堕落勇者に立ち上がり -ギフト・ソード・ワールド-   作:はんペソ。

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第9話

堕落勇者の立ち上がり

第9話「ユーデンガル・クレシュティーン」

 

一人で孤独に道を進む、六日間以上少しの休憩を入れてずっと歩いている。そして遂に到着した。そして家がある方を向いてみる、非常に素朴な家に小さな畑、そして目を真ん丸にしている女性がいる。女性は何故人がいるのか不思議に思っていて首をかしげている。

青年は水を取り出し頭にぶっかけた。すると装髪剤が取れ真っ赤な髪が露わになる。すると女性は

 

「あらま」

 

とぽつりと言って持っていた野菜を落とした。そして家の中に入って誰かを呼んでくる。出て来たのは少しひげを生やしている赤髪のおっさんだった。そしておっさんは近付いて来てから剣を抜き斬りかかった、青年は抵抗せず首を飛ばされた。だが一瞬にして元の状態に戻る。

 

「本物か」

 

「ええ」

 

「ラックから聞いてはいたがホントだったのか」

 

「はい」

 

「何のために来たんだ?」

 

「訓練、お願いしたいです」

 

おっさんは唸って悩み始める、そして溜息を吐いてから了承した。ただ二日間だけだと釘を刺した、青年は心の中で喜んでいた。そして家に招かれる、そして椅子に座らされ幾つかの質問を投げかけられる。

 

「年齢は?」

 

「十八です」

 

「二つ剣を持ってるけど双剣タイプか?」

 

「いいえ、一つがギフト・ソードでもう一つが何の変哲もない剣です」

 

「分かった。じゃあアビリティは何だ」

 

「『一日に一回死んだ際に完全回復』するです」

 

「めっちゃ強いじゃねぇか...いいなぁ」

 

「貴方の能力は何ですか?」

 

「『空を飛べる』だぜ?弱すぎるだろ」

 

そしてそこからはおっさんの愚痴が始まった。冒険の時に全てラックやゴドルフィンに獲物を取られた話や魔王討伐の時アビリティが全く意味を成さなかった話など様々な話を聞いた。そして話に区切りがついたところでおっさんは青年に名を訊ねる。

 

「そんで名前は」

 

「[アルス・ラングレット]、です」

 

「アルスか。俺は[ユーデンガル・クレシュティーン]だ。何て呼んでも良いぞ」

 

その後はアルスの冒険の話をしていた。次第に夜がやってくる、そして寝床の場所を説明されてから休息を取ろうとする。だがおっさんは寝かせず外に連れ出す、アルスは眠そうにしながら付いて行く。

そして着いた場所は何もないが周囲の木が切り倒されている林の一角だった。そしておっさんは剣を抜きながら言う。

 

「今日の内に実力を見ておく、アビリティは使えないだろう。俺も魔王討伐時に消えた。だから単なる剣での勝負だ、殺しはしない。これは守れ、どんな怪我でも俺の嫁さんが治してくれる。じゃあ、行くぞ」

 

アルスは話を聞きながらギフト・ソードを納めている鞘から出ている柄に手をかける。そして剣を振りながら突っ込んでくるおっさんに向けて剣を振る。受け流すわけでもなく攻撃に特化した剣の振り方だ、おっさんは驚きながらも動きを変えず斬りかかった。

 

「そう言う事か」

 

アルスのトンデモ作戦に少し笑っているおっさんの腕からは血が垂れている。どういうことかと言うと剣を振ったのではなく投げたのだ、そして腕に傷をつけた。これは二つの剣を持っているアルスだからこそ出来る技だ。すぐにもう片方のアビリティが無い剣を抜きそっちでおっさんの攻撃を受け流した。

 

「思っていたより弱いんですね」

 

「舐めんなよ、俺はアビリティに頼らず生き残って来たんだ。こんぐらい楽勝だ!!」

 

おっさんは凄まじいスピードで剣を振る、アルスは剣では無くおっさんの顔を見つめながら全ての攻撃を交わした。そして一秒も無い隙を作り出したおっさんに斬りかかった。だがおっさんは完璧に受け流す、もう誰も目で追えないであろうスピードで腕を動かしている、文字通り人間の出していい技ではない。

 

「なんだよそれ」

 

アルスは困惑気味に呟く。おっさんは笑いながらそのスピードを崩すどころかもっと上げて攻撃する、アルスは受け流しきれるはずがない。なんせ最低でも一秒に五振りもしている。

物凄い勢いで血が噴き出していく、そしておっさんの歳不相応な笑いを最後に気を失った。

 

「あ!起きた!」

 

奥さんがそう言ってアルスに近寄って来る。アルスは体を起こす。すると既に夜が明けていた。奥さんはおっさんを呼んできた、そして謝るおっさんに説教をする。だがその合間合間に惚気が入っているせいでアルスは内心「何を見せられているんだろう」と思っていた。

 

「よし。じゃあ体も治ってるし訓練をつけてやろう」

 

「分かりました。今日は何するんですか」

 

「まず俺が良いと言うまで素振りだな」

 

「そんな事して何になるんですか」

 

「お前は勘違いをしている。目標は素振りではない、自分を斬る事だ」

 

それを聞いたアルスはきょとんとしている。実感が湧いていないのだ。それに気付いたおっさんは説明してあげる事にした。

 

「まず馬鹿みたいに速いスピードで斬る、そしてその剣のエネルギーが前進する前にそこに突っ込む。剣と体どっちも鍛えられるいい訓練だ。俺達は魔王の特性上手数を増やしまくった。そのせいでこう言う訓練しか出来ない」

 

「分かりました、ですが説明されても想像が出来ません。実践してください」

 

「ん?別にいいが」

 

そう言っておっさんは剣を持ちながら外に出る、奥さんも回復の為かついてくる。そしておっさんは剣を振る、そしてすぐに移動する。すると言っていた通りおっさんの体から血が出た。

 

「いってえええええ!!!」

 

そう絶叫するおっさんに奥さんが回復魔法をかけた。アルスは非常に驚く、何故杖も魔法陣も無しに魔法を使えているのか。だが奥さんは「ひ・み・つ」とウインクしながら人差し指を口に当ててそう言い家の中に入っていった。

アルスは少しだけドキッとしたが人妻と思うと冷めてしまう。だが魔法の件については凄く興味があったのでおっさんに話しかける。だがおっさんは素振りをしながら話せと言い適当な場所に座った。アルスは素振りをしながら訊ねる、これぐらいなら余裕なのだ。

 

「あいつ俺の一世代前の勇者の仲間である僧侶の孫なんだよ。そんで上手く遺伝してあそこまで魔法が上手いのよ。ちなみに俺は三十九であいつは二十六な」

 

「結構年齢差があるんですね、でもラブラブですよね」

 

「あぁ。俺が良い男過ぎるからかな」

 

「まぁ顔は良いですよね、顔は」

 

「なんだよその含みのある言い方は..まぁ実際に勇者も魔王も歴代顔が良いって言われてるからな。例外なくお前も良い男だ」

 

「え、何ですか既婚者なのに口説いて来てるんですか..それも男に...」

 

「バカ言ってんじゃねぇよ...そういや五年前だったはずだけどゴドルフィンとラックはどうだった」

 

「凄く良い奴らでしたよ。魔王が宣戦布告をして来た時に僕も正体を明かすつもりなんですが二人と鍛冶屋の村ガリキガラクの青年、そしてある魔法使いの女の子を誘うつもりです。僕の剣を取り戻した時と全く同じメンバーです...そう言えば写真に写ってた犬はどこにいったんですか?」

 

「[アレキサンダー]か?確か俺らの家の付近にある魔物の地域で只管魔物と魔人を殺しまくって護ってくれてるはずだぞ、なんかそこら一帯のボスらしい」

 

アルスは驚きながらもどんどん素振りのスピードを上げて行く。この素振りはどれだけ速く剣を振ることが出来るかを試す為のものなのだろう。そしてアルスが出せる最大のスピードまで到達した。だがおっさんは止めようとはしない。

 

「もう..限界..なんですけど!」

 

「駄目だ、遅すぎる。今回の魔王がなんの能力なのかは知らないがこれじゃ普通に負けるぞ。魔王も恐らく十八歳前後だろうから相当練度が高い、俺の時はどっちも二十歳だったから分かる」

 

アルスはもう返事をする余裕もない、ひたすら剣を振り続ける。そして三百秒程経ったその時おっさんがやめさせた。ただ声をかけるだけじゃない、腕を掴んでやめさせた。アルスはハッとする、集中し過ぎて何も感じていなかったのだ。

 

「めっちゃ速かった。少しかっこをつけた言い方をしよう、限界の先(ゾーン)へようこそ」

 

アルスはよくわかっていなかった、思い返すと記憶が無い。本当に集中している時は記憶なんて残らない、虚無の時間なのだ。

そして奥さんが少し遠くから洗濯を干しながらアルスの方を見ていた。そして来た時と同じように「あらま」と言って手を止めている。

 

「とりあえず休憩するか」

 

おっさんはそう言って水を差しだした。アルスは飲みながら会話を始める。

 

「貴方の時の魔王ってなんの能力だったんですか」

 

「『未来予知』だ。そのせいで重い一撃入れようとしてぼっこぼこにされたせいで一回逃げた、それで当時独りで戦ってたけど仲間を集めて特訓して未来予知が出来ようが対応できないぐらいのスピードでぶっ殺した。まぁみんなの協力あってこその勝ち方だったけどな」

 

アルスは興味あるのか無いのかよく分からない反応をする。おっさんは構わず話を続けた、城下町へ向かった事、ゴドルフィンと仲間になった後五歳のラックを引き入れた事、そして何の能力も持たないアレキサンダーと言う犬を招き入れ全員で特訓を重ね魔王を討伐した事、そして隠居生活を送っていて宮殿に用事があって城下町に行ったら奥さんと出会った事など全てを話した。

アルスは惚気話の時は分かりやすく聞く気が無かったが勇者の事に関しては熱心に聞いていた。

 

「なんで犬を?」

 

「うーん..なんとなく」

 

「えぇ...」

 

アルスはドン引きしているが話を聞き続ける。そして話が終わると同時に訓練を再開した、物凄い勢いで斬ってその場所に突っ込む。一瞬で斬れなかったらもう駄目なのですぐに振り直す。

それを続けるが一向に成功の兆しは無く日が沈む、おっさんは家に戻ったがアルスはずっと剣を振って突っ込んでを繰り返している。

 

「じゃあ俺らは寝るからな~明日の朝に寝てたらどんな状況でもたたき起こすからしっかり寝ろよ~」

 

そう窓から言ったおっさんは奥さんと同じベッドに向かって行く。そしてイチャコラしている音が聞こえてくる、アルスはその声がうざったらしく感じ剣に視線を向け最大限集中する。

どんどん集中力が増して行く。そしてある一定まで到達した瞬間プツリと周囲の音が聞こえなくなり剣のエネルギーが目で見えるようになった、当然そこに突っ込むだけだ。

スパッそんな音が聞こえると共に極限状態(ゾーン)が終わった。そして体から血が出てくる、音を聞いたのか上半身裸のおっさんが出てくる。

 

「...なんで上裸なんですか」

 

「察しろよ。そんで出来たのか」

 

「あ、はい。出来たっぽいです。なんか急に周りの音が遮断されて剣のエネルギーが目に見えたんです..」

 

「それが限界の先(ゾーン)だ。それさえマスターできれば魔王ぐらいへっちゃらだ」

 

「それより痛いんですけど...」

 

「あーあいつ今疲れてぐっすり寝てんのよ..起こすのも申し訳ないしなぁ」

 

「なんで疲れてたんですか?」

 

「察しろよ」

 

「はぁ...それでどうしましょうか」

 

二人が悩んでいると丁度いいところにある御尋ね者がやって来た。おっさんはその人を見るとすぐに駆け寄る。そして凄くニコニコして丁寧に話している、アルスはあの老婆と何か関係性があるのか訊ねてみるとおっさんは「嫁さんのおばあさんだ、二世代前の勇者パーティー一行の一人、僧侶」と言った。

その老婆はアルスの方を見て目を丸くしぎょっとする。アルスは何故そんな驚いているのか分からなかったが視線を向けられている方向を考えてみる、髪だ。

 

「あ..」

 

「お主!!...いやよく考えればあいつから聞いていたな。五年前ぐらいに」

 

「え?あいつ?」

 

「ガリキガラクの尊重だ。バリゲッドを連れまわしたと聞いたぞ」

 

「ええ!?村長って勇者一向だったんですか!?」

 

「聞いとらんのか..そんな事よりわしがここに来たのはお前の為じゃ」

 

そう言っておっさんの方を見る。おっさんは何の件か気付いたようで凄くソワソワしだす。老婆は着ているローブの中から剣を取り出し放り投げた。おっさんは急いで掴む。

 

「研ぎ終わったそうじゃ。好きに使うと良い、後代えの剣を返せとのことじゃ」

 

「分かりました」

 

おっさんは急いで家の中から剣を取ってくる。そして老婆に手渡した、老婆は状態をチェックしてからおっさんの頭を杖で叩いた。

 

「もう少し丁寧に扱わんかい!!」

 

「いや違うんすよ!こいつの力試しの時に使ったんですけどこいつの力が強すぎてこうなっちゃったんです!」

 

よく見てみると刃こぼれが酷い。老婆は溜息を吐いてから帰ろうとする。だが一度足を止めアルスの方を見て言い放つ。

 

「頑張るんじゃぞ」

 

そして老婆は歩いて行ってしまった。何故老婆が来たのか訊ねてみるとおっさんのギフト・ソードの状態が酷かったので補修したらしい、村長が無理矢理剣を奪っていったとの事だ。そしてその時強引だったのは既にいつ戦いが起こってもおかしくない状況だったからだとおっさんは推測した。

 

「そういう事でしたか..というか体が治ってるんですけど」

 

「あぁあの婆さんが治してくれたんだと思うぞ。良かったな」

 

アルスは心の中で感謝する。

そしてその後は雑談をしていた。そして日が昇り始めるとアルスは少しだけ眠くなってくる、あくびをしようかと思ったがすぐにある異変に気付き剣に手をかけた。おっさんも気付いているようで剣を抜く、何が起こったのかすぐに理解した。二人の近くにある男が立っている。

 

「やぁ!ボ・ク!と会うのは久しぶりダ・ネ!」

 

魔王直属の部下の一人ファンタスティアだ。アルスは剣を抜こうとするがよく見るとファンタスティアには敵意が無い。そしてよく見ると背中に犬が噛みついている。

 

「アレキサンダー!?何してんだお前」

 

「ぐるる...」

 

そう音を鳴らす。どうやら魔人だと感じ攻撃をしていたそうだ。おっさんが無理矢理引きはがしなだめる。アレキサンダーがある程度落ち着くとファンタスティアは話を始めた。

 

「ボ・ク!が来た理由はただ一つ!魔王様が宣戦布告をする!」

 

「何!?」

 

「アルスには先に伝えろと言われたから来たが散々な目にあったよ!それで正式に宮殿に宣戦布告するのは今日のお昼頃だ。宮殿に何をするかは分からないね」

 

そう言うファンタスティアの顔から分かる。絶対に何かする気だ、アルスはすぐにで宮殿に向かわなくてはと思い立ち上がる。だがおっさんが引き留め最後まで話を聞くよう諭しもう一度座らせた。

 

「そして我々からアクションを起こすのは今回ダ・ケ!だ!いつ魔王城に来ても大丈夫な状態だ!だからいつでも来ると良い、ただあまりに遅すぎるとこっちも手段があるカ・ラ!ね!それじゃあ!ば~い」

 

ファンタスティアはそう言うと姿を消した。それと同時に裸で布一枚だけの奥さんが家から飛び出して来る。アルスはそこでやっとおっさんが何を察してほしかったのかを理解した。

 

「何あれ!!」

 

おっさんが全てを説明した。すると奥さんは急いで家の中に戻る、そして何かを集めているようだ。そして六十秒程して服を着て出てくる。そして袋をアルスに手渡す。

 

「あんまりないけど金貨二十枚ぐらいは入ってる!万全の状態で行ってらっしゃい!!」

 

奥さんはそう言って背中を叩いた。アルスは心の底から感謝してから宮殿へ向かおうとする。するとおっさんが引き留める。

 

「アレキサンダーに乗ってけ!クソ速えから!」

 

「分かりました。頼むよ」

 

大きな犬の背中に乗る。乗ってみると分かる、思っていた以上にデカい。アレキサンダーは目的地をおっさんに聞くとすぐに走り出した。

やはり物凄く速い。一瞬で宮殿に着いてしまいそうだ。だが目的地を変えさせた。そうガリキガラクだ、目的はただ一つ[バリゲッド・アーケイン]だ。五年ぶりの再会だがそんな事頭に無かった、すぐにでも仲間を再集結させなくてはと言う考えで頭が一杯だった。

四人、集めるのだ。

 

 

第9話「ユーデンガル・クレシュティーン」

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