タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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5-1-4 その声色からは、無念感が漂っていた

「そもそも、女性と多く知り合いとなっておきながら、特定の誰かと関係を持たないだけで罪になるわけないだろう?」

 

「いやまあ、それはそう。でもそれを言ったらおしまいでは???」

 

 

 

 このおかしな関係を根本から否定してきやがった。まあね?俺もおかしいなと思ったよ?でもこの世界の常識で考えちゃダメなのかなって理解して、追及しなかったのに・・・

 

 

 

「彼女づくりは、我々の目的を遂行するための手段に過ぎないんだ。怜に言われなかったか?仮に彼女ができても、問題なしと判断するまでは帰らないって。」

 

「そういや、そんなことを言っていたような・・・」

 

 

 

 ・・・一見、理は通っているように見える。竜崎たちは、俺に彼女を作らせたい。けれど、表面上の関係ではなく、真の意味で長続きさせたい。ただそれなら、年末まで、というリミットを設ける必要はなくないか?人間関係を深めるのって、そんな短期間でできるものだろうか。―――――一度疑いだすと、ところどころに論理の穴があるように見える。竜崎はどうしてそんな嘘をついた?こいつらの思惑は何だ?何が真の目的だ?

 

 

 

「俺の命が天秤に乗ってしまう事態が、起こるってことだよな?」

 

「さすが国広君、察しが早くて助かる。ただ、こればかりはまだ言えないんだ。抽象的ですまないが―――――――"君は鍵となる存在"で、その鍵穴となる存在が君たちの世界にいる。その鍵穴を探すために我々はこの世界に干渉したのだ。何年も前から探し続けて、ようやく範囲を絞り込めたのが、今年の6月だ。」

 

 

 

 その時期は、ちょうど竜崎が接触してきた時期と重なっていた。

 

 

 

「―――――俺、何か特別なことしたか?俺はちゃんとこの世界に生まれて、この世界で生きてきた―――――なんら変わったことは起こってないはずだ。」

 

 

 

 両親もいる。なんなら、赤ん坊のころの写真だってある。竜崎の世界の人間でないことは間違いない―――――はずだ。

 

 

 

「―――――安心してくれ、君は確かにこの世界の人間だ。ただ、後半は違う。君は何年も前に、私たちの世界と関わりを持ってしまった。それが原因で、君は後天的にキーパーソンになってしまった。」

 

 

 

 どういうことだろうか。俺は何もしていない。怜のような異世界人と触れ合ってもいない。本当に何もしていないはずだ。

 

 俺は何とか思い出そうとしたが、あまりに漠然としすぎていて、何かを思い出そうとしても何も出てこなかった。検索範囲が広すぎる。

 

 

 

「―――――わからない、といった風だね。無理もない。だが、この件はまだ喋れないんだ。いつか時が来たら、話そう。――――でだ、鍵穴となる人物は、君の周りにいる。彼女を特定することが、我々の真の目的だ。」

 

 

 

 そこで、点と点がつながった感覚がした。俺に彼女を作らせたいのは、その鍵穴を特定するため。そして、最初に竜崎が提示してきた3つの選択肢、そのうちの二つは、鍵である俺、鍵穴である女性を殺すということ。それが意味するところは―――――

 

 

 

「――――――――宝箱を開けたら、まずいんだな?」

 

「ああ、その通りだ。」

 

 

 

 そして、竜崎は立て続けにこう語る。

 

 

 

「君の土俵に立って言うなら、君はギャルゲーの主人公なんだ。しかも、共通ルートがBAD END確定のね。そのXデイは年末だ。私と怜は、そのBAD ENDを回避するために、送り込まれてきているんだ。」

 

 

 

 俺は、手のひらがじんわりと汗で滲んでいるのに気が付いた。生唾をごくりと飲み込む。

 

 

 

「BAD ENDはどうしたら起きるんだ?」

 

「君が鍵穴となる女性とセックスしたら起きる。」

 

「は?―――――え?セックスしたらBAD END直行なの?」

 

「だからそういっている。」

 

 

 

 俺は急にぶち込まれた事実を飲み込めなかった。え?セックスがルート分岐させるの?ギャルゲーっていうか、エロゲーじゃんこんなの!?

 

 

 

「ちょっと待て、その理屈なら、俺は年末DTを捨てるのか?」

 

「何もなければそうなるな。」

 

 

 

 ほわわ!?唐突なDT卒業予告されちまったぞ???でも待てよ?竜崎の理屈なら―――――

 

 

 

「―――――BAD END回避には、俺がDTのままでいる必要があるんじゃないのか?」

 

「魔法使いになる覚悟があるなら、それがいいだろう。だがそれは、おそらく無理だ。」

 

「なぜ?俺の意志は固いぜ?」

 

「DTの意志なんて、ちょっと誘惑されたらすぐ壊れる脆いものだ。」

 

 

 

 竜崎の唐突な罵倒が、俺のメンタルを揺さぶってきた。

 

 

 

「まあ、メンタルの問題ではない。――――BAD ENDを回避したいのは、私と怜以外にもいるんだ。さっきも言っただろう?どうしてこんなまどろっこしい選択を取っているのかって。そんなまどろっこしいやり方をしていられる期限が、そこまでなんだ。」

 

 

 

 その声色からは、無念感が漂っていた。

 

 

 

「―――――強硬派がいるんだな。」

 

「ああ、問題はその派閥なんだ。ここで、先の死刑囚の話、公衆電話からかけた理由につながる。我々の世界の人間は、気軽にこちらの世界には来れないんだ。だから、強硬派の人間もうかつに動けないんだ。ただ、私のように、代替となる体があれば、干渉することは可能だ。そんな中、死刑囚生存の話が強硬派に知られてみろ、体のいい駒じゃないか。罪を帳消しとし、こちらの世界に戻すことを引き換えに、国広君とその周りの人間を行動不能にせよ、と言われたら終わりだろう?でだ、私と怜の会話は、いくらでも改ざん可能なのだが、国広君の話はそうもいかない。強硬派を含む機関の人間に、この話は聞かせられないんだ。だから、彼女づくり以外の怪しい話をあの場でできないんだ。私の通話、メールはすべて私たちの世界の機関の人間に見られるからね。」

 

「だから、足のつかない公衆電話から―――――ってちょっと待て?監視?」

 

 

 

 じゃあ俺が部屋でシコってるの全部ばれてるの???竜崎が寝静まった後の行動全部???俺は一気に憂鬱になった。

 

 

 

「ま、そういうわけで、国広君に私の考えてること、事情を知ってもらい、君の意識を引き締め、警戒のレベルを上げたかったから、公衆電話から連絡したんだ。―――――ただ、今回みたく、込み入った話をするためにわざわざ外に出かけるのも大変だから、そのためのツールを怜経由で渡してもらう。」

 

「いろいろ教えてくれたけど、怜も志は同じ、でいいんだよね?」

 

 

 

 そう俺が確認すると、竜崎は少々複雑そうな顔をしたのだった。

 

 

 

「―――――怜は私のエージェントだが、厳密にいえば、彼女は私の部下というわけではない。そちらの世界で言う派遣社員みたいなもの。怜みたいな人材を多く保有している団体がいて、そこから私のところに送られてきているだけにすぎない。私はそちらの世界に干渉することができるが、私自身がそちらの世界に渡ることができない。だから、そちらの世界に渡る人材が必要だった。だけど、誰でも良かったわけじゃない。年齢が16から17歳であること、私の世界とコンタクトを取り続け、レポートを書き続ける忍耐、演算能力、体力、そして、女性であること。これらをすべて充したのが彼女。――――――怜の忠誠心は確かなものだが、どこでそのバランスが崩れるかはわからない。信じたいところではある・・・。」

 

「まあ、俺も注意深く見とくよ。」

 

 

 

 そうしてひとしきり話し終えた竜崎は、大きく深呼吸したのだった。

 

 

 

「―――――さて、横道にそれてしまったが、萩原静乃の現状を教えてもらおうか。時系列順に頼む。」

 

 

 

 ようやく、俺が話したかった本題に切り込んできた。俺も大きく深呼吸して、口を開いたのだった。

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