また、普段より話が長く、文章量も多いです。重ねてご了承ください。
「……そうか、分かった、すぐ行く」
月明かりのみが照らす常闇の夜。街も人も寝静まったこの時間に、夜に染った人影が一つ……。
本部からエニグマ発生の通報を受け、今日も今日とて彼、常夜 晴政は狩りへと出かける。
木々の間を抜け、軽々と川を飛び越え、凄まじいスピードで現地へと赴く。
まさに『夜に溶け込む者』である。
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現地に着くや否や、まず目の当たりにしたのは負傷した隊員達。それも見た目からして見習い隊員達の集まりなのだろう。
小隊の隊長らしき人に話を伺う。
「遅れて申し訳ない。特攻部隊所属、常夜 晴政だ」
「おぉ……来てくれたか……第47小隊隊長、岡谷だ……って、援軍は君だけなのか……?」
「僕一人居れば十分だ。して、状況は」
すると隊長は遠くの方を指さす。そこには巨大な、天使のようにも見える黒いものが浮かんでいた。
「あれが『目標』、中級エニグマ・T4、コードネーム『ダテンシ』だ……
見てもらえば分かるだろうが、奴はかなりすばしっこく、尚且つ爆発物を投げてくる
近接戦では全く歯が立たない」
なるほど、爆発物、か……
確かに怪我をしている隊員達を見ると、所々に火傷の跡などが見受けられる。
「状況は分かった
ま、少し小手調べといきますかね……
アンタは小隊連れて安全なとこに逃げてな」
そう言うと彼はライフルを取り出し、エニグマの元へと駆けていく。
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「チョコ……チョコ…………ウラメシ……」
「すばしっこい奴め!お前ら!砲撃部隊の為に時間を稼ぐぞ!」
「うわぁ!また爆弾を投げてきたぞ!」
「しかもあっちは砲撃部隊が陣取ってる場所だぞ!」
「位置がバレてたか…………!」
「ここは一度体勢を立て直したほうが良いのでは!?」
現場ではエニグマの強さに騒然としており、数々の作戦が失敗したのが、地面のクレーターの多さを見れば一目瞭然である。
こちらも辺りには負傷している隊員達が多く、下手をすれば死人も出かねない極限の状況である。
「今俺達がここを退いたらコイツは街に乗り込んじまう……それだけは何としてでも避けなければならない!」
「しかし!これ以上は我々の命が!」
「……ウラメシ!!!」
するといつまで経っても粘り強く抗う隊員達に痺れを切らしたのか、ダテンシは特大爆弾を構える。
「まずい……!仕方ない……みんな!逃げろ!」
「ダメだ!間に合わない!」
特大爆弾が手から離れようとしたその時、一発の銃声と共にダテンシの手元で特大爆弾が爆発する。
ダメージこそ無いものの、ダテンシは怯み、突然の出来事に驚いているようだ。
「た、すかったのか……?」
「気を抜くのはまだ早いぜ、モタモタしてると第二撃が来るぞ」
ライフルを構え、一歩ずつダテンシへとにじりよっていく。
「貴方は……」
「特攻部隊所属、常夜 晴政
話は後だ、ソイツら連れて逃げな」
「……分かりました、後は頼みます」
隊員達が全員逃げたのを確認したところで、再びダテンシが爆弾を飛ばし始める。
見習いが多いとはいえ、あそこまでの怪我人を出しただけあり、爆弾一発一発の威力は高く、地面は瞬く間にクレーターだらけになっていく。
こちらもライフルでダテンシの弱点と思われる箇所を狙うが、全て華麗に躱されてしまう。
「……回避性能が桁違いに高い
こりゃ視認されてちゃ手も足も出なさそうだな……」
頭の中で様々な戦法を練る。
そして導き出された答えは……。
「回避が追い付かない程の連撃を浴びせりゃ良いじゃねぇか」
武器を刀に切り替え、飛び掛かろうと構えたところで、突然何者かの声が聞こえてくる。
「はぁ……相変わらず脳筋プレイしようとするんだね、お兄ちゃんは……」
それと同時にナイフの弾幕がダテンシを襲う。
何発かは弱点に当たっているはずだが、ダメージには至っていない事も見逃さない。
尚も怯むエニグマの向こう側には、自分と似たような見た目をした青年が立っていた。そう、それはまるで…………
「久しぶりだね、
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爆撃、斬撃、砲撃。
様々な攻撃が飛び交うが、互いに決定打とはならず、時間だけが過ぎていった。
だが、お互い体力も尽きてきたようで、突然、ダテンシは僕らに背を向け一目散に逃げていった。
恐らく向こうも体勢を立て直して再度侵攻しに来るだろう。
ハニー切れ間近の身体を起こし、先程から共闘していた青年に声をかける。
「お前……さっきお兄ちゃんとか言ったよな……
それって僕の事を指してる、って事で間違いないんだよな……?」
「え、そうだけど……もしかして僕の事覚えてない?」
覚えてない……いや、僕は知らない。
家族の記憶が欠けらも無いのだ。
「僕だよ僕、
「あー、悪ぃ、知らんわ」
からかってる可能性もあるし、そもそも僕の弟だったとしても今更興味は無い。
ぶっきらぼうに返し、先程の小隊のテントへと歩みを進める。
晴明……と言ったっけ……が色々言っていたが、今は話してる暇は無いので聞き流しておく。
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晴明がハニーを分けてくれた事もあり、テントで休息をとったらすぐに回復出来た。
だがダテンシがいつ侵攻してくるか分からないので、早めに作戦を練る事にした。
「奴は爆弾を使い、尚且つすばしっこく、視認されてちゃ手も足も出ない
よって近接戦は不可能に近い」
「しかも僕のナイフ如きじゃ弱点に当てても傷一つ付けれなかったからねぇ
耐久力も相当なものだと思うよぉ」
「となると遠距離から超エネルギーを叩き込むしかない、という訳ですね?」
会議に出席しているメンバーは僕、晴明、岡谷小隊長、そして負傷していない見習い隊員6名である。
遠距離から超エネルギーを叩き込む、とすればアレしかない。
「この中で最も適任なのは僕だろう
ハニー全消費させて、最大出力で一発叩き込むよ」
「しかし、それでは晴政さんが……」
「お兄ちゃんも分かって言ってるに決まってんじゃん
今は時間が無いし、四の五の言ってる暇は無いよ、岡谷小隊長」
コイツ、意外と物分りが良くて助かる。
そして、細かな配置などを決め、あとはエニグマを待つだけとなった。
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そして、2日後……。
「……き、来た!
10時の方向より未確認物体が接近!
間違いありません、ダテンシです!」
予想通り体勢を立て直し、再度進行してきたダテンシ。
事前の打ち合わせ通り、晴明や他隊員らがダテンシの気を引き、僕がこの木陰からフル火力のスナイパーライフルをお見舞いする。
晴明が万が一の為にと自分のハニーを小瓶に詰め、予備として渡してきたが、そんなものを使わずとも、奴は倒せるはずだ。
失敗など、するものか。
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「…………とか考えてるんだろうなぁ、お兄ちゃんの事だから」
長い間離れ離れだったけど、兄弟なのだから、これくらいは何となくわかる。
そもそも全ハニーを消費して一撃叩き込むだなんて、外した時の事を考えていなかった事に心底驚いている。
僕の異能もハニーを大きく消費するが、大事なのはお兄ちゃんの一撃の方なので、僕のハニーを投げつけてやった。
「さて、作戦……開始だよっ!」
手始めに数本ナイフを生成し、こちらへと向かってくるダテンシに対し投げつけてみる。
しかしやはり軽々と躱されてしまう。
それに続き他隊員も攻撃を加えるが、一向に当たる気配は無い。
しかも相手は以前より威力の増した爆弾を投げつけてくる。
回避、攻撃、陽動、他隊員の様子
これら全てを同時にこなさなければならないのは非常に骨が折れる。
……これでミスったら承知しないからな。
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作戦が始まった。
晴明達の陽動もあり、今の所ダテンシはこちらに気付いていない。
全神経を集中させ、照準を合わせる。
計算上、これだけのエネルギーがあればダテンシの弱点を一撃で粉砕出来るはずだ。
だが外せば再射撃には最低でも40秒はかかる。
その間に位置を補足され、攻撃を加えられたらお終いだ。
……いや、今は余計な事は考えるな。
呼吸を整え、狙いを定める。
「……最終調整完了、ハニー装填、エネルギー・チャージ」
ハニーポットに繋がった何本もの管を通り、ありったけのハニーが砲身に流れていく。
そして、全ての準備が整い、引き金を引く。
「エネルギーチャージ・収束完了…………発射!!!」
凄まじい反動と共に、砲身から弾が一直線にダテンシへと飛んでいく。
しかし、無慈悲にも弾はダテンシの弱点の横ギリギリに直撃する。
大きく体勢を崩したものの、すぐに何事も無かったかのように立ち上がる。やはり弱点外だとダメージは無いようだ。
「外れたっ……!?」
「そんな……!!!」
「いやまだだ……あと一撃撃てる……!」
陽動隊も騒然となるも、すぐに時間稼ぎを再会しようとする。
が……
「ウラ……ウラメシィィィィィィ!!!!!」
陽動隊を完全に無視し、砲弾の飛んできた方向へ巨大な爆弾を投げつける。
「まっず……とにかく位置を変えねば……!」
正確な位置を把握出来てなかったのが不幸中の幸いで、爆弾はすぐ隣を一撃で吹き飛ばしただけで、僕自身は何ともなかった。
しかし安心したのも束の間、手応えが無かったのを感じ、再度巨大爆弾を構えるダテンシ。
今度こそ直撃は免れない。だが再射撃にはあと30秒はかかる。
「万事……休すか……!」
するとその時、エニグマの爆弾にナイフが刺さり、大爆発を起こす。
もはや見なれたこのナイフ。何が起きたのか一瞬で理解出来た。
「へっ……まだ陽動は終わっちゃいねぇよ……!」
再びナイフを何本も出して陽動を開始する。が、明らかに生成量が少なく、動きも若干ふらつきが出ている。
そう、僕と同じ『ハニー切れ』である。
第二射の保険の為にわざわざ僕に予備を渡したせいで、当の本人がハニー切れを起こしている。
……全く、つくづくアホだよ、アイツ。
意識が再び晴明の方へと向いたのを確認し、再びスナイパーライフルを構える。
「砲身冷却完了。砲弾再装填……耐えろよ、晴明……」
動きにキレが無くなってきた晴明に対し、無尽蔵に爆弾を生成し、投げつけるダテンシ。
次第に被弾も多くなっていく。
だが彼は、己の使命を全うしている。
兄の為、みんなの為、どんなに被弾しようとも、陽動を続ける。
それを見た他隊員達も、ダテンシに攻撃を加え、意識を逸らす。
「晴政さん!まだですか!」
「あと10秒!」
痺れを切らしたダテンシが、今までの何倍もある大きさの爆弾を生成し始める。
着弾せずとも、爆発した時点でこの辺り一帯が吹き飛ぶだろうという事は誰が見ても一目瞭然である。
「ッ……アレが爆発したら今度こそ間違いなく終わりだな……お兄ちゃん、早く!」
「わーってる!最終調整完了!ハニー……装填!」
晴明から渡されたハニーの小瓶を砲身に接続し、再度エネルギーを溜める。
ハニーポットの底に残った僅かなハニーも合わせた、正真正銘、最後の一撃である。
エニグマも爆弾の生成が終わり、投げつけようと構える。
もうダメか、そう思った隊員達は目を瞑る。
だが晴明は、尚もナイフを投げ続ける。
白銀のナイフに反射する月光。その光がほんの一瞬、ダテンシの視界を遮る。
一瞬であったが、晴政にとってはこの一瞬は十二分なものであった。
「エネルギーチャージ・収束完了……第二射、発射!!!」
そう、この一瞬のおかげで、ダテンシより先に攻撃する事が出来たのだ。
再び反動と共に、砲身から放たれる砲弾。今度こそ、ダテンシの弱点へと直撃する。
「ウラァァァァァァ!?」
砲弾は一撃で弱点を粉砕させ、それに伴い巨大爆弾と共に、ダテンシは粉々に崩れ落ちていく。
それと同時に夜が明けていく。
朝日を背にして崩れ去っていくバレンタインの怨念は、心做しか哀愁を漂わせていた。
「……終わった、のか」
「勝った……んだよな?」
全員が疲れ果て、その場に座り込む。勝利を喜ぶ体力すら残ってないようだ。
かく言う僕も晴明も、もう一歩も動けないくらい消耗し切ったのだが。
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後に救護部隊が到着し、負傷者を含めて全員無事に搬送された。
僕も晴明も数日はハニー切れの影響で寝込んでいたが、今は完全に回復している。
後に色々な奴らに怒られたのは言うまでもないが。
そして今は、晴明とかつての戦場へと赴いている。
「やれやれ……色々とあったものだ……あの時は久しぶりに死ぬかと思ったわ……」
「やっぱりあの時ハニー渡しといて正解だったね〜
見事に第一射外しちゃったからねぇ」
「あれは狙いが僅かに逸れただけだ、しゃーない」
「まぁ第二射は決めてくれたから良かったけどさぁ……」
色々言っているが無視し、ふと、聞けなかった疑問をぶつけてみる。
「それよりもだ、お前、本当に僕の弟なのか?」
突然の事に驚いたような反応をするが、すぐに明るく答える。
「だから言ってんじゃーん、僕は弟の晴明だって」
正直、未だに記憶は無いし知る気も無い。が、コイツ自体には兄弟関係無く興味は湧いてきた。
何かのためにこんなに必死になれるのはいい事だからな。
だが僕も素直では無いので、こう言っておく。
「はぁ……やっぱり何も思い出せねぇや
でもいいわ、興味も無いし
だから、お前も別に何も気にせず好きにしてりゃいい」
一瞬困惑したような表情をするが、すぐに意図を汲み取ったのか、満面の笑みで言葉を返してくる。
「わかった、なら僕なりに好きにさせてもらうよ〜
覚悟しててな、お兄ちゃん」
こうして、ちょっぴりギクシャクした兄弟達のバレンタインはひとまず幕を閉じたのだった。
To be continued
近々、晴明のキャラシが出ます。しばらくお待ちください。