こんにちは、狸狐です。
最近身体の不調が激しく休む日々が多くなってきました。気温とか気圧のせいなのかは不明ですが、マジで情けないです…。
最近の近況報告
・水木しげる先生の作品を探しに図書館に行く。
・眠れない夜とか休みの日にやる事がないので、3DSを引っ張り出して「ポケモン・ソウルシルバー」をやっております。実は前にやっていましたがデータを消して改めて始めました。
サファリパークでヨーギラスが出てきて、今ではサナギラスになったので早くバンギラスになってほしいですね。本当にもう、悪タイプとか毒は好きなんですよ。岩・地面タイプから悪・岩になるのが楽しみすぎます。噛み砕く、したい。
皆さんは何タイプとか、何のポケモンが好きですか?
私は昔はクロバット、ゲンガー大好きだったんですが、最近はニューラとバンギラスです。
悪魔の妹 フランドール・スカーレット
幻想郷にある唯一の人間たちの住む場所である人里。
そこの門を出れば、大小様々で異形の集団である人喰い妖怪達が跋扈する『妖怪の森』が広大に広がっている。そしてその森を抜けると“氷の妖精”が住み着いていると言われる昼になると霧が濃くなる『霧の湖』がある。
その霧の湖をさらに奥へ進むと、西洋妖怪の強豪でもあり、ビッグネームの存在“吸血鬼”の住む世にも恐ろしい館──『紅魔館』がある。
【緊急事態発生!!緊急事態発生!!】
けたたましい音が真夜中の山に鳴り響く。湖の中に住む魚たちも、あまりの音に眠りから覚めて飛び跳ねていた。
「ア"アアアァァァーーーッ!!」
とある日の深夜。
その紅魔館で大きな爆発音がした。血のように真っ赤な城壁が大きな音を立てて崩れ落ち、その中から一つの影が飛び出した。その影を、もう一つの影が追いかける。
「ウ"アアァァァーーーッ!!」
「妹様!落ち着いてくだ──ごふっ!?」
しかし追いかけることはできても、止めることはできなかったようだ。鈍く低い音を立てるのと同時に、血飛沫が舞い、追いかけた影が紅魔館の方、つまり真反対に吹き飛び、新たに城壁に穴を開けた。
「ウウゥゥ…うわああああぁぁぁぁーーーん!!お姉様なんか大嫌いぃぃっ!!」
この紅魔館を半壊させたのは、この泣きべそをかいている少女であった。今もなお、崩壊を続けている紅魔館に向かって、少女は大声で叫ぶ。
「お姉様もっ!パチュリーも!咲夜も、美鈴も!皆んなみんな大嫌いィっ!!皆んな死んじゃえぇぇええーーーっ!!うわああああーーーっ!!もう出ていくんだからァーーーっ!!」
※※
「はぁ〜い!美しいお嬢さん方、注目注目ぅ〜!」
今日は人里で行われるバザーの日である。
もう使わない家具や食器、ドングリや石などを使った小物、芸術家たちが描いた絵など様々なものが売られている。そして、我らが「ねずみ男」もこのバザーに参加していた。
「これを見てちょうだい!外の世界では超高級品のブランド物の傘よ!他所じゃ絶対に手に入らないレア品なのよ!」
ねずみ男が売っていたのは傘である。
可愛らしい花柄、高級感溢れる黒色の傘…。幻想郷にある傘の殆どが唐傘なので確かに珍しいものである。
「それに今日はレディースDAY!一本10,000円のところ、女性が買うなら30%もオフしちゃう!男性陣は関係ないと思って行かないで!女性にプレゼントするならちゃんと割引しますよーん」
「一本見せてくれる?」
「嫁にプレゼントしようかな。僕も一本見せてくれ」
物珍しさに惹かれた人々や、安さを気に入った人々がやって来る。そして気になるものを手に取る。ねずみ男は手をコスコスしながら笑う。
「どうぞどうぞ!開いてみてちょーだい!」
「あら、結構可愛い!」
「オシャレだね」
「グフフフ…!さあさあ数は決まってるんだ!入荷も未定よん!早いもん勝ちだ!買った買った!!」
全員が財布を開けて、お札を取り出す。
それを見ていた赤い傘を持つ青い髪色をした少女が、ねずみ男とお客の間に入ってきた。
「皆んな、これ買わない方がいいよ」
「な…っ」
ザワザワと辺りがうるさくなる。
ねずみ男は立ち上がり、腕をまくり、怒るフリをしてその女の子に怒鳴る。
「こ、このガキンチョ!何を根拠に!」
「だってこれ偽物でしょ」
「ゲゲゲ!?」
更に五月蝿くなる。
少女は一つ傘を取ると、柄の部分をちょいと引っ張った。するとペリペリと簡単に剥がれてしまい、いとも簡単に骨だけになってしまう。
「な、なんだこれ!本当に偽物じゃない!」
「おい、これも剥がれるぞ」
少女に即発された客たちも剥がす。
全ての傘が骨組みだけとなってしまった。骨の部分には、まだ乾いていないノリが残っていた。
「これ、紙を貼り付けただけじゃないか!」
「金を払う前で助かった…」
「私たちを騙したのね!!」
「詐欺だ、詐欺!」
「あ、あはは、ちょいと落ち着いて!」
実はみんなの言う通り。
これは彼の得意のインチキ商売である。近くのゴミ捨て場からボロボロになり捨てられていた傘を拾い、更には和紙などを売る店で数十枚ほど万引きを行い、糊で貼って、見栄えだけが良い傘を作り上げた。勿論水に濡れれば簡単に紙が溶けてしまうので傘としては役に立たない。
「あちきはちょいと傘に詳しいんだ。だから偽物と本物の違いくらい簡単にわかる!あちきの前で偽傘の売買が出来ると思わないことだね!」
「くうぅ〜〜〜っ!!これじゃあ商売上がったりだ!やってられるかよォッ!」
怒る客たち。
こうなったら仕方がないと、一本だけ傘を持って、他は店をそのままにして逃げ出した。ねずみ男が去った後、その少女は皆んなに言った。
「去る者追わずだ!あちきの出店なら、本物の上質な傘が売ってるよ!」
※※
「くぅうう〜〜〜〜っ!!!!悔しいぃぃぃ…っ!!」
インチキがバレた。更には客まであんな少女に取られた。あまりにも悔しくて梅干しを食べた時のように顔をぐしゃぐしゃにして、更にはギリギリも歯軋りをする。地団駄を踏み、大人気なく怒る。
「この天下のねずみ男様の行いを白日の元に晒すだけではなく、客まで取るとはァ〜ッ!!」
怒りが頂点まで達した瞬間──。
プチリと何か彼の中で切れた。そのまま近くの草原の上に横たわる。何が起きたのかと言うと、あまりにも悔しかったのだが、それが頂点を超えた瞬間に一周回って冷静になってしまったのだ。
「・・・はあ。なんて俺は愚かなんだろうか。だからあんなガキにしてやられるんだ…。あー!何たる悲劇かっ、この世はあまりにも俺に残酷だ」
寝転びながら、服の中に手を入れる。
そこから数百円が転がってきた。何かで稼いだ時に残っていたのだろう、彼の所持金全てである。
「金はこれだけ…。あとは」
そして他には店から逃げる時に持ち出した傘一本しか手元にない。
「・・・唯一の本物の傘。偽物と紛れ込ましたら信憑性が増すと思って拾ったのに結局はパァだよ。ったく」
この傘をどうしようか考える。
別に自分は濡れたところで困らないことを考えると不要なものだ。しかし捨てるのは何か惜しい。基本的に捨てるよりも拾うタイプだからか、簡単にポイは出来なかった。
「…とりあえずこの傘を霖ちゃんの所に持っていこうかなァ。数十円くらいで売れたら良いんだけど」
──ポツ…
「あ?」
頬が濡れた。
空を見上げれば、あんなに澄んでいた空が曇っている。灰色の雲があっという間に真っ黒になってきたと思えば、雨が強く降ってきた。ポツポツという音はザアザアという激しい音になった。
「傘、持ってて助かったア〜」
ビチョビチョになる前に傘を開く。
それにしても、すごい雨だ。最近は涼しくなってきたと思ったが、天気もついでに悪くなってきた事を思いながら歩く。
(こうなると霖ちゃんの所に行かなくても良いか。けど、暇だしな。・・・そういや昼間だと霧が濃くなる湖があるらしいな。なんか面白そうなのあるかもしれないし行ってみるか)
そういえば、この森を抜けた先に湖があると誰かから聞いたことがある。まだ行ったことがない場所というのは好奇心がくすぐられる。もしかしたら何か大きな発見を得られるかもしれないと希望を持つ。
「10月だからかなァ。蛙の鳴き声はもう聞こえない。寂しいねぇ…」
── キャアアアァァァ……
「・・・ん?何だ?猿が木から落ちた声か?」
何か遠くから聞こえる。
音のする方へ行くと、聞こえてきた音は悲鳴のようなものだった。恐怖の悲鳴というよりは痛みに苦しむ声。
──いだいぃっ、痛いっ、熱い……!!
悲鳴を上げているのは全身傷だらけの少女だった。
木の下で身を小さく屈め、濡れないようにしている赤色の服を着た金髪の少女が見えた。しかし無駄な行為で、結局は跳ねた雨水で濡れて、その度に苦しそうな悲鳴をあげる。
「あづいっ、痛いっ、誰か助けて…っ。誰かぁ」
(何だァ?あのガキ…?こんな所でピーピーと…。助けねえとマズイよな。・・・いや待てよ。ありゃあ妖怪だな)
一瞬助けようかと思ったが、冷静になるとおかしい。こんな危険な場所に人間の子供なんかいない。更によく見れば、何だあの背中から生えている羽は?てかあれは羽なのか?羽のように見えるが、宝石がキラキラと光っているぞ。明らかに人間じゃないな。
(妖怪なら助けなくて良いや。それにガキだし…、金にもならなそうだし)
見捨てようかと思った。
しかし不意に彼女がいる木の上を見ると、枝に大きな蛇がいる。頭が3つある蛇の妖怪だ。蛇の妖怪は、少女を見てニヤリと笑い、大きな口を開いてゆっくりと降りて来る。
『シャアァ…!シュルルルゥゥゥ〜〜〜!!』
「きゃあっ!?」
(何やってんだよ、早く逃げろよ…!?何だ、あいつ?逃げれねえのか?)
少女は木の下からは出ようとしなかった。
あの少女は雨がダメだから動けない。つまり“前門の虎、後門の狼”といった状況だった。蛇の妖怪は舌をチロチロと出して少女に近づく。それに比例して悲鳴も大きくなり、ねずみ男はグッと目を瞑る。
(くぅう〜〜っ、金にはならん事はやらない主義だってのに。くそおぉっ!!)
ねずみ男は飛び出した。
傘をグルグルと振り回し大きな声をあげて、少女の前に立つ。
「何やってんだアァァァーーーッ!!」
「!?」
『!?』
「喰らえっ、
バフゥッと大きな屁をかます。
蛇の妖怪は声にもならない声をあげ、走馬灯を見ながら絶命する前に逃げ出した。突然の出来事に少女はポカンと口を開ける。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「あと・・・これ使いな」
「ほぇ?」
「
「「・・・」」
現状を把握できていない少女。
突然現れた謎の人物やオナラで妖怪を撃退した状況に驚き、完全に固まってしまい、2人は何もしないまま見つめ合う。その時の中で先に動いたのは少女だった。
「ありがとう…ございます……?」
「ふん!お礼なんか要らねえよ。じゃあな」
ねずみ男はさっさとこの場から去ろうとした。
彼の性格上、利益関係なく誰かの為に何かをして、心の底からのお礼を言われたり感謝されるのは苦手だ。全身が痒くなってしまう。悪いことして騙してる時に感謝されても何も響かないが、こういったのは慣れていない。
「あっ、待っ──ぐぅっ…」
「お、おい!!」
緊張から解放されたのか、誰かと話せて安心したのかは不明だが、突然痛みを訴え始める。ねずみ男は直ぐに駆け寄った。少女の腕や足、首に顔といった服から出ている箇所が赤く腫れていた。
「何だよ、この傷は・・・!?まさか虐待じゃ…!!」
「違うの…っ、私、
「きゅ、吸血鬼ぃっ!?吸血鬼ってあの西洋妖怪の……!?」
「──ぁ」
やばい。
この反応は昔から見たことがある。生き血を啜る穢らわしい存在、卑しい獣。きっと自分のことを化け物だと思ったり、敵視しているんだ。この状況では力もうまく出せない。
「じゃ、じゃあお嬢ちゃんは
「ばっく?…なに?ごめんなさい、分からない」
「なーんだ、無関係ね。なら怖くねえや」
「へ?」
予想とは違った。
先程までは完全に怯えていたのに、知らないと答えたら明るい顔になった。まさかの反応に驚く。
「あ、あの」
「何よ」
「本当に怖くないの?私、吸血鬼だよ?血を吸うんだよ?皆んな、私から逃げるんだよ?」
「ケッ、まーったく怖くないね」ヘヘン
ねずみ男にとって吸血鬼という単語は何も怖くない。自慢じゃないが彼は外の世界で、鬼太郎と出会う前には吸血鬼の召使いをしていたり(その後夜叉と戦わせて相打ちさせたが・・・)、西洋妖怪たちと戦ったりする等、ここにも負けないくらいの色んな幻想的なイベントがありすぎて、吸血鬼というのは聞き飽きているのだ。それに、あの西洋妖怪の帝王『バックベアード』とは無関係なら何しても報復される心配もないので怖くない。
「怖くない・・・」
少女にとって『ねずみ男』との出会いは、火傷の痛みを忘れさせるほどの初めての体験だった。これまで自分を見て怯えたり罵ったりする人間はたくさん見てきた。霊夢や魔理沙だけがそんな事をしない唯一の存在だとも思っていた。それなのにまさかただの人間がこんな反応するとは思わなかったのだ。
「隣、失礼するぜ」
「あ、うん。…傘」
「いいんだよ、自分に差してな。その大きさは俺に合わなかったから丁度いいさ」
「・・・うん」
「痛くねえか?」
「傘のおかげかな。なんか落ち着いてきた」
「そうか」
傘を渡したせいで少女は濡れなかった。
しかし、ねずみ男はあっという間に濡れネズミになってしまうが傘をする方が珍しいので、こんな風に濡れることに何も感じない。とりあえず得意のお喋りで場を和ます。
「それにしてもよ疑問に思わないかい?」
「?」
「人間だよ。アイツら人間ってのは自分と違う存在にはビビり過ぎなんだよ。血を吸うなんて蚊もするし、何も珍しくなんかないってのに」
「“蚊”と一緒にされるのは、ちょっと…」
「コウモリの方が良かった?……ってそんな事より、聞いて驚くなよ。俺はな吸血鬼の執事やってたんだぜ?すごいだろ」
「えっ!?本当!?」
自分のところにいるメイドと同じだと驚愕する。
人間が吸血鬼に仕える事は殆どないというのに、この男は嘘をつくどころか真面目な顔で答えている。なんて面白いんだ。
「嘘なんかつくもんか。俺はな正直者の聖人君子で有名なんだ。……あっ、自己紹介が遅れたな。俺さまは『ビビビのねずみ男』ってんだ。知っといて損はないぜ」
「私は……フランドール・スカーレット…」
「長い名前。やっぱり外国人って皆んなこうなのかしら?ねえ、フランドールちゃん?皆んなからは何て呼ばれてるの?」
「え、えーと、お姉様や霊夢、あとは魔理沙からはフランって呼ばれてる、かな」
「いいネ。じゃあ俺様もそう呼ぼうっと!よろしくな、フランちゃん」
手を差し出すねずみ男。
今まで人間からは武器を向けられたことしかなかった彼女にとって初めての経験だ。ドクンドクンと心臓が高鳴る。何なんだ、これは。霊夢や魔理沙と戦った時とは違うドクドクだ。
「あれ?海外じゃ握手しないの?」
「ご、ごめんなさい!いきなりでビックリしちゃっただけなの!・・・よ、よろしくね」
姉や咲夜の柔らかい手とは違う。
男性特有のゴツゴツした感触にフランは何故か
「くきゅぅ」
変な想像をしてしまった。
顔が赤くなる。なんて熱いんだ。てかめちゃくちゃ恥ずかしい。こんな顔見られたくない。見ないで──。
「それにしても吸血鬼の嬢ちゃんがこんな所で何してんたんだ・・・ってゲゲェッ!?!?」
「うぅ…」
「すげえ熱だ!・・・くぅ〜っ、乗りかかった船でい!!」
※※
ここは紅魔館の大広間。
紅魔館全体は血のように赤いが、内装は違う。どことなく中世ヨーロッパの王宮の様な造りになっており、奥には権威をあらわす玉座が置かれている。その玉座に座る少女が居る。彼女こそフランの実姉でありにして紅魔館の主、『レミリア・スカーレット』である。
「〜〜〜っ」
そのせいで屋敷が壊れるだけではなく、妹が出て行ってしまった。更に天気が雨になってしまい、あまりにも心配で落ち着いていられないのだ。
「お嬢様、落ち着いてください。焦っても妹様は帰ってきませんよ。ここは主人らしくカリスマを持って威厳を示してください」
彼女は紅魔館のメイド長『
「・・・別に。落ち着いてるわよ」
「肘掛けにヒビが入ってますわ。指で叩きすぎです」
「くぅっ、この玉座がもうボロいのよ!新しいのを用意しておきなさい!」
「承知しました」
「それで……フランは?」
「美鈴が気を追っております。見つかるのは時間の問題ですよ」
「…そう。良かった…。…ゴホンッ、全く迷惑かけすぎなんだから。雨だって降ってるし何かあったらどうするつもりなのかしら」
「はぁ……お嬢様…。帰ってきたらちゃんと謝ってくださいね。私は仲の良いお二人の方が好きです」
「ふ、ふん。言われなくてもわかってるわよ」
「なら良かったです。私は妹様がお腹を空かせて帰ってきた時のために厨房でご馳走の準備をしてきます。では──」
一瞬にして姿を消す。更にはレミリアが飲み終わった紅茶のカップまでも同じく消えていた。一応だが彼女は人間だ。しかし彼女には『とある異能』が備わっているので、このような芸当ができるのである。
しかもこの紅魔館には他にも様々な技術や能力を持つ猛者たちがいる。だからこそ、その全員の主人であるレミリアの実力はかなり高い事は想像がつくだろう。
(あー!帰ってきたら何て謝ろう…!!勝手にフランのケーキを食べてごめんなさい、とかかなぁ。……でも、私はカリスマ溢れる吸血鬼なのよ。もっとこう……悪かったわね…とか、仮にも私の妹ならこのくらいで騒がないで……とかの方が威厳があっていいわよね。うん、そうしましょ…)
──キ…キィィ……
そんな時だ。
キィイ……と、この部屋の扉が開く音が聞こえた。レミリアはそれに反応する。咲夜なら音を立てずに現れるし、美鈴ならノックする。パチェなら図書館から出てこない。もしかしてフランが帰ってきたのか!?申し訳なさそうに静かに入ってきたのか。
「何やってたの!!心配し…──誰だ、貴様」
レミリアの雰囲気が変わる。
猛烈な殺意と怒りを込めた視線で扉を開けた相手を睨みつけた。扉を開けたのは単眼の異形。体は植物ではあるが地面から生えている気配はなく完全に経って自立しており、頭部からは花を咲かせている異形が立っていた。
『・・・』
「私は今、機嫌が悪い。消えろ」
パチンと指を鳴らす。
途端に異形は破裂した。何をしたのかは不明だが、レミリアは見た目は幼いが霊夢とも張り合えるほどの実力者だ。出来てもおかしくはない。
「くそっ、何なのよ…。美鈴は何してんの。門番でしょ…」
──バキ…メギッ……
「・・・へぇ」
異形が復活した。
そして
バラバラにされた木片が新たな異形となりあっという間に数十体ほどに増殖していた。奴らは大きな口の中にある鋭い牙を見せながら再生して直ぐに迫ってくる。
『キキキキ…』
「そう。壊すくらいじゃダメなら……灰にでもしてみましょうか」
厨房。
紅魔館の大きくて広い台所。ここではメイド長である咲夜の他にも召使いであるホブゴブリンや下級妖精たちが日々料理作りに勤しんでいる。
「かぼちゃのスープはどう?」
「もう少しで完成です」
手先の器用なゴブリンたちがスープを作る。
咲夜は後ろから指示をしていた。メイド長であるからこそしっかりと指導するのも仕事のうちだ。仮に自分がいなくなっても、お嬢様には苦労をかけてはならないので、このように教える必要がある。
「ねぇ、地下の血液貯蔵庫から新鮮な血を持ってきた?」
「10分ほど前に妖精たちが取りに行きましたよ」
「何をそんなにかかっているのかしら…」
「でしたら私達が見てきます」
「ええ、頼むわ。あとついでに食糧庫から人間の肉と鶏、あとは豚…それと卵を持ってきて」
「承知しました」
ゴブリンたちが行くとかぼちゃスープの火を止める。
あまり煮たせすぎると味が落ちてしまうからだ。さてと自分はメインディッシュを作ろうかと包丁を取り出す。5分経った、誰も帰ってこなかった。流石に痺れを切らした咲夜は地下へと向かおうとする。
「・・・料理は時間が命だって何度も教えたのに。まさかあの子達、地下でサボってるんじゃないでしょうね」
その時だ。
厨房の扉が開いた。
「遅い!一体何をしてい──」
『キキキキ』
「・・・ここは食材を扱うところでしてよ。不潔なものはお断りです」
異形がいた。
咲夜を見ると大きな口を開けて迫る。だが迫ったと思った瞬間には首が刎ねられていた。
『キ?』
自分に起きた出来事を把握できないまま絶命。
咲夜はナイフを洗いながら文句を言う。
「美鈴は何をしているのかしら。あの子たちは帰ってこないし、変な輩が入ってくるし、妹様は出て行ってしまうし。全く今日は厄日だわ……」
咲夜のこの能力。
高速移動だとか、瞬間移動だとか、そんなチャチな能力ではない。彼女の能力は『時を操る程度の能力』だ。そして今まで見せたのは全て時を止めて行っていたのだ。但し、止められる時間は約5秒であり万能ではない。
「ん?」
排水口から何か伸びている。
赤く、細長い植物のようなものが伸びていた。何か植物の種などを流してしまい生えてきたのか?時を操ったせいで急激に伸びたのかもしれないと思い、手を伸ばす。
「ちゃんと排水口の掃除はしてるのに・・・きゃっ!?」
ツタを抜こうと握った。
するとツタが手に絡みついてきた。振り払おうにも完全に巻き付いてしまい取れない。そして、そのままツタは脈の部分までいくと──。
「痛っ」
チクリと刺した。
直ぐにナイフで切断した。するとバタバタと暴れてから、そのまま排水口の中に沈んでいった。
(棘でもあったのかしら…。それにしても……チッ)
ほんの少しだが怪我を負う。しかし包丁で切った時よりも軽い、縫い物をしていて指に針が刺さった程度である。しかし今はそんなのはどうでも良い。気になるのは後ろで蠢く無礼な客だ。
『キ・・・キキキキ!!』
「タネなし手品でもご覧になっていきますか?」
紅魔館 門前。
紅魔館と外を切り離す大きな鋼鉄製の門。その傍の壁に寄りかかり腕を組んでいる赤い髪の女性がいた。
(あった!妹様の気!!方角的には人里の方…。動いている?・・・やっぱり帰ってくる気は今はないのかな)
紅美鈴。
レミリアにスカウトされ、その経緯で仕えている妖怪であり、この紅魔館の門番を務めている。門番を任せられるという事はかなりの実力である証であり、3食(昼寝)付きなので彼女も満足して働いている。
「あ〜あ、さっさと謝ればいいのに。そしたら私も安心してお昼寝できるんだけどなぁ」
ぐぅっと体を伸ばす。
ずっと立っているのも中々に大変で、体が固まっていたのかポキポキと骨がなる。
「ふぅ…。それで・・・いつまで覗いているつもりですか?不意打ちは無駄ですよ」
『キキキキ…』
地面から木の異形が生えてきた。
美鈴は軽く構えた。久しぶりの弾幕以外の戦いに心が躍る。地面を蹴り、一瞬にして異形の前に来ると、その顎に鋭い蹴りを喰らわした。
『キ──』
「・・・えー。この程度ですか。思い切り蹴ったわけじゃないのに脆いんですね」
紅美鈴の能力。
それは『気を使う程度の能力』である。
詳しく説明すると、自分だけではなく生命エネルギーを持つ者の気やオーラなどを可視化できたり、攻撃や防御などに用いることができる。これを使えば相手の位置なども把握することができるため人探しをしたり、更には不意打ちを防ぐことも出来るのだ。
(おっかしいなぁ〜。もうちょい強い気を感じたんだけど勘違いだったのかなァ)
──ドクン…ッ
敵の弱さに呆れて目を閉じようとした瞬間、彼女は飛び跳ねた。大きな気を感じた。幻想郷に来て直ぐに感じた“霊夢や魔理沙”といった猛者の純粋で綺麗な気とは違う。とても邪悪で強い気を感じたのだ。
(感じていたのはコレだ…ッ。一体どこから・・・っ、紅魔館の地下か! パチュリーさんが危ない…っ!!)
異変に気づいた美鈴。
地下に高エネルギーを感じ取り、直ぐに救援に向かおうと思ったが目の前に先程の異形たちが立ち塞がる。
『キキキキキィ』
「再生からの増殖ですか。悪いですけど・・・押し通る!!」
地下の大図書館。
ここは紅魔館の地下にあるとても広い図書館である。窓といった換気をする場所はないためカビ臭く、貯蔵されている本は魔導書だけではなく、ここの管理をする魔女が書いた自筆の本や外の世界から流れてきた漫画などもある。
そして、その魔女は緊急事態に陥っていた。
「パチュリー様ぁ!何なんですかァッ、アレはァ〜!!倒しても倒しても増えていきますよぉ〜ッ!?」
「黙ってなさい、こあっ!今、集中してるのよ!!」
『キキキキキィ〜!!』
何重もの魔法壁を作り出し維持しているのが、この大図書館の司書であるパチュリー・ノーレッジ。そして泣きべそをかいているのはパチュリーの使い魔であり雑用の小悪魔である。小悪魔は戦闘のための使い魔ではないため何も出来ず、木の異形たちを攻撃しまくり増やしてしまったパチュリーは流石に攻め続けられず、防御に徹していた。
「きゃあっ!?」
「こあっ!どうしたの!?」
小悪魔の足に植物の蔦が絡まっていた。
その現状を見て、パチュリーは図書館の異変に気づく。図書館の壁や床、棚にびっしりと蔦が伸びて絡まっているのだ。それも肉眼で分かるほどグングンと成長しており、今も伸び続けている。
「いやあああああ〜〜〜ッ!?!?」
足に絡まっていた植物が段々と上へ上へと登ってくる。太ももから腰、腰から胸、胸から首と伸びていく。手足も拘束されて身動きも出来ない。ギチギチと締め付けられ、小悪魔の白い肌には圧迫された後が赤く残る。あっという間に全身を絡め取られると物凄い力で魔法壁の外へジリジリと引っ張られる。
「たずげでぇ〜っ!!」
「くっ、待ってなさい!こんなツタ焼き切ってやるから!火符アグニ──へぶぅっ!!」
パシンとツタに殴られる。
その衝撃にパチュリーは吹き飛び、小悪魔はそのままどこかに連れ去られてしまった。ゆっくりと起き上がり鼻血を拭う。誰かに殴られるのは初めての経験で軽く目を回す。
「う、うごご……っ、と、とにかく原因が分からないと…」
魔法陣を展開し、紅魔館全体のマップのようなものを展開する。現代でいうところの3Dのように浮かび上がると豆電球ほどの小さな赤い光と小さな白い光が点滅していることがわかる。この白い光の点滅は仲間たちの命の光であり、赤は敵を表していた。その中では一際大きく、とても赤く光っている物が一階よりも下で図書館よりも上の箇所で点滅していることに気づいた。
「上に…何かい、る……ぅぅ…っ、もうっ、だっ、だめ…貧血ぅ…」
気づいたは良いものの鼻血の処置の仕方を知らない彼女は、そのまま貧血により倒れた。同時に魔法壁も消え去り、一斉に異形たちが流れ込んでしまった。
※※※
フランを背負いながら、急いで自宅へ戻る。子どもの看病なんかした事ない、否、誰かを看病なんてしたことがないねずみ男は焦りながら敷いた布団の上で寝かせる。勿論の事だが、ねずみ男が普段から使っている布団ではなく、使ってなかった新品の方だ。元々外来人たちには同じ家に一緒に住んでもらおうと考えられており、そのため外来人用の家に備え付けられている布団の数は2セットある。流石に風呂にも入らず、何日も洗っていない布団の上で寝かせるのは酷だと思い、その新品の上に寝かせて、窓を開けて換気する。
「こんなに俺の部屋って汚かったかァ?ゲホッ、ゲホッ…」
「はぁ…っ、はぁ…っ」
「横にさせたは良いものの……、あとは何すりゃあ良いんだ?俺っち全然病気になった事ないし、そこら辺が分からねえな…」
普段から汚いものに溢れたところにおり、汚いものばかり摂取したおかげで彼の体の中には様々な細菌に対する耐性がついているので、病気になった経験がほとんどない。しかしそれは言い訳にならないと必死に考える。
「・・・薬と飯!!」
この家には何もない。
薬は要らないから基本的に貰っても売るだけだし、腹が減ったらゴミ捨て場に行けば良いという生活のため、この家には何もない。買いに行かなければならない。
「・・・」
大体700円程度はある。
今日はこれで弁当でも買おうと思っていた。流石に使えない。寝かせといて水さえ飲ませていれば大丈夫だ。そう思いつつ、ねずみ男はフランを見る。全身火傷のせいで赤くなっており、息も苦しそうだ。その光景に
「しょうがねえなあ」
※※
ぽちゃんぽちゃんと水の滴る音で
「──!?」
目が覚めて異変に二つ気づく。
一つ目は植物の蔦によって拘束されている事だ。抵抗しようにも身体に力が入らない。そしても二つ目はこの部屋の匂いだ。むせかえるような匂いにクラリとする。
「・・・血の匂い」
ゴクリと喉を鳴らす。
何と濃くて芳しい匂いだろう。久しく嗅いでいない鮮血の匂い。咲夜の入れてくれる血液とはまた違う新鮮な香り。吸血鬼としての本能が目覚めかけている。これを口に含め、転がし、味わって、飲み込む。考えるだけでおかしくなりそうだ。
『最高よねェェ〜〜。その顔見てれば分かるワァ〜』
遠くからではなく近く。
寧ろ内側から声が聞こえる。見渡しても植物のツタや幹しか見えない。
「・・・誰だ?どこにいる?」
『ウフフフフフフフ……。私も血の匂い大好き。飲むのも好きよ』
メキメキと植物たちが動く。
そして一つの形となった。
その姿にレミリアは嫌悪を抱く。こんなにも気持ちの悪い物があるのかとゾッとした。
『だから貴女“も”私のために血をくれる?』
今回の構想の話です。
カワウソの回やカロリーヌちゃんの話を見たり読んだらして思いつきました。最近のねずみ男は裏切って怒られての繰り返し(基本そうですが)だったので、極々たまに見せる子どもには優しい姿を書きたくなり、今回の経緯に至りました。
フランは、私の解釈ですが、マジで男性慣れしてない。吸血鬼のこともあって敵視しかされてこなかった。更には家族とのこともあり魔理沙と霊夢に出会うまでは完全に病んでたと思っていますので、男性に傘を差し出してもらったことや優しくされたこと、特に怖がられなかったことを含めて、初めて知り合ったねずみ男に“ときめいている”状態にしました。
小さい子が大人に「〇〇先生、好きー」みたいなものより若干重めを意識しました。
さぁ、今回のゲスト妖怪はどなたか!!
ヒントは作中のものと、「6期以外」には全部出てます。