タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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5-1-5 じゃあ、もう、一人しか、怪しい人がいないじゃないかっ・・・!

竜崎は神妙な顔つきで俺の話を聞いた。

 

 

 

「俺が登校したのは8時ごろだ。そのころには、既に寝ていた。俺より早く来ていた伊藤が言うには、既に寝ていたらしいから、かなり早い段階から寝ていたことになる。」

 

「ふむ・・・登校できたということは、少なくとも早朝は問題なかったということだろうな。」

 

「――――そういやそうだな。で、午前中の授業はすべて突っ伏して寝ていた。うちの学校は、寝てる奴は自己責任ということで、基本放置する先生が多い。今日はたまたまそういう先生も多く、小テストもなく、プリント配布もなかったから、誰も静乃を起こす人はいなかったんだろうな。」

 

「――――――念のための確認だが、萩原静乃の居眠りがここまで続くことはあったのか?」

 

「いや、それはないはず。授業寝てたから写させてくれ、と頼まれたことも、頼んでいる姿を見たことがない。あいつは真面目なやつだから。」

 

「・・・となると、午前中の時点で既に不審だな。午後は?」

 

「寝ている静乃を刹那が揺さぶったのだが、全く起きず、誤って押し倒しても、ピクリとも動かないものだから、そこで様子がおかしいことに気づいて、救急車を呼んだって感じ。」

 

「なるほど、では昼の時点では、睡眠から気絶に移行していたわけだな。病院で目が覚めた後はどうだった?」

 

「・・・第一声は、”皆さん誰ですか”、だったよ。そのあと錯乱して過呼吸になった。で、落ち着いてから改めて様子を確認すると、小6のさわやかだったころの静乃になっていた。中高の記憶は一切内容だった。そういう意味では、幼児退行ともとれるのかな?でも医者の診断は記憶喪失だとさ。想起で記憶が戻る可能性があるらしい。」

 

「わかった、ありがとう。」

 

 

 

ひとしきり話した後、竜崎は黙って思考を巡らせていた。俺は竜崎の言葉を待った。十数秒経ってから、重苦しく彼の口が開かれた。

 

 

 

「――――記憶喪失についてだが、"混乱してて何もかもがわかってない"感じ?それとも、"ある時期からの記憶が完全になくなってる"感じ?」

 

「おそらく後者だと思う。静乃が錯乱していた時に、直前まで車の中にいたと言っていたから。」

 

「何?」

 

 

 

そうして竜崎は、頭を抱えた。どういうことだ?頭を抱えるほど、深刻なのか?てのひらが、じんわりと汗で滲んでいるのが分かった。

 

 

 

「―――――状況証拠だけで考えると、萩原静乃は午前中のうちに睡眠から気絶に移行したといえる。外傷もないとなると、遠隔で脳に負荷をかけた、といえるだろう。」

 

 「そんなトンデモ現象、ありえるわけが―――――」 

 

 

 

俺は嫌な直感をしてしまった。最悪のシナリオが、よぎってしまった。

 

 

 

「なあ、さっき言っていた強硬派と死刑囚の話、竜崎の世界の人間は気軽に来れない、と言っていたから、強硬派がこちらに来ることは、よほどのことがない限りないんだよな?」

 

「ああ、彼らにその権利はないんだ。よほどの事態―――――それこそ、BAD ENDが目前にならない限りはないだろう。とはいえ――――」

 

「では次だ。こちらの世界に来れないけれど、竜崎が俺に一番最初にしたように、夢の中でこちらの人間に干渉することはできる、でいいのか?」

 

 

 

俺は竜崎から聞きたい言葉を聞けたので、矢継ぎ早に質問を投げかけた。

 

 

 

「全員ではないが、強硬派の幹部なら、可能だ。けれど――――」

 

「じゃあ最後に、仮に強硬派と死刑囚が既に繋がっていとしても、竜崎の世界のアイテムが物理的に横流しにされることはない、といっていいのか?」

 

「―――――――私はないと思っている。」

 

「・・・わかった。ありがとう」

 

 

 

ついこの間まで、記憶に関わるいざこざがあったじゃないか。――――――告白券だ。あれなら、人の記憶をいじくることができる。告白券を使用して、うまくいかなかったら記憶操作、破ったら記憶破壊だったよな?―――――――竜崎の今の体は、怜が用意した。協力者がいないと、そもそも物理的干渉ができない。そもそも、竜崎があの体で動き回るのはリスクがある。じゃあもう―――――

 

 

 

「――――――竜崎はないと思っているんだな。」

 

 

 

じゃあ、もう、一人しか、怪しい人がいないじゃないかっ・・・!つい最近までずっと調べ物をしていて、単独行動が急に増えた、あいつがっ・・・!俺は竜崎を鷲掴みにして、カバンの中に押し込んだ。

 

 

 

「おい!?何をしている!?話を最後まで―――――」

 

 

 

叫ぶ竜崎が邪魔だったので、カバンのジッパーをしっかり閉めた。そうして俺は、すぐさま目的の奴に電話をかけた。

 

 

 

『―――――なにかしら?』

 

「聞きたいことがある。今どこにいる?」

 

『―――――どこって?調べ物しに札幌駅だけど?。』

 

「わかった、札幌駅のどこだ?」

 

『―――――なに?話でもあるの?』

 

「いいから場所を教えろよ。」

 

『はあ、直接話したいの?急ぎ?』

 

「これで分からないのかよ?」

 

『なんか感じ悪いわね・・・しょうがない、負荷がかかるけど、転移でそっちに向かうわね。座標――――今いる場所は?』

 

 

 

 

◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

 

 

私は調べ物を中断して、多目的トイレの中に入った。そうして、転移により一旦元の世界へ帰り、そうして言われた場所に飛ぶと、そこには物々しい顔をした遼が立っていた。

 

 

 

「私を呼びつけておいて、何のつもり?というか、なんで公園にいるわけ?」

 

「いいだろ別に。」

 

「―――――ねえ、なんで怒ってるわけ?」

 

「お前が静乃の記憶を消したのか?」

 

 

 

言っていることは理解できた。が、納得はできなかった。意味が分からなかったからだ。何をどうしたら、私が静乃の記憶を消すという発想になるんだ。ただでさえ、竜崎さんの調べ物が全然終わらず、連日徹夜が続いているのだから、これ以上私の頭を悩ませないでほしい・・・

 

 

 

「―――――言っている意味がさっぱりわからないわ。論理が飛躍しすぎているわね。どうしてそう思ったの?」

 

 

 

こめかみを抑えて軽くマッサージした後、再度遼を見据えた。彼はぎろりとこちらをにらんだ。

 

 

 

「しらじらしい奴だな・・・。外傷もなくいきなり記憶喪失になんてなるわけないだろ。だが、お前なら持っているじゃないか、記憶を消すアイテムを。」

 

「は?―――――――ああ、告白券のこと?まあ告白権なら記憶を消せるけど、関係なくない?それに、告白券で消せる記憶は記入日から2週間までで、静乃のように数年単位は―――――」

 

 

 

その時、私は奇妙な違和感を覚えた。ちょっと見ただけでも、静乃は明らかに幼児退行していたのがわかった。本来の静乃なら取り得ない行動をとっていた。こんなにくっきりと記憶が抜け落ちる、というのは、普通の記憶喪失とは異なっている気がする。そういう意味では、告白券による記憶消去と非常に近い。唯一つじつまが合わらないのは記憶操作期間。記憶操作は、告白券のチャームを手順通りに消すかどうかで分岐する。今回のケースは、記憶破壊に近い気が・・・いやでも、想起で思い出せるとするならば、記憶封印の――――――

 

 

 

「―――――点と点が繋がったかもしれないわ。ありがとう、遼。」

 

「は?」

 

 

 

私は遼の肩をがっしりと掴んだ。遼はなぜか私に敵意むき出しだったけど、今度は私の言葉が理解できなかったのか、素っ頓狂な声をあげていた。そうしてまじまじと私の顔を見た後、徐々に落ち着いた表情となり、やがて眼をそらした。

 

 

 

「とりあえず、私は告白券を静乃に対して使っていないのは間違いない。そもそも性別が違うのだから駄目よ。――――ただ、告白券以外で、記憶をいじる方法がないのも事実。」

 

「あ、ああ・・・」

 

「もっとも、今回の静乃の記憶喪失が、告白券によるものか、本当に突発的に起こった事故なのか、それはわからない。ただ、それがわかれば、静乃を元に戻せるかもしれないわ。」

 

「何!?」

 

「けれど、どうやらそれは私にはできないみたい。」

 

 

 

そうして私は、遼の目をまっすぐと見据えた。

 

 

 

「静乃はどこまで覚えていて、どこから忘れているか。そして、これが“本当に記憶喪失なのか”を調べるの。それができるのは、唯一小6の静乃と接点のある、あなたしかいないわ。」

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