遅れて申し訳ないです。いや本当に仕事が忙しくてこっちに時間を回せる暇がなくて、空いた時間にfgoのイベントや小説を書くなどをしておりました。
まさか今年の映画で鬼太郎とゴジラがこんなにも話題にもなると思いませんでしたね。ネタバレ避けるために感想はもう少し後で書こうと思います。
fgoのグダグダイベントって何であんなに面白いんでしょ。初期の頃はギャグだけかと思ってたのにいつの間にか重いストーリーとか見られて、読む時にいつもワクワクしております。今回は特に新選組に対してしっかりと恨みを持つキャラが出て、面白かったし最後までかっこよかった。糸目キャラって最高だぜ。
それはとある日の優雅な午後のおやつの時間だった。毎日毎日同じような西洋の菓子の繰り返しに飽きてしまったレミリアが咲夜に(駄々をこねて)頼み、和洋中と様々なお菓子を用意してもらった。しかし咲夜が主人のワガママを素直に聞くはずもなかった。こっちは飽きないように様々な工夫をしてきたというのに飽きたから別なのを作れとプリンを残して言った主人にカチンとしてしまったからだ。
「うわぁ〜!!」
「右から順におはぎ、きな粉のおはぎ、3色のお団子、お饅頭、焼き饅頭、水饅頭、酒饅頭……」クドクド
「あーもう!説明は良いわ。それで…これ全部食べて良いのよね?」
「勿論でございます。全てお食べください。因みにですが……これは全てお嬢様の為に朝から作った特別製。もし仮にもお嬢様のお心にメイドの事を思ってくれる優しさがあるのなら、残すということはしませんよね?」
「はっ、何を言うのかと思ったら。この私が食べ物を残すと?フランみたいなお子様じゃあるまいし」
「そうですわよね。ではお楽しみくださいませ」
「じゃあまずはこれ─」
初めのうちは食べ慣れない和菓子や中国菓子に舌鼓をしていたのだが、次第にペースは落ちてくる。甘い物は無限に入るとか、別腹とか、食べ飽きないと言われているが流石に限度はある。それは人間だけに言えることではない。吸血鬼でも同じだった。右から左まで大量にある糖分に段々と身体が耐えられず、舌がもう何も入れないでくれとストライキを起こしかけていた。
「げぷっ」
「おや?如何なされましたか、お嬢さま。今ゲップのようなものが聞こえたのですが…?」
「聞き間違いじゃ…っぷ」
「もしかしてお腹いっぱい……なのでしょうか?」
「そんな訳な…、い…っ」
「ですわよね。安心しましたわ。誰よりも慈悲深くて有言実行のカリスマ溢れるお嬢さまが残すなんて有り得ませんもんね。ですが…フォークが動いてませんわよ?」
「ちょっと…うぷ……休憩…」
「うふふ。遠慮なんかしなくて良いのですのよ。フォークを待つのが疲れたのならそう言ってくださいまし。私が食べさせてあげますから。はい、あーん」
世の男性なら咲夜からの“あーん”なんてご褒美なのだが、レミリアには悪魔の所業にしか見えなかった。冷たい瞳に、レミリアの必死に作った余裕ある笑顔は引き攣る。
「あ、あぁ…」
「あーん」
「ああぁぁ……ギブアップぅぅぅぅ〜っ!!もう食べられないわよぉ〜!びえーん!!」
自分自身の放った傲慢なセリフと咲夜の視線に耐えきれず、遂にはカリスマを捨て去り泣き始めてしまった。
「・・・」
「うわーん!」
「・・・んふ♡」ゾクゾク
泣いている主人の姿を見て、不思議とニヤけてしまう。可愛いと内心思ってしまう。咲夜は我が主人のことは敬愛している。だがいつも踏ん反り返っている主人が泣いている姿を見ると体の内側から震え上がってくる物がある。この感情、この気持ちはなんなのだろうか。咲夜はまだ知らない。
「…こほんっ、これで分かりましたか?折角作ったのに残された物を見た人の気持ち。私も泣きたかったんですのよ」
「うん…」
「でも私も意地悪し過ぎました。どうぞ愚かなメイドに何なりと罰をお与えください」
「……いい。今回はワガママ言った私も悪かった…」
「お優しいのですわね、お嬢さま」
「ふ、ふん!別に大したことないわよ!メイドの責任は主人である私の責任でもあるしね!」
「流石ですわ!」
伊達に長いこと一緒にいない2人。
悪いことは悪いと教えつつ、良いところはしっかりと褒めて、レミリアを立てている。この一連の流れができるのは彼女だけだろう。
「でも、残ったお菓子はどうしましょうか…」
「・・・良いこと思いついたわ!」
※※
「むしゃむしゃ…、こりゃあ絶品だよ!まだまだ入るぜ、こりゃあ」
「あっ、おじ様!1人でおはぎばっかり食べるなんてズルい!私も食べる!」
「ダメだねー、全部俺のもんだ」
「ちょっと!これはお茶会なのよ!もっと優雅に食べられないの!」
「こんなに騒がしいお茶会は初めてよ」
「うふふ」
レミリアの考えた作戦は大成功だった。
まぁ、そんな作戦と言うほどでもないが。自分1人で独占してやろうと最初は思っていたが食べきれないのなら皆んなで分け合おうという皆んなからレミリア様はお優しいと思ってもらえる考えだ。フラン、パチュリーだけでなく、この前のフランを助けてくれたお礼も兼ねてねずみ男を呼んだ。
「美味え美味え!こんなに美味いもんを食う機会なんて滅多にねえから食い溜めしとかねえとな。ケケケ」
「何で手で食べるのよー!下品過ぎるー!」
「へーんだ!大体、俺が下品上品で味は変わらねえし問題ねえだろ。そんな事よりもこうやってムシャムシャ食わねえと、誰かに取られちまうしなぁ。あーん」
最近美味しいものにありつけていなかったので大興奮。端から端まで一心不乱に腹に放り込んでいく。特に咲夜のおはぎはお気に入りだったようで、折角スプーンやフォーク、お箸まで用意されているのに素手でムシャムシャと食べていた。口や手には生クリーム、粉砂糖、更にはきな粉や餡子がベッタリと付いており、まるで子どものようだ。
「ほんと、誘ってくれて感謝しかねえよ。レミリアちゃん」
「“ちゃん”じゃなくて“様”をつけなさい!でも、ふふん!私の寛大な心にはもっと感謝しても良いのよ」
「マジで食べ飽きねえぜ!」
「ちょっと聞いてるの!?」
15時から始まったお茶会が終了したのは17時ごろ。途中でパチュリーはお腹いっぱいになり図書館に戻り、フランも甘いものの食べ過ぎて眠くなる。ねずみ男はトイレに行ったりと離席することは多々あったが、無事にお菓子は完食。勿論外で門番をしている美鈴やパチュリーの使い魔で地下宝物庫の番人も兼ねてやっている小悪魔にもお裾分けさせた。
美鈴は門の前で、小悪魔は地下宝物庫から出て図書館で美味しいお菓子を食べた。
「げふーっ、いやー食った食った。ごちそーさん!んじゃあ俺っちも帰るぜェ」
ねずみ男は大きく膨れた腹をさすりながら紅魔館を後にする。そして咲夜が片付けを始めた。その日の23時頃に
※
※
※
地下宝物庫。
「あれ、ない…」
最終確認としてこの紅魔館に保管された超弩級の魔導書や魔法道具、吸血鬼に代々と受け継がれる秘宝などなどがちゃんと揃っているのかを調べたり、破損がないか点検をしていた小悪魔は呟いた。
「な、ないっ!?ないないないっ!」
「どうしたのよ、騒がしいわね」
深夜、目が冴えていたパチュリーは図書館で読書に勤しんでいた。だが小悪魔の声に気付き、やってきた。パチュリーの心配する声に反応した小悪魔の表情は青ざめており、冷や汗もかいていた。
「ぱちゅりぃ…さまぁ…」
「・・・どうしたの」
「無いんですよ、どこ探しても無いんですよぉ」
「無いって何が?はっきり言わないと分からないわよ」
「
それは古代の魔法使いや占星術師といったスピリチュアルな人間たちが残した神秘の秘術をまとめた魔術の書物のことを指す。グリモワールと聞くと邪悪なイメージばかりかもしれないが実はそうでもない。
内容は様々ではあり、例えば薬草の種類や効能、見分け方や栽培方法などをまとめてあるもの。星の並び方、月の満ち欠けから人の人生さえも見通したり占ってしまう占星術。どのような呪文で、どのようなことが起きるのかを丁寧にまとめた魔法使いのための物もある。
このように使ったところで害は特にないのだが、中には危険な物もある。昔には魔女狩りと呼ばれる最低最悪の事件があった。その際に本物の魔女たちが恨み辛みを残して書き綴った物もあり、使い方を間違えれば使用者の命も奪ってしまうこともある。
「
「究極っ、禁忌っ!?うぅっ…ううぅっ…」
「朝と昼はあったんでしょう?鍵は盗まれてないの?」
「はい…。ちゃんとありました。鍵も大丈夫です…」
「・・・となると、こあが居ない時を狙って誰かが宝物庫の鍵を使わずに開けたのね。力の強い妖怪や妖精、魔力を持つものが入れば必ず警報がなるというのに反応した形跡もないなんて」
「パチュリーさまぁ、私、お嬢様にこの失態を伝えてきます・・・」
小悪魔が泣く理由は宝を失ったからではない。この失態を伝えに行くことに心底恐怖しているからだ。
「パチュリー様、長い間でしたが…大変お世話になりました。ううう、ひぐうぅっ!!」
深々と頭を下げる小悪魔。
まるで永遠の別れであるかのように感謝の言葉を述べる。大袈裟だなぁ〜と思う方はいるだろうか。実は全然大袈裟ではないのだ。紅魔館においてメイド長である咲夜を除くメイドや執事、お手伝い達に地位はない。粗相を犯せば殺処分にもなるし、フランが癇癪を起こした時のサンドバッグになったとしても誰も悲しまない。替えの利く人形のようなものだ。
残酷と思われるかもしれないが、ここで働く者たちは元々、どこにも居場所がなく毎日食事や寝床に困っていた醜い妖精や妖怪たちであり、そんな彼らを雇用し衣食住つけてくれるのだから彼らとしては粗相させしなければ温かい食事にありつけるので文句は無いのだ。
そして小悪魔もその1人。パチュリーに使い魔として召喚され、紅魔館で働く事を契約したのだから、粗相を犯したらどうなるかくらいは知っている。
「では…」
「待ちなさい、こあ」
立ち去ろうとする小悪魔をパチュリーが呼び止めた。
「パチュリーさま?」
「使い魔のミスは、主人である私の失態でもあるわ。この事は私の責任として報告するわ」
「な、何を言って……、私に主人が罰を受ける姿を見ていろというつもりですか!」
確かにパチュリーが罪を被れば、殺される事はない。レミリアからは罰を受けると思うが軽くなるのは当たり前だろう。だが自分の主人が罰を受けて、自分が罪から逃れるのは従者としては耐えられなかった。
「そんなの死ぬより辛いです…」
「ならば貴女が何とかしてみせなさい」
「え?」
「貴女の主人は、レミィではなく私。ならば罰を与えるのは私の役目。私が仕置きされるのが嫌なら、3日以内に真犯人を見つけてきなさい」
「えっ、え!?」
「さあ、どうするの?」
「あっ、えっ、はい!行ってきます!!」
「準備はしていきなさい」
小悪魔は走って紅魔館を飛び出した。
走り出す小悪魔を背にパチュリーは天井にぶら下がるコウモリを見た。その視線にコウモリは気づくと、パタパタと飛んでパチュリーの側へと行く。
「随分と強引じゃない、パチェ」
「覗き見なんて良い趣味してるじゃない、レミィ」
レミリアの眷属である血吸いコウモリ。
吸血鬼の多種多様な能力として眷属の視界を通して物事を見たり、耳を通して音を聞いたり、口を使って会話ができるというものがある。それで一部始終を見聞きしていたのだろう。
「・・・また、やって来ると思っていたけどこんなに早いとはね。これってやっぱり」
「ええ。私の感知用の結界を抜けての宝を盗む技。あの
「感知されないで入り込む芸当が出来るのは……あの酔っ払いの鬼しか考えられないか」
「地下の者たち…。アルマデルを盗んで一体何を考えているのやら」
「宣戦布告とかじゃない?まぁ、アルマデルは
実は全て嘘だ。
色々あるうちの中でアルマデルが盗まれたが、相手にはどの宝がどれほど重要なのかは分からなかったようだ。何故ならアルマデルはそこまでの書物ではないし、レベルも低い。大体悪魔を召喚したいのならば隣のページに天使の召喚方法などを書くか?普通に嫌だろう。術者も書き記す際によっぽど焦っていたのだろうが、こんなのに呼ばれるのは余程の馬鹿か、強者のみ。とにかく紅魔館に被害を出したかったのだろう。
以前の妖怪樹の借りも返したいのと、小悪魔への一応の罰として、今回のことを企てたのだ。
「ふん、何だって良いわ。私たちに喧嘩を売るとは良い度胸だし、逆にぶっ潰してやる」
「優雅さが欠けているわよ」
「うっさい!!」
「まぁ、安心なさい。見てたと思うけど、小悪魔に犯人を探させに行かせたから犯人を見つけるのも時間の問題よ」
「アイツにぃ!?本気ぃ?私が能力を使えばあっという間じゃない?」
「馬鹿。私達が紅魔館を出れば、そこを責められるわ。だから私たちは構えてれば良いのよ」
馬鹿にするように笑っていたが直ぐにやめた。コウモリの瞳を通じて、レミリアはパチュリーの自身溢れる目を見たからだ。馬鹿にするなという気持ちが言葉ではないが気迫や思いからビシビシと伝わってきたのだ。
「あの子は
「やれやれ…。まぁ、お手並み拝見よ」
「最悪な事態になったら・・・、その時は私が行くわ」
(そう─)
(最悪な事態になったら、その時は私──)
※※※
ガリ…、ガリガリ……。
黒い影が古い書物を読みながら、枝を使って地面に模様を書いていた。時に数字、時にどこかの国の言葉、時に鳥や魚の絵、そして中央には明らかに目立つような逆五芒星。それは所謂魔法陣と呼ばれるものであり黒魔術などに使われるものだ。書き慣れてはいないのか、少し粗は目立つが徐々に完成して行く。
「・・・」
悔しい。
憎い。
ふざけるな。
「エロイムエッサイム…」
俺をこんな目に遭わせやがって。
許さない。
絶対に許さない。
「エロイムエッサイム…、エロイムエッサイム……」
殺してやる。
「我は求め訴えたり……!!」
足元に描かれた不恰好な魔法陣が黒く、鈍く、怪しく光る。魔法陣の中心に置かれたニワトリの死体が黒い光に飲み込まれると、その代わりに黒煙が舞った。
「お…、おおぉぉぉ……!!」
歓喜の声。
とある儀式は成功のようだ。
黒煙と共にとある世界の扉が開く。幻想郷と異界が繋がり、逆五芒星から禍々しいものが這い出てきた。
『──サア…、迷える子羊よ。汝の欲望を俺に見せてくれ』
※※※
「・・・ここにあるはず」
早朝。
手帳に、鉛筆、深い帽子にコートを身につけ、うきうきの探偵気分で人里にやってきた小悪魔。いつもはパチュリーの付き人という立場であるため、パチュリーが里に赴かない限りは来ることができなかった。だからこそ1人で里に来るのは初めての経験であり、パチュリーが罰を受けてしまうことに不安を感じながらも内心実は少しワクワクしていた。
「うぅ、寒い。でもなんか遠足来たみたいで楽しみかも……ってダメダメ!パチュリー様がお仕置きされる前に見つけなきゃ!」
なぜパチュリーは小悪魔に行かせたのか。
それは彼女の種族が関係している。
小悪魔は名前の通り、悪魔に属する存在である。悪魔とは天使という敵対種族が存在しており浄化されるのを恐れるため常に同胞や魔力の気配を察知することができる能力を生まれた頃から持っているのだ。つまり誰かは分からなくてもいいが、どこであの魔力を帯びた本があるのかは探せる。──ただ、小悪魔は上級悪魔ではなく下級の存在。その探知能力は完璧ではない。ふんわりだが感じるから、大体ここだろうとある程度予想しなければならない。
「魔力は感じる。里からは出てない…かな」
4時頃でまだまだ早い時間帯だ。
起きている人も少ないだろうから聴き込みは出来なさそう。もしかしたら落ちているかもしれないと考え、とりあえず里全体を探索し始めようと考えた。
「あれ?」
だが予想とは違った。
早朝は静かだろうと決めつけていたのだが、ガヤガヤと人々が走り回ったり焦っているような騒がしさを感じる。時折、悲鳴のようなものも聞こえていた。音の方へと向かった。辿り着いた先には大勢の人が大きな家の前に集まっていた。野次馬の人に小悪魔は近づく。
「うひゃあ〜…ひでぇな、おい」
「あのぉ」
「ん?」
「あの、なんかあったんですか?」
男は小悪魔を見る。
童顔に似合わない大きな胸に、白い肌。守ってあげたくなるような欲を駆り立てさせる姿と抱いてみたいという欲情を引き立てる彼女に一気に鼻の下を伸ばす。
「で、でへへ…、あー、いやね。今そこの家の家主“
「思った? 無事だったんですか?」
「おう。慧音先生の友達の妹紅さんが駆けつけてくれて応急処置してくれたのよ。こう…傷口を炎でジュゥゥゥーッと、ね。・・・でさっき慧音先生が永遠亭の人たちを呼んできてくれて、俺らはどうなったか気になるからこうやって野次馬ってるわけよ」
「それにしても首を狙うとはよっぽど恨まれてたのか…」
「それはねえな。大門寺さんは貧乏に苦しむ人に援助とかよくしてた。ここにも世話になった人も多い。好かれることはあれ、恨まれることはねえな」
「では夜盗か何かに襲われたのかも…」
「そうかもな。うひっ…ひひっ……、今この里は危ねえからよ。どうだい、俺の家に来ないかい?守ってやるよぉ?」
「結構!」
鼻の下を伸ばした男の手を払いのける。
どうしたものか、男の目はトロンとしていて息も荒々しくなる。払い除けられた男はニチャリと笑うと舌をベロリと出して、何度も唇を舐めてからもう一度襲いかかってくる。腕をがっしりと掴むとそのまま路地裏に連れて行かれた。周りの人たちは家の方を見ているので不思議と誰も気づいていなかった。
「ちょ…、離してっ…」
「大丈夫だから大丈夫」
「何が大丈…むぐぅっ……!?」
手で口元を抑えられ、悲鳴は上げられない。
抵抗しようにも体の大きな男の力は強く、抵抗しようにも動けずに無駄に終わる。その姿が更に興奮させてしまったのか我慢できなくなった男は自分のズボンへ手を伸ばす。
「ムチムチな身体のくせに顔はガキみたいとか堪んねえよなぁあ!うひひひぃ──がばぁっ!?」
「犯人探ししてたら変態をみつけるとはね」
「ぷはっ…!」
黒い羽が突如舞った瞬間に小悪魔の目の前で男は倒れ、地面と熱い口づけを交わす。解放された先にいたのはカメラを持ったよく知る人物であった。
「あなたは文…さん…」
「どーも」
接点はなく、会話をしたこともほとんどない。偶に取材として紅魔館にやってきてはレミリアお嬢様や咲夜様、パチュリー様に追い出される新聞記者の射命丸文であった。
「大丈夫ですか?えーと…小悪魔さん、でしたっけ」
「はい。ありがとうございます…」
「変態に襲われるとは大変ですね。どうします、この男。慧音さんのとこまで連れてっちゃいます?」
「あっ、彼には何もしなくていいです!」
手と首を横に振る小悪魔。
一生懸命に否定する姿に違和感を感じる。
「襲われたのにですか?随分とまぁお優しい……、それともそういったお趣味とか…、はたまたあーいうプレイをしてたとかですかね?あっ、そういえば貴女って
「確かに夢魔ですけど、私はそんなんじゃありません!!ただあのおじさんは私の能力のせいで狂っちゃったから責めたくないんです!」
小悪魔の能力。
それは『異性を惹きつける程度の能力』である。但し、元よりそれは、相手の最も好みの姿に化けて精気を吸う下級の悪魔【夢魔】が持つ当たり前の力である。つまり我々人間が生まれた時から呼吸ができるようなものであり能力と呼んでいいのかは分からない。
この能力は相手が異性である場合に本人が発動させる気がなくても自動で発動する。男たちは小悪魔に対して性的に興奮し、どんなにタイプじゃなくても必ずときめき、振り向いてしまう。長い間に一緒にいるだけでその性的興奮は限界を突破し、男を獣へと変貌させてしまう魔性の物だが、この能力の最大の特徴であり強さは、男は小悪魔のお願いを聞いてしまうというものだ。小悪魔のことを好きで好きで堪らなくなり、秘密を教えてくれと言われたら教えてしまうし、お金をくれと言われたらあげてしまう。先程の男性も、元々の性格は偏屈で頼まれても断るようなものだったのに、小悪魔に教えてくれと言われたので教えてしまった。
「ふーん、難儀なものですね。それよりも何故貴女がここに?ご主人様と一緒では?」
「それがかくかくしかじかでして」
「なるほどなるほど…。魔導書が盗まれ、里まで来てみれば殺傷事件の発生!これはとくダネの予感…!小悪魔さん、私もその魔導書探しお手伝い致します!」
「えっ、いいですよ。嫌な予感しかしないし」
「そんなこと言わずに。乗りかかった船、旅は道連れと言いますしねぇ。ほら、早速戻ってみましょ!」
「ええ〜〜〜」
強引さに敵わずズルズルと引っ張られる。
これぞ射命丸文の愛嬌というべきか、コミュニケーション能力の高さ故か、何だかんだで気を許し、しまいには相手の口調も砕けてしまう。ただこれが取材に生きたことはないが。
既に家の周りには人はおらず中にもいなかった。里の人々のヒソヒソ話や井戸端会議に耳を傾けると、どうやら妹紅のお陰で死ぬ事はなく、永遠亭の助力もあり悪化することなく運べたらしい。
「では家宅捜索と行きますか!」
「人の揉め事なんかに興味ないのよ、私はー!」
「なに冷たいこと言ってんですか!」
「貴女だって記事にしたいからこんな事してるんでしょ!」
「あやや、バレてましたか。まぁ、いいじゃないですか!旅は道連れですよ」
「いや〜、殺人事件なんかに用は無いのに〜〜」
行こう行かないの水掛け論をしながら2人は大門寺宅に入る。中は壮絶なもので刺された時に出た血液が至る所に付着してはいた。だが何かを盗もうとしていないのか何処にも荒らされた形跡はない。寧ろ家の中は綺麗であった。強いて言うなら湯呑みが倒れており、中身がこぼれている事くらいだろう。
「犯人は知り合いだったのかなぁ」
「何故?」
「だって湯呑みが2つあるのよ。見た感じ、大門寺って人は独身みたいだから家族のものではないでしょ。そうなると湯呑みを2つ出すって事は自分用と知り合いとかお客さんになるかなって。それに何も盗まれてないし強盗の線は薄いかな……、怨恨かも…」
「おお〜!メモメモ…」
メモ帳に犯人は知り合いの可能性有り、とメモを書く文。小悪魔は他の場所も探してみる。
「大門寺さんは優しいって噂だったんですが、実際は恨まれていたりとかもしたのでしょうね」
「やっぱり本当の善人なんか居ないのよ」
「悪魔が言うと重みがありますねぇ」
愉快そうに笑う文。
小悪魔は相手にはせずキッチンへと向かう。包丁の数が一本足らないところから犯人はここで武器を得て、刺したのだろう。
「・・・っ!?」
「どうしました?」
小悪魔は同胞の残り香を感じた。
リビングでは何も感じなかったのに、キッチンに入った途端に邪気と血の匂いが鼻についた。
「・・・悪魔」
「はい?」
「悪魔が今回の事件に関与している」
「悪魔……って、マジですか?悪魔がやってきて人を殺そうとしたってことですか?幻想郷の悪魔は貴女だけですよね?」
「そうだけど…。多分、悪魔を召喚した人が犯人…。そして悪魔を召喚する方法を知っているということは……そいつが私たちの図書館から魔導書を盗んだ!!」
「お目当ての物、発見ですね。うふふふ…、これで俄然やる気が出ましたね」
なんだかそう言われるのは癪だが、本当にその通りだ。初めは自分にとってどうでも良い事件だったけど、魔導書が関わっているのなら本当にこの事件の闇を暴かなければならない。
小悪魔はそう決心すると、文と共に知り合い達の所へと向かうのだった。
※※
「うううっ…、どうしようどうしよう……っ」
その者は風が吹けばかき消されてしまうほどのか細い声で言った。布団の上で体を丸め膝を抱きしめる体育座りの形になり、頭をガリガリと荒々しく掻き、爪の間には皮脂や髪の毛がついていた。ガタガタと震え、頭を上げると机の上の魔導書と赤く染まった包丁の鈍い輝きにまた震える。
「人を殺してしまった…」
『フフフフ…』
「何がおかしい!?」
『お前のその反応がおかしいのさ』
その者は何もない壁に向かって叫ぶ。
我々には何も見えないが、その者の血走った瞳はその闇の中に潜む物をしっかりと捉えていた。
『考えてみろ。お前は何か悪い事をしたのか?』
「何を言って・・・!人を殺してしまったんだぞ!?」
『違う。悪いのは全部あの男だ』
「なに?」
『考えてみろ。あの大門寺が
「そ、それは・・・」
『大門寺のせいだ。お前は何にも悪くない。お前はアイツのした事に耐えられなくなり、覚悟を決めて刺したんだ。寧ろ…お前のお陰で他に被害が出ることはなくなったんだ』
「・・・」
『誇れ。お前はよくやったじゃないか。自分自身の手で悪を裁いたんだぞ』
「そう、だな……。そうだよな…」
甘い言葉が彼を肯定させる。
力無き言葉が背中を押す。
「何も悪くない。私は何も悪くない…!そうさ、大門寺の野郎があんな事しなきゃ…俺はあんな事しなかったんだ。元々あんなことするつもりなかったのに、アイツが悪い。全部アイツのせいだ」
『その通りだ。では……そろそろ次に行こう』
「次?次って…私は大門寺を殺したかっただけだぞ」
『違う。お前の怒りはまだ消えてない。まだ殺らなければならない。アイツが残ってる…』
「アイツ・・・」
『そう。あの──』
──コンコンコン…
何者かが戸を叩く。
誰だ。
もしかしたら私が犯人だと気づいて、慧音達がやって来たのか!?
「ふぅ…ふぅ…」
包丁を握る。
戸を開けた瞬間に刺してやる。心の奥底にある罪と疑心暗鬼によりその者は冷静な判断ができないが、殺意だけがメラメラと湧いて来た。
「どなたですか?」
「俺だよ」
包丁を下ろす。殺意も消える。声の主はよく知っている。自分に力を与えてくれた恩人だ。自殺しようかと悩んでいた時に突然目の前に現れてくれた福の神のような人で、給料3ヶ月分の金で魔導書を売ってくれたのだ。戸を開けることはなく、この戸を隔てての会話。
「大変な事になったぞ」
「大変なこと?」
「あの大門寺って奴、生きてたぞ」
「・・・え?」
確かに首を刺した。
腹にも刺してやった。
そして直ぐに裏口から逃げた。誰にも見られてないし、包丁だって持ち帰って来たし証拠は決して残していない。残してないはずだ。それなのに何なんだ、この不安は。
「ば、ばかな…、確かに首を刺してやったのに……!!」
「詰めが甘いんだよ、馬鹿。今永遠亭で緊急入院中だ。そして探偵気取りの2人組がこの件を探ってる。もし悪魔を召喚したこともバレたら……博麗の巫女がのりこんでくるぞ!!捕まるんじゃなくて殺されるかもしれねえ!」
「はぁ…っ、はぁっ…!?苦しい…、苦しい……!!」
過呼吸になる。
博麗の巫女が来るなんて考えもしなかった。やばい、やばいやばい。殺される。
「良いか?お前が捕まれば、俺もどうなるか分からねえんだ。上手くやれよ?・・・おい、聞いてんのか?」
「ひゅーひゅー…っ」
「……チッ、売る奴間違えたか。夜逃げの準備しねえと…!!」
戸の向こうの男の声が遠ざかる。
一方で犯人は真っ暗な部屋で不安と恐怖に押しつぶされていた。いつかバレてしまうという恐怖に涙が出る。
『落ち着け』
「おち…っ、はぁっはぁっ…、落ち着いていられるか!お前も殺されるかもしれないんだぞ!!」
『大丈夫だ』
「ちゃんと殺したはずなのに…!お前が言うから首刺したのに!どうしようどうしよう…っ、もし目が覚めて、私の名前を言ったら…確実にやられる…ぐっ!?」
首を絞められる。
ザラザラする感覚だ。昔いじめっ子に無理やり首に蛇を巻きつけられた過去を思い出した。そしてその冷たさに驚き、前を向く。
『とりあえず俺の話を聞け』
「なっ、なんだよ…。逃げろとでも言うのかよ。逃げられるわけねえだろうが…」
『逃げるなんて誰が言うんだよ。その逆だ。もう一度大門寺を殺っちまえば良いんだよ』
「はっ、はあっ!?」
『荒唐無稽と笑うか?いや、笑ってる暇はないぞ。いいか?永遠亭に乗り込んで、大門寺が話す前に殺すんだよ。死人に口なし。さぁ、やれ。お前なら出来る』
「無理だよ。出来るわけねえよ…」
『自信持てよ。最初は無理無理って言うけど、お前だって心の底では出来るかもって少しは思ってるじゃねえか。俺には分かるんだ。だってよ、最初は無理と思ってたのに刺せたしな。なら絶対に出来るって。今が勇気を振り絞る時だぜ?』
「ふ、ふふ…。お前だけだよ。こんなに応援してくれるの…」
否定ばかりして来た人生。
諦めていたばかりの人生。
だが負け犬街道まっしぐらの私に、お前だけは手を差し伸べてくれた。勝手に呼んで怒っているかと思ったら、出会ってからずっと応援してくれたんだ。
「出来るかな、私に出来るかな…。上手く殺せるかなァ」
『ああ……出来るさ。いつもは気弱だが、本当のお前は強いんだ。お前のやる行動は何も悪くないんだ。──お前は
「そうだよ…。そうだよなあ……!私は何も悪くないもんなァッ!!」
包丁を拾い、ぎゅっと握る。
ああ力が湧いてくる。
勇気も湧いてくる。
昔から気が弱くて、馬鹿にされて来たけど、本当の自分は強いんだ。コイツはそれを教えてくれた。俺の中に眠る獅子を起こしてくれた。俺に勇気と自信を与えてくれた。
「私は何も悪くない・・・!!」
※※※
「彼女らがつい最近まで大門寺さんと接触していた人たちです」
射命丸文は持てる情報網を使い、事件が起こる1週間の間に大門寺と接触していた人たちを調べ、ここに呼んだ。
集められたのは男女含め4人。
彼らの共通点は全員が貧困で苦しんでいた経歴を持ち、大門寺から援助を受けていたことである。
「何で集められたのよ」
「もしかして私らを疑ってんの!?」
姉妹だろうか、少し顔つきが似ている2人。調べによるとつい最近まで大門寺から金を借りていた。ラーメン屋を営んでいたが全く売れずに店をたたみ、金に困っていたところ偶然立ち寄った大門寺に金を貸してもらったのことだ。
「大門寺さんは私たちの命の恩人よ…!刺すわけなんかない!」
「そうですよ。我々は本当にあの人にお世話になったんだ。感謝することはあれ、恨むことなんてない!」
2人は夫婦だ。聞くところによると新婚で、両親の反対を押し切ってのものらしい。ただ両者の親からは完全に縁を切られてしまい、夢だった結婚式を挙げれずに困っていたところを大門寺に助けられた。お金はゆっくりだが返していた途中である。
「この人の中に魔導書を盗んだ犯人のいる…!!絶対に見つけてやるわ。パチュリー様の名にかけて!!」
ありがとうございました。
今回は小悪魔が主役です。なぜ彼女か?自分も分かりません。ただ書きたかったんですよね。そろそろ文のメイン回も書きたいから、小悪魔の話を書きつつ書いてます。
作者は探偵ものは全く書けません。コナンの作者様は本当に天才なんですね。毎度めちゃくちゃ凄いミステリーを書けるのだからまず脳内が違うのでしょうね。