「ほぅ?子供が失踪ねぇ……」
「そーなんよ、ちょーっと目を離した隙に煙みたいに消えちゃったみたいよ?
そーれーにっ、今回もちゃんとエニグマの痕跡もあったっぽいし?」
「……やっぱ今までの事例と同じって訳か」
陽がまだ昇りきっていない昼前。多くの書類の束を囲み、何かについて話し合う二人。
上層部からとある案件を任された晴政と、彼に頼まれて情報を集めていた凛龍である。
彼が上層部から任された案件。それは数週間前から続く連続児童失踪事件についてである。
毎回、事件発生とほぼ同時に事件場所近辺でエニグマの発生を確認している為、関連性が疑われているのだ。
「分かった、少し僕も色々調べてみるよ
凛龍もなんかあったらまた教えてくれ」
「はーーーい!!!」
ビシッと敬礼のポーズをとり、笑顔で見送る。
さて、これから何処へ向かうかというと、『とある助っ人』を雇いに行くのだ。
「あれ、お兄ちゃんじゃん、こんなとこで何してんの?ナンパ?」
街を歩いていると不意に後ろから声を掛けられた。
「は?僕がそんな事する訳無いだろ……仕事だよ仕事」
「ふぅん?仕事ねぇ……」
それを聞いた晴明はふと何かを考える素振りを見せたものの、すぐにいつも通りヘラヘラとした様子で話しだす。
────が、これはただの会話では無い。
「
晴明の言葉の意図を汲み取った晴政はすぐさま自分も言葉を返す。
「
「
そして次の瞬間、煽りにキレたのか、晴政は刀を一本生成し、晴明の首元に添える。
─────それと同時に、誰にも気付かれないように、晴明のポケットに紙を1枚入れる。
「
「
それを聞くと晴政は刀を下ろし、再び歩き始める。
「
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あのやり取りから数日が経った。
事件は尚も起き続け、遂に被害者は20人を超えた。
しかし警察はおろか、Bee本部ですら特に足取りが掴めていないようだ。
この様子だと流石に晴明も厳しいかと思っていたが────
「うぃーっす、お兄ちゃん居る?」
「おぅ晴明、待ってたぞ」
────何やら多くの情報を持ってきてくれたようだ。
「しかし驚いたねぇ……お兄ちゃんが僕を頼りに来るなんてね」
「今回ばかりはとにかく多くの情報が欲しかったからな、んで、なんか分かったか?」
「それが随分凄いのがわんさかと……」
それから晴明は分かった事について色々と話してくれた。
彼曰く、どうやら今回の失踪事件は確かにエニグマが関与しているらしい。
が、その背後ではなんととある人達が動いているらしい。
それが『食人族』である。
「食人……字の通りか?」
「そ、しかもエニグマ信仰だとかいうすげぇ事もしとるらしいで」
「なるほど…………それで?」
「んでこっからは僕の見立てだけど、その食人族が子供攫ってエニグマに捧げてんじゃねぇの?って
街に現れてたのは多分食人族を監視する為とか?」
「…………一理あるな。んで、そいつらは今どこに?」
「ちゃんとそこまで調べてきたよ、感謝して欲しいね」
そして晴明は地図を広げ、郊外のとある森に丸をつける。
「あくまで拠点のひとつに過ぎないけどね」
「分かってる、サンキュ」
「で、この件は上に報告するん?」
それを聞かれ少し悩む。本来なら報告すべきなのだろうが、相手は人間である。それに何処に影響が出るか分からない。
だから────
「いや、この件は僕独自に裁く
犯人は普通に誘拐犯として突き出して、エニグマは無関係だったけど見つけたから討伐した、こんな感じにな」
「ほいよぉ」
そして晴政は早速、支度をして地図の地点へと向かう。
「しかし食人ねぇ……そんなのがこの世に存在する……とはね……
些か信じられんけど……まぁ、僕らに仇なすんならぶった斬る迄の事よ」
しばらく歩くと一つの建物に辿り着く。
窓は無く、扉も1箇所以外見当たらない、不気味な建物である。
「スゥゥゥ……さて、始めるか……」
「何を、始めるって?」
突然、背後から声を掛けられる。
だが、僕の背後を簡単に取れる人物など、もはや分かりきっていた。
「…………久しぶりじゃんか、グリヴ」
彼の同期にして相棒、グリヴである。
「おう、久しぶり。それで、こんなとこで何してるんだ?」
「あー、ちょっと上からの頼まれ事
そういう君こそ何故ここに?」
「久しぶりに君を見つけたけど山奥に急いで行ったからさ、心配でつけてきた」
「……なるほど」
少し考えた後、晴政は突拍子の無い提案をする。
「よし、ちょい手伝ってくれ。今回は人手が多い方がいい」
そう言い、有無を言わさず手を引っ張り、建物の扉を開く。
「え、ちょ、せめて返答は聞いてからにしろ!?答えはノーだけど!!!」
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中に入るとそこには祭壇があり、蝋燭には火がつけられている。
それ以外に明かりは無く、薄暗い。家具など他のものもなく、かなり不気味な雰囲気である。
グリヴには手短に事の経緯を、食人族については伏せつつ話しておいた。
「で、どっかに誘拐された子供達が居ると思うんだが……君は子供達を無事外に連れ出すだけで良いから……」
「はぁ……分かったよ……」
渋々承諾してくれたグリヴだが、ふと何かを聞き取る。
「待った、何か声がする……祭壇の所から」
「なるほど……流石五感強化、助かるよ」
互いに刀を構え、恐る恐る祭壇に近づくが、そこには誰も居ない。
「声はこの下から聞こえるんだが……」
「そうか……となりゃ恐らく……」
晴政が祭壇をずらすと、そこには地下に繋がる階段があった。
「ほれ、ビンゴ」
「こんなとこに隠し通路があるなんてな……」
引き続き奥に進むといくつもの牢があり、中には大勢の子供達が居た。
泣いてる子、横たわって動かない子、膝を抱えて蹲る子など、数十人は居る。
「やっぱ『アタリ』だったみてぇだな……今出してやるからちょい待っ………………」
「ちょっと待った、誰か来る……!」
その声と共に階段の方から多くの矢が飛んでくる。
二人は刀で全て打ち落とし、暗闇を見据える。
「困るなぁ、ここは君達のような奴が勝手に入っていい所ではないんだよ」
暗闇から多くの兵士と共に、一人の男が姿を現す。
「お前がここの管理人か……随分、どえらい事をしでかしてくれたじゃねぇか……
覚悟は出来てるんだよな?」
「それはこっちのセリフだよ
こんなところまで嗅ぎ回られて、こっちはとんだ迷惑だよ
お前ら、ここに居る子供諸共コイツらを血祭りにあげてやれ」
そう号令がかかると共に、兵士達が襲いかかり始める。
「敵は数十人、弓、刀持ちと来たか……
だが……その程度でこの僕、夜に紛れる者に適うと思ったか……?」
矢を避けつつ、接近してきた兵士を峰打ちで一撃で気絶させる。
「グリヴ、間違えてもコイツらは殺すんじゃぁないぞ」
「それくらい分かってる……さ!」
グリヴの方も峰打ちや格闘術を駆使して次々と兵士を気絶させていく。
怯える子供達にも矢は向くが、彼らがそれを許すはずも無く、子供達に飛んだ矢は一瞬で刀に斬り刻まれる。
そして瞬く間に、兵士は全滅する。
「チッ……想像以上の手練が調査に来ていたという訳か……だが……!」
男が突如口笛を吹くと、何処からともなく黒い靄が集まり、巨大なタコのようなエニグマとなる。
「さぁ我が主!貴方様への献上品にございます!存分にお召し上がりください!!!」
そう言って男は逃げ出す。
「待っ……おい!逃げるな!」
「慌てるなグリヴ、今はコイツが優先よ
それに、アイツについては既に手は打ってある
それより、君は僕がコイツを引き付けてる間に子供達を地上に連れてってくれ」
「あー……何が何だかさっぱりだけど分かった」
そう言い、グリヴは牢の鍵を破壊していく。
「さて、じっくりと楽しみたいところだけど、まだまだやる事があるからね
…………手短にいかせてもらおう」
エニグマは八本の腕を叩きつけたり巻き付けたりするも、全て華麗に避けられ、弄ばれる。
そうこうしているうちにグリヴは子供達を地上に逃がしていく。
「おいおい、まさかここの主様はこんな単調な事しか出来んのか???
つまんねぇの、まだこの兵士共の方が骨のあるやつだったのにな
って、タコみたいだから骨はねぇのか」
散々に煽り散らかして、意識を自分に向かせる。
その思惑通り、晴政への攻撃が激しくなるも、尚も難なく躱していく。
そうこうしているうちに、最後の一人の避難が完了する。
「っと、残念、時間切れらしい
それじゃ…………爆ぜやがれ」
刀を消し、代わりに巨大なスナイパーライフルを出現させ、重い一撃を放つ。
かなり至近距離だったが故、回避する間も無くエニグマに直撃し、エニグマはそのまま灰となって消えていく。
「なんだよ、この程度で終わりかよ
ホント、骨の無い奴だったわ……
さて、向こうも今頃片付いてる頃合かね……」
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同時刻、例の建物からそう遠くない所を、管理人の男が走って逃げていた。
「ったくとんだ災難だった……だが恐らく我が主でもまともに太刀打ち出来ないだろうよ……実力的にはエニグマの中でも雑魚同然なんだからな……
とにかく、このまま街へ出て人混みに紛れれば…………」
「ん?何処で何をするって?」
その声と共に、彼の足にナイフが刺さり、転倒する。
「ぐぁぁっ!?だ、誰だ!?」
「おおっとそれ以上動くなぁ喋るなぁ?お兄ちゃんからは生かして捕まえるよう頼まれてるけど変な事されたらタダでは済まさないからね???」
そう言いながら、晴明は首筋にナイフを添える。
あらかじめ晴政から連絡を受け、ここで待ち伏せしていたのである。
「さぁて……このままケツにナイフぶち込まれるか大人しく出頭しに行くか、どっちがいい?」
「わ、分かった……!降参だ……!!!」
「ちぇっ、つまんねー」
その後、警察とBee隊員が大勢到着し、子供達は保護され、管理人の男と彼に従う兵士数十名が誘拐の罪で逮捕された。
現場は詳しく捜査されたが何も情報は出ず、ひとまずは食人族についてはバレる事は無かった。
警察からの事情聴取も終わり、晴政・晴明・グリヴの三人は帰路に着いていた。
「よ、晴明、グリヴ、おつかれ
エナドリとコーヒー買ってきたよ」
「よ、じゃねぇよ全く……無理矢理巻き込みやがって」
「まぁまぁ、後でお兄ちゃんがなんか奢ってくれるみたいだしそれに免じて許してやってや、な?」
「え、いやそんな事一言も……」
「お兄ちゃん???」
「…………へい」
その後、晴明とグリヴにたらふく奢らされたのは言うまでもない。
To be continued
お借りした子
鎌倉さん宅の凛龍くん(友情出演)
(https://x.com/kamakura_3n/status/1768201032151249365?s=46&t=EMGPlc9_ZpDaFrO1KV-vOQ)
Dr.リービィさん宅のグリヴさん(諸事情によりプロフィール画面を掲載)
(https://twitter.com/dr_kikaku?s=21&t=EMGPlc9_ZpDaFrO1KV-vOQ)