ねずみ男 幻想郷に立つ   作:狸狐

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どうもです、狸狐です。

 なんとか早めに投稿できて良かった。
 fgoのハロウィンイベント早いなと思ったんですが、ストーリー読むと納得するとともに、めちゃくちゃ面白い!楽しかったです!ただ私には人狼は無理だなと認識しました。

 










妖犬仙人のしゅ── イッツ、ルナティックターイム⭐︎

 

 蝦蟇仙人との修行を終えた次の日。

 霊夢は、蝦蟇仙人と井戸仙人に見送られながら、カイラス山のさらに奥へと進んでいた。進んでいくと、霊夢はこれまでの場所とは、空気が違うことに気がついた。木々のざわめきもなく、鳥の声も聞こえない。ただ、薄暗い山道が一本、霧の向こうへと伸びている。

 

 

「・・・」

 

 

 その入り口には、古びた石碑が立っていた。

 

 

「入らず山道・・・?」

 

「待っていたぞ、博麗霊夢」

 

「!!」

 

 

 霊夢は跳ね上がる。

 振り向けば、最後の試練にして一番最初に霊夢と接触した仙人である妖犬が立っていた。彼は霊夢のことは見ずに、その石碑に触れながら続けた。

 

 

「井戸仙人と蝦蟇仙人の試練を乗り越えてくるとはな。あの時とは違い、少しは成長したようだな」

 

「今なら犬の姿になったアンタを捕まえられるわ」

 

「その鼻につく傲慢さは治ってないようだな」

 

 

 相変わらずの関係。霊夢も、妖犬も、仲は良くない。悪いのではなく仲良くはならない関係性なのだろう。霊夢は妖犬のことは横目で見ながら修行場所があるであろう“入らず山道”の方へと近づく。

 

 

「待て。そこから先はあの世とこの世の境目だ。まだ入るな」

 

「あの世とこの世の…?……神聖な場所にそんな闇があるなんてね」

 

「どんなに光ある所にも必ず影があるように聖なるカイラス山にも邪悪な部分はある。幻想郷だってそうだろう?」

 

「ふっ…、まあね」

 

 

 妖犬仙人は石碑から手を離し、霊夢を一瞥すると直ぐに入らず山道へ視線を向けた。

 

 

「儂が鍛えるのは心技体の『心』」

 

 

 抽象的な言葉に霊夢は眉をひそめる。

 医学を学び、体術を会得する。それは分かりやすかったが、心を学ぶとはどういうことだろう。

 

 

「心……?」

 

「強い身体と技術だけでは戦いには勝てない。お前の相手する敵たちは心を刈り取ってくる」

 

 

 霊夢はハッとした。

 バックベアードのことばかり考えていたが、もう1人いる。幻想郷を脅かす存在を。

 

 

「故に何にも動じない心を手に入れなければならない。手に入れればお前の持つ力は覚醒し、誰にも負けない存在となる」

 

「覚醒…」ゴクリッ

 

「そのために──」

 

 

 そして、目の前の山道を指差した。

 霊夢は黙って道を見る。霧の向こうは、何も見えない。

 

 

「お前は戦わなければならない」

 

「戦う?誰と…?」

 

「自分自身とだ」

 

 

 その言葉と共に山道の霧が晴れて行き、薄暗い道が見えてくる。何かが霊夢を呼んでいた。

 

 

「私…自身と……?どうやって戦うっていうの?」

 

「ああ。この入らず山道はな、侵入者を殺すために、入ったものの抱える恐(・)怖(・)やト(・)ラ(・)ウ(・)マ(・)を形にして襲わせてくる。つまりそういった自分の心の闇と対面し、戦うということなのだ」

 

「じゃあその闇をぶっ飛ばしてすぐに出ればいいのね」

 

「そう簡単ではない。この山道は己の闇に勝つまで永遠に広がり続け、途中退出はできない。しかも勝ったところで出られない。闇に勝った後、山道の奥にある『レワ』という祠に行き、その中にある『命の水』を飲まなければならない。もちろん祠は闇に勝つまでは出てこないぞ」

 

 

 霊夢は最後まで聞いてからクスッと笑う。

 

 

「はっ、真剣な顔で言うから聞き入っちゃったけど、要はこの道に入って命の水を飲んでくればいいってわけね」

 

「・・・」

 

「一番簡単な修行かもね。何が一番大変よ。大袈裟に言っちゃってさ、蝦蟇仙人め」

 

 

 井戸仙人と学んだ薬学。地獄のように辛かった座学、美味しくない野草を毎日食べたこと。蝦蟇仙人の妖怪関ヶ原で体験した十倍の重力。そして何度も繰り返した基礎鍛錬と、大蝦蟇との本気の試練をしたこと。そっちの方が何倍も辛かった。だからこそ霊夢は自信に満ちた顔で笑う。

 

 

「すごい自信だな」

 

「今さら恐怖だの絶望だのに負けると思う?」

 

 

 妖犬仙人は冷たい眼差しで霊夢を見つめる。

 

 

「……この試練で過去に何人もの人間たちが死んでいった。お前と同じこと言ってな」

 

「そんな奴らと一緒にしないで」

 

「そうか。なら行くがいい」

 

「言われなくても」

 

 

 霊夢は入らず山道へ向かって歩き出した。

 一歩踏み出し、そして山道の境界を越える。その瞬間、木々が震え出し振り向けばあの石碑は見えなくなっていた。ただ闇だけがあり、戻ることはできないことを表していた。

 

 

「……さっさと合格して、幻想郷に戻る」

 

 

 そう言って霊夢は真っ直ぐに進んでいくのだった。

 妖犬仙人は、再び霧が立ち込めて先が見えなくなった山道を前に低く呟く。

 

 

「・・・この入らず山道での死亡原因は自殺だ。殆どの人間が耐えられずに逃げて、そして逃げられずに諦め、自ら命を絶っていった。霊夢よ、お前は乗り越えられるか。……乗り越えられなければその程度ということ。お前抜きで幻想郷は戦うのだろうよ」

 

 

 入らず山道。

 それは、肉体の強さでは突破できない。己の心そのものと向き合うための道。そして霊夢はまだ知らなかった。この道の果てで待つ試練が、彼女自身の心を変えることになるとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

※

 

 

 

 

 

 

 

「ほわぁ〜、やっぱり地上は明るくて敵わんなあ」

 

「だがやはり日光浴は必要だぞ。医術にも詳しいんだ。分かってるだろう」

 

「ふん!医術、薬学に詳しい奴が規則正しい生活を送らなければならないという決まりはないわ!」

 

「また屁理屈を。・・・・・ん?井戸よ、お前さんの万能ガラス玉…、なんか光っとらんか?」

 

「うん?」

 

 

 井戸仙人は懐から万能ガラス玉を取り出す。

 蝦蟇仙人の言う通り、赤く点滅していた。井戸仙人はその反応に驚く。

 

 

「こ、こりゃあ、危険信号…!!何かとてつもない邪悪な輩がカイラス山にすごい勢いで向かってきている!?」

 

「なんだと!?」

 

「何が迫ってきているんじゃ!ガラス玉よ、その者の姿を現せぇ…」

 

 

 2人はガラス玉を覗く。

 映し出されたのは、何かワ(・)ン(・)タ(・)ン(・)のようなグニャグニャした物に乗った3人組だった。道化師のような女と黒服2人組。明らかに怪しい輩が一直線に向かってきている。

 

 

「な、なんじゃこいつらは!?」

 

「分からんが修行者には見えんな…。ふんっ、この聖なる地を踏み荒らそうと賊がやってくるなんて久しぶりじゃ。久しぶりに潰してやろうかのお」ゴキッゴキッ

 

「うひぃ〜〜っ、儂は争いが得意じゃあない。とりあえず妖犬にこのことを伝えてくる。それ見ていいから」ポイッ

 

 

 妖犬のいる場所に向かって筋斗雲的な雲を使い向かう井戸仙人。一方で蝦蟇仙人はガラス玉を通して、敵の乗るワンタンのようなものを凝視していた。

 

 

「それにしても、ワンタン(これ)……、大昔にどっかで見た気がするんだよなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※

※

 

 

 

 薄暗い山道。

 左右には霧が立ち込め、どれだけ歩いても同じような景色が続いている。そのときだった。

 

 

『博麗霊夢…』

 

「?」

 

 

 霊夢の前方に、人影が浮かび上がった

 一人。また一人。霧の中から、次々と姿を現していく。霊夢は目を細めた。そこに現れたのは、これまで自分が戦ってきた妖怪たちだった。倒したはずの妖怪。封じたはずの妖怪。かつて霊夢の前に立ちはだかった者たちが、怒りの形相で現れる。

 

 

『よくも…よくも……』『許さねえぞ』『博麗霊夢ブッコロスゥッ』

 

 

 霊夢の前に、これまで戦ってきた妖怪たちが次々と姿を現した。

 名前は忘れたが見覚えのある姿。かつて自分の前に立ちはだかり、拳や札を交わした者たち。

 

 

「・・・これが私の恐怖?ふっ」

 

 

 しかし、それだけだった。

 どんなに過去という敵の数が増えようとも、どれほど異形の姿を見せようとも、霊夢の心は揺れない。

 

 

「私が妖怪たちを倒してきたことに後悔をしていた?実は怖いと心の中で思いながら戦ってきた?そんなことあるわけないでしょうがっ!!」

 

 

 飛びかかってくる妖怪たちを霊夢は全て薙ぎ倒す。受け流し、反撃。またはそのまま叩き潰す。やられた妖怪たちは霧の中へ消えていく。そしてまた現れる。何度繰り返されても、同じだった。

 

 

「しつこいっての!!」

 

 

 妖怪たちを蹴散らすと一気に霧が立ち込め、視界が悪くなる。次第にあたり一面闇となり視界は完全に見えなくなった。暗中模索しながら奥へと進む。

 

 

「今度はなんだってんのよ……」

 

 

 悪態をつきながら進むと奥の方に光が見えた。ゴールか何かかと思い走り続けると景色が変わった。そこは見覚えのある世界だった。よく歩いた道でそこを進むと、いつも上り下りしていた階段があった。

 

 

「なんか、懐かしい気がする…。………え、こ、ここって…博麗神社……!?」

 

 

 登り切るとそこには自分の全てである『博麗神社』が聳え立っていた。その懐かしさと驚きに動けずにいると神社の奥方で激しい音が響いていた。

 

 

「な、なに?」

 

 

 不思議に思い進むと人影が浮かんでいた。その姿を認識した瞬間、霊夢の足が止まる。

 

 

「・・・あ」

 

「ん?お、お前は…」

 

「魔理沙?」

 

「・・・霊夢?霊夢なのか!?」

 

 

 魔理沙だった。

 彼女は霊夢に気づくと一瞬驚き、そして嬉しそうに手を振る。

 

 

「霊夢。修行から帰ってきたのか!」

 

「え、え!?私、さっきまで山道歩いてて……、あっ、もしかして自分の闇を蹴散らしたから修行が終わった?元の世界に帰って来れた……の?」

 

「霊夢、考え事してるなか悪いんだけど!」

 

「あ!な、なに!」

 

「すまんが手を貸してくれ!敵が多い!!」

 

「敵・・・?」

 

 

 魔理沙の周囲に、かつて倒した妖怪たちが現れる。

 数え切れないほどの妖怪が魔理沙を取り囲んでいく。マスタースパークで払ってもすぐに奴等は湧いてくる。

 

 

「霊夢っ、頼む!!」

 

「あいつら、まだいたの…。わ、分かった!!──あれっ?!」

 

 

 霊夢は走ろうとする。しかし足は動かない。身体だけが、その場に縫い付けられたように動かない。

 

 

「霊夢、早──ゔ…っ」

 

 

 敵の爪が魔理沙の胸を貫く。

 黒い血を吐きながら魔理沙が倒れる。

 

 

「う、嘘…。嘘嘘嘘、ま、魔理沙……っ、魔理沙…」

 

 

 足が動いた。急いで駆け寄る。霊夢の腕の中でだんだんと冷たくなっていく。

 

 

「大丈夫っ、助かるから…。こんな時のために学んだことが活かせるのよ…」

 

「もう、おそい」

 

「魔理沙?」

 

「…げぼっ、みごろ、しに、しやがっ……て…」

 

 

 間に合わなかった。魔理沙が死ぬのを霊夢は見ていることしかできない。

 

 

「魔理──」

 

 

 景色が消える。

 次に現れたのは紫だった。同じ光景だ。妖怪たちに囲まれ、追い詰められていく。霊夢は再び動こうとする。身体は動かない。紫の姿が消える。その次は、霊夢が幻想郷で出会ってきた者たち。一人ずつ。大切な者たちが目の前に現れては、霊夢の手の届かない場所で失われていく。何度も。何度も。一人が消えるたびに、次の人物が現れる。そのたびに同じことが繰り返される。

 

 

「あ、ああ、ああああーーーーーーーーー」

 

 

 この光景を見て頭が発狂しそうになる。

 何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も、大切なものたちが殺されていく。巫女として何もできないでいる。次第に霊夢の心はすり減り、摩耗し、砕けていく。

 

 

「帰ってきてない。こ、これは幻よ。妖犬が言ってたじゃない。恐怖が襲ってくるって…。そう今までのは全部……」

 

『本当に幻?』

 

「だ、誰・・・?」

 

 

 目の前に誰か立っている。

 その影のようなものは近づいてきて霊夢の前に立つ。

 

 

「私・・・?」

 

 

 自分だ。

 鏡のように自分と同じ姿をしたものが立っていた。

 

 

『これは未来よ』

 

「未来?」

 

『そう、それも近い未来。……ねえ、修行楽しかった?』

 

「え?えと…」

 

『あんたが特別な力を手に入れて、成長できたって喜んでいる間に皆んなが無惨に殺されてるの。あらら、残念ね。あんたは間に合わなかった。あんたが笑顔で帰ってきた時に誰も待ってないのよ。全部ない』

 

「そんなことさせない……!そんなことにはならない…!!」ガタガタ

 

『そうかな?あれを見て』

 

 

 また景色が変貌する。

 幻想郷。見慣れた山々。人里、博麗神社。そこへ黒い影が現れる。バックベアード。そして、ぬらりひょん。二体の妖怪が幻想郷を見下ろしている。

 

 

【どうやら博麗の巫女はいないようだ】

【残念だ。この手で殺してやりたかったが。だが、まぁいい。霊夢が帰ってきた時に正しく絶望できるように我々はしっかりとやっておこう】

 

 

 次の瞬間、爆発と共に炎が広がった。

 森が燃える。人里が炎に包まれる。建物が崩れていく。湖の水面まで赤く染まる。博麗神社も炎に包まれ、長く守ってきた場所が崩れていく。

 

 

「あ……ぁ………っ」

 

 

 霊夢は動けない。

 走ろうとしても進めない。手を伸ばしても届かない。ただ、目の前で幻想郷が失われていく。炎は止まらない。

 

 

『あんたは何も守れない』

 

 

 景色が消える。 

 そして再び、魔理沙が現れる。また失われる。何度も。何度も。終わりなく繰り返される。誰もいない博麗神社。焼け落ちた幻想郷。瓦礫の中に、一人だけ立っている霊夢。周囲には誰もいない。どこを見ても、知っている者の姿はない。

 

 幻想郷そのものが消えていく。

 山も、湖も、人里も、神社も。そこにあったすべてが、暗闇へ沈んでいく。霊夢は一人、その光景を見続ける。恐怖。絶望。悲しみ。自分が何よりも恐れているものだけを選び出したかのように、入らず山道は次々と幻を見せ続ける。

 

 

 その光景を涙を流しながら見る霊夢の横で、影の霊夢の姿が変わる。黒く長髪の鬼のような顔をしたものがいた。霊夢はそれに気づかずただ地獄のような光景を見続ける。そして、霊夢がどれだけ耐えても次の光景が現れる。さらに次の光景が現れる。終わりの見えない恐怖だけが、霊夢の前に繰り返し現れ続けていた。

 

 

「やめて…、やめて……!!私はこうならないためにずっと巫女として務めてきたの……!!直ぐにこんなところ突破してみんなの所に戻るのよ…!!」

 

『なら早く出なさいよ』

 

「分かってるわよっ!!」

 

『ほら、この闇を振り払ってみて』

 

 

 霊夢は手を伸ばし、闇を払う。しかし意味がない。闇には触れても消すことはできない。払った後にまた闇は元に戻る。大切なものたちが皆殺しにされている姿は永遠に残る。

 

 

「・・・っ」

 

『あらら、できない。けど、もしかして内心分かってた?』

 

「黙れェ……っ!!」

 

 

 影の霊夢が同情するように言う。

 

 

『ねえ。こんな所で時間潰してさ……、何も果たせず、何も守れなかったら、みんな恨むわ』

 

「そ、そうなったら……、そうなったら私は……」

 

『うん、辛いよね。それを分かってて、あんたは生き続けることができるの?みんなの屍の上で生き続けるの?』

 

「やめてっ、そんなの耐えられるわけがないっ!!そうなったら死んだほうがマシよ!!」

 

『なら死んじゃいなさいよ』

 

「……う、ぇ。し、死んじゃう…?」

 

『そう、死んじゃうの』ニコッ

 

 

 地獄のような光景が消え、代わりに闇の中に現れたのは絞首台である。その絞首台の周りには大切な仲間が笑顔で待っていた。霊夢が一歩近づくにつれて皆んなが拍手や歓声を上げる。

 

 

「・・・死んじゃう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※

※

 

 

 

 

 

 太平洋の上、煌めく太陽の光の下。その光を反射して輝く海。そのお日様と海の間をワンタンが飛んでいた。ヌルヌルゥッと動き、フニャフニャぁっと空を飛び、目的地であるカイラス山へ向かっていたのだ。

 

 

「・・・っち、ねえ!いつ着くの!もう2時間も海の上なんだけど!!」

 

「リーダー、落ち着いて…」

 

「落ち着けって…、うっ、ゔううっ、うぇーん!!アタイもうやだよ!こんなヌメヌメしたのに乗るなんて!早く降りたいよー!!」

 

「けどこいつを使おうって決めたの姉御じゃないスカ」

 

「だってカイラス山への行き方知ってて、同郷の輩を平気で売りそうなのコイツしかいなかったし〜〜〜っ!!」ビィイイ

 

 

 自分たちのリーダーが泣いてしまい呆れる2人。

 ヨナルデパズトーリにより、この夜の斧に入れられた時はもっと悪逆っぽく見えたのだが、これが素なんだろうと思うしかない。

 

 

【さっきから、酷くない?わしっちの扱い】

 

「うぎゃっ!?」

 

 

 ワンタンの先がウニウニと動き、先端からハワイで勧誘した元仙人が頭だけを出す。その現れ方にひっくり返るリーダー。

 

 

「なんだよ、その顔の出し方は!?」

 

【へへ。すごいでしょ。わしっち結構器用なんだよね】

 

「お前が器用かなんて聞いてないっての!それよりも!もっとスピード出ないの!!」

 

【スピード出せって言われても無理無理。これが限界。それに、この技は空飛ぶためじゃなくて女の子の部屋に侵入するために考えた物だし。スピードなんて含まれてないわい】

 

「無理矢理にでも出しなさい!スピード!」

 

【だからそんなの無理だって!これ以上、自分でも出したことないし】

 

「じゃあどうやったら出せるの?」

 

【えっ、そりゃあ……】チラッ

 

 

 元仙人の目は道化師の足を見ていた。

 彼女はその視線に気づき、部下たちの後ろに隠れる。あの脂ぎった目がもう嫌だった。しかさ部下たちは彼女に耳打ちする。

 

 

「姉御、やるしかないっスヨ」コソコソ

 

「嫌よ!!だってさっき砂浜で見せたじゃない!あれ最悪だったんだから!」ヒソヒソ

 

「リーダー。覚悟決めましょ。そうすれば直ぐにでも着くはずです。もしダメだったなら俺たちでコイツぶち殺しますから」コソヒソ

 

「ううう……」

 

 

 顔を赤くし、涙を浮かべながら靴下に手を伸ばす。

 するすると脱ぐと彼女の蒸れた足の裏が露わとなった。白い足裏なのだがどこか赤みを帯び、周りの人が見ても分かるくらいに、もわっとした湯気のようなものが出ている。

 

 

「こ、これでいいんでしょ…っ」ムワァァァ♡

 

【・・・太ももは?】

 

「え?」

 

【はぁ〜】

 

 

 元仙人は大きなため息をした後に続けた。

 

 

【足裏だけとか本気で言ってる?なら笑っちゃうんだけど。わしっちがそんなのを見て興奮するやつだと思ったの?ふざけんなよ、そんな変態じゃねえって。わしっちは普通、ノーマルなの。ノーマル足フェチなの。そんなノーマルには、普通さ、足のどこが興奮するのかって太もも以外には無いんだよなぁ。なんで女ってのは男の美学というものが分かんないんだろ。いい?着物の間からチラリと見える生太もも最高だよね?それくらい察してよ。足の裏なんて太ももの付属品って言われてるくらいだからから。もう萎えるわ。もう早くさ、いい加減に君のむっちりもっちりして時折筋肉が見える素晴らしい宝の太ももを見せて───】ペラペラ

 

「きっしょ…」ドンビキ

 

【は?キモい?どこが?わしっちのどこが変態なの?いい、変態っていうのは───「いい加減に黙れ」あああっ♡♡♡】

 

 

 冷たい目を向けながら元仙人の顔面を踏みつける。

 むぎゅうううっと足裏を押し付け、怒涛の早口を遮る。顔面を踏まれ鼻腔に広がるすっぱく少し臭い匂い。そのままずりずりずりと足裏を動かされ顔中を足の裏で擦られていく。

 

 

「死ね死ね死ね死ね死ね!!」グリグリグリ

 

【あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡あぁぁぁぁぁーーーーっ♡♡♡】ビキビキィッ

 

 

 部下たちはその異様な光景から目を逸らす。

 普通にあんなの見たくない。だが、リーダーが頑張ってくれたからか、このワンタンがだんだんと固くなってきた。先ほどまではヌルッとヌメッとしていたのがカチカチになっていく。

 

 

「お?おお!」

 

「なんか固えぞ!」

 

【ウオオオオオーーーッ!!大・興・奮!!】

 

 

 スピードが増していき、そしてついに目の前にはカイラス山が見えてくるのだった。そのままカイラス山に突入し、あれよあれよと仙人たちが住む聖域に3人とワンタンは到着した。

 

 

【到着ぅぅぅぅ……、うひょぅぅぅぅ……】ボフンッ

 

 

 ワンタンが元の仙人の姿に戻る。

 あまりの疲れによりその場で寝ている一方で、3人はカイラス山に降り立った。道化師を思わせる少女の顔は無邪気な笑みを浮かべている。

 

 

『やっと着いた〜〜』

 

『身体がガチガチっす』

 

 

 その後ろに続くのは、大柄な男。

 巨体を揺らしながら歩くその姿には、圧倒的な力が宿っている。

 

 

『なるほど。チベットの何処にあるかと思ったが、結界で外からは見えないようになっていたのか』

 

 

 三人目は、それとは対照的だった。

 細身でスマートな男。無駄な動きが一切なく、まるで刃物のような鋭い雰囲気をまとっていた。この三人こそ、西洋妖怪の最高幹部ヨナルデパズトーリ直属部隊『夜の斧』。彼らは草木が生い茂る広大な土地の上で、グゥっと体を伸ばしたり、肩をぐるぐると回したりして奥に進む。

 

 

『ここにいるんだよね、霊夢ちゃん』

 

『はい』

 

 

 細身スマートな男が答える。

 

 

『情報では、この山に8(・)人(・)の(・)仙(・)人(・)が住んでいるらしいです。きっと彼らが博麗霊夢を鍛えているのでしょう』

 

『OK。じゃあ、霊夢ちゃんだけじゃなくて。仙人たち──』

 

 

 少女が振り返る。

 

 

『殺しちゃおっか⭐︎』ニパッ

 

『いいっスネェ。けど奴等は何処にいるッスカね?』

 

 

 その瞬間。

 山の奥から、鐘のような音が響いた。三人が足を止める。雪煙の向こうから、老人たちが歩いてくる。

 

 

『ラッキー!あったから来てくれた♪』

 

 

 三人の仙人が、横一列に並ぶ。

 誰も道を譲るつもりはない。まるで山そのものが三人の姿を借りて立ちはだかっているかのようだった。

 

 

「おやおや。これはまた随分と明るくて派手で目に悪そうな女子たちじゃなァ」

 

 

 井戸仙人が穏やかな笑みを浮かべる。

 

 

「後ろの2人は戦い甲斐がありそうじゃ」

 

 

 蝦蟇仙人は拳の関節を鳴らす。

 

 

「・・・」

 

 

 妖犬仙人は無言。

 ただ、冷たい目で三人を見つめている。道化師の少女は三人を眺めて楽しそうに笑った。

 

 

『ねえ、霊夢はどこぉ?』

 

「教えるわけがないじゃろ。霊夢は修行中じゃし」

 

「その通り。そして、お前たちが霊夢の修行を邪魔するというのなら儂らが相手をしよう」

 

「……悪きものよ。ここから先には行かせない」

 

 

 その言葉と同時に大柄な男が前へ出た。

 

 

『糞爺どもがァ……。顔面をぐちゃぐちゃにして霊夢の居場所を吐かせてやる』

 

「ホホホ。儂は戦うの面倒なんじゃよ。だから一番楽そうな図体だけのやつは儂がやろう。早いもん勝ちじゃ」

 

『あ?』

 

「ほぉれ、木偶の坊さーん。追いついてみろ〜!」

 

『コロスゥゥゥ!!』

 

 

 井戸仙人が煽り、筋斗雲を出すとそれに乗って飛んでいく。大柄な男から怒りと凄まじい妖気が放たれ後ろから追いかけた。細身男は大きなため息をつく。

 

 

『馬鹿が。リーダーに何も言わずに行きやがった』

 

『別にいいよ。アタイらのモットーは好きにする、でしょ。目的達成できるなら何やってもいいさ』

 

『そうでした。では──』

 

 

 スマートな男が蝦蟇仙人の前に立つ。

 

 

『私は貴方を殺しましょうか』

 

「いい!実にいいぞ!滾るのォッ!昔戦った邪魅を思い出すわ。今は封印されてるがな。よーし、儂らはこっちでやるぞー!!」

 

 

 蝦蟇仙人は巨大な樹を振り返った。

 そしてカエルのように木々の間を飛び跳ねていく。同時に素早い動きで細身の男も追いかけるのだった。

 

 そして残ったのは、二人。

 道化師姿の少女と妖犬仙人。少女は二人の戦いを見送ったあと、妖犬仙人へ視線を戻す。妖犬は動くことはなかったが目を離さずに彼女の動きにずっと注目していた。

 

 

『ここには八仙がいるって聞いたよ。残りの5人は?』

 

「皆、死んだよ」

 

『じゃあ、2人っきり、だね♡』

 

「だな」

 

 

 少女が笑い、妖犬仙人は構えた。

 

 

(明らかに戦闘能力はこちらが上。きっと相手もそれは分かっている。……だがなぜ余裕そうなのだ?)

 

 

 少女は構えることはせず、何処からともなく松明を取り出した。その瞬間、あたり一面サーカスのような場所へと様変わりする。顔のない人形たちが拍手喝采を送り、象が玉に乗り、虎たちが火の輪を潜る。花吹雪と紙吹雪が舞う中で彼女は胸に手を当てて礼儀正しくお辞儀をした。

 

 

『アタイは地獄の妖精クラウンピース』

 

「な、なんだ、ここは!?空間転移の類か!?」

 

『仙人のおじいちゃん。狂気の世界へようこそ!──イッツ、ルナティックターーイム⭐︎⭐︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました!

 さて、遂に登場しました。クラウンピース。
 そして部下2人は原作に出てる子達にしたのでよろしくお願いします!!
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