ねずみ男 幻想郷に立つ   作:狸狐

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ハッピーハロウィン! 狸狐です。

 渋谷ハロウィンは普通にコスプレして楽しそうなイメージだったのに、一部の人が迷惑な事するから全員が同じだと捉えられちゃうんでしょうね。

 その分、池袋ハロウィンは成功のようで。

 一体何が正解なのやら。












ジャックとチルノ 《ハロウィン特別編》

 皆様はハロウィンは楽しんでいますか?

 ハロウィンの起源とは古代ケルト民族が始めた秋の収穫祭との事でありますが、10月31日は地獄の門が開く日でもありますので、収穫祭に先祖の霊だけではなく悪き心を持った邪悪な魑魅魍魎や悪魔に魔女達が闊歩するのだそうです。だからそんなお化け達を逆に驚かそうと人間達はお化けの格好をして、街中を歩き、仲間だと安心させたり、相手よりも怖い姿になって追っ払うとのことであります。

 

 そこでついでとなりますが、ハロウィンになると街中に現れるカボチャ『ジャック・オー・ランタン』をご存知でしょうか?

 

 ジャック・オー・ランタンとは『鬼火』の妖怪です。

 しかし元々はただの人間なのです。

 年齢も性別も分かりませんが、生前はそれは有名なくらいイタズラ好きで鍛冶屋という仕事についていた人間でした。その人間は悪魔との知恵比べに勝利したり、その悪知恵を使って町中の人たちのことを困らせておりました。

 

 だからでしょうね。

 死後は、生前の行いのせいで天使達に見限られてしまい天国に行くことができず、面目を潰された悪魔にも嫌われてしまい地獄に行くことはできませんでした。

 

 天国にも地獄にも行けない。

 つまりは転生することができないということです。また新たに生を得ることはできずに一生死ぬことなく現世を漂い続ける幽霊となってしまいました。幽霊になったせいで誰にも気づかれない、誰にも知られない。鍛冶屋のこともみんな忘れてしまい、一人ぼっちになってしまいました。いたずら好きな人間が与えられたのは永遠の孤独という罰だったのです。

 しかし幽霊となった人間を見て、流石に憐れに思った悪魔(この人間のせいで面目丸潰れですが人情はあったのでしょうね)は地獄の石炭を一つあげました。

 

 これは何があっても消えることのない石炭です。

 自分の姿は誰にも見えないが石炭の光は人間達に見えることに気づいた幽霊は近くに転がっていたカボチャの中身をくり抜き、中にその石炭を入れてランタンを作りました。誰にも見えない幽霊ですが、石炭の光を用いることで周囲の人々にやっと気づいてもらえたのです。道中にいきなり現れる火の玉として認知されました。

 

 そこで人々はその火の玉に『ジャック』と名づけました。ジャックというのは日本でいうところの佐藤とか鈴木のようなありふれた名前を指します。ジャックのランタンから『ジャック・オー・ランタン』と呼ばれ、恐れられました。

 

 やっと気づいてもらえたジャックですが、ジャックはきっとこれからも誰かに恐れ続けられる存在としているのでしょう。孤独よりは軽くなりましたが嫌われ恐れられるというのも悲しいことですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーいはい!皆さーん!今日は年に一度のハロウィンだよ!!俺様特製のコスプレグッズ売ってますよォ!」

 

 

 今日はハロウィン。

 幻想郷も何故このような文化が流れてきたのかは分からないが古代ケルト人達のように明日から始まる収穫祭の前日にハロウィンという催し物を始めている。誰が始めたのかは分からないが人間というのは順応する生き物であり、寧ろ幻想郷の住民達にとって楽しいことはウェルカムなので、すぐに受け入れられた。そして勿論この男もハロウィンならば金を稼げると思い、すぐに商売を始めていた。

 

 

「ここにあるのは虎のように黄色と黒の縞模様のチャンチャンコ!着れば空も飛べちゃうってきたもんだ!」

 

 

 売ってるものは全て模造品。

 それでも浮かれた人々はねずみ男の口八丁手八丁に連れられて覗いてしまう。

 

 

「更に今回の目玉商品!!あの博麗の巫女の協力により生まれた巫女服!一度着れば誰でも博麗の巫女に早替わり!人々を守ってくれる巫女様に変身するなんて女の子にとって夢のようじゃないかしらん?……勿論、男の子用もありますからね!!ンフフフフフ!」

 

「おいおい、本当に飛べるのかよ?」

 

「え!?」

 

 

 そういう1人の客。

 ねずみ男の売り言葉に指摘をした。ギクリと驚き、冷や汗を流すがここで怖気付いたら負けだ。最悪でっかいオナラでもして浮けば信じてもらえるだろうと勇んでチャンチャンコを羽織る。

 

 

「どうしたんだよ。早く飛んでくれよ〜」

「そうだよ!やってくれなきゃ信じられないよ」

「嘘なら買わないぞ」

 

 

 オーディエンス達も騒ぎ出す。

 覚悟を決めたねずみ男は腹に力を込める。

 

 

「待ってろよ、今飛んでやぁあああ〜〜〜っ!?!?なっ、何じゃこりゃあああ〜っ!?」

 

 

 何もしてない。

 何もしてないのに、ねずみ男は空を舞っていた。フワフワと浮いていたのだ。嘘だと思っていた人々はその光景を目の当たりにして口をぽかんと開けた。

 

 

(まっ、マジかぁ〜!俺様の念じた力が奇跡を呼ぶなんてよ!これが俺の隠された力かー!幻想郷にきて才能が開花したのか、はたまた日頃の行いがいいからか、どっちでも良いけどなんてツイてるんだ俺っちは!ウシシシ)

 

 

 ねずみ男自身も自分に何が起きたのか分かってはいないが、何たる偶然か奇跡か、これを利用してやろうとニヤリと笑う。

 

 

「ま、まじで空を飛んでるぞ!?どうなってんだ!!」

「この売り物、本当だったんだ!!」

 

「だから言ったでしょ、空飛べるって。ここまでしたんだから勝ってくれるよね?一枚10000円」

 

「い、10000円!?」

 

「要らないなら別にいいけどよ。でも数は限りあるからナ〜。飛びたくないなら構わねえよ!買ってくれるやつに売るだけだから」

 

「分かった!10000円出す!」

「俺にも売ってくれ!」

「私にも!」

 

「ンフフフ!毎度ありぃ〜……ってあれ?」

 

 

 全員が財布の中から10000円を出そうとしている中、ねずみ男は異変に気づいた。どんどん浮き続けているのだ。全員がねずみ男にお札を渡そうと手を伸ばすが、ねずみ男の方がみんなから離れていく。

 

 

「な、なんかおかしくねえか?」

 

 

 1人が言った。

 上空のねずみ男がバタバタと空で暴れているのだ。空を飛んでいるというよりも誰かに引っ張られているかのようだ。

 

 

「いぃやあぁぁぁ〜〜〜っ!?!?誰か降ろしてぇ〜っ!!」

 

『分かったよ』

 

「え!?そんないきなりィィィ───」

 

 

 誰かの声が聞こえた途端、プツンときれる音がした。ねずみ男はそのまま急降下する。パラシュートなんてないので重力に引っ張られて落下した。地面にめり込み、着ていたチャンチャンコは衝撃でボロボロになってしまう。住民達はもし買って着てしまっていたら同じ目に遭うかもしれなかったと思うと青い顔をして散り散りとなって逃げていった。

 

 

「うごごごごご……いっだいなにがぁぁぁ…っ」

 

 

 頑張って這い出るねずみ男。

 満身創痍とはこの事だ。全身がボロボロで何とも苦しそうである。しかしそれでも地面から出てきて辺りを確認する。すると目の前にはカボチャ頭で小さな光が灯るランタンを持った謎の存在がフワフワと浮いていた。

 

 

『へへへへへっ、引ーっかかった!引っかかった!オイラのイタズラ大成功!』

 

「が、がぼぢゃぁ?」

 

『ただの人間が飛べるわけないじゃん!オイラがこっそり浮かしてやったんだよぉ〜!へへへ!それなのに喜んじゃって馬鹿みたい!』

 

「にゃ、にゃにおぉ〜!?このクソがきぃ」

 

 

 ボロボロで怒りたくても怒れそうにないねずみ男を見て、カボチャ頭はケラケラと愉快そうに笑う。そしてフワリと空中を舞うと

 

 

『さぁて次は誰にイタズラをしようかなァ、へへへ』

 

「覚えてろぉ〜……がくっ」

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 ねずみ男と遭遇後、カボチャ頭の謎の存在がイタズラをしまくっているという噂が幻想郷中に広まっていった。

 

 八百屋や肉屋では売り物の食品達が店を出て行き、肉屋の方に野菜が売られ、八百屋の方に肉が売られるような状態になってしまったり、骨董屋では店主の頭の上に壺が落ちてきて抜けなくなってしまったり、掃除したはずのゴミが気づいたら散らかっていたりという具合だ。イタズラの程度は子どものやるレベルだが流石に腹が立ってくるというもの。カボチャ頭が見えると直ぐに店じまいをしてしまう始末だ。

 

 この被害は更に人里を超え、妖怪や妖精達にも及んだ。とある傘の妖怪は人間を驚かせようとしたところ背後からカボチャ頭に驚かされた。またとある闇妖精は、人間を食べようと能力を最大限にまで生かした罠を仕掛けたのにも関わらずカボチャ頭に背中を突き飛ばされて自分が罠にかかってしまった。そしてまた、とある半霊剣士は強そうな相手に斬りかかろうとしているとこっそり現れたカボチャ頭の変な声にビックリして、幽霊が出たと半泣き状態でその場から逃げてしまったとのことだ。

 

 

「謎のカボチャ頭によるイタズラ事件……。むむむ〜っ!これは異変ね!カボチャ頭異変と命名するわ!!」

 

「そのままじゃない?」

 

 

 ふんすと鼻息荒く、腕組みするのは湖上の氷精チルノである。氷の妖精であるからかは不明だが肌は白く、髪の毛は青い。そしてチルノの話を聞いているのが虫の触覚を頭から出した蛍の妖怪であるリグル。緑色の髪の毛に大きなマントをつけた少年か少女のような容姿をしている。

 

 

「しんぷるいずざ…とか言って、こーいうのは簡単な名前の方が良いのよ!アタイが考えたアイデアに文句言わないでよね!」

 

「分かったよ、そんなに怒らないでよ。それで僕を呼んだ理由ってなに?チルノちゃん。そのカボチャ頭異変と関係あるの?」

 

「あるよ!大アリだよ!リグル!実は私たちの仲間であるルーミアが、例のカボチャ頭に襲われたんだって!」

 

「ほ、ほんと!?ルーミアちゃんが?」

 

「本人から聞いたから間違いないわ。カボチャ頭が後ろから来て、落とし穴に落っこちてお尻痛いって言ってたもん。ここで本題なんだけど、アタイ達がその犯人を捕まえようと思うの!」

 

 

 妖精というのは自由気ままな存在だ。

 だから基本的には自分本位な奴らがたくさんいる。だがルーミアとは結構長く居る存在であり、友達だ。彼女は友達がやられて黙ってはいられないのだ。

 

 

「えーっ!?僕、怖いよ」

 

「そうやってブルブル震えない!この件に魔理沙も動き出したっていうし、アタイのライバルである霊夢が動くのも時間の問題だわ。でも、ここでアタイ達が犯人を捕まえて突き出せば……霊夢はきっと悔しがる!どう!私の完璧な作戦は!」

 

「け、結局、霊夢さんに勝ちたいだけじゃん」

 

「違うのー!これはルーミアの敵討なんだから!リグルも来るでしょ?」

 

「うーっ、分かったよ。でも危なくなったら直ぐに逃げるって約束してよ?僕たちじゃどうにもできない事だってあるんだから」

 

「分かってるわよ!じゃあ“カボチャ頭を捕まえ隊”の出発よ!!」

 

「名前ダサっ!!そういえばカボチャ頭をどうやって見つけるの?」

 

「?」

 

「それにさ罠とかあるの?何かちゃんとした作戦とかあるの?」

 

「・・・」

 

 

 チルノは腕組みをして、少し考えてから笑った。

 

 

「考えてなかった」

 

「やっぱり〜」

 

「でもとにかく当たって砕けろ、よ!!まずは里に行って聴き込みしてみましょ」

 

「楽観視し過ぎだよ…、チルノちゃん」

 

 

 人里に着き、2人は手分けして聞き込みをした結果どうやら何かを熱心にやっている人のところに出没しやすいらしいという情報を得た。頑張って商売をしている人のところに現れて邪魔をする、人を驚かそうとする妖怪や妖精達も例外ではないようだ。

 

 

「大変な相手だね。どうする?」

 

「ふふふ!アタイ、良いことを思いついちゃった!」

 

「良いこと?」

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 

「何で僕がこんな事をーーーっ!?」

 

「うるさい!真面目にやってよ!」

 

「うわぁ〜ん!!」

 

 

 チルノの考えた作戦。

 それは囮作戦だ。

 詳しく説明しよう。人里からほんの少し離れた場所で、リグルにはこの前寺子屋で慧音から渡された宿題を頑張って解かせ、その頑張りに気づいたカボチャ頭がやってきたら、その頭目掛けてチルノの必殺技『アイシクルフォール』をぶちかますというものだ。

 

 

「アタイ、隠れてるから頑張って解くのよ!!」

 

 

 チルノは近くの茂みに隠れる。

 リグルは泣きながら宿題を始めた。

 

 

「ううっ、大体この宿題、チルノちゃんのじゃないかぁ。なんで僕がやんなきゃいけないんだよぉ〜」

 

『こんな所で宿題とは…随分と真面目な妖精がいたもんだな』

 

「!?」

 

『どぉれ、その頑張った宿題をビリビリに破いてやろうかなァ』

 

「どっ、どこ!?」

 

 

 声だけが辺りに響く。

 リグルは視認することはできなかったが、茂みの中に隠れて見ていたチルノはカボチャ頭の姿を見ることができた。自分たちと対して変わらない背丈で子どもらしい高い声をしていた。観察していると、ゆっくりと背後からカボチャ頭がリグルに迫る。カボチャ頭が完全に油断している瞬間をチルノは見逃さなかった。チルノは勢いよく飛び出す。

 

 

「見つけたぁぁぁーーーっ!!」

 

『えっ!?』

 

「必殺のアイシクルフォール!!」

 

「待ってチルノちゃん!それって僕も巻き込ま──」

 

 

 2人の悲鳴が響き渡る。

 土埃が晴れるとそこには氷のせいで頭に大きなタンコブをつけて倒れるリグルと同様に目を回しているカボチャ頭がいた。

 

 

「完全に大・勝・利!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

『ん〜…うわっ!?何だこれ!?』

 

「ようやく目を覚ましたのね、カボチャ頭」

 

 

 カボチャ頭が目を覚ますと、目の前には氷の妖精が仁王立ちをしていた。逃げようとするが全身にめちゃくちゃな状態でロープが結びついており、逃げようにも逃げられない。

 

 

「よくもアタイの仲間にイタズラしてくれたわね、カボチャ頭。テングの納め時ってやつよ」

 

「チルノちゃん、テングじゃなくて年貢だよ!年貢!」

 

「うっさい!!今カッコよく決めてるんだから邪魔しないで!」

 

 

 その氷の妖精の隣には虫の妖怪。

 頭には大きなタンコブができており何とも痛そうである。

 

 

「そういえばアンタ、名前は?」

 

『そういうのは自分が先に名乗るもんじゃないの』

 

「アタイは幻想郷最強の妖精…チルノ! そしてそっちのがリグルね」

 

「よ、よろしく〜」

 

「ほら名乗ったんだからアンタも!」

 

『・・・ジャック』

 

「ふーんアタイの次の次にオシャレな名前じゃん。それでジャックは、何でイタズラばっかりしてるのよ」

 

『理由なんかないやい!妖精だって妖怪だって人間にイタズラするじゃないか!オイラも同じことしただけだろ!!』

 

「確かに言う通りだよ。僕たちだってやるし、ここまでしなくても良いんじゃない?」

 

「でもだったら人間だけにイタズラすれば良いでしょ」

 

『人間にしたって……つまんないんだもん。最初は楽しかったけど、皆んなオイラを見たら隠れちゃうし。だったら怒って追いかけてくる妖精とか妖怪にもやろうと思って…』

 

「はぁ〜〜」

 

 

 それを聞いていたチルノはやれやれというポーズをしながら大きなため息をつく。

 

 

「アンタってバカね」

 

『何だとぉ!』

 

「チルノちゃんには言われたくないと思うけど…」

 

「リグルは黙ってて!ジャックっ、アンタの魂胆は読めたわ。どうせ皆んなに構ってもらいたかったんでしょ!」

 

『うっ…!』

 

「だから人間や妖精に朝からちょっかいかけてたんでしょ。アタイはね、それをバカだと思ってんのよ!確かにイタズラするのは楽しいけど、ずっとやってると相手は怒ってくるもんよ。そういう時はどうすれば良いか分かる?」

 

『わかんない』

 

「ふふん。そういう時は……友達とたっくさん遊べば良いのよ!!友達と遊んで、時間経ったらまたイタズラ!皆んながプンプン怒ってきたらまた遊べば良いの!そーいうのを上手くやっていくのが幻想郷で生きるコツよ。……それとね、あんまりやり過ぎると霊夢っていう奴が来るから気をつけた方が良いからね」

 

 

 今のを聞いてリグルは意外にも感心していた。

 どうせまた突拍子のないことを言うのかと思っていたのだが、意外と正しくて真面目なことも言うのだと。

 

 

『・・・でもオイラ、友達なんていない』

 

 

 ジャックの言葉に力なんてなかった。

 表情はくり抜いたカボチャなので変わらないが、声というのも感情を示す道具だ。きっと本当にいないのだろう。

 

 

「じゃあアタイが遊んであげる!!」

 

『えっ!いいの?」

 

「ちょっ、ちょっと待って。チルノちゃんはジャックを……ええと、その……捕まえたかったんじゃないの?」

 

「んー、最初はそう思ったけど、やっぱりさ!捕まえるより鬼ごっこの方が楽しいじゃん!」

 

「え〜…じゃあ僕の犠牲は一体…」

 

「過去のことはいいから!皆んなで遊ぼうよ!カエルも冬眠して凍らせて遊べないしちょうど良かったし」

 

「はぁ。まっ、いいか。じゃあ何して遊ぶ?」

 

「かくれんぼ!!ジャックが鬼ね!」

 

『えっ、えーー!」

 

「ほら早くー!」

 

『あっ、待ってよー!」

 

 

 

 初めは犯人探しで知り合った3人だったが、実はジャックは寂しくて周りにイタズラをしていたことをチルノにより明らかとなる。そしてチルノの持ち前の明るさにより、こうやって遊ぶ関係へとなっていった。しかし色々あったが、子どもというのはこのくらいで良い。子どものいうのは“一人ぼっちの子がいたら一緒にあそぼと声をかけて仲間を増やしていける不思議な力”を持っているのだから。

 

 

 しかし──。

 

 そんなものを許せない男がいた。

 全身に包帯を巻いている“ねずみ男”だった。あのジャックのせいで金儲けできず、こんな怪我まで負ってしまった。そして彼は鼻息をフガフガさせながらカボチャ頭を探しており、この場所で遂に見つけた。

 

 

「俺様にこんな事してタダで済むと思うなよぉ〜……!!ネズミの怒りを知るといい…!」

 

 

 ねずみ男の手には大きな木槌が握られていた。

 彼はそれを持って里の中へと消えていく。

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 

 夜の時間帯頭に包帯を巻いたねずみ男が向かったのは博麗神社。階段の前まで来ると、ゴホンの咳払いしてから思い切り駆け上がる。登った先には霊夢が縁側に座って月を見ながらお茶を啜っていた。結構寒いのに凄いものだ。ねずみ男が来ると大きなため息を吐く。

 

 

「霊夢ちゃん!霊夢ちゃん!霊夢ちゃーーーん!!大変だっ、大変だよー!」

 

「聞こえてるわよ、うっさいわねぇ。……って何でそんなに汚れてんの?服がペンキ塗れじゃない」

 

「そんな事よりも大事件だよっ」

 

「何よ。しょうもなかったらお尻蹴るからね」

 

「しょうもなくないよ!悪い妖怪が里で暴れてるんだよ〜っ!!」

 

「悪い妖怪?」

 

「ハロウィンっていう楽しい催し物を壊そうと、地獄の底からカボチャ頭の妖怪がやってきたんだよ!!見てくれよ、この怪我を!俺を超能力かなんかで空まで引っ張ってよ、何度も何度も何度も!地面に叩きつけたんだよ!」

 

 

 そう言って、頭の包帯を見せつける。よく見ると身体中に包帯が巻かれてはいた。確かに何者かに襲われたであろう形跡が残っている。ねずみ男は大袈裟に大きな声を出しながら、霊夢の両手を握る。

 

 

「里の人間達にも襲いかかってよ。里はめちゃくちゃだぜ。すっかり怯えて出て来ねえんだ。それに今は妖精達に襲いかかっているのを見たぜ!早くやっつけねえと大変なことになっちまうよ!」

 

「ん〜……」

 

 

 霊夢はジッとねずみ男を見る。

 これまでの経緯や彼が里で何をしていたのかを魔理沙などから聞いており、彼の今回の発言を信じられないでいた。

 

 

「なっ、何だよ、その目は!まさか俺っちを疑ってんのか!?」

 

「だってねずみ男だし」

 

「なら俺の目をちゃんと見てくれよ!こんな目をした俺が嘘つくように見えるのかよ!」

 

 

 ねずみ男は充血させた目を近づける。

 ますます怪しかった。

 そんな時だ。新たに階段を登る音がして、そちらを向くと魂のような物を浮かせて歩く刀を携えた少女が現れた。

 

 

「霊夢さ・・・えっ!?男とイチャイチャしてるぅ!?」

 

 

 目の前では霊夢と謎の男が手を繋ぎ、顔を近づけていた。少女はその衝撃に飛び跳ねるが、霊夢はねずみ男を直ぐにぶっ飛ばし訂正する。

 

 

「そんな訳ないでしょ!なんで私がこんなオッサンと」

 

「酷いよ〜……」

 

「ですよね。霊夢さんに男性なんて天地がひっくり返っても有り得ませんよね」

 

「ちっ、それで何のようなの、妖夢」

 

 

 この少女の名は魂魄妖夢。

 白玉楼に住む冥界の主人『西行寺幽々子』に仕える庭師であり警護役でもある半人半霊だ。

 

 

「じ、実はご相談がありまして…」

 

「相談?」

 

「お昼頃に人里の方に行っておりましたら、カボチャ頭のお化けに脅かされまして……。怖くて里に行けないんです!!このままだとお買い物に行けません。それで…そのお化けを追っ払ってくれないかなぁ…と相談に来て」

 

「幽々子には言ってないの?」

 

「言えるわけありません!!この年になってお化けが怖いなんて、笑われちゃいます!」

 

 

 2人の話を聞いていたねずみ男。

 ヒョイと起き上がり、妖夢に近づく。

 

 

「私は笑いませんですよ」

 

「あ、あなたは?」

 

「私は怪奇事件専門弁護士のビビビのねずみ男と申します。お化けが怖いと思うのは普通ですが、怖がってばかりもいられませんよね。どうです?お化けを寄せ付けない私特製のお線香があるのですが……って痛いよ痛い!!ヒゲはやめろって!!」

 

 

 霊夢がねずみ男の髭を引っ張る。

 ねずみ男は悲鳴を上げた。

 

 

「コイツにはあんまり頼らない方が良いわよ」

 

「は、はぁ…」

 

「さてと、じゃあ私はカボチャ頭を退治しに行くわ」

 

「おっ、信じてくれんのか?」

 

「別にあんたを信じたわけじゃないわ。妖夢の方を信じたの。とりあえず里の方に行ってくるわ。留守電よろしくー」

 

 

 飛んでいく霊夢。

 ねずみ男はニヤリと笑う。

 

 

(ザマァ見ろ、カボチャ頭!!ウケケケケ……)

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

「タッチー!」

 

「よしっ!リグルが鬼だ!」

 

「お、追いつけないよ〜…!2人とも早すぎるぅ」

 

 

 深夜、妖怪の森上空。

 チルノ達は鬼ごっこをして遊んでいた。皆んなでお喋りしたり、かくれんぼしたり、競走したりと色々やって今に至る。カボチャ頭はこれまで友達と遊んだ経験が皆無であるため、心の底から楽しいと思っていた。だがその楽しい時間もそこまでだ。3人の前に幻想郷最強が現れる。

 

 

「アンタらー」

 

「霊夢?」

 

「霊夢って…チルノが言ってたヤバい巫女の?」

 

 

 霊夢は3人の中の1人、カボチャ頭を見つめる。

 何かを察したのかチルノはカボチャ頭を庇うように前に立つ。

 

 

「なんで邪魔するのさ!アタイら何もやってないよ!」

 

「そ、そうですよ。霊夢さん」

 

「2人じゃなくて、ちょっとそこのカボチャに用があんのよ」

 

「・・・っ」

 

「人里で人間を襲ってはいけないルールはご存知かしら?アンタ、それを破ったわね?」

 

 

 霊夢の言葉にビクンと体が反応する。

 きっと里のみんなが働いているのを邪魔したからだ。そのことを怒りにきたのだと3人は思った。しかしイタズラ程度だ。叱られるくらいで済むかなと予想していた。だが予想とは違い、霊夢の目からは優しさが消えていた。

 

 

「れ、霊夢。そんなに怒んないでよ。ただのイタズラじゃん」

 

「ただのイタズラだったら私もそこまで怒らないわ。でも今回のは度が超えてる。建物に何度も殴られた跡があったり、穴が開いてるのを確認したわ。そして大きな頭の影が暴れているっていう話も聞いた。流石に博麗の巫女として見過ごせないわ。それに退治してと依頼も受けているの。観念なさい」

 

「お、オイラ、そんなのやってない…!」

 

「疑わしきは罰するのが私よ。諦めなさい」

 

「本当にやってない…!!」

 

「ジャック…」

 

 

 

 霊夢は護符を取り出す。

 戦闘態勢だ。

 しかし霊夢は良くても、カボチャ頭は戦闘なんてしたことがない。ただただ目の前の脅威に震えることしかできない。

 

 ただ、1人を除いて・・・。

 

 

「やめろっ!」

 

 

 放たれた巨大な氷塊を霊夢は拳で破壊する。

 散り散りになる氷の欠片。

 その欠片の雨の中、チルノと霊夢が睨み合う。

 

 

「なんのつもり?」

 

「頭でっかちのバカ霊夢!ジャックはそんな事しないのになんで決めつけるのよ!!」

 

 

 眉を顰める霊夢に対し、チルノはいかにも牙を剥いて飛び掛かりそうである。友達が目の前で祓われそうになっているのに黙ってはいられなかった。リグルとジャックはガタガタと震える。

 

 

「チルノちゃん、やめた方が良いって!」

 

「リグルは目の前でジャックがやられそうなのに黙って見てられるの!?」

 

「そ、それはそうだけど」

 

 

 相手はあの博麗霊夢だ。

 気迫と尋常ではないこの空気に触れてリグルはチルノを止めようとする。だがチルノは聞き入れるつもりはない。まっすぐに霊夢を睨み、一戦交えるつもりなのが明白であった。

 

 

「それじゃあ望み通り……一回休みにしてあげる」

 

「やってみろ!!ジャックに手は出させないぞ!」

 

 

 チルノの周りに、冷気が立ち込め始める。そこまでに奮起し、力を震わせているのだ。霊夢は護符を数枚取り出す。お互いの、その気迫が触れ合おうとしたまさにその瞬間である。何処からか気の抜けた声が聞こえた。

 

 

「おーい、霊夢ぅー」

 

「あれは…」

 

「魔理沙!?」

 

 

 箒に乗った魔理沙だった。

 彼女の手には写真が握られていた。

 

 

「霊夢もこの件に来てたのか!じゃあ今回の異変解決は私の方が一歩リードだな!」

 

「どういう意味よ」

 

「だって犯人の写真を手に入れたんだぜー!凄いだろ」

 

「…ちょっと見せなさい」

 

「いいけど何そんな怖い顔してんだよ。…てか、これなんの集まり?」

 

「いいから!」

 

 

 あの気迫は何処へ行ったのか。

 全員が魔理沙の持ってきた写真に集まり、中を見る。そこに写っていたのはカボチャ頭……ではなくゴミ箱にオレンジ色のペンキを塗って壁を木槌で殴る男性の写真が写っていた。

 

 

「これ・・・」

 

「ジャックじゃないじゃん!やっぱり霊夢の勘違いだったんだ!」

 

 

 このペンキで汚れているゴミ箱を被った男の写真、何処かで見覚えがある。霊夢は記憶を辿る。そうだ、ただ1人。ペンキに汚れていた人物が1人いた。

 

 

「コイツ、穴を開けてそこから食べ物とか盗むんだぜ!最悪だよな」

 

「・・・ねずみ男」

 

「えっ、これアイツかよ!?」

 

「カボチャ頭のフリをして里で暴れて…盗みまでして……、最後には罪をなすりつけようとしたのね」

 

 

 霊夢はチルノ達の方に振り向くと、ペコリと頭を下げる。そしてしっかりと謝罪をした。里の中とはいえイタズラ程度なら霊夢は咎める事はしない。今回は自分に非があるとしっかりと認めた上で謝罪をした。

 

 

「待ってなさい、ねずみ男!!」

 

「何だよ、結局アイツかよ。久々に戦えると思ったのにつまんねえの〜」

 

 

 霊夢は神社に高速で戻る。

 魔理沙はフワフワと里に戻って行った。

 まるで嵐が過ぎ去ったかのような出来事だった。3人はこの一連の流れをいまだに理解できず固まってしまう。

 

 

「と、とりあえず…」

 

「一件落着?」

 

「だね。あははははは…」

 

 

 緊張がほぐれ、ジャックは笑う。

 チルノも力が抜けてリグルに寄りかかっていた。やはり霊夢と向き合うのは中々に怖いのだろう。

 

 

「あはは……、なんかさ…」

 

「?」

 

「友達って良いね」

 

「でしょ!これからも毎日遊ぼうな。明日はルーミアとか大ちゃんのことも紹介してあげるから」

 

「そうだね。皆んなで遊ぶともっと楽しいんだよ」

 

「ありがとうね、リグル、チルノ。遊んでくれて。オイラ…初めてだったよ。こんなに楽しいの」

 

「だから明日も遊ぼーって」

 

「いや…時間切れみたいだ」

 

 

 時間切れという言葉に違和感を感じるチルノとリグル。ジャックの方を見ると体が薄くなっており、今にも消えそうだった。

 

 

「ジャック、体が!?」

 

「オイラ…10月31日しか存在できないんだ。そういう妖怪なんだよね」

 

「じゃあもう遊べないの?」

 

「また来年の10月31日にならないと遊べないんだ。だからオイラ、1日しかいられないからいっぱい構ってもらいたくてイタズラばっかりしてたんだ。だから毎年皆んな、オイラの悪口をたくさん言うけど構ってもらえてるから幸せだった」

 

 

 最初に出会った時、友達がいないと言っていたジャックと違って、今はとても明るく言葉に力を感じる。

 

 

「でも……2人のお陰で、それ以上にとっても楽しく過ごせた!本当にありがとう!こうやって笑って終われるなんて初めてだよ」

 

「・・・また来年も待ってるからな」

 

「そうだね。また来年、今度は皆んなと遊ぼう!」

 

「!・・・うん、また来年!!バイバイ!」

 

「「バイバイ!!」」

 

 

 そして3人はハイタッチ。

 今日はバイバイ、また来年と約束を交わして。そう。友達同士なら当たり前の『約束』をして。

 

 

「・・・あーあ、ハロウィンもお終いかー」

 

「でもさ何だか僕さ、来年のハロウィンが今まで以上に楽しみになったよ」

 

「アタイも!!一年に一度しか会えない友達、早く皆んなに会わせたいな!!」

 

 

 2人は空の月に叫ぶ。

 届け。

 一年に一度の友へ

 

 

「「ハッピーハロウィン!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 次の日。

 全身殴られまくったねずみ男はタンコブをさすりながら、壊した家々の壁の修理をしていた。

 

 

「何で俺様がこんな目に…」

 

「良いからさっさと壁を直しなさい!!」

 

「ううぅ〜っ!俺も一度でいいからハッピーハロウィンしたいよぉ〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 今回はバトル無しです。
 偶にはこんな回も良いかなと思って書きました!!




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