とある探偵たちのクトゥルフ神話事件簿   作:兼六園

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鏡鏡鏡(さんめんきょう) 12/14

『さて、あとは巫血漿(かんなぎけっしょう)の術についての説明だから、ちゃっちゃと言い切っちゃうわよ』

 

 飛嘉野が洗脳されているという確信に近い想定を横目に、蛇神がそう言って説明を続ける。

 

 

 

【巫血漿・破魔(はま)

 

 ・破魔とは、(かんなぎ)の血を(あやかし)に打ち込むことで、妖の力を抑え込む術である。幽鏡寺で巫の儀を受けた者は、魔を打ち破る力を与えられる。

 ・それは、後継(こうけい)にも影響を及ぼすが、年々と力が弱まる。しかし、どれだけ長い年月が経とうと、受け継がれた血脈には相応の力が宿るだろう。

 ・巫の血には魔の物が触れるだけで身動きが取れなくなる破魔の力が宿っており、例えば血を染み込ませた布などを手に巻いて殴りつけるなどで直接血をぶつけてもいいが、実践で行うならば刀や矢に巻いて相手に突き刺すのが現実的だろう。

 ・しかし巫の血が破魔の力を持つとはいえ、何度も打ち込めば妖とて耐性を得てしまう。劇薬を打つよりも弱い薬を少量ずつ打ち込むのが効果的なように、妖に耐性が付かぬよう注意すべきである。

 

 

 

【巫血漿・福音(ふくいん)

 

 ・福音とは、巫の血に触れることで妖から受けた傷を癒すことができる術である。

 ・巫の血には、妖のあらゆる攻撃から受けた傷を癒す効果があるが、逆に言えば、負った傷が妖によるモノではない場合、福音は効力を発揮しない。

 ・例えば、巫の血を染み込ませた布を対象の腕などに巻いておいた状態であれば、血の主である巫は離れた位置からでも【福音】を発動できる。

 

 

 

『こんなところかしら。巫の血って便利ねぇ。うちの琴巳ちゃんの家系も巫女だけど、明野町というか幽鏡寺なんてここに来るまで名前すら知らなかったから、たぶんあの子は巫ではないのよねぇ』

「それ以前に、仮にヒメが巫だったなら御剣クンが気づくだろう。キミは半分がグールなんだから、実質半分妖みたいなものじゃないか?」

「もう少しオブラートに包んでもらえませんか? ……まあ、血が主食ではあるので、おそらくわかり…………ああ、なるほど」

 

 竹田の一切飾らない言葉に顔をしかめるリオンだが、思い至る事があるのか表情を変えた。

 

「どうしたんだ? 御剣クン」

「実は、僕は『なんとなくこの人の血は飲みたくない』と直感することがあって、春田さんが近くに居たときにその感覚が強かったんです。ただ竹田さんが居てもこうなるので、単純に僕と気が合わない人にそう感じているだけだと思っていたんですが……」

「キミ、私のこと嫌いなのかい?」

「まあ、まあ……まあまあまあ。で、ですね。その『飲みたくない』という感覚が春田さんに対して強く出た理由が、巫の血にある破魔の力を本能的に恐れたからだと思えば合点が行くと思いまして」

 

 竹田の視線から顔を逸らすリオン。しかしその言葉に、蛇神は疑問符を浮かべる。

 

『でもその理屈だと、竹田ちゃんにも巫の血が流れてることになるんじゃない?』

「……そんなわけないだろう。これは単純に私の人間性を御剣クンが嫌っているだけだ」

「それはそれで僕の性格まで悪いみたいになるからこの話やめませんか……?」

「うふふ、楽しく話しているところ申し訳ありませんが、こちらを受け取ってくださいな」

 

 と、そこに。話をしている間に何かを取りに行っていた信代が戻ってくる。

 会話に混ざりつつ、リオンに手渡されたのは、一振りの日本刀だった。

 

「あ、ありがとうございます」

「皆様にもこれを。【写し身返し】用の手鏡でございます。……それと、行かれる前に最後に一つ説明せねばならないことが」

「説明?」

 

 渡された手鏡を各々に配る葉子が問うと、信代は巻物を指差して続ける。

 

「幽鏡術を使った際の呪いについてです」

「呪い……? 呪われるんですか?」

「全員がそうなるわけではありません。ただし、魔術の才能が……精神力が極めて高い人間が幽鏡術を使うと、呪いを受けてしまいます」

「呪われると、どうなるんですか?」

 

 手鏡を懐に仕舞う葉子に、更に言う。

 

「この呪いは、その者の生が尽きた時に起こるものなのです。幽鏡術を使ったのちに息絶えた者は、その魂が現世に囚われてしまう。そして現世から成仏する方法は、生前叶わなかった望みを果たすことだけ」

「つまり、幽霊になるということですか」

「簡単に言うと、そういうことですね」

『これから使うぞ! って時にそういう事言うのやめてくんねぇかなぁ〜〜……!?』

 

 信代の説明に対して額に青筋を立てる結月だが、続く言葉に怒りを収める。

 

「ご安心ください、少なくともこの場の全員は呪われるほどの才はございませんから」

『おお……なら安心? かな? なんかすっげぇ遠回しにバカにされた気がするけど』

「気の所為ですわ」

 

 視線を逸らして袖で口元を隠して笑う信代を前に、葉子は軽く頭を下げた。

 

「信代さん、色々とありがとうございました」

「いえ、巻き込まれただけのあなた方を助けるのは当然のこと。……このような事を言うべきではないですが、どうか弦那様を解放してあげてください」

「……任せてください」

 

 複雑そうな表情で頼み込む信代に、葉子は一瞬の間を空けてから返す。それから一人ずつ平屋を出ていく途中、最後に残った蛇神が、一度足を止めて、振り返ってから信代の顔を見た。

 

『姫崎信代』

「なんでございましょう」

『お疲れ様。これまで、よく頑張ったわね』

「────。勿体なきお言葉でございます」

 

 唐突な蛇神からの労いの言葉。

 その真意を理解しているからこそ、信代はそう言って深く頭を下げる。

 

 それから蛇神は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()平屋から出ていくのだった。

 

 ──誰かに術を託し、愛した男を止めてほしいという思いを託し。望みを果たして成仏した、とある巫の想いを背負って。

 

 

 

 

 

 

 

 ──明野小島に向かうために船着き場まで歩く途中、潮風が漂う海側の歩道を歩いていると、リオンがそういえばと刀を葉子に見せる。

 

「葉子さん、この刀はあなたが使ってください。刃物は自前の魔力で用意できるので」

「……そう、ね。銃には【刀月清】は使えないでしょうし、私も刃物を持つべきなのよね……」

『なんで渋ってるのよ。あなた警察官だったんだから剣道も教わってるでしょうに』

「…………まぁ……まあ〜〜〜うん……」

『……あなた、剣使うの苦手なの?』

 

 リオンから受け取りつつも渋い顔で口元をモゴモゴさせる葉子にソフィアが問えば、彼女は鞘を強く握りながら小さく頷く。

 

「昔からどうにも剣道だけが苦手で。ただまあ、一通りは頭に入っているから、いざ実戦になれば動ける……とは、思うのよ」

「そうならなかったら如月弦那を倒せるかどうかは全てが御剣クンの手に掛かることになるな」

「プレッシャーなんですけど……!」

 

 竹田が唐突に全ての責任を押し付けようとしてくることに苦笑するリオンを横目に、歩を進めて暫くすると、目的の船までたどり着いた。

 そこでは昼に見た船長の老人が、暇そうにタバコを吹かして煙を宙に吐き出している。

 

「やあご老人、約束通り来たよ」

「……うわほんとに来おった。しかも増えとる」

「こんばんは、すみませんが、明野小島まで船を出してくださるとのことで……」

「あーはいはい、約束しちまっとるからな。今回だけじゃぞ、はよう乗れ乗れ」

 

 地面にタバコを捨てて踏んで消す行儀の悪さからは目を逸らして、六人全員で船に乗り込むと、船長は明野小島まで真っ直ぐ船を進ませる。

 

「ご老人は島に着いたらどうするんだい」

「お前さんらが何するかは知らんが、戻ってくるまで寝て待っとるよ」

「そうかい。耳栓があるなら付けておいたほうがいいぞ、かなりデカい音が出るだろうからね」

「なんじゃ、戦争でもしに行くんか」

「似たようなものだ」

 

 そんな会話を挟みつつ、船は少しして島に到着する。全員が降りたところで、船長は残って言った。

 

「そんじゃ、わしは寝てるからの。全部終わったら起こしてくれ」

「ああ、先に帰らないでくれよ」

「考えとくわい」

 

 といった冗談を言いながら船内に戻る船長を見送り、葉子を先頭、リオンを殿として森の中に向かうと、浜辺から森の中へと続く足跡を見つける。

 森には人工的に作られた狭い道が存在していて、その足跡は森の奥へと続いていた。

 

「竹田さんを守るように、結月ちゃんとソフィアちゃん、蛇神様でカバーしてください」

『ま、敵の姿が見えるまでは生き人形の仕事は非戦闘員の肉壁だわなぁ』

「多少の罪悪感はあるけど、流石に2度も3度もライフル弾を体に食らいたくは無いからね」

『既に食らったことあんのちょっとおもろ』

「是非とも結月クンも食らってみてくれ」

『いやぁ勘弁願いたいっすね────』

 

 竹田との軽口を叩き合う結月は、ふと視界の端で何かが光るのを捉え、反射的に一歩前に出る。

 

『っづぉあ!?』

 

 瞬間、左の二の腕に弾丸が突き刺さり、硬い材質の物体が割れるようにして腕が宙を舞った。

 人形ゆえに血が流れていないが、生身であれば致命傷になりうる一撃を見て、その場の全員が射線を遮るように木の幹に隠れる。

 

『竹田さんが変なこと言うからサァ!!』

「言霊って奴だねぇ」

「……? 電話……?」

 

 千切れ落ちた腕を【浮遊】で手繰り寄せる結月を横目に、葉子は掛かってきた電話に出る。

 

「もしもし?」

【ようやく来たか、待ちくたびれたぞ】

「あなた、飛嘉野……じゃ、ないわね。如月弦那、あなた飛嘉野の体を操っているの?」

【ふっ、この体は良い。俺ほどではないが、戦いの才能に溢れている】

 

 電話をスピーカーにすると、全員の耳に聞こえてきたのは飛嘉野の声。しかし口調や雰囲気からして違うと判断した葉子が問えば、声の主──如月弦那は肯定しながらも隠れている木に発砲を続ける。

 

「っ……あなた、こんなことしてる暇があるなら信代さんの所に顔出しに行きなさいよ……!?」

【ほう、信代殿か。()()()()()()名だ、彼女は息災であったか?】

「ええ。あなたがこれ以上罪を重ねる前にぶっ飛ばしてこい、とのオーダーよ」

【……ふっ、ははは。信代殿なら、そう言うだろうな。だが、あの町を我が物とするまで俺の考えが変わることは無いぞ】

「そう。なら、話し合いはこれまでね」

【ああ。電話も切るぞ。かけ直されても出ないからそのつもりでいろ】

「…………。ええ」

 

 ──変なところで真面目なのよね。と思案しながらも、葉子は電話を切られた携帯を懐に仕舞う。

 

『こうなる前は真面目な人だったんだろうなあ……ってのが透けて見えるの、殺しづらくなるからやめてくんねぇかなぁアイツ』

 

 そう言いながら千切れた左腕をプラプラと木の幹から出す結月は、次の銃声とともに左手のひらに穴が空くのを見て射撃の腕は飛嘉野の技術がベースになっているのだろうと察して各々に視線を向ける。

 

「春田クンを洗脳しているなら【服従】を使っているはず。周囲にあるであろう藁人形を各自動ける奴が破壊するぞ、狙撃の狙いを分散させるためにも葉子クンと御剣クンが前に出てくれ」

「分かりました。……私とリオンちゃんで囮になりつつ如月弦那に接近するわ、後ろで【解欄】を使って藁人形のある場所に目印を付けて!」

 

 葉子はリオンにハンドサインで指示を出し、茂みを利用して前に出ながら次の木の幹に移動する。次の銃声の直後に弾丸がリオンの隠れた木に着弾し、その一瞬の発射炎(マズルフラッシュ)を視認することで、木の隙間から見える前方200メートルほどにある小屋の屋根に寝そべった人影を見つけた。

 

「撃たれた結月クンとまだ片腕が動かない蛇神は私と共に後方待機だ、余計に動けば却って葉子クンたちを危険に晒す。ソフィアクン、【解欄】と藁人形の位置のマーキングを頼む」

『任せなさい。【解欄】……見えた、藁人形の位置はそことそこと、そこ!』

 

【解欄】を発動したソフィアの瞳が淡く輝き、木に打ち付けられた藁人形を包む魔力を視認する。弦那と葉子たちの間の木にある3つの藁人形の元に、ソフィアは【召喚(コール)】したナイフをそれぞれ【浮遊】で浮かせて射出し、スコンと突き刺した。

 

「よし……リオンちゃん、藁人形をお願い。使ってるのが猟銃なら、装弾数はだいたい5発前後、たぶんそろそろ弾切れになるわ」

「わかりました、藁人形破壊まで春田さん……如月弦那の相手を頼みます」

「はぁ〜〜……ベースが飛嘉野だから、ちょっと勝てるか怪しいけど……やるしかないわね」

 

 その言葉を最後に、リオンが脇に飛び出す。そちらを狙った1発を合図にして葉子が展望小屋であろう建物の方へと駆け出すと、予想通りに撃ちきったのだろうライフルを脇に捨てた人影が軽やかに飛び降りて、弾かれたように葉子の方に駆けてくる。

 

「──ふはははっ、行くぞッ!」

「来なさい、飛嘉野……いえ、如月弦那!」

 

 人影──飛嘉野の体を使う如月弦那は、女性らしからぬ獰猛な笑みを浮かべて葉子へと拳を突き出す。連続して繰り出される拳と足を捌くが、葉子は腕でガードする攻撃の重さに顔を顰める。

 

「づ、ぐっ……!」

 

 魔力による肉体の【強化】と、元来ある飛嘉野の身体能力の高さ。そこに怪物との殺し合いで生き抜いてきた剣士の才能が合わさり、拳と蹴りによる殴打が葉子の腕の骨をミシミシと軋ませた。

 

 視界の端で1つ目の藁人形を見つけ、手のひら大のナイフ状の金属片で引き裂くリオン。彼女を横目に、残り2つの破壊までの時間を脳裏で計算して葉子は小さくげんなりとした顔をする。

 

「おおよそ1分……」

 

 それだけあれば、果たして弦那は何十発の打撃を叩き込んでくるのか。

 ──けれども、忘れてはならない。葉子は別に、一人で戦ってるわけではないのだ。

 

()()、失礼』

「むっ……!」

 

 そんな言葉とともに、頭上からズガガガガ! と、弦那の周囲に垂直にアルミニウム合金の槍が突き刺さる。先んじて一歩下がった葉子の動きから奇襲を察知した弦那もまた、素早く動いてそれらを避けると、地面に刺さった槍の1本を引き抜き、サイズを人形に変えて飛んできていたソフィアへと突き出した。

 

「ッシィ!」

『あっぶな!?』

「ふんっ、無手の剣士だからと侮ったか? 俺は一通りの武器は使える。……しかし妙な気配がすると思っていたが、昼に腕を切り落とした女といいさっき撃った女といい、半数が化生(けしょう)の類いだったか」

『こんな可愛らしいお人形をバケモノ扱いとは失礼な男ね……』

「っ、無傷で倒すのに拘ってたらこっちがやられるわね……仕方、ない……!」

 

 突き出された槍に、腰に挿していた刀を引き抜いて対応する葉子。

 先端を刀身で逸らすのを見た弦那は、目の色を喜色に染め、笑みを浮かべて槍を振り回す。

 

「っ、くぁっ、くうっ!?」

「──どうやら、鉄砲の扱いは得意でも剣の扱いは不得手のようだな!」

「ぐっ、悪かったわね……!」

『葉子!』

 

 突き、打ち、薙ぐ。流れるような連撃を、葉子は辛うじて受け流していく。

 数度の打ち合いで剣の腕の低さを読み取られ、葉子が返す刀で振るった一閃は、弦那が敢えて受けることで槍の穂先を切らせる。

 

「貴様は邪魔だ、人形!」

『ぬあっ!?』

「ソフィアちゃん!? ……っ!」

 

 地面に落ちる前に拾い上げた穂先を素早く投擲することで、弦那は後ろから更に槍を【召喚(コール)】しようとしたソフィアを貫き木に縫い止めた。

 それから穂先が無い棒だけになった槍を突き出そうと踏み込む弦那に対し、葉子もまた刀の持ち手を反転させて峰を肩に叩きつけるべく振り被る。

 

「甘い、俺の方が、貴様より一手早い!」

 

 そんな確信と共に伸びる槍が、葉子の喉を貫かんと迫る。しかし、その直前。弦那が持っていた槍は、魔力に分解され跡形もなく消え去った。

 

「なに!?」

「悪いわね、飛嘉野。骨の一本くらいは覚悟してちょうだい……!」

 

 ──弦那は知らない。その槍が【召喚(コール)】という魔術により複製されたモノであることを。それは術者の任意でいつでも解除できることを。術者がソフィアであることを。そして、生き人形は胴体を貫いた程度では無力化できないことを。

 

 果たして攻守が逆転した一撃。峰打ちとはいえ金属の塊が叩きつけられれば、弦那が操る飛嘉野を無力化するには十分な威力になる。

 

「な──め、るなぁ!」

 

 手元の武器が消失する現象を前にして、弦那はあろうことか()()()()()()()()

 それから振り抜ききる直前の葉子の手元を掴み、勢いを利用して捻じるようにして、ぐるりと投げ飛ばして地面に転がしてみせた。

 

「な、あ……っ!?」

 

 いわゆる無刀取り。葉子の手に持っていた刀を奪い取った弦那は、即座に起き上がった彼女が反射的に飛び上がった直後の胴体があった部分を横薙ぎに切り払うと、背後にあった木を真っ二つにする。

 

「避けるな!」

「うぐっ!?」

 

 着地と同時に木々の隙間から覗く月光を反射する剣筋を辛うじて避ける葉子は、剣に混ぜた蹴りを土手っ腹に食らい、背中から別の木にぶつかる。

 そして、眼前で上段に刀を構えた弦那を見据え──無駄だと分かりながらも両腕を盾にしようと前に突き出し、動きが止まった。

 

「っ! ……?」

「ぬ。…………ちっ、前座はここまでか」

「……え?」

「すみません、遅くなってしまって」

「り、リオンちゃん?」

 

 ピタリと動きを止めた弦那は、その言葉の直後にだらりと腕を下げ、力を失ったかのように背中から地面に倒れる。続けてその場に現れたのは、手に掴んでいた裂かれた藁人形が青い炎に包まれて灰になる光景を見届けたリオンだった。

 

「なるべく早く見つけたのですが……」

「ああ、いえ……早い方よ。長すぎる、1分間だったわ……飛嘉野の体を使っていたとはいえ、流石に……強すぎたわね……」

『まったく酷い目に遭ったわ』

 

 その場に胴体に穴を空けたソフィアも現れ、三人で倒れた飛嘉野を見やる。

 

「もう、如月弦那ではないんですよね?」

「たぶん、ね。あとはこれを破壊すれば……」

 

 

 

 そう言って、葉子は地面に落ちた刀を鞘に収め直してから、飛嘉野の指にある木製の指輪を抜き取り放り投げ、片手に【召喚(コール)】した拳銃を1発発砲して的確に撃ち抜き破壊してみせた。




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