あけまして、といってもお正月はとっくに過ぎていますが、新年初投稿なのでこの挨拶を。
今年もよろしくお願いします。
「あ〜〜寒いぃぃ…」
コポコポ…。
霊夢はこたつに入りながら、お茶を注ぎ、湯呑みを両手で包み込む。じんわりとした温かさがなんとも言えない。ずずっと飲んで、机上のみかんを取り、剥く。
「はぁ…、色々と大変だったなぁ」
神託があった。
幻想郷に危機が迫っていると、それは毒のようなものだと。
疑ってはいたが信じていないわけではない。
実際に危機は来たのだ。
【ぬらりひょん一味】である。武力による妖怪の復権を掲げるテロリストのようなもので、幻想郷の博麗大結界を狙ってきた。結界を壊し、外と内側を繋げる事で妖怪たちを世に解き放とうとしている。
元々、野良妖怪たちは人間を好んではいないのは知っていた。人間を憎み、見下し、嘲り、食糧だとか揶揄うだとか、その程度としか認識していない。そんな奴らが外の現状(人間>妖怪)を見たら、人間許さんとばかりに進軍してしまうだろう。
妖怪の保護を掲げる紫
妖怪の復権を掲げるぬらりひょん
そんな似ているようで違う2人の戦いは一応決着はついた。ぬらりひょんが用意した殺し屋を全て撃退。マヨヒガでの決闘もぬらりひょん側の敗北。彼らは撤退していった。
「・・・これでちゃんちゃん、だったら良かったのにね」
幻想郷は無事だった。
だが、ぬらりひょんの残した傷跡はかなり深かった。
共存していた関係にヒビが入っていた。
妖怪たちを敵視する人間が増えた。対して、紫の支配に不満を抱えていた妖怪たちは六文銭たちを英雄視し始めたのだ。
「・・・はぁ。妖怪と人間の共存なんて無理なのかしら。……って、やめやめ。私の使命は共存を図る事じゃあないし。関係ないっての」
妖怪と人間の関係ではなく、幻想郷を守るのが博麗の巫女。だからこそ今1番心配なのが己の弱さだ──。今回、自分は何もしていない、守れていない。もっと強くならないといけない。
「でも修行やだなぁ〜。けど、しないとなあ。あ〜でも〜う〜…めんどくさい〜!!」
「確かにお前にゃ修行は厳しいな」
「魔理沙…」
「よっ、呼ばれてないけど魔理沙さんが来てやったぜ」
魔理沙がいつの間にか遊びにきていた。
コタツに入ると、霊夢が剥いたみかんをパクッと食べる。
「あー!私のみかん!」
「へへっ、ぼーっとしてんのが悪いぜ」
「はぁ。もう良いわよ。まだあるし。そんなことより傷は?」
「治りかけ。けどずっと寝てる方が辛いから抜け出してきたのさ。暴れてる方がすぐ治る気がするんだよな」
「は〜あ、アンタらしいわ」
「そっちこそどうなんだよ。敵の大将に斬られたんだろ」
「もう殆ど治ってるわ。心配は無用よ」
「なら良かったよ。それじゃあアタシはもう行くわ」
「ちょっ、遊びに来たんじゃないの?」
「いや、お前の元気な顔見れたからもう用はないぜ。アタシはいつ異変が来てもいいように、もっと強い技を身につけてやるぜ。幻想郷の守護者は博麗の巫女じゃなくてアタシになるかもな」
「縁起でもない」
「嫌なら動くんだな〜。それじゃあな」
さっさと出て行った。
どうやら霊夢が心配で来たのだろうが、本人には届いていない。
「嵐みたいなやつ…っ。はぁ、でもやっぱり修行は大事かぁ。紫に相談してみるか」
※
地霊殿。
さとりの寝室にて。
「・・・」
目を覚ます。
腹部への違和感を感じた。パジャマを脱ぐと、腹部にグルグルと何重にも包帯が巻かれてあった。慣れていないのか、ぐちゃぐちゃに巻かれてはいるが、包帯の新鮮さから何度も取り替えてくれたことが分かった。
「夢じゃないんだ…」
しかし、傷や包帯があるからこそあの時のことが“現実なんだ”と全身に重くのしかかる。地底が襲われ、死体たちの群れの中にいた実の妹に襲われ、何者かから腹部を刺された。決して夢じゃなかったんだ。
「失礼します…」
そんな時、戸が開いた。
新しい包帯を持った猫燐が立っていた。尻尾と耳が垂れ、声に覇気がなく、暗く落ち込んだ表情だった。
「おはよう」
「・・・え」
挨拶をする。
一瞬固まっていたが、すぐに割れた2つの尻尾がピンと立って──
「さとり、さま・・・」
ぼふっ…。
猫燐はさとりの胸にギュッと抱きつき、頭をゴシゴシと押し付けていた。じんわりと胸の辺りが濡れているのを感じる。
「さとり様ぁぁぁ…」
「はいはい…」
「さとり様、さとり様、さとり様ぁぁぁ…!よがっだぁっ、もうおぎないがどおもっだぁぁぁ……!!」
「ごめんね。迷惑かけちゃって」
「うわぁぁぁあああん!!」
更に、ドタドタと何かが近づいてくる音。
見ればぜぇーぜぇーと息を切らしている路空が立っていた。路空はブシャーっと涙と鼻水を噴き出すと、突進する。
「さとり様!生きてる!!やったァァァァッ!!」
「ちょっ、お空!?」
◯◯◯
ペット2人が落ち着きを取り戻してから、自分が倒れてからのことと今の地底の状況を聞いた。博麗霊夢が傷の手当てをしてくれたことや、ぬらりひょんと共にこいしが外へ行ってしまったこと、今は勇儀と萃香が筆頭に地底の再興をしていることなどたくさん聞いた。
「それにしても、こいし様が裏切るなんて…」
「さとり様のこと刺したんだよ。私許せない…」
完全に敵意を向けている。
元よりペット達とこいしは仲が良くない。こうなってしまうのは仕方がないのかもしれない。
「あの子のことをこれ以上言うのはやめて」
「・・・っ」
「で、でも、さとり様の妹とはいえ、あれは・・・」
「これは私とあの子の問題よ。ペットであるあなた達が介入する余地はないわ」
悲しそうな顔をする2人。
酷いことを言ったかもしれないが、あの子にあの道を歩ませた私の責任でもある。あの子を孤立させたのは何よりも私だ。あの子の言葉が今でも頭から離れない。
(こいし…。謝らないと……)
※
マヨヒガ──。
「今回のぬらりひょんによる侵攻が幻想郷を落とすためのものではないと?」
「ええ。明らかに相手の戦力不足。狙いはこちらの手の内を知るためよ。個人個人の強さ、人間と妖怪の関係性、弱点などを調査するためにね。結構バレたと思う」
「ううむ…。つまり次はそこをついてくるという事ですか」
「油断ならないわ。これからも警戒は怠らず、……早急に霊夢には
「ですね。しかし、霊夢が目覚めることができますかね」
「あの子の意思は関係ない。幻想郷を守るためなら私は無理やりでもやるわ」
藍はごくりと生唾を飲む。
こんなにも冷徹な顔をしているのは久しぶりだ。だがここでその表情に怖気付いてはいけない。
「…ごほん。私からも一つ。奴らの仲間である檮杌についてです」
「檮杌、か…。ええと、四凶の一人だっけ?詳しくは知らないけど伝承によれば4体の妖怪のことよね。たしか……藍、貴女と同郷だったはず」
「……そうです。本来なら窮奇の時点でお伝えすれば良かったのですが、恥ずかしながら檮杌と会うまですっかり存在を忘れていました。そこで、思い出したことがあります。」
「?」
「4体の妖怪にあらず、四凶は一体の妖怪のことを指します」
「どういうこと?窮奇と檮杌は別だったじゃない」
「別な存在ではなく、
窮奇は紫が殺した。
それが生まれ変わり、檮杌となったわけだ。
「そして3回死ぬと四凶は本当の姿を取り戻します。その名は……」ウウゥ
藍の頭の中に“紅い目の子羊”が浮かび上がる。
自分の胸までの高さも無い小さな姿、自身の身長よりも大きいスプーンを持ち、畜生の中の畜生。
そして思い出したくも無い過去……お互いに身体を貪り……。
「強欲獣…
藍は怒りを机にぶつけた。
ボコンと机に拳がめり込み、ヒビが走る。
「私は檮杌を殺してしまったので、今頃は……
「・・・気にすることないわ。あそこでやらなければ、私たちが負けていたんだもの。奴の正体が知れただけ儲けものよ」
「はっ…!!」
「でも死ぬことで生まれ変わるなら自死すればいいんじゃないの?」
「いえ。四凶は仲間からは殺されず、自死もできない体質をしておりますので、次も必ず我々の前に立ち、殺されようとしてくるはず」
「ならば、ヤツの性質を幻想郷の猛者たちに通達し、捕獲次第、即封印を目指しましょう」
これにて今後の目標ができた。
初めにぬらりひょんの動きに警戒──。
次に博麗霊夢の強化──。
そして四凶の捕獲・封印──。
それでも紫には不安は消えなかった。
うまく言葉では言い表せないが、霊夢が聞いた神託によれば、脅威とは毒のようなものらしい。幻想郷は今、毒に侵されているのだろう。まだまだ強固だが必ず崩れてしまう。
(そこを、もし
敵は1人?
それとも他にもいるのか?
嗚呼、頭が痛い──。
「ああ、そういえば私、冬眠してないな・・・」
頭が痛い──。
※
「……幻想郷よ。貴様らに休む暇なんて与えるものか。…」
カチッ…。
カチカチッ、カタッ。ジッ、ジッ…
「使えるものは全て使う。ククク──」
古い屋敷。
その中で蛇骨婆、朱の盆が愉快そうに笑って、刺身や酒を飲み食いしていた。朱の盆の近くではこいしがオレンジジュースをちびちびと飲んでいる。少ししてぬらりひょんが奥の部屋から入ってきた。
「おー!主役の登場じゃ!」
「楽しんでいるか、皆の者。今夜は無礼講だ。さぁ、飲め飲め」
「ぬらりひょん、しゃーっしゃっしゃっ!こうも上手くいくと気持ちがええのぉ」
「そーですねぇ♪」
「ククク、六文銭は随分と役に立ってくれた」
彼らの前にはご馳走の他にも大金の山が置かれている。それを眺めながら続ける。
「散々活躍してくれたおかげで襟立衣を憎む者たちが増えた。殺されることに怯える者、妖怪を嫌う者、人と妖怪は共存すべきと思う者……。奴らが儂に六文銭を消してくれと金を積んでやってくる」
なんとも饒舌だ。
蛇骨婆はお酒をチロチロ飲みながら言う。
「襟立衣を悪の道に唆した張本人のくせに、資金確保のために捨てるとはのぉ!」
「襟立衣。儂が奴を選んだ理由は4つ」
「ほお!」
「1つ、絆の破壊。襲ってくれたおかげで人間たちはもっと妖怪を憎んでくれる」
人間と妖怪の絆こそ厄介。
自分たちが手を下さずとも、お互いに憎み合い、殺し合ってくれれば儲けもの。何より争い合う姿はいつだって美しい。
「1つ、資金確保。これからの行動に必要不可欠だ」
どんな作戦においても金は必要。
足りないと何もできない。
「1つ、天狗ポリスとの関係を持つこと。襟立衣は天狗側の妖怪だ。身内が不祥事を起こしたらプライドに傷がつく天狗達にとって襟立衣は目の上のたんこぶ。それを儂が解決したことにより、奴らと儂の間に関係性が生まれた」
外の世界で邪魔なのは鬼太郎と天狗ポリス。
その片方から信頼を得た。確実に行動がしやすくなる。
「ふむふむ」
「最後の1つ、敵情視察。幻想郷の中身は大体分かった。どの妖怪に誰をぶつけるのかも考え付いたわ」
大体の強者の能力、特徴、体質は把握した。誰にどの妖怪をぶつければいいのかも考えがまとまってきた。
ぬらりひょんは本気だ。
本気で落とす気なのだ。
「幻想郷も、人間も必ず滅ぼす。妖怪の復権はもう少しだ…!!人間たちから夜の闇を奪い返した時、儂は偉大なる革命家として、指導者として、英雄として崇められるのだ!!」
「しゃーっしゃっしゃっしゃっ!」
「くぅ〜〜〜っ!!ぬらりひょん様カッコいいィィ〜〜っ!!俺もぬらりひょん様のような妖怪になりたいっス!!」
朱の盆の嘘のない本当に尊敬した言葉と眼差しにぬらりひょんはますますご満悦。キセルはやめて、勢いよく酒をガブガブを飲み、刺身をむしゃむしゃと食べ始め、大声で笑い出した。
「ぐはははは!!朱の盆、お前も努力すれば儂のようになれる!まぁ、あとは千年はかかるがな!」
「そんなァ!」ガーン
そう笑いつつ、横目でこいしを見る。
どういう行動をすればいいか分かっていない。金持ち両親に連れられて、大人しかいないパーティーに呼ばれた子どものようである。
「こいし、どうだ?楽しんでいるか」
「う、うん…」
「・・・幻想郷を裏切ったのが心に引っかかっているのか?」
「それは違う……と思う。あの
こいしにとって誰かと食事をするのは本当に久しぶりだった。両親が生きていた頃は朧げながらに家族で食事していたのだろうが、姉と暮らすようになってからはずっと1人だった。
あのペット共は姉が大好き。私なんかに興味はないし殆ど話したこともない。姉の周りにはいつも人がいた。だから姉は寂しくない。
でも私は一人ぼっち。誰も気づいてくれない。1人で、ずっと1人で、、、。だから仲間という存在と食卓を囲む経験がない。どうしたらいいか分からない。
「楽しくてはしゃぎすぎたら?空気の読めないことをしたら?私のせいで楽しい雰囲気が壊れたら?・・・そういうのが
「馬鹿者が」
「うっ…」
ぬらりひょんがゴツンと頭を殴る。
痛い。しかし、その時の表情は怒ったとか、嫌っているとかのものじゃない。何かこう優しいような…。
「仲間に気を使うなんて大馬鹿ものだ。こいし、お前、宴会のルールを知らないようだな」
「ルール?」
「そう。それは無礼講というものだ。宴会ではな、好きなことをするもんだ!気にせず騒げ!気にせず飲め、食え!儂らも気にせず騒ぐからな!!」
「!」
朱の盆も、蛇骨婆も楽しそうだ。
後ろでヘンテコなダンスも踊っている。
「ほら、お前も混ざってこい!」
「えっ、ちょっ!……うん、そうだよね。よ、よーしっ!私も混ぜてー!」
「こいしも踊れぇ!この朱の盆様がぬらりひょん様好き好きダンスを──」
「馬鹿タレ、ここは蛇踊りを…!」
ぎゃーっぎゃーっ!!
げらげらげら!
「随分と優しいんじゃないかしら、ぬらりひょん様ぁ?」
霍青娥が隣の部屋からそっと入ってきた。何故か返り血を浴びており、青い色の服に赤がベッタリとついている。鉄の匂いと柑橘系の匂いを交えながら、ぬらりひょんの近くに行くと、置いてあるグラスを持ち、グイッと酒を飲み干す。
「ぷはぁ…。こっちはキョンシー兵全て失ったり、芳香はバラバラにされたりして悲しいのに。こいしちゃんとイチャイチャするなんて羨ましいですわ」
「くだらん。こいしにはやってもらうことがあるからな。ここで心変わりされる前に手懐けておこうと思っただけだ」
「あらあら、サイテーですわ。あの子、あんなに貴方のこと慕っていますわよ」
「くだらん。そんなことより芳香は修理したのか?」
「もうっ、完璧!より強く、より頑丈にしましたわよ!可愛さをキープしながら中身を弄るのって大変なんですからね。それともう八雲紫とは戦わせませんから。あの女の能力の前じゃ、強化したところで意味無いので」
「八雲紫。邪魔な奴だ。だが、まぁ……あと少しで奴の時代も終わる」
ぬらりひょんの視線の先には布団の上に横たわる檮杌の死体。あれこそが八雲紫を崩す鍵である。
「あれでなァ」
「四凶程度で何とかなるものですか?」
「本来なら無理だが、運は儂らに向いている。これがあるからな」
そう言って、ぬらりひょんは氷袋の中に入った片手を見せつけた。
「芳香のお腹に入ってた“八雲紫の手”じゃない」
「コレと四凶が組み合わされれば、八雲紫も終わりさ。とにかく早めに饕餮にしなければ……」
パリ…ッ
「きたか」
檮杌の死体にヒビが走る。
まるで卵の殻を割る時のように、死体全体が蜘蛛の巣状になっていき、砕け散る。その破片の中から新たなる邪悪な生物が誕生した。生まれたばかりで体液に濡れている。檮杌の時よりも小さな全裸姿で現れた。
「起きたか、
ゆっくりと起き上がる。
誕生したばかりで上手くバランスが取れないのか立ち上がるとすぐにフラフラと揺れていた。
『・・・』
「あら〜♡」
髪の毛はショートでボサボサ。
口はぽかんと空いており、ギザギザな歯が見えている。尾骨の部分からは暗くて長い尾がだらんと生えている。黒目の部分が灰色に淀んでおり、何も見えていないのだろうか。変な場所をギョロギョロと見渡している。耳はあるが、ぬらりひょんの声も聞こえていないようで返事もしない。
「あらあら、なんて可愛いなんでしょう…♡でも、死体になったらもぉーっと可愛いくなるわよぉ…。ねえ、死んで私と家族になるつもりないかしら?」
『・・・』
「あらあら、随分と恥ずかしがり屋さんなのね〜。大丈夫よ。私に任せておけば……ん?」
試しに青娥は目の前で手を振ったり、耳元で叫んだりしてみるが、全く反応がない。触っても同様の反応である。ただ尻尾でペチペチと軽く地面を叩いている。
「あらあら」
「なんだ?」
「この子、
これまでに死体を弄くり回してきた経験から、混沌には五感がないことを見抜く。確かに目は白く濁っており、グルグルとその場で回ったり、挙動がおかしい。
「それでいい」
「それで良いって…。あのね、生まれ変わるたびに強く邪悪になるっていうけど、これは明らかに弱くなっていますわよ。……ねぇ、もしあれならキョンシーにしても…」
グルグルと回る混沌がピタリと止まる。
『・・・ぐふっ』
「!」
先程まで何も反応しなかった混沌がいきなり天井を見上げて笑い出した。何も面白いものはないというのに本当に唐突だ。青娥は混沌を凝視する。
『……ぐふっ、がふっ、えふっ、いひぃっ、くくくくく…、ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!』
「・・・突然どうしたのかしら。壊れた?」
「気にするな。それよりもいつまでも裸は可哀想だ。何か服を用意してやれ」
「任せて!思いっきり私好みにしてやるわ!!」フンスッ
そう言って、何処からともなく取り出した衣装ケース。そこから色とりどりのチャイナ服が出てきた。その中で特に上質で綺麗なものを選び、混沌に着せにかかる。
「さぁて、お着替えしましょうねぇ」にちゃあ…
『いひっ』
「あら!」
青娥から服を奪うと、混沌はビリリと引き裂いた。固まる青娥を無視して、ボロボロになった服を適当に身につける。まるで追い剥ぎにあったような見窄らしい格好になった。
「あらあら、自分でお着替えできるのね」
『ぐふふっ。……あー、お"っ、う"っ、うぇえ"っ…』
混沌は愉快そうに笑ってから、長い尾を動かして、自分の口の中に思い切り突っ込んだ。あまりにも細く、肋骨が浮き出た腹部が異質に、まるで孕んだかのようにボコンと膨れた。
「何したいのよ、この子は」
「気にするな。これが混沌という妖怪の習性だ」
そう言うと、ぬらりひょんは混沌、霍青娥、芳香を連れて、宴会に参加。そして高らかに叫ぶ。
「我々は最終段階に入った。さぁ、準備を始めよう!!」
※
異界──。
それは我々のいる次元とは別の次元にある世界。その世界には巨大な城が存在しており、頭が骸骨で体がカラスの妖怪“骸骨カラス”がギャーギャーと鳴いていた。
その城の一部屋。
そこは無数の実験道具、設備、パソコンがぐちゃぐちゃに並べられていた。びかびかと点灯し、電気がバリバリと流れている。その中で数十台のパソコンの画面を見ているものがいた。
「どこにいるのかねぇ。もっと捜索範囲を拡大してェェ……」
ぽろんっ
メッセージの通知音だ。誰だ。一体誰が。中を見ると匿名であり、そこに送られてきたものを見て、飛び跳ねる。
「ひょ、ひょ、ひょひょひょ〜〜〜っ!!見つけまひたぞ!主人ぃ〜っ、見つけまひたぞなもしぃっ!!」
カエルのような、小さな老人のような妖怪が廊下を走り回り、何かの小型のパソコンを持って叫んでいた。そして巨大な扉の前に立つ。
「我が主人!失礼しますぞ、見つけましたでありますぞ!ひょひょひょひょ〜〜!!」
扉がゆっくりと開く。
同時に部屋の中の冷たい空気がその小さな妖怪を包み込む。部屋の中央には巨大な目が浮いていた。それは部屋全体を支配する存在感を持ち、彼の目は氷のように冷たかった。
「我が主人、バックベアード様ァァ〜〜ッ!!」
バックベアード。
巨大な黒い球体に枝のような触手が放射状に生えており、中心に目が付いた姿をしている妖怪であった。
『騒々しいな、Dr.ヨナルデ』
言葉が発せられる。
一つの言の葉に重みがあり、もしその場にいたのなら体が押し潰されそうになってしまう。しかしドクターと呼ばれた妖怪は物怖じせず、キラキラとした瞳を向けながら画面を見せた。
「
『ほぉ……』
巨大な目玉がぎょろりと機械を覗く。
そこには【アリス・マーガトロイド】【パチュリー・ノーレッジ】【霧雨魔理沙】の3人の姿が映っていた。画面の中で動き、敵と戦い、魔法を使う姿。それを見て、巨大な目玉の中に、一瞬の輝きが宿った。まるで長い間探し求めていたものを、ようやく見つけたかのように。無表情でありながら、どこか満足げな光がその瞳に浮かんだ。
『この魔女はどこにいる』
その目が微かに細まる。
まるで、その喜びを噛み締めているかのようだった。ドクターはその画像と共に付けられた文面を読む。
「東の……ふぅむ、これは
その言葉に目が見開く。
『日本、幻想郷、そうか。ふははははっ!!』
「知っているんですかナ?我輩の頭脳にはそのような単語ありませんが」
『知らなくて当たり前。それでこそ幻想なのだよ、Dr.ヨナルデ』
「はぁ…。それでどうしますか?」
『
「三恐怖を!?ひょ、ひょひょひょひょーっ!御意に!!」
※
バックベアード。
西洋妖怪の帝王の名。力が全ての世界に生きる西洋妖怪たちの中で最強の力を持ち、逆らうものを虐殺してきた。その恐怖の姿を見てからこそ、誰もがバックベアードを帝王として認めている。
そんな彼が世界中から集めた3人の妖怪たち。その一人一人の強さと残虐性はベアードに引けを取らない。誰が呼んだか、『
『時は来た──』
その言葉に、幹部たちは一斉に王を見上げる。
『これよりブリガドーンが始まる。西洋妖怪の西洋妖怪による西洋妖怪のための世界が始まるのだ!!』
目玉はゆっくりと、幹部たち一人ひとりを見渡す。
幹部たちは王の瞳の中で、何かが変わったことに気づいた。ほんの一瞬のことだったが、その瞳から伝わってくる。見つけた。ついに、長らく探し求めていたものを。
「ワオオォォーーーッ!!来たぜ来たぜッ、遂に来たぜッ、この時がァッ!!」
【牙の恐怖 狼男“ファング”】
「楽しみダ」
【鋼の恐怖 フランケン・シュタインの怪物】
「我らの悲願が叶う時…」
【闇の恐怖 初代ドラキュラ伯爵“ブラム・スカーレット”】
『準備をしろ』
その一言に、幹部たちはただ無言で従う。誰もがその言葉を重く受け止め、即座に行動を開始する。取りに行く、その瞬間が来るまで。
だが、バックベアードにとってそれはただの「取りに行く」行動ではない。「取りに行く」ことは既に決定され、予見された未来を実行するための、最初の一歩に過ぎない。
バックベアードは微かに、満足げに瞳を細める。
今、この瞬間が完璧であることを、誰よりも知っているのだ。
※
「さむぅ…。この季節に裸足は堪えるねぇ」
「あー、それにしても世間はお正月かよ。ケッ、幸せそうで腹立つぜ。俺にも幸せ来ないかなぁ」
「ん?」ビビビ
「嘘だろ!?これって──
続く!!
次回予告──
どうも、霊夢よ。
魔理沙だぜ!
聞いたから?ねずみ男が砂金を見つけたんだってよ。
えっ!?ど、どこで!?
なんでも森の中らしいが、そんなところから金が見つかるもんなのか?
なんだっていいわ。今年こそ貧乏脱客よ!!私も見つけてやるんだから
次回「ボヤ鬼」!
今年こそ寝てるだけで金持ちに!
ねずみ男とお前ってなんか似てるよな・・・