タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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5-1-7 その好意を無碍にするのは、違うよな。

 LINEには、公式メッセージが画面上部を埋め尽くしていた。そうして一つ一つどうでもいいメッセージを消してスクロールすると、一番下には公式じゃないメッセージが来ていた。その相手が・・・・・・

 

  

 

「・・・・・・静乃からのメッセージがある。」

 

 

 

 俺は急いでトーク画面を開いた。そこには時間をおいて、3つだけ。

 

 

 

[遼、体調悪いって本当?アホだし風邪ひくことないでしょ。

 

 早くこっちに来てよね。]16:02

 

 

 

[もしかして本当に体調悪い?

 

 いじりの度が過ぎていたら謝るよ。]21:57

 

 

 

[刹那のことでいろいろ面白いことがあったからさ、早めに来てくれない?]6:30

 

 

 

 最後のはおそらく、建前だろう。じゃなきゃ、わざわざ時間指定なんてしない。俺が連絡を返さないから、静乃が変な勘違いをしたまま、朝を迎えている。俺は、気づいたらスマホを強く握りしめていた。―――――たった一日スマホを見ないせいで、取り返しのつかないことになった。やけに静乃が早くきていたのも、そしてずっと眠りに落ちていたのも、すべては俺のせい・・・

 

 メッセージに返信をすることはできる。けれど、それは静乃ちゃん宛だ。もう静乃に返事を送ることはできない。視界が滲み、涙が頬を伝った。手の甲でそれをぬぐって、両頬をパンと叩いた。―――――――絶対に、静乃は俺が何とかする。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 覚悟を決めた俺は、まず状況整理をするため、ノートに現状を書き出した。小6の秋ごろ、静乃に何かが起こったのは確定だろう。今の静乃はダウナー陰キャになる前の静乃だ。ということは、陰鬱になるきっかけのこと、そしてそれ以降の記憶をなくしていると言えよう。ただ、発狂した様子から察するに、きっかけの一部、おそらくスタートの部分までを覚えているのだろう。そのきっかけの出来事の途中から、一切覚えていないのだろう。記憶をなくしてしまうほどの、何かが。これは俺の推測だ。本当にそうかを確かめるためには、静乃本人と、その両親に事情を確かめるしかない。だが、静乃本人はさておき、両親に聞いて果たして答えは返ってくるか?『治療のカギとなるかもしれないから、昔の静乃に何があったか教えてください』なんていって、素直に教えてくれるか?俺は静乃の親と全然交流がないから―――――――――

 

 その時、俺に電撃が走った。

 

 

 

 静乃の従姉の常和さんがいるじゃん!

 

 

 

 従姉に話していないわけがない。ましてや、お見舞いにまずきていたのが彼女であることからして、関係はより深いに違いない!だが、この内容はおそらくとてもデリケートだ。丁寧に、事を進めなくてはならない。どうやって進めるべきか・・・。

 

 ハッとして時計を見ると、気が付いたら、もう夜10時を回っていた。もう風呂入って寝る準備入るかな、なんて考えていとき、ふと自分のカバンの中に竜崎を閉じ込めていたことを思い出した。完全に忘れていた。俺は急いでカバンを開けると、俺をぎろりとにらみつけた。そうしてカバンの中から飛び出して、俺の顔に飛び蹴りを入れてきた。流石にちょっと痛いゾ・・・

 

 

 

「国広君、ひどいじゃないか・・・」

 

「いや、マジでごめん。いろいろと・・・」

 

「そこに正座しなさい。」

 

 

 

 俺は言われるがまま、その場に正座させられた。竜崎の説教が酷く長引きそうな嫌な予感がしたので、俺は竜崎に怜から言われたこと、静乃の記憶喪失の境目について聞こうと、

 

 

 

「・・・そうだ竜崎―――――――――」

 

「ストップ。」

 

 

 

 質問したが、竜崎は手を前に突き出して俺の言葉に待ったをかけた。その時俺は、竜崎が俺に言った、監視されているという言葉を思い出した。NGテーマがある以上、部屋の中で俺から突っ込んだ話をするのは、怜から渡されるらしいアイテムを待った方がいいか。俺はあきらめて、口を結んだ。そうして、竜崎の説教を覚悟して受けるのだった。竜崎が説教したいからなんじゃね?と、終わらない説教の中、そう思ってしまったのだけれど・・・

 

 

 

 

 8/21(金)

 

 

 

 

 

 朝起きて、いつも通りの身支度をした。そうして家を出ると、怜がいつものように待っていた。そして怜は、「当面の間、私は静乃と接触できない。ファーストコンタクトに失敗したから。」というのだった。この件は、俺が何とかしなくちゃいけないと、非常に納得した。とはいえ、じゃあ今すぐ常和さんに連絡して根掘り葉掘り聞くのは時期尚早と思った。実際、怜が言ったように、まじで一時的な記憶喪失なだけかもしれんし。それなら、まずは、あいつを社会復帰させるのが先なんじゃないか?そうやって頭をひねりながら登校すると、同じように教室内で頭をひねっていそうな刹那がいた。腕組みして考えては、頭をひねる。これを繰り返していた。こんな光景は初めて見たかもしれない。

 

 

 

「おはよう刹那、やっぱ昨日の件?」

 

 

 

 俺が話しかけると、ゆっくりとこちらに顔を向けた。明らかに顔色が悪い。目の下にクマもある。寝れなかったんだろう。

 

 

 

「―――――ああ、遼君、おはようございます。その通りです。私がしてあげられることって、何があるのかなって。」

 

「それ俺も思った。――――で、まずはあいつを社会復帰させるのが先かと思うんだ。いつまでも入院してるわけにはいかんでしょ?」

 

「――――ですね。その通りです。まずは、いつもどうやって過ごしていたか、とか、高校は楽しいところなんだよってことを、教えてあげないとですね。」

 

 

 

 刹那ははにかみながら、そういったのだった。腫れた目元と黒いクマが、その笑顔を、ひどく痛ましいものにしていた。ほどなくして始まったHRでは、千歳先生が静乃について「命に別状はないが、一時的な記憶障害を引き起こしていて、次の登校日は未定。」と告げた。一時騒然としたが、すぐに収まった。騒ぎ立てるのは不謹慎と、みんな思ったからだろう。茶化す人間がいなくてよかったと、心底思ったのだった。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 朝の時点でつらそうにしていた刹那は、授業が始まってもずっと苦しそうにしていた。ノートを取る手は何度もとまり、退屈な授業では寝落ちさえしていた。俺の知る限り、彼女が授業中に寝るところは見たことがない。昼前の千歳先生の授業が終わり、昼休みが始まる。だが、俺は飯を食わず、ある所へ向かった。昼前の千歳先生の授業終わり、「この後物理準備室に来るように」と言ってきたもんだから、先生と一緒に並んで物理準備室へと向かっているのだった。物理準備室に入ると、先生から椅子に腰かけるように言われた。言われるがまま、俺は席に座った。

 

 

 

「萩原さんについてだけど、お見舞いは基本、本当に仲良くしていた人だけとする予定だ。」

 

「な、なるほど。納得ではあります。」

 

 

 

 静乃関連のことだと思ったら、案の定その話題を振ってきた。

 

 

 

「で、医者の説明にもあったけど、想起による治療を進める必要がある。だからこそ、今の萩原さんには、想起を引き起こしてくれそうな人を優先的に充てたいと思っている。」

 

「なるほど、自分ってことっすね。」

 

「そうなるね・・・」

 

 

 

 ふざけて返事をしたのだが、真面目な返答が帰ってきてちょっと拍子抜けした。

 

 

 

「早速なんだけど、今日もお見舞いに向かってほしい。一番仲良かった中河さんも連れて行ってほしいけど、かなり憔悴していたから、可能なら、という形で。」

 

 

 

 そういって、千歳先生は頭を下げた。

 

 

 

「そんな、頭をあげてください。もとより、やつを社会復帰させるのが先だろう、と思っていたところでしたし、お願いされるまでもなく、やっていますから。」

 

「国広君、ごめんな・・・」

 

「――――やっぱり、身内だから、より心配になりますか?」

 

 

 

 そう俺がちょっと踏み込んだことをいうと、千歳先生は少しばつが悪そうな顔をして、「そうだよ」と答えたのだった。

 

 

 

 

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 千歳先生の用事が終わり、教室に戻る途中、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、真面目な顔した戸隠さんが立っていた。

 

 

 

「静乃ちゃん、記憶喪失だって。」

 

「――――そうなんだよ。」

 

「遼君、今日お見舞い行くの?もし行くなら私も連れて行って。」

 

 

 

 先ほどの千歳先生の言葉を思い出す。静乃と仲のいい人に限定させたい、という言葉。戸隠さんはまだ付き合いが短い。そういう意味では、千歳先生の想定する人脈からは外れるのだろう。だが――――

 

 

 

「うむ、戸隠さんも、やつの社会復帰に協力してほしい。いつも通り接してくれれば、もしかすれば簡単に記憶が戻るかもしれんしな。」

 

 

 

 まっすぐ、凛としてこちらを見やる彼女は、本気で静乃のために何とかしたいと思っているように見えた。その好意を無碍にするのは、違うよな。

 

 

 

「―――――――私は付き合いが浅いからまだましかもだけどさ、それでも、短い期間の中で過ごした時間は濃密で、決して忘れられないこと。ほんの少しの記憶でも、自分の意思に反して、それを失うなんて、絶対に嫌。静乃ちゃんはそうなってしまった。私がつらいというよりも、そんな状況になってしまった彼女がかわいそう、と思ってしまう。―――――あ、勘違いしないでね。同情してしまう自分を何とかしたいから、お見舞いに行くわけじゃないから。」

 

 

 

 その言葉を聞いて、俺は胸が締め付けられるほど苦しくなった。不発とはいえ、彼女に告白券を使ってしまった事実は、消えない業なのだな、と改めて自覚した。業を消すには、責任を――――と考えたが、傲慢な好意なので、考えるのをやめた。

 

 

 

「そんな卑屈な考え方しないよ。むしろそんな発想がすぐ出てくるあたりちょっと心配になる。」

 

「あはは、ごめん気にしないで・・・。てかさ、静乃ちゃんの親友だし、刹那ちゃんも呼ぼうか。今回の件は私以上にダメージ食らってるはずだし、彼女のケアも必要じゃない?」

 

 

 

 その言葉にハッとした。うつ病患者を介護している人がもらい鬱となる。そんな事例がある。静乃を何とかしないと、と追い込みすぎたせいで、刹那も病んでしまったら最悪だ。

 

 

 

「――――そういう意味では、今日は危なげだったよ。」

 

「ちゃんとご飯食べてるかな、ちょっと心配になるね。見に行ってみよっか。」

 

「それな。てか俺は飯まだだから早く食いたいんだわ。」

 

「そうだったの!じゃあ一緒に食べない?」

 

 

 

 流れるように約束を取り付けてきた。戸隠さん、飯まだだったんかい。

 

 

 

「はは、まずは刹那の様子を確認してから―――――」

 

 

 

 そう言いながら教室に入ると、異変に気付いた。刹那の机の上には教科書とノートがそのまま開かれて置いてあり、本人はどこにもいなかった。普段の刹那は、授業が終わったら、すぐそれらは閉じてしまう。出しっぱなしになどしないのだ。

 

 

 

「おい伊藤、刹那見なかったか?」

 

 

 

 その辺にいた伊藤に確認を取ったところ、

 

 

 

「足取り重く出ていったのをみたけど・・・」

 

 

 

 なるほど、ありがとう。それは重要な情報だ。

 

 

 

「生徒会室か、保健室かな。――――戸隠さん、生徒会って今忙しい?」

 

「まあ、基本忙しいけど、刹那ちゃん昨日休んだし、その遅れを取り戻そうとしている可能性は、あるかな。」

 

「なるほどわかった。ひとまず生徒会室いってみよう。」

 

 

 

 俺と戸隠さんは、Uターンで教室を出て、生徒会室へと向かった。だが、そこにたどり着きはしなかった。階段を降りた先、他学年が基本居ないエリアにて、刹那が壁にもたれかかって座り込んでいた。

 

 

 

「刹那ちゃん!?」

 

 

 

 戸隠さんはすぐさま刹那に駆け寄った。刹那は憔悴しきった顔をこちらに向けてきた。

 

 

 

「あ、ああ、桜子さん。すみません、ちょっと気分がすぐれなくて・・・」

 

「ちょっと待っててね、応援呼んでくるから。―――――遼君!あの人呼んできて!」

 

 

 

 戸隠さんのいうあの人、ぼかされていたが、俺にはわかった。今週の話の流れ的に、あいつしかいねえ!俺はあいつに鬼電した。そうして事情を伝えると、ものの数十秒で奴はとんできた。

 

 

 

「少年!大丈夫か!?」

 

「ハム、こいつを保健室に連れていってやってくれ。」

 

「何を、言うのです・・・。行先は生徒会室ですよ・・・」

 

「いいや、その話は聞けんな。そんな状態でいる少年を、この私が放っておくわけないだろう?」

 

「・・・そうですね・・・」

 

 

 

 そうしてハムは刹那に肩を貸してやり、無理やり立ち上がらせて、保健室まで連れて行ったのだった。

 

 

 

「―――――刹那ちゃん、今日早めといたほうがよさそうだね。」

 

「だな・・・。じゃあ、二人で行くか。」

 

 

 

 二人の背中が遠くなった後、俺らはそうつぶやいたのだった。にしても、ここまで刹那がやられるなんて、静乃、お前本当に愛されていたんだな。絶対に、元に戻してやるからな。

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