ねずみ男 幻想郷に立つ   作:狸狐

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こんにちは、狸狐です。

 前作の時には書かなかった地底編がスタートです。
 暑くなってきて、もう毎日冷たい麺を食べてます。皆さんは暑い時何を食べますかね。やっぱり私と同じ素麺生活?

 ネトフリで5期鬼太郎が52話まだやっておりまして、サザエ鬼の回を見たら、鬼太郎も素麺を食べてました。なんか我々と近いものを食べている姿を見ると親近感が湧きますね。
 
 






──────










 今よりももっと幼い頃。
 煌びやかな景観に憧れて、姉の注意も聞かずに、屋敷を飛び出した。静かな我が家とは違って、色んな見た目をした者たちが楽しそうに笑っていた。

 混ざりたい。
 そう思って、彼らに近づいた時に聞こえた声は今でも忘れない。


(化け物が来た)


 家を出るまで知らなかった。
 姉が止めた理由がすぐに分かった。
 

「私って嫌われてたんだ」


 私には力がある。
 生まれついての能力がある。それは“人の心が読める能力”だ。読みたくないのに勝手に読んでしまう。初めは嘘が見破れる良い能力だと思っていたし、あっても困らないものだとも思っていた。

 でも読む側は良くても、読まれる側は気持ちが悪かった。

 勝手に心の中を読まれて不愉快に思われるのは当たり前だし、恐れられたり、嫌われるのは当たり前だった。でも、でも読みたくて読んでるんじゃない。勝手に入ってくるんだ。それなのに何でこんなに酷いことを言われなきゃいけないの?


「うっ、うぅっ…、何でっ、何でよ」


 私は悪くないのに、私は何もしてないのに、どうして嫌われなきゃいけないの。なんでこんな思いをしないといけないの。


「だから言ったでしょう。外には出ないほうがいいって。私たちのことをあんな低俗な奴らに理解してもらえるわけないじゃない。泣かないの。ほら、屋敷に戻りましょう」


 優しく諭してくる姉の言葉に怒りが湧いた。
 私の気持ちをこの人は理解してくれないんだ。きっと同じ気持ちだと思ってたのに、ここになら自分の居場所があると思ってたのに。
 
 



(私って“一人ぼっち”なんだ)





 そして私は心を閉じた。














地底物語編
ようこそ地底へ ①


 

 亡者どもの呻き声、そして怨嗟。

 欲望ひしめく悪しき魑魅魍魎に、ゲラゲラと笑い合う鬼たちの声。愉悦、嘲笑、歓喜、哀愁、侮蔑、希望が混沌と混ざり合う。

 

 それらを全て引っくるめた喧噪の地。──地底。

 

 

(心の中なんて見たくない。見ようとも思わない)

 

 

 彼女はそんな地底で生きていた。

 誰にも気づかれずに、否、誰からも存在を意識されることはなく、ただ1人路地を歩いていた。

 

 

「嫌い…」

 

 

 彼女の瞳には光はない。

 その瞳に宿るは憎しみのみ。自身の生まれ、境遇、能力故に周囲から嫌われ、疎まれ、憎まれてきた。だからこそ心を閉ざすことにした。誰とも関わらないと決めた。

 

 どうせ何をやっても嫌われるんだ。

 

 

「皆んな、大嫌い……!!」

 

 

 だから今日も何も感じないように意識を消すのだ。誰にも、自分にも、気づかれないように。無意識に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギィ…ヒッ!イィィ…ヒヒヒヒイィッ!!」

 

 

 顔に傷のある鬼、ガラの悪い鬼。

 様々な鬼たちが酔っ払いながら地底中に並ぶ飲み屋を渡り歩いていた。ゴミ箱を蹴り、看板を殴り、道に唾を吐く。そんな態度の鬼たちに近寄る妖怪たちはいない。

 

 

「次行こうぜ!次ぃ」

 

「今日は星熊の野郎がいねえんだ!鬼の居ぬ間に命の洗濯よぉ〜!!」

 

 

 鬼とは妖怪の中でも圧倒的に格上の存在である。

 力も、術も、体も、能力も、どの全てにおいても鬼は格上であり、そのせいで態度も傲慢である。だが誰もがそれに納得していた。だからこそ鬼たちは自由気ままに暴れていたのだ。

 

 そんな鬼たちを力でまとめ上げた天辺(てっぺん)こそが、星熊勇儀である。彼女こそが鬼の中の鬼。その剛力で歯向かうものを蹴散らし、そのカリスマで鬼たちをまとめた。鬼たちもそんな彼女について行こうと決めたのだ。

 

 しかし、光があれば影があるように、彼女を嫌う者が必ずいる。彼女が地底にいる限り好き勝手はできず、ストレスを溜めながら耐え続けていた。そして今日、星熊勇儀はとある用事で地上へと出ていた。つまり彼女を嫌うものたちが好き勝手できるのであった。

 

 

「そういえばよお、知ってるか?」

 

「何だあ?」

 

「今、この地底に“通り魔”が出るらしいぜ」

 

「通り魔だと?」

 

「ああ。蛇鬼(じゃき)鳥人(ちょうじん)も殺されたらしいぜ。今では鬼もサイコロみてえにバラバラになってよお。星熊の野郎、それで遂に通り魔を捕まえることにしたみてえよ」

 

「なるほどな。この()()()()()()()()世界で面白いことが起きてるみてえだな。じゃあ、もし俺が犯人を捕まえたら……きっと俺が鬼の首領になれるんじゃ…」

 

「夢じゃねえぜ!犯人は証拠も残さない透明な奴らしいからな。それを捕まえたら他の鬼たちはお前について行くよ」

 

「おっしゃー!俺が犯人捕まえてやる!!その前祝い行くぞ!さぁて次の店は〜〜」

 

 

「きゃっ」

 

 

「…おっ?」

 

 

 そんな鬼たちの足元に何かがぶつかった。

 下を見れば尻餅をついている自分たちよりも遥かに小さな小さな少女である。

 

 

「……あれ、無意識に能力を解いてた」

 

 

 少女はさっさと離れようとする。

 しかし巨漢の鬼たちは少女を囲み、逃そうとはしなかった。ニタニタと下衆な笑みを浮かべながら立ち塞がる。

 

 

「待てよ」

 

「いつの間に出てきたのか分からねえけど、こりゃあ慰謝料貰わねえとなあ。ヒヒヒ」

 

「・・・お金なんか持ってない」

 

「金が無いで済むと思ってんのかア?」

 

 

 1人が怒鳴り、凄む。

 途端に表情のない少女は震え上がる。

 

 

「一体どこから出てきやがった。気づかなかったぜ。……ん?待てよ、俺ら鬼が気づかなかったって事はコイツが通り魔!?」

 

「……この見た目。おいこりゃあ(さとり)妖怪じゃねえか」

 

「ケッ!覚か!あの屋敷のか。心を読むだけじゃなく、こそこそと鬼を殺しまわっているとはなア。害虫のくせによお」

 

「なんかコイツ随分と雰囲気が違くねえか?」

 

「こいつは害虫の妹か何かじゃねえか。姿を見たのは初めてだが、まぁ、とりあえず──」

 

 

 

 

──バギャッッ

 

 

 

 

 

 大きく拳を振り上げ、少女の頬を殴る。

 その威力に軽い体の少女は簡単に壁に叩きつけられた。口から血を流し、何度も咳き込んでいる。

 

 

「うぐぅっ、ぐふぅ、うぅ……!?」

 

「ナイスヒット〜。ふー!」

 

「害虫駆除の時間だぜ。」

 

 

 胸ぐらを掴み、持ち上げる。

 少女の光のない瞳の中には鬼の下衆な顔が映る。全てに絶望し、諦めた彼女は抵抗しようとはしなかった。

 

 

「心の中を勝手に読む気持ちの悪い化け物が偉そうに屋敷なんかに住みやがってよぉ。挙げ句の果てには通り魔をやっていたとはなぁ。殺してやるよお〜〜!!」

 

「・・・」

 

 

 ああ、拳が迫ってくる。

 またか。

 まぁ、どうせ今だけ我慢すれば。私が耐えさせすれば良いんだ。

 

 

「あれぇ?」

 

 

 顔面をめちゃくちゃにしてやろうと思ったのに拳は届くことは無かった。殴ろうとした拳は腕から離れて、ころんと地面に転がっていた。それに気づいた瞬間、鮮血が吹き出す。見事なほどに鮮やかな切り口は切られたことを気づかせなかった。

 

 

「・・・!」

 

「あっ、ああっ、あぎゃあ〜〜〜っ!!」

 

「相棒の腕がぁ〜っ!?」

 

 

 コツコツと、いつの間に居たのか、誰も気づかぬ内に鬼と少女の間を歩いていた。

 

 

「鬼というのは、いつも自分たちが1番だと思っている。何という傲慢さよ、人間と同じだな」

 

「テメェが切ったのか!?ま、まさかコイツが通り魔!?」

 

(このお爺ちゃん。いつの間に・・・?)

 

 

 老人は杖から刀を抜く。

 どうやら杖は仕込み刀であった。その研ぎ澄まされた刀から少し血が流れていた。

 

 

「妖怪復権の為に、我らは手を取り合わなければならないが……。これでは道が遠くなるばかり。貴様らのような障害を取り除かないと真の復権は叶わんよなあ」

 

「聞いてんのかぁっ!?」

 

「消えろ」

 

 

 スン…。

 再び老人が目の前から消えた。その瞬間にバラバラになる鬼の死体と血の雨が降り、少女は驚きつつもバラバラになった鬼たちを見て笑う。ゆっくりと姿を現す老人に真っ暗な瞳の中に光が宿る。

 

 

「痛むか?」

 

「・・・え」

 

「その頬の傷。殴られたんだろう」

 

 

 心配してくれた。

 久しぶりに誰かに心配してもらえた。

 

 

「・・・!」

 

 

 ジッと老人の顔を見る。

 何故だ。

 何故、この老人は()()()()()()()()んだ。

 

 

「だ、大丈夫。助けてくれてありがとう」

 

「ふん、礼を言われる筋合いはない。探し物の途中で見つけたゴミを掃除しただけの事だ。そんな事よりも、貴様、あの(ゴミ)どもが言っていたが覚妖怪らしいではないか……」

 

 

 老人はキィと睨みつける。

 

 

「なぜやり返さなかった」

 

「・・・え?」

 

 

 予想してた反応と全然違かった。

 

 

「なぜ、やり返さなかったと言っているんだ。情けない。貴様の能力ならば奴らの動きを先読みし、殺せたろう。それなのに力を使わずに目を瞑るとは何を考えているんだ」

 

「だ、だってアイツらを殺したところで、何も変わらないし…。それに心はもう読めないし」

 

「何だと?」

 

「……心を読むとみんなが嫌うんだもん。何もしてないのに、勝手に読めちゃうだけなのに。私はただ好かれたいの。友達が欲しいの。でも皆んなは私を嫌う。誰も私の気持ちを理解してくれない。こんな能力なんか要らない。そう思ってたら心を読む力は消えてた……」

 

「馬鹿が。理解してくれる者がいないなら、無理矢理でも理解させれば良かったではないか」

 

「は、はあ!?そんな無茶苦茶な…」

 

「儂には理想がある。しかし、その理想を理解してくれない奴らがいる。そして奴らは排除しようとする。苦しかった。憎かった。自分が間違っているのではないかとも思った。だからな、娘。お前の気持ちは痛いほどよく分かる」

 

 

 老人の顔を見た。

 心を読む力がなくても、この人は嘘をついていないことだけは直ぐに分かった。

 

 

「だがな、儂は折れなかった。理解してくれないのなら、無理矢理にでも理解させる。そうやって能力、人脈、技……、持てる力を全てを使ってな。娘よ、今までもこれからも理解者が現れるまで耐えるのか、それとも力を振るい理解者を作るために行動するのか、変わるなら今だぞ……!!」

 

「・・・!!」ゾクゾク

 

 

 

 もし彼女の目の前に鏡があるならば、きっと驚くだろう。多分人生で1番輝いている顔をしていた。

 

 自分と同じく辛い思いをしてきたのに、私の気持ちをわかってくれる位の思いをしてきたはずなのに、この人は私みたいに落ちてなんかいない。なんて、なんて輝いているんだろう。

 

 ああ。

 なんて。

 カッコいい…。

 

 

 

「ふん。喋りすぎた。さらばだ、娘よ」

 

「待って!」

 

「なんだ?お前に構っている暇はない」

 

「さっき探し物って言ってたけど、何を探しているの。私にも手伝わせて」

 

「・・・」

 

 

 先程と違い、暗くウジウジとした雰囲気が消えていた。どこか覚悟を決めたような強い意志を代わりに感じたのだ。

 

 

「“とある妖怪”を封じた地蔵を探している。心当たりは?」

 

「お地蔵さん……。あっ、お地蔵さんがたくさん並んだ場所なら知っている。案内する。助けてくれたお礼はさせて」

 

「そうか、なら案内してくれ」

 

「ええ」

 

 

 

 地底とは、元々は地獄であった。しかし、その地獄でとある事件が起きた。そのせいで亡者たちが逃げ出し、地獄は経営していくことができなくなった。地獄の裁判官や補佐官たちはこの地底でやっていくことを諦め、新天地を探すこととなり出て行った。

 

 溢れ出す亡者をなんとかしようと賢者はとある計画を立てた。その騒ぎを治め、亡者や怨霊たちを封じることを『鬼』に任せたのだ。地上の者が手出しをせず自由にできる地を与える条件で。

 

 元より地上にいても人間と仲が悪いので、鬼たちを離れた地に送ろうと思っていた賢者にとっては好都合であった。ついでに悪しき妖怪たちも鬼と共に地底に送った。その後、地上から地下に誰も行ってはならない不可侵条約を結び、そして遂に魑魅魍魎がひしめき合い、鬼が支配する地底世界が生まれたのだ。

 

 

 

「ここが地蔵が並ぶ場所、地蔵ヶ原」

 

「ほぉ…」

 

 

 地蔵ヶ原。

 何体もの亡者、怨霊、妖怪たちを封じるために鬼たちが設置した地蔵が数百体ほど並んでいる。老人はその光景を眺めて呟いた。

 

 

「ククク……どいつもこいつも邪悪で良い面構えだ。だが貴様らじゃあ、ちと力不足よ」

 

「お爺ちゃん?」

 

「用があるのは“お前”だけだ」

 

 

 そして一つの地蔵へと言った。明らかに他の地蔵とは違う禍々しい雰囲気を醸し出していた。封印はされているが、それでも邪悪な力が漏れ出している。

 

 

「封印を解く気なの?」

 

「ああ、そうだ。これから地底にこの妖怪を解き放つ。儂の理想のためにな」

 

「・・・ふふ」

 

「止めても構わない。まぁ、その時は──」

 

 

 刀を抜く。

 しかし少女は怯えることは無かった。

 

 

「ねぇ、全部手伝わせてよ」

 

「・・・なに?」

 

「私、嫌いなの。地底も、鬼達も、人間たちも、幻想郷も、姉さんも……、理解してくれないやつは皆んな皆んな大嫌い」

 

 

 ゆっくりと近寄り、老人の胸に飛びつく。

 老人は抱き抱えた。

 

 

「ねぇ、貴方についていったら、嫌いな奴を皆んな消したら、私を理解してくれる人は増える?」

 

「・・・!」

 

 

 先程の少女はどこにも居ない。

 辛くて悲しくて嫌な思いをして逃げ続けていた少女は完全に死んだ。今いるのは、そんな思いをバネにしてどん底の人生から必死に這いあがろうとしている1人の獣であった。

 

 

(この娘……)

 

 

 老人は笑う。

 刀を鞘にしまい、手を差し出す。

 

 

「勿論だとも。さぁ、我らの理想のために立ちあがろうではないか。儂の名はぬらりひょん。お前は今日から仲間だ!ふはははは!!」

 

「私は古明地(こめいじ)こいし。よろしくね、ぬらりひょんお爺ちゃん」

 

「では早速起こそうか」

 

 

 コロン。

 地蔵の首が跳ねて、転がる。例え石を削って作られた地蔵とはいえ、ぬらりひょんの研ぎ澄まされた刀の前では布切れ同然。いとも簡単に切られ、封印の力を失ってしまう。

 

 

『お、おお……!!オオオオォォォーーーッ!!』

 

 

 途端に地面から邪悪な妖気が噴き出した。そしてゆっくりと大きく、透き通った妖怪が這い出てきた。何十本もの長い腕をぶら下げた身体の長い妖怪が何百年ぶりに目覚める。

 

 

「こんなのが地底に眠っていたんだ〜。知らなかったなあ」

 

「昔、ここに地獄があった時、獄卒や十二王たちが樹木になる事件が起きた。地獄は機能停止し、亡者が溢れかえった。この妖怪はその事件の元凶だ」

 

「幻想郷はよく終わらなかったね。閻魔大王が止めたのかな」

 

「いや、閻魔は騒動の中でぎっくり腰になってな。閻魔もやられかけたんだが、突如2人の鬼が来て、この妖怪を叩き潰した。そして、封印という流れとなった。そのままこの地獄は閉鎖。新たに地上に地獄を作り、閻魔は娘へと交代。地底は鬼が支配することになった」

 

「その2人の鬼って」

 

「伊吹萃香と星熊勇儀だ」

 

「アイツらか。・・・チッ」

 

 

 会話をする2人の前では遂にその妖怪が完全復活した。溢れ出る邪気を纏わせて、咆哮を上げる。

 

 

『キィィィィーーーッ』

 

「どれ、こいしよ。儂らも離れるとしよう」

 

「はぁい」

 

 

 巨大な妖怪はギョロリと一つ目を動かす。

 足元に何かいたはずだ。

 腹も減っていたし、足元のコイツらを食ってやろうかな。

 

 あれ。

 

 いない。

 確かにいたはず……いや、()()()()()。元からここには自分しかいなかったな。

 

 どれ、あの鬼たちが来る前にここから離れよう。

 怖い怖い。

 あの2人は怖いなあ。

 

 

 

 ペタ。

 ペタペタ。

 ペタペタペタペタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、久しいね」

 

「おっすー。うぃ〜」

 

 

 博麗神社にお客が来ていた。

 1人は成人男性よりも大きく2メートル越えの身長を持つ筋骨隆々の鬼の女性、もう1人は幼女と呼ばれても仕方がないくらいの身長の鬼だ。小さい方の鬼の手には瓢箪が握られており、それを繰り返し飲んでは気持ち良さそうにゲップをする。

 

 

「あら、本当に久しぶりじゃない」

 

 

 箒で掃除していた霊夢は手を止める。

 

 

萃香(すいか)勇儀(ゆうぎ)。今まで何やってたのよ」

 

「ちと面倒な事になっちまってなあ」

 

「私は飲んでたのに無理やり連れてこられたんだよね。でも折角地上に来たからには居酒屋巡りぃ〜だよん。ひっく、地底の居酒屋は制覇したから、次は地上を制覇しよっと」

 

「萃香は相変わらずね。それで、勇儀。私に力を借りにきたところを見るとよっぽどの事じゃない」

 

「いや実はな……ん?」

 

 

 勇儀は鼻をピクピクと動かす。

 異臭だ。

 今までに嗅いだことのないような臭い匂いだ。

 

 

「うっ、なんだこの匂い!?」

 

「オロロロロ……ッ」

 

「え?なんか匂う?」クンクン

 

 

 霊夢は気づかない。

 いや、彼女は()()()()に慣れてしまっているのだ。だからこそ気づかないというよりも、気づけないのだ。

 

 

「霊夢ちゃん。……ってあら、お客さんかい?」

 

「だ、誰だ。おぇ、匂いがキツくなった!」

 

「失敬な!俺様のどこが臭えんだい!1ヶ月くらい風呂入ってないだけで大袈裟だねえ。……くんくん、うん、いつもの匂い」

 

「そうか。2人は初めて会うのか」

 

「霊夢ちゃん、何なのコイツら」

 

「2人とも、紹介するわ。この男はねずみ男。最近、幻想郷に来てさ。こうやって色んなところに行ってフラフラしてるのよ」

 

「「ねずみ男?」」

 

 

 紹介されたねずみ男。

 紳士の真似しながら大袈裟に深々と頭を下げる。

 

 

「どうも、お初にお目にかかります。私はビビビのねずみ男と申しますです!……ビジネスチャンスダヨン」

 

「あ、ああ、どうも。私は星熊勇儀。こっちは伊吹萃香」

 

「よろしく…。うぅ、吐いたから酔いが覚めちゃったよ」

 

「お二人ともその頭の角、もしかして」

 

 

 鼻をつまみながら答える。

 

 

「ああ、私らは鬼だよ」

 

「ねずみ男。こっちの酔っ払いと違って、勇儀は鬼の首領をやってるのよ。礼儀には気をつけなさいよね」

 

「よしてくれ。変に気を遣われても困るって」

 

「よーし!ねずみ男、出会った祝いだ!酒飲も!酒!」

 

 

 萃香はぐいっと一口。

 ねずみ男もいっぱい頂く。

 

 

「おお!こりゃあ美味えや!ぷはーっ」

 

「臭い匂いも酒と一緒に飲めば、酒の肴に変わるってね。あはは!」

 

 

 早速酒盛りを始める2人に呆れながら、霊夢は近づく、

 

 

「萃香、気をつけなさいよ」

 

「にゃにがぁ?」

 

「こいつと仲良くすると裏切られるわよ」

 

「・・・裏切る?」

 

「そうそう。嘘つき、ペテン師、舌先三寸。詐欺に窃盗もお手のもの。人を騙して迷惑かけて、何度私もやられかけたか……ってヤバ!」

 

「全く酷い言い様だネ。うぃー」

 

 

 霊夢は咄嗟に口を噤む。

 明らかにあの楽しい雰囲気が暗く冷たいものに変わっていた。勇儀と萃香はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「あれ、どうしたんです。お二人とも」

 

「鬼の嫌いな物知ってるか?」

 

「豆とかですかい?」

 

「違う。私ら鬼はね、嘘が大嫌いなんだよ。特に嘘をついても何とも思わない悪い奴がな!!」

 

「はいぃぃぃ〜〜っ、うわあぁっ!?」

 

 

 ねずみ男の襟を掴み持ち上げる勇儀。

 そして、そのままブンブンと振り回す。

 

 

「嘘つきはさっさと出てけェェーーーッ!!」

 

「ええーーー!今日はまだ何もしてないヨーーーーーー!!イヤアァァァーーーッ!!」

 

 

 そのままどこか遠くへと投げ飛ばされるねずみ男。やってしまったと霊夢は眉間を抑える。

 

 

(うっかりしてた。2人は大の嘘嫌い。ねずみ男とは最悪の相性だった…)

 

「はぁはぁ。悪い、血が昇ってしまった」

 

「ケッ、最悪の気分。飲み直してくる」

 

 

 そう言って出ていく萃香。

 残った勇儀は縁側に座らせてもらい、霊夢もその隣に座る。2人はお茶を飲みながら話を始める。

 

 

「はぁ、本題に戻りましょうか」

 

「そうだったな。実は、最近地底に通り魔が現れるようになったんだよ」

 

「通り魔?」

 

「ああ。私の仲間もその犠牲になってね。なんとかしてくれって言われたんだ。だけど時間帯も場所も違う。犯人を探そうにも痕跡が無いから追えないんだよ。だからこそお前の出番ってわけだ」

 

「鬼を狙う…。最強の種族を狙うとは随分と世間知らずか、……それとも相応の実力者かね。確かに私の出番かもしれないけど、里に何かあったら……ズズゥ…」

 

 

 ベシンと霊夢の背中を叩く。

 うげぇっと低い声を出し、飲んでいたお茶を吐き出してしまう。

 

 

「ごほっ、げほっ、何してくれんのよ!」

 

「そう言うと思ったからこそ、萃香を呼んだのさ。アイツなら居酒屋巡りで暫くは里に滞在する。アイツの実力なら並大抵の事件は大丈夫だろうよ」

 

「確かに…」

 

「それなら善は急げだ。地底に行こう!いざ、出発!ハハハハハ!」

 

「やれやれ。豪快さは変わらないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 

 

 どこか遠くの山。

 勇儀にぶん投げられたねずみ男は地面に転がっていた。

 

 

「ひー!酷い目にあった。俺が何したってんだよ、ムカつくぜ!ケッ!絶対に仕返しはしてやるからなァッ、覚えてろよ。鬼公が」

 

 

 ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡す。

 

 

「それにしても一体ここはどこなのよ〜。ん?」

 

 

 生い茂る自然の中に大きな穴が見えた。少年のように目を輝かせてその穴を覗いてみるとかなり深く、真っ暗な闇は永遠と続いていた。

 

 

「おお!ふっけぇ〜〜〜!地獄の底まで続いてんじゃねえか、これ」

 

 

 そんな深い穴を見ているとブルリと体が震えてくる。不思議なことに催してきた。

 

 

「へへへ。どれだけ深いか、俺の小便で試してやるか。よいしょっと」

 

 

 小便をする体勢をする。

 さて出すか、と(りき)もうとしたその瞬間、ねずみ男の足をぬるりと触られた。

 

 

「うわっ、蛇か!?」

 

 

 足元を見てみると、ねずみ男の足首に透き通ったぬるりとした手が巻きついていた。よく見ると地下から伸びている腕。この穴、つまり地下からその長い腕が伸びているのだ。

 

 

「な、ななな、何だ、こりゃあっ!?」

 

 

 ペタペタ。

 ペタペタペタペタ。

 

 

「段々と音が近づいてくるぅっ、ひぃいい!!離れろ、離れろってんだ。この腕野郎っ!?」

 

『ギィイイイ・・・』

 

「ぎぃ?あら、なんの音かしら……?」

 

 

 謎の腕と格闘している間に、いつの間にか音が止まっていた。その代わり、真後ろに大きな存在を感じた。真後ろで響く、低く重い声に冷や汗が背中をたらりと垂れる。巻きつく腕との攻防をやめて、ゆっくりと振り向く。

 

 

『ギギギギィッ!!』

 

「お化けの音ォォォーーーッ!!!」

 

 

 ねずみ男の背後にいた。

 それは巨大な妖怪であった。大きな一つの目玉を持つ妖怪はギョロリとその目玉を動かして、足元の小さな存在を見る。

 

 

『キキキキ……』

 

 

 小さい。

 なんと小さくて弱々しいんだろうか。

 久しい。

 このように恐れられるのは。なんと心地の良いものだろうか。全身に恐怖が流れ込んでくる。

 

 

「ひぃ、ひぃいい……っ!!お、お、お願いっ、見逃してぇっ!!」

 

『キィ・・・』

 

 

 さて、食うか。

 妖怪はそう思った。腹部に並ぶ数十本の腕を伸ばして、ねずみ男を完全に拘束する。そしてその中の一つの手には何か種のような物が握られており、ゆっくりと近づけてくる。

 

 

「ど、どど、どいつもこいつも俺様を舐めやがってぇえ!!喰らえ、ねずみの最後っ屁!!」

 

 

 

 

──ブバババババッッッ!!!!

 

 

 

 

『キィィ──イイヤアァァァーーーーッ!!??』

 

 

 なんだ、何だこれは。

 目が痛い。何も見えない。染みる。苦しい。辛い。吐き気。悪寒。生まれてから封印されるまでに味わったことのない様々な刺激に悲鳴を上げる。真っ赤に充血した瞳からは涙がダラダラと溢れ出す。

 

 

「へ、へへへ!どうでい、俺の必殺技は」

 

『キィキィ…!!』

 

 

 勝てない。そう思った。

 人間が自分よりも小さな蜂に刺されて死にかけるように、自分よりも圧倒的に弱い奴にこんな目に遭わされる。またいつやられるかは分からない、と本能で悟った。

 

 

「そんな臭かったかな…って、んな事どうでもいいさ。このオタマジャクシの化け物が!よくもやってくれたな!」

 

『キィ〜』

 

「えっ、何?」

 

 

 腕を伸ばして、ねずみ男の額に指を当てる。

 するとあらゆる雑音が消えて、頭の中に一つの音だけが響いてくる。それは声だ。低くもなく高くもない声が脳内に響き渡ってきた。

 

 

【申し訳なかった。小さき者よ】

 

「な、なんだお前!話せんのか!?」

 

【話せると言うわけではない。私には話す器官はないからだ。ただ直接頭に念波で語りかけているのだ】

 

「み、見た目と違って、口調は意外と礼儀正しいのねん」

 

【・・・小さき者よ。力を貸して欲しい】

 

 

 謎の妖怪の意外な一面に驚いていると、あり得ないような言葉が頭の中に響いてきた。

 

 

「ち、力だとぉ?」

 

【ああ。私は地底で封印されていた。ただ食事をしていただけなのに、いきなり鬼の女が来て私を倒したのだ。だが私は封印を解かれ目覚めた。目が覚めたからには腹が減る。空腹は辛いのだ。でも地底には怖い鬼がいる。2人の鬼が。だから地上に出て、お前から生気を吸おうとしたのだが・・・・】

 

「だが?」

 

【お前には敵わない。先程の攻撃でそれを実感した。だが敵わないのなら、()()()()()と思う】

 

「なるほどね。お前、結構賢いじゃないの。嫌いじゃないぜ、そういうやり方」

 

 

 ねずみ男は考える。

 ラッキーなことに自分のことを強いと思って、勝手に頭を下げてきた。こんなに強そうな奴が自分の部下になったのだ。上手く使えば、大金を稼ぐ事ができるに違いない。

 

 

「良いでしょ。この頭脳専門の俺が知識を授けてやるよ」

 

【おお!感謝する。ではどうすれば腹を満たせる?】

 

「なら、まずは地下に戻るぞ」

 

【なぜ?地下には鬼がいるぞ】

 

「違うんだな、それが。今お前が嫌っている2人の鬼は地上にいるのさ。それも博麗霊夢っていう巫女のとこ。つまり今の強い奴がいない地底なら攻め放題ってわけなのよん」

 

【あの2人がいない・・・!!】

 

「そうそう。……キキキキ」

 

 

 ねずみ男はとある作戦を思いついた。

 それは新たな活動拠点を地下に作ることだ。地上にいては必ず邪魔が入る。ならば自分のことを知らない奴らがいるところでなら、がっぽりと稼げるのではないかと考えたのだ。

 

 

(なんてツイてんだ、俺様はよ!この馬鹿を適当に暴れさせて、困っている奴を俺が助ける。そうすりゃあ地底の奴らにこのイライラを八つ当たりできるし、善人として金儲けできる!!うししししし!)

 

 

 別にコイツが倒されようが、自分は関係ないと、知らぬ存ぜぬで通せるはずだ。この妖怪と組んでも自分には損はないとニタニタと怪しく笑う。元より損得勘定で動くこの男、そこに相手の境遇や生まれなどへの情は関係ないのだ。

 

 

【なるほど】

 

「地下に戻ったら、目につくやつを片っ端から襲うんだ。どうせ地上に上がってくるのに鬼の頭に見つからないにしてきたんだろうが、奴はいねえ。もう派手にやっても構いやしねえよ」

 

 

 その言葉を受けて、巨大な妖怪は体をくねらせて再び地下に戻って行った。無数の腕を器用に使い、地面にペタペタと触れながら降りて行く。ねずみ男も岩から岩へと飛び移ったり、慎重に登り降りしながら、必死にその後を追って行くのだった。

 

 

『キィィ……ッ!!』

 

「うしししし!ここから俺様の復讐劇とサクセスストーリーが始まるんだァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 

「暇だねぇ。あっ、そうだ。久しぶりに地上に行って、人間たちを病で苦しめてこようかな」

 

 

 地上から地底へと続く穴の途中には、大きな蜘蛛の巣があった。その上で地上への穴を眺める1人の女性。その名は『黒谷(くろだに)ヤマメ』。種族は妖怪界の中でもビッグネーム『土蜘蛛』である。

 

 

「そしたら昔みたいに武人と(あそべ)るかもねぇ」

 

 

 過去に人間たちを疫病で苦しめ、向かってきた相手を真っ向に叩き潰してきた戦闘好き。その能力の為に地下へと落とされた1人である。但し、能力に反して性格は明るく社交的。だからこそ地下で燻ることはなく誰とでも仲良くなり、地下の連中とも上手くやっているので地上に行くことはない。

 

 

「そうやって怖いこと言えば、人間に構ってもらえると思ってる?無駄だよ、嫌われ者のくせにね。いひひ」

 

 

 ヤマメの前に突然、桶が垂れ下がってきた。

 ぎぃぎぃ…と音を立てて、その小さな桶の中から声が聞こえてきた。ヤマメは嫌な顔をしながら返事をする。

 

 

「うるさい。アンタだって人間に構いすぎて地下に落とされたくせに。キスメ」

 

「だって怖がられるのは大好きなんだもん。いひひ…」

 

 

 ゆっくりと桶の中から女の子が現れる。小さく折り曲げていた体を伸ばして、ニタニタと笑う。どことなく不気味で陰気な雰囲気を漂わせながら。

 

 

「あー…。首、欲ちいなあ」

 

 

 彼女の名は『キスメ』。

 種族は“釣瓶落とし”。外の世界にいる釣瓶落としとは見た目は違うが、それは性別故である。男の釣瓶落としは頭部だけの姿で人の前に落ちてきて驚かした後に喰らう。彼女の場合は、桶から現れて人を襲う。そして釣瓶落としという妖怪は、腹が満たされている時、人間を虐めて殺す(あそぶ)捻くれた邪悪な性格である。

 

 

「首の何が良いのさ。病気で苦しんでいる人間が必死に向かってくる方が面白いだろうに」

 

「首を桶に入れて、ずっと一緒にいるの。腐っても骨になってもねぇ……。いひ、いひひひひ!!」

 

 

 この性格のために彼女も地下に落ちた。

 だが、元より暗いところが大好きな彼女はそれに喜び、ここに暮らすことに決めたのである。

 

 

「はぁ、暗いアンタと喋ってても楽しくない。退屈だねぇ。誰か降りてこないかなぁ。(あそ)びたいなあ」

 

「……ぁっ、いひひひ!!」

 

「気づいたかい…!誰か来たよ!」

 

「首、首首首ぃっ」

 

 

 ペタ。

 ペタペタ。

 ペタペタペタペタ。

 

 壁を歩く音が聞こえてくる。それもかなりたくさんの足音が。これは団体だ。でもなんか変だ。足音っていうよりもこれは手を使って這ってきているような。

 

 

「く、びぃ?」

 

「どうし、…あっ」

 

 

 見上げた先にいたのは団体様なんかじゃない。無数の腕を持つ一つの目玉がそこにはいた。ギョロリと動く大きな目玉が2人を見て馬鹿にするように笑っていた。

 

 

『キキキキ……!!』

 

「お前、は・・・」

 

 

 2人は知っている。

 遥か昔に地獄を機能停止させた原因の妖怪。その名は──。

 

 

「お前は──」

 

 

 チクッ。

 首に小さな痛みをヤマメは感じた。そして体の内側に何かが伸びていくような気持ちの悪い感覚が全身に広がっていく。

 

 

「あっ、あぅぐあぁっ、うぇっ……!?」

 

 

 口から何か伸びてくる。

 皮膚の下を蛇のような何かが這っている。気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い、いた、痛い痛い痛い。皮膚の下から何かが突き破ってくる。食道を通って喉を渡り口から出てくる。

 

 

「お、お"ぇっ、いっ、いだぁっ、ひぎゃあああっ」

 

「ヤ、ヤマメ!大丈──……」

 

 

 そこにはもう黒谷ヤマメはいない。暗い地底の中で誰よりも目立つ真っ赤な樹が生えていた。葉っぱは青々と輝いており、生命力を必死に輝かせているようだった。

 

 

「お前ぇっ!!首がねぇくせに!ヤマメにやりやがったなあァッ!!」

 

 

 一つ目妖怪の頭上に炎の塊が浮いていた。それも小さなものではない。太陽のように巨大な炎だ。ヤマメの能力は【鬼火を落とす程度の能力】だ。鬼火といえば小さなものと思うかもしれないが、それは常人の生み出すものだ。彼女の操る鬼火は常人とは違う。大きさはその10倍、威力は100倍だ。

 

 

()()()()だったよな。テメェはよォォォッ!!喰らえ、怪奇『釣瓶落としのか』……あ"っ!?」

 

 

 鬼火は一気に小さくなる。そして、そのまま火は消えた。膝をつくキスメの頭の中にはどんどんと霞が広がっていく。思考ができない。動けない。これは、この感覚は圧倒的な眠気だった。

 

 

「ね、眠い、なんで急に、頭がはたらかな……」

 

『キキキ!』

 

 

 チクリ。

 伸びた腕がヤマメと同様に、キスメの首筋に種を植え付ける。しかし圧倒的な眠気のせいで痛みも植え付けられたことも認識できない。抵抗もできずにそのまま一本の樹になってしまった。

 

 

『キィィィッ!!』

 

 

 地底には大きな樹が2本。

 それが少女であった痕跡はどこにも無い。その木は生物が生きているときに放つ“生気”を撒き散らかしており、それを美味しそうに吸う。全身に浴びて震える。

 

 

『キキキキキィッ!!』

 

「美味そうに吸っちゃって…。どれ、俺も。すぅ〜〜…分かんねえや」

 

 

 生気を吸えば吸うほど樹は枯れていく。しかし吸い尽くすことは敢えてしなかった。吸い尽くせば死んでしまう。死ねばもう吸えない。

 

 

『キィィ……』

 

 

 ああ、美味い。

 1人はしつこい味だったが、もう1人はスパイスとかいう薬草のような独特の味だったなあ。もっと食べたいなあ。でもここで食べ尽くすのは勿体無いや。残しておくか。

 

 

 

【次は鬼を全部食おう。あの2人がいない地底なら何も怖くない!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

 こいしがぬらりひょんの仲間になりました。能力故に嫌われ差別されて、心を閉ざした彼女が、皆んなと今更仲良くできるわけがないよな。だったら敵にしたら面白いよな。と思って、こういう展開にしました。

 さぁて、今回のゲスト妖怪はだーれだ。



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