儀だと思い、少し嬉しくなった。―――――こんなんでまた気分良くするなんて、節操ないな、俺・・・。

 

「おう、久しぶりだな・・・・・・。」

 

 俺の重苦しい返事で、異変に気付いたのか、

 

「・・・・・・なんか、体調ビミョーっぽいです?風邪でも引きました?夏バテですか?」

「あーうん、風邪かも・・・ちょっと体調悪くて、少し保健室で横になろうかと思って。」

「今からですか?それならさっさと帰った方が――――いや、それを収めるためにいったん休むって選択肢もありますね。」

 

 柄谷の至極真っ当な意見に返事をできないでいると、保健室横の職員室から怜が出てくるのが見えた。目と目があうと、ひらひらと手を振りながらこちらへ向かってきた。

 

「あれ遼、こっちは玄関じゃないわよ。今日神前君とカフェに行くんでしょ?なんでこんなところに?」

「それはこっちのセリフだよ。なんでまた職員室なんかに行ってたんだ?」

「ちょっと待ってください、神前君とカフェってどういうことですか???先輩って男も行ける性癖だったんですか???確かに神前君は中性的な顔立ちですけど・・・」

「勘弁してくれ、このやりとり二回目なんだ・・・」

 

 俺はさらにげんなりするのだった。

 

「まあ遼の性癖が終わっているのは今に始まったことでないとして・・・」

「おいちょっとまて?」

「実力テストの数学の途中式について、先生からいろいろ言われてね。あまりに美しすぎて、別解答として生徒に配布していいかって聞かれてたのよ。」

 

 さらりとすごいこと言ってるなコイツ。

 

「で、遼はどうしてここに?」

 

 俺が曖昧な返事でいなそうとしたら、

 

「風邪なので、保健室に行くみたいですよ?」

 

 横から柄谷が説明してくれた。もちろんそれは嘘。確かに気分はよくないが、風邪の症状が出ているわけではない。

 

「遼が風邪?ないない。だってあなた病気にならないでしょ。」

 

 けらけらと笑う怜。そんなことも怜にはお見通しなのか、確信を持って否定してきた。さしもの俺も少しイライラするが、風邪は嘘なのでなにも言えない。にしてもあれだな。馬鹿は風邪ひかないってか?随分とまあ見下した発言なことだ・・・。俺は彼女を無視して、保健室へ入った。俺を引き止める声が聞こえてきたが、無視した。静乃のことといい、怜といい、心をかき乱す事態を、頭の中から消し去りたかった。

 

 

 

 

 もし、現実がゲームのようにセーブ&リセットを繰り返せるのなら、ここはセーブポイントだったろう。この選択肢は、取るべきではなかった。この行動が、後の重大事件につながるとは、誰が予測つくだろうか・・・・・・

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