ねずみ男 幻想郷に立つ   作:狸狐

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こんにちは、狸狐です。

 今回はバトル・アクションメインですね。
 鏡子の戦闘方法は昔何か漫画かアニメを見た時に、鏡系の能力を使うキャラがいて、それを参考にしました。

 
それではどうぞ












森近霖之助の鏡合戦!!②

 

 上空の藍と魔理沙を睨みつける鏡子。彼女の妖力は段々と高まり、確かに2人を相手できると豪語できるくらいに上昇してくる。久しぶりの強豪の雰囲気に流石の2人も冷や汗を流す。1番最初に試合開始のゴングを鳴らしたのは、鏡子である。

 

 

『雷を喰らえ』

 

 

 雷が無数の槍となる。

 それを2人に発射したが、弾幕ごっこになれている為に余裕で避ける。八雲藍は護符を2枚取り出し投げつける。

 

 

「その程度が我々に当たるか。──式神「前鬼後鬼の守護」ッ!!」

 

 

 護符からは筋骨隆々の鬼2人が飛び出した。

 昔話で見るような姿をした5メートル以上の大きさの鬼が金棒を振り回しながら地面に降り立つ。前鬼後鬼と言う名前の通りで、藍と魔理沙を守護する陣形となる。

 

 

ウオオオオオーーー

 

「後鬼は我々を守りつつ、前鬼は攻撃しろ」

 

ガアァァァーーーッ!!!!

 

 

 前鬼の右腕を。

 バキバキと膨れ、血管が波打っている右腕を掲げ、圧倒的な質量を持ち、確かな重量感を備えた必殺の威力を秘めた金棒を高々と構えた。そして思い切り鏡子の頭上目掛けて叩き落とそうとする。

 

 

『陰陽師の真似事かぁ〜!!ははははははっ!!』

 

 

 鏡子は両手で印を結ぶ。

 妖力というよりも霊力がその両手に集まっていく。

 

 

四方八方(シホウハッポウ)万華鏡(マンゲキョウ)

 

 

 藍と魔理沙の背後に鏡が現れる。

 それだけじゃない。

 気づけば、辺り一面に鏡が召喚され、周囲に無数な鏡が現れてドームのような形状になった。どこを向いても自分が写っており、不思議な感覚に襲われる。

 

 

『“反射”』

 

 

 直撃する瞬間に一枚の鏡が、鏡子と金棒の間に現れた。

 

 

 

 

 

──パァンッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 鏡子を叩きつけた瞬間に、“前鬼”が弾け飛んだ。

 式神である為弾け飛んだ瞬間に消え去ったが、もし式ではなかったら辺り一面には鬼の血肉が飛び散っていただろう。そして何事もなかったように鏡子が現れる。

 

 

『ふふふふふ・・・』

 

「前鬼が…ッ!?」

 

「どけっ!!ここは私がやってやるぜェェェーーーッ!!!!」

 

 

 片手に握られたミニ八卦炉から電気エネルギーが溢れ出す。バチバチと弾ける雷ほどのエネルギーが集中する。発射する前に、箒に乗った魔理沙が鏡子の目の前まで高速で移動する。

 

 

「頂きィッ!!」

 

 

 魔理沙は幻想郷で2番目に早い。

 鏡子が気づいた時には、目前に八卦炉が向いていた。魔理沙は笑い、攻撃の構えになる。

 

 

「ぶち抜くぜェェエーーーッ!!恋符マスタァァァーーー…スパークッ!!!!」

 

 

 

 

 

──バリィィィン……ッ!!

 

 

 

 

 

 

「・・・は?」

 

 

 砕け散ったのは鏡子ではない。

 ただの鏡だった。

 マスタースパークが貫通したのは鏡子の姿を写した鏡。その鏡の破片が地面に散らばって行く。しかし直ぐに割れた鏡の代わりが補充された。

 

 

『どこを狙っているのかな?』

 

「──っ!?」

 

 

 背後から鏡子が現れ、魔理沙の肩を叩く。

 攻撃できるというのに敢えてしないのは余裕の表れだろう。魔理沙は背を向けたまま固まってしまう。

 

 

「魔理沙ァっ!!」

 

 

 

 

──パリンッッ

 

 

 

 

 

 藍が手刀を叩きつける。

 しかし鏡子には直撃せずに、代わりに鏡が砕け散る。魔理沙は汗を拭い、武器を構える。

 

 

「すまん、助かったぜ」

 

「だが完全に我々は奴の手の中だぞ…。どうする?」

 

「どうするもこうするも全部叩き割るしかないぜ」

 

『ならやってみろ』

 

 

 鏡子の数が一気に増える。 

 いや、増えたというよりも合わせ鏡の原理で、鏡子が写った鏡から鏡へと繰り返し沢山の上下左右逆さまだらけの鏡子が向かってくる。

 

 

『どれが本物かな?当ててみなァ?』

 

「馬鹿にして…!!」

 

「あーもう!うだうだ考えるよりもブッ壊す!火力はド派手にィッ──」

 

 

 魔理沙の周りに五つの魔法陣。

 虹色に輝く高火力の魔力。

 

 

「──恋符「ノンディレクショナルレーザー」ッッ!!」

 

 

 全方位に発射されるレーザー光線。

 マスタースパークが直線状の極太エネルギー波ならば、ノンディレクションレーザーは周囲に巡る光の花火。五つに伸びたレーザーが花火のように弾けて行く。

 

 

「待てッ!それは悪手だ!!」

 

「えっ!?」

 

 

 八雲藍の言う通りだ。

 鏡は光やレーザーを反射する力を持っている。マスパのようなエネルギー波は反射する事はできないが、レーザーならば簡単に反射できる。更に鏡が向いている方向は魔理沙であり、自分で放ったレーザーが自分に返ってくる。

 

 

「ウオオオオオーーー! マジかよォッ!!」

 

「後鬼!守れ!!」

 

バウゥゥゥッ!!

 

 

 魔理沙の代わりに後鬼がレーザーを受ける。

 全てを受け切ると後鬼は崩れ去った。魔理沙のレーザーの威力はあまりにも強く、式神の体を最も簡単に破壊したのだ。

 

 

「──っぶねェ…!!」

 

 

 パラパラと落ちてくる後鬼の残骸に冷や汗を流す。

 もし、もう少し遅かったら自分がこの鬼のようになっていたかもしれないと想像すると心臓がキュッとなる。

 

 

「大丈夫かっ、魔理沙!猪突猛進すぎるぞ」

 

「す、すまんっ」

 

「相手をよく見ろ。何が本物で、何が虚像かを見極めなければ……」

 

「って、言ってもよ!この鏡、頭がおかしくなりそうだぜ」

 

 

 魔理沙が前を、藍が背中を守る。

 その2人にゆっくりと鏡子が向かってきた。

 

 

『はははははは!!どうした?来ないのかア?……ふっ、ならコチラから行くぞ!!』

 

 

 鏡子は、八雲藍本人ではなく彼女が映る鏡に手を突っ込む。そして鏡の中にいる藍の腹部を思い切り殴った。

 

 

「ごふっ!?」

 

 

 回避できない痛みが鳩尾に広がる。

 胃腸内部が捩れるような痛みで思わず吐き気を催してしまった。嗚咽が響き渡る。

 

 

「らっ、藍!!──お前っ、何をした!?」

 

『ククク…』

 

 

 次は、鏡の中の魔理沙の顔面に裏拳を繰り出した。

 鏡の中の顔が歪み、鼻血が吹き出す。

 すると現実の方も鏡の中と同様の変化が起きた。

 

 

「がはっ!?」

 

 

 鼻を抑えて、不思議がる魔理沙。

 殴られていないのに顔面に殴られたかのような違和感を感じた。この不快感は一体何なのだ。

 

 

『教えてやるよ。私の能力』

 

「「・・・っ!?」」

 

 

 鏡子は、鏡の中の両者を組み伏せる。

 すると触られてもないのに魔理沙と藍は身動きが取れなくなる。抵抗しても動けない。

 

 

『お前らが怪我をすれば鏡のお前らも同じ怪我をする。つまりその逆も然り。鏡の自分が動けないなら、現実の自分も動けない。これが【鏡革命(かがみかくめい)】』

 

 

 両者を写す鏡以外の全てに鏡子の姿が映る。

 

 

『さらに私は鏡に映る自分といつでも場所を入れ替えることができる。これが私に攻撃が当たらない秘密。そして最後が──』

 

 

 2人の体に鏡が近づく。

 水面に波紋を広げるかのように、二人は鏡の中で絶望の闇にズブズブと沈み込んでいく。頭から飲み込まれたせいで悲鳴を上げられない。手足をバタバタとしても無意味。蛇に丸呑みされるようにゆっくりと鏡の中へと消え去った。

 

 

『そして、どんな相手も鏡の中に封じ込められる。──私の能力は“鏡を支配する”こと。アンタらはもうおしまい』

 

「マジかよ、2対1で勝っちゃったよ…」

 

 

 ねずみ男が銅鏡の中を覗く。

 鏡の中には霊夢だけではなく、魔理沙と藍もいた。鏡子の力により鏡の世界に封じ込められてしまったのだ。

 

 

「やったな!これで──うわぁっ!?」

 

『うるさいぞ、この役立たずが…。お前はさっさとこの鏡を埋めろ!』

 

「は、はひぃっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 少し前、2人が戦闘中の頃。

 

 決心をした霖之助は、魔理沙の家に入る。中は誰かから借りたのか魔導書や魔法道具、ガラクタの山がある。台所の方には何が入っているかは分からないが魔法の火でグツグツと煮立っている鍋や材料に使うのかは不明だが怪しげなトカゲなどの動物達がいた。

 

 

「これは緊急事態だからだ。緊急事態。・・・女の子の家に無断で入るなんて僕の主義に反するが場合が場合だ…ッ」

 

 

 魔理沙の研究部屋に向かう。

 机の上には新たな魔法道具の設計図が置いてあり、試しに作ったであろう物が転がっていた。少し気になり、設計図を読んでみる。

 

 

(・・・常闇缶(るみあかん)の設計図。必要なものは……の髪の毛、爪少々。用途としては、いつでもどこでも暗くする事ができる。但し、自分も見えなくなる可能性アリ・・・)

 

 

 どうやら、()()()()()の特性を活かした魔法道具のようだ。しかし欠点も多い。自分も見えなくなるなんて使い道はない。自分ならもっと改良するだろう。とりあえずこの部屋には何も無いようだ。

 

 

「ここは…倉庫か?」

 

 

 倉庫といってもゴミ屋敷のようだ。

 大小様々なガラクタが転がっていた。そして、その一つの棚の上に似つかわしくない手鏡があった。手に取ってみる。質感はザラリとしていて中々に重い。鏡面はとても綺麗だが、魔理沙の言う通りで何も反射しなかった。握ったと同時に、自身の能力を発動させる。

 

【照魔鏡 悪しき者の正体を暴き、妖術を断つ】

 

 

「・・・すごい、本物だ」

 

 

 神具を自分の手の中に収めている事実に感動し、震える。

 一気に手汗が溢れ出す。

 だが直ぐに大きく深呼吸。冷静さを何とか取り戻した。曇る眼鏡を拭き取り、頭を冷やす。

 

 

「とにかく今は霊夢の救出が優先だ」

 

 

 

 

 

 

 魔理沙の家を出て、博麗神社に向かう。

 その途中、手の中に収まる照魔鏡を見て、とある事を思い出した。それはあの銅鏡に触れた時のことだった。

 

 

(僕の能力は・・・物の名称と用途が分かる。そう。・・・“物”なら必ず発動するんだ)

 

 

 能力に例外は無い。

 相手がどんなに危険な物でも、神聖な物でも、穢れた物でも、触れれば必ず分かる。

 この能力が発動しないのは『生き物』だけだ。人間のみならず妖怪や神様、妖精も勿論発動しない。

 

 

(待てよ・・・)

 

 

 段々と点と点が繋がってくる。

 嫁にしてやると言われたのに閉じ込められた鏡子。突然ねずみ男が照魔鏡の話を持ち出してきたこと。大体どうやって照魔鏡が流れてきたと分かったんだ。あまりにも不自然じゃないか?

 

 そして仮に銅鏡が生命体だったら?

 自分の正体を明かしてしまう照魔鏡は邪魔になってくるはずだ。霊夢を閉じ込めて照魔鏡が必要だから持ってきて欲しいと自分に頼んできたのかもしれない。

 

 

(なるほどな・・・)

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 

 

「掘り終わりましたよ〜」

 

『ならさっさと埋めろ』

 

「へーい。・・・けっ、威張り散らしやがって」

 

 

 博麗神社の裏。そこに大きめに掘った穴に鏡台を落とす。

 そしてその上に土をかけていく途中、何かに鏡子は気づく。

 

 

『おい来たぞ』

 

 

 空から霖之助がやってきた。鏡子とねずみ男はこの状況はまずいと思い、演技をしながら表に出て行った。

 

 

「おかえりなさーい。へへへ」

 

「ただいま戻りました。あれ?あの銅鏡は?」

 

「あっ、あー…あれはっすねェ、裏にありますよ、裏に。日に当たると悪いかなァと思いまして。あれ?霖之助の旦那、その背中に背負ってるのは?」

 

 

 ねずみ男が指摘する。

 霖之助は何か固そうなリュックのようなものを背負っていた。

 

 

「ちょっと忘れ物しちゃってね。あれ?鏡子さんは?」

 

「それなら…」

 

 

 ねずみ男の後ろから鏡子がやってくる。

 目をウルウルとさせながら言う。

 

 

「霖之助さん、照魔鏡は見つかりましたか!」

 

「・・・はい。見つかりました」

 

「それは良かった!では、直ぐそれを私に・・・」

 

 

 霖之助の手の中には確かに照魔鏡がある。

 鏡子はそれに手を伸ばした。

 だが霖之助は渡そうとしなかった。

 

 

「ええ。直ぐに照魔鏡を使いますよ、貴女にね」

 

「──なっ!?」

 

 

 照魔鏡を鏡子に向けた。

 反射した光が鏡子に直撃すると、全身をその光が焼いた。ボワンと音を立て煙を出し、鏡子の姿は消えた。代わりに着ていた服だけが地面に転がっているだけだった。

 

 

「あらぁ〜っ!?死んじゃったの!」

 

「いや、正体を暴いただけだ。奴はどこに!?」

 

『ここだぁっっ!!』

 

 

 上空から低い声。

 振り向けば、巨大な球体に顔がついてたものが空に浮いていた。髪の毛のような形をした妖力が巻き上がっていた。

 

 

『はははははは!!』

 

「それが本当の姿か!」

 

『そうだ。これが儂の本来の姿だ。儂は──雲外鏡(うんがいきょう)

 

 

 雲外鏡。

 2000年以上経った鏡が妖怪と化した物であり、鏡の中に潜む鏡爺と違って、鏡そのものが妖怪となっている。あの銅鏡も体の一部であり、このように妖怪体と銅鏡の自分を分離させて行動ができる特性を持つ。

 

 

『おのれ小僧。儂の正体に気づくとは中々頭の切れる奴だ』

 

「少し気づくのは遅くなったけどね」

 

 

 ねずみ男はこのやり取りを通じて、ニヤリと笑う。

 正体を暴いたということは雲外鏡は、自分で言っていた通りで本当に照魔鏡が弱点なんだろう。

 

 

「ちょっと貸せ!」

 

「あっ、おい!?」

 

『?』

 

 

 ねずみ男は照魔鏡を霖之助の手から奪う。

 そして雲外鏡に向けた。

 

 

「ヒーッ!ヒッヒッヒッ!本当に弱点のようだな、雲外鏡!散々俺さまをこき使った仕返しをさせてもらうぜ!!」

 

「おいやめろ!」

 

「ハァ〜」

 

「うっ…!?!?」

 

 

 なんという口臭だ。

 鼻を抑え、のたうち回る。

 あまりにも臭い匂いを嗅いだときに“鼻がもげる”と使うが、それを身をもって知るとは思いもしなかった。

 

 

「黙ってろ!!この俺が雲外鏡を倒すんだよォ。喰らえーーーッ!!」

 

『ぬぅっ・・・!?』

 

 

 照魔鏡の光を当てる。

 その聖なる光が雲外鏡に直撃するが、眩しがるだけで、やられるような事はない。しかしねずみ男は苦しんでいると思い、ゆっくりと雲外鏡に近づく。

 

 

『眩しいィッ』

 

「ケケケェッ!!どうよ、ほれほれ!苦しめ苦しめ!」

 

『くっ、このォ──』

 

「え?」

 

 

 雲外鏡は目を閉じながら、ねずみ男に突進。

 近づいていたせいで避けることはできない。

 

 

『邪魔だアァァァ』

 

「アラーーーッ!?!?」

 

 

 照魔鏡を持ったまま、ねずみ男はどこかに飛んでいってしまった。雲外鏡は目をパチパチとさせながら笑う。

 

 

『照魔鏡じゃ儂は倒せねえんだよ!カアアアァァァーーーッ!!!!』

 

 

 

 

 

──ゴウッッッ

 

 

 

 

 

 口からの火炎放射。

 霖之助は懐から『ミニ八卦炉』を取り出し、魔力を放射させて攻撃を相殺させた。

 

 

『その武器はあの魔女の…!?』

 

「そう。魔理沙のと同じミニ八卦炉だよ。因みにだが、魔理沙のミニ八卦炉を作ったのは僕なんだ。彼女のは威力、スピードと共に完璧な唯一無二の存在だ」

 

 

 霖之助の手の中のミニ八卦炉は砕け散る。

 今のエネルギーに耐えられないようだった。

 

 

「……でも、これは試作段階で作った『ミニ八卦炉プロトタイプ』。威力はあってもスピードが無いし、壊れやすい。高速で移動する相手には当たらないから捨てるはずだったんだが、まさか役に立つとは…」

 

 

 眼鏡をスチャッと掛け直す。

 森近霖之助は幼い頃から色々な道具を扱ってきた為に知識が豊富である。そして手先が器用なのを活かして、様々な魔法道具を生み出してきた。彼の家には工房があり、そこにこれまで作ってきた道具達が眠っていた。彼はその中からいくつかを持ち出しており、このプロトタイプもその一つである。

 

 

『だが、その役立つ武器は壊れてしまったぞ?それともまだ何か隠しているのかな?』

 

「そう焦るなよ」

 

 

 背中のリュックに手を伸ばす。

 そしてスイッチをカチリと押した。

 

 

「ちゃんと準備はしてるからさ」

 

 

 霖之助の背中に身につけているリュックから鉄板が飛び出す。その鉄板が霖之助の全身を包み、瞬時に鋼鉄製の武装を展開した。頭以外を鋼鉄で包み、体を守るような形になっている。両掌には魔法陣が描かれており、微弱な電気が流れていた。

 

 

「装備……『品物比礼(くさもののひれ)』」

 

『魔女、式神使いの狐に続いて、鉄絡繰か』

 

「どうだい、凄いだろ。材料不足で頭部の所は完成してないけど」

 

『ならその凄さ、試してやるわ!!』

 

 

 雲外鏡が口から火球を放つ。

 霖之助は火球に向かって片手を向ける。すると掌から魔力と電力を帯びた障壁が生じて、火球を防ぐ。

 

 

「これは『紅魔館の魔女』と『発明家の河童』、その天才達の協力により作ったスペシャルな鎧でね。人智の電気と神秘の魔力を織り交ぜてるんだ。この程度なら余裕で防げるさ」

 

『そうか。それなら──』

 

 

 辺り一面に鏡が召喚される。

 あの魔理沙と藍を倒した『四方八方万華鏡』という結界だ。無限に現れる鏡で周囲を囲み、全ての箇所に合わせ鏡を作り出す。五感のうちの視覚、聴覚を狂わせるだけではなく、平衡感覚もぐちゃぐちゃになる。それだけではなく自分と、鏡の中の自分を入れ替えたり、攻撃も反射させられる。

 

 

『これならどうかな?』

 

「結界…」

 

『そう。儂だけの世界。これを破るには照魔鏡しか無かったのに残念だったな』

 

 

 愉快そうに笑う雲外鏡。

 大きな舌を出しておちょくっていた。

 

 

『照魔鏡は、儂の正体を暴くだけではない。儂の結界、妖術、能力…全てを無効にしてしまう厄介な道具だった。もし照魔鏡があれば簡単に突破し、儂を攻撃できたんだが、あの馬鹿のお陰で…。これで儂の天下だ!!』

 

(さぁて、どうするか。照魔鏡を使おうと僕も考えてはいたが、まさかの事態だしな。…いやはや見事なまでに、辺り一面見渡しても鏡だらけ。これ以上攻撃したところで無駄だろう)

 

 

 ボウボウッと火球を連射。

 今度は両手で二重の壁を張り、攻撃を防ぐ。しかし時間の問題だ。この鎧は完成品ではないので、このままダメージを受け続ければ壊れてしまう。

 

 

(……考えろ。相手は鏡だ)

 

 

 鏡の結界。どんなに凄い力があるとしても、結局は鏡だ。ならば必ず科学的根拠を元に思考することができる。

 

 

(光だ。光さえ奪えば、鏡は何も写せない。・・・だが持ってきた装備に光を奪うものはない……っ)

 

『なかなか耐えるが、これはどうかな?』

 

 

 鏡の中の雲外鏡達が飛び出してくる。

 像と自分の居場所を交換したり、攻撃を反射させるだけではない。鏡に映る自分自身を幾らでも分身体として出すこともできる。

 

 

『『『はははははは!!』』』

 

『鏡分身だ』

『1人が本物で他全部は偽物だぞ』

『だが全ての攻撃は本物だ』

『その鎧で耐えられるかな?』

『試してみろ』

 

『『『カアァァァーーーッ!!!!』』』

 

 

 ダンダンダンダンと火炎弾が全方位から発射される。

 身を屈め、頭を守るような体制を取り、魔法壁を展開して必死に耐える。だが火炎弾の温度は超高温と火力である。初めは耐えられていたが魔法壁がバリンと割れ、両掌の魔法陣が壊れる。鎧でしか受けられず、段々と鎧にヒビが入っていく。

 

 

『そろそろ』

『終わりだな』

『焼け焦げて死ぬがいい』

『全員一斉に発射だ』

 

『『『ハアァァァーーー…』』』

 

 

 やばい。

 負ける。死ぬ。

 諦めかけたその時、割れて生まれたヒビの中からコロリと何か出てきた。黒い缶が瞳の中に入る。

 

 

(これは…魔理沙の………?ポケットに入れてしまったのか?)

 

(あれ?そういえばこれ…?)

 

(──そうか。魔理沙)

 

(ありがとう……!!)

 

 

 炎を溜めていると、霖之助は立ち上がる。

 胸のところをカチリと押すと、バラバラと鎧が砕けていく。鎧の中の服は端の方が焦げてしまっており、鎧は限界を迎えていたのがわかる。

 

 

『おや?我慢大会は終わりかな?』

 

「ふぅ…。ああ、終わりだ」

 

『随分と潔いな』

 

「僕の仲間が諦めるなと怒鳴ってくれたんでね」

 

 

 霖之助の手の中には真っ黒い缶が握られていた。雲外鏡達は何を持っているのか疑問を持ち、火球を準備したまま固まる。

 

 

『・・・何だそれ?』

 

「反撃の時間だ」

 

 

 プシュッと音を立てて、黒い煙が吹き出した。

 勢いよく上空に巻き上がり、泥のような黒い煙が下にドロドロと落ちてきた。鏡の結界を覆う程の闇が包む。

 

 

『こ、これはァ〜〜〜ッ!?!?』

 

(今だ──)

 

 

 博麗神社に常闇がやって来た。

 光が届かない場所では鏡は何も写さない。あっという間に、分身達と鏡の結界は消えていく。さらにこの闇は視界を奪い、雲外鏡は何も見えず、何もできないままだった。

 

 

『これじゃあ力が使えねえ!テメェ、この野郎!チンケな真似をしやがって!!殺してやる!!』

 

 

 自分の無敵の技を照魔鏡抜きで突破された。

 その事実に、雲外鏡は怒り狂う。

 だが雲外鏡もこのまま怒り続けるほど馬鹿ではない。これだけ何も見えないのなら、それは相手も同様だと推測する。

 

 

『ふぅ…ふぅ…っ、おい!このままじゃお互いにジリ貧だぞ!良いのか?』

 

「そうだね。確かに終わらせないと困る」

 

『なぁ、ここで提案なんだが……休戦しないか?』

 

「何?」

 

『あの巫女達を解放する。そしてもう悪い事はしないと約束しよう。だから見逃してくれ。悪くないだろ?』

 

「なるほど。お互いに利がある」

 

『そうだろう・・・?』

 

 

 雲外鏡は、霖之助の場所を探していた。

 見えないなら声から当てる。

 敢えてわざと話し、声の場所から大体の位置を把握する。そして見つけた。大きく口を開ける。

 

 

「分かった。その要求を飲もう」

 

『馬鹿な奴・・・そこだアァァァーーーッ!!』

 

 

 

 

──バクンッッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 

 

 

「いってえ〜。ったくよ、酷い目に遭ったぜ」

 

 

 大きなタンコブを乗せたねずみ男。

 照魔鏡を手に持って、博麗神社の階段を登る。近くの森までぶっ飛ばされて、気を失ったが目を覚まして戻って来たのだ。

 

 

「うおっ!?何だ、こりゃあ!?何も見えねえぞ」

 

 

 階段を登った先には神社ではなく、闇があった。

 何も見えないので入ろうか悩んでいると、時間が切れたのかは不明だが、空気に消えていくように闇は無くなっていった。

 

 

「決着は・・・」

 

『アムアム……んぐっ。げぷぅ〜〜っ!!貧相な男だが、腹の足しにはなったな〜…ぁ』

 

 

 口をモゴモゴとさせる雲外鏡。

 そしてゴクンと呑み込んで、また大きな舌をベロンと出す。ねずみ男はペタペタとやって来て、雲外鏡に頭を下げる。

 

 

『お前ェ…』

 

「いや〜お見事ですよ!雲外鏡大先生!やっぱり私の目に狂いはなかった!このねずみ男はどこまでも貴方様について行きますよん!!」

 

『おっ、おおおっ、オォォ……マァええぇ…っ』

 

「雲外鏡大先生?」

 

 

 雲外鏡の様子がおかしくなる。

 段々と色が赤褐色になっていきグズグズと皮膚が爛れていく。目玉が飛び出し、舌からは紫色の煙が吹き出す。

 

 

『オォォ〜〜〜〜……・・・』

 

「あっ、ああ〜〜っ!?!?」

 

 

 遂に飛び出した目玉が、そのままねずみ男に落ちる。

 それと同時に一気に雲外鏡の体は崩壊していき、地面に落ちていった。その雲外鏡だった物質の中から霖之助が出てくる。

 

 

「あの状況で休戦を提案するなんて怪し過ぎるよ…」

 

「うげげぇっ、たずげでぇえ」

 

「照魔鏡は返してもらうよ」

 

「あげぇ…っ」

 

 

 潰れたねずみ男は助けずに、照魔鏡を拾い上げる。

 そして裏に行くと大きな穴の側に銅鏡が転がっていた。それに向かって、照魔鏡を当てると閉じ込められている霊夢、魔理沙、藍が飛び出した。

 

 

「大丈夫かい?みんな」

 

「今回は流石にやばいと思った〜」

 

「霖之助さん、助かったわ」

 

「中々に恐ろしい相手だった…。それにしてもどうやって、あの雲外鏡を?結界もあんなに強かったのに」

 

「ああ。結界はこれを使ったんだ」

 

 

 そういって、あの缶を3人に見せる。

 魔理沙は直ぐに自分のものだと気づいた。

 

 

「常闇缶?」

 

「光が無ければ、鏡は何も反射できないと思ってね。予想が当たって助かったよ。まぁ全部魔理沙の発明のお陰だ。ありがとう」

 

「えっ、えー!何か照れるぜ」

 

「それで雲外鏡は?」

 

 

 霖之助が案内する。

 神社の前にはぐちゃぐちゃになった雲外鏡だった物があった。ねずみ男はその下で潰れている。

 

 

「溶けたのか?」

 

「いや、錆びたんだ。これを使ってね」

 

 

 霖之助が錆の山の中から取り出したのは空の俵。

 それは霊夢の家に貯蓄してある塩が入っていた俵であり、雲外鏡に自分が食べられた時に持っていた俵も一緒に飲み込んだのだ、と説明をした。

 

 

「塩?ナメクジみたいな奴だな」

 

「雲外鏡は銅鏡の九十九神。塩は銅を錆びらせることが出来るから、食べた時点で相手の負けは確定していたのさ」

 

「だがお前も視界は奪われていただろ?」

 

「缶を使う瞬間に、自分の立ち位置と台所までの距離を把握しといたんだよ。伊達に長く生きてるから霊夢の台所のどこに何があるかとかは知ってるしね」

 

「まぁ、事件は解決ってわけだな! それで、こいつどうする?」

 

 

 魔理沙はねずみ男を引っ張り出す。

 ねずみ男は全員が睨みつけているの察して笑うことしかできなかった。

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

「ほら、さっさと片付けなさい」

 

「はーい!」

 

「風呂掃除は終わったの?」

 

「今直ぐぅっ!!」

 

「肩揉んで。トイレ掃除して。買い物してきて、あんたの金で」

 

「ひぃいい〜〜っ」

 

 

 霊夢に迷惑をかけたということで、ねずみ男は1ヶ月間無償で奉仕活動の罰となった。そしてこのように霊夢の召使として博麗神社で霊夢に尽くしている。もし少しでも遅れると霊夢から恐ろしいお仕置きが待っているので逃げられない。

 

 

「もうお許しをぉ〜っ!!」

 

「ダメ」

 

 

 

 

 

 

※※

 

 

 

 

 あの銅鏡は壊す事となった。

 霊夢の立ち合いの元、除霊をしてから魔を払い落とし、ただの銅鏡になったところで粉々に割った。その破片は聖なる場所、博麗神社の敷地に埋められた事件は終わった。

 

 照魔鏡は、霖之助が所有する事となり、丁寧に保管される事となる。魔理沙に持たせておくとガラクタの中に紛れてしまう可能性があり、必然的である。

 

 

 場所は変わり、雲外鏡が置いてあった魔法の森に黒い影が3つ現れる。

 

 

『雲外鏡。かなりの強豪を用意できたと思ったが…、まさか弱点の照魔鏡がこちらに来てるとは誤算じゃったな』

 

 

『探すのに苦労したのにぃ。俺たちの努力と結果が見合ってなーい!!』

 

 

『しかし、ゆっくりと我々の目的には近づいているさ。焦ることはないさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はははははは・・・!!』

 

 

 

 

 

 





 この雲外鏡の話は原作に寄りすぎていました。すいません。
 めちゃくちゃ反省しており、オリジナルストーリーをしっかりと考えて書いていこうと思います。

 次回はまだ決まってませんが、書きたい妖怪はめちゃくちゃいます。
・釜鳴、南方妖怪、牛鬼、大百足、ぶるぶる、などなど

 リクエストでは結構色々な妖怪のアイディアを頂いていまして、泥田坊、白山坊などをもらっています。
 泥田坊はめちゃくちゃ書きたいですね。

 リクエスト、感想などお待ちしております。
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