ファンタジー俺達   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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化け狐

「ヒムラー様、魔物と生活するなどということはおやめください」

 

「ん? なぜだ騎士メルル」

 

「魔物ですよピクシーやコボルトは……テイマーという薄汚れた存在は領内に必要ありません。いや錬金術師もそうです! なぜあのような輩をのさばらせているのですか!! アンパンマンなる人からかけ離れた化け物も誕生しているのですよ!」

 

「目安箱から領民の声を聴いたが魔物についての意見書も錬金術師の反対意見もなかったが?」

 

「しかし、人造人間など禁忌中の禁忌、対魔族審問委員会が来たら異端認定されますぞ」

 

「で? だからなんだというんだ? 我が領土のモットーは自由と成果主義だ。成果を出しているのに気に食わない、異端だと追放する? メルル、君は馬鹿か?」

 

「な!?」

 

「私の方針に気に食わなければ出ていくといい。尤も政治闘争に負け、領主からも追い出されるような騎士を雇うもの好きは居ないだろうがな」

 

「……出過ぎた真似を致しました。お許しください」

 

「受け入れよう……そうだな、メルル騎士達に命令しよう。ヤタガラスの冒険者講習を受け、ダンジョンの間引きを行いたまえ、副次収入は君たちが持っていってよいぞ」

 

「失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶ怒っていましたがよろしかったのですか?」

 

「嘆かわしい、村人達は豊かになっているからと多少の変なことは目をつぶっているが……教会すらないこんな辺鄙な領土に異端審問官が来るもんかよ」

 

 目の前に座るのは商家のお嬢様であり、転生者である

 

 とある町の商業ギルドの幹部の娘で貴族の才女と名高かったが、政略結婚が嫌で配下の転生者と一緒にこの前この領土に逃げ込んできた

 

 高度の教育を受けていたため配下含めてヒムラーが行政官として雇い入れていた

 

 コテハンはお嬢様で配下も執事くんと冥土さんと呼ばれていた

 

「お嬢様、公爵閣下、軽食をお持ちしました」

 

「ありがとうゼロさん」

 

「いえ、お嬢様に喜んでもらえれば私は……」

 

「相変わらずお嬢様に絶対的な忠誠を誓ってるね冥土ネキ」

 

「お嬢様と出会ってこのお方なら一生お仕えしたいと思いましたのでね」

 

「うちのメイドや馬鹿騎士どもにきかせてやりたいよまったく……途中加入の冥土ネキや執事ニキのほうが働くこと働くこと……」

 

「でも公爵閣下「ヒムラーでいいよ。転生者しかいないんだから」ではヒムラー様、もう少ししたらダンジョンに執事のあいつとお嬢様を連れて潜りたいのですが」

 

「3人で行くのかい?」

 

「もう一人先行して潜っている方の誰かに教えてもらいながらになると思いますがね」

 

「いま皆のレベルはいくつだっけ?」

 

「私が一番低くて12レベルですね。ゼロが18レベル、パウロが21レベルだったはずです」

 

「なら1階層限定ならばチームは組めそうですね。スライム狩りニキの講習は受けましたか?」

 

「ええ、受けましたわ。幸い私には前衛の素質が有るみたいで」

 

「お嬢様の盾の扱いは見事なのですよ。ヒムラー様はダンジョンには?」

 

「あいにくまだ仕事が山積みでね。早く俺達の中から代官に立候補する者が出てもよいのではないかな?」

 

「えっと今村の管理はダンジョン村が聖女ネキが、ココネ村の南部にある村が米の栽培に適しているから米村、東の村は大豆栽培に適しているから豆村でしたかしら? 米村には元騎士のグラッド様が、豆村はジャムおじが投票の結果決まったハズでしたね」

 

「ジャムおじは仕事を与えてないと永遠にアンパンマンの仲間達を作りそうだからな。まぁ村長としてそこそこ上手くできているらしいから問題は無いだろ。ただ3人だけじゃなくて他の開拓の村やココネ村含めて俺が指示を出さないと前例があまりないから動けないらしい。だからこうしてマニュアル作りに奔走しているってワケ、お嬢もよさそうな人材を見つけたら引っ張ってきてくれ」

 

「わかりましたわ……あら、美味しいサンドイッチですわね」

 

「ジャムおじがパンの改良にも取り組んでいまして、今は美味しい食パン作りを空いた時間に使っているらしいです」

 

「腕は確かなのだからパン作りに集中すれば最高の人材なのに……夢がアンパンマンミュージアムを作ることだからな」

 

「童心が忘れられないのですかね」

 

「いや、前世の息子が好きだったんだと。息子との思い出を無くしたくないからのめり込んでいるらしい。作り出したアンパンマンも大切に育てているからな」

 

「狂人ほど何かしらの秘めたる思いがあるのですかね?」

 

「いや、ガルパンおじさん達みたいに戦車マニアなだけの人も居るがな」

 

「失礼します。公爵閣下、化け狐の商人一行を捕らえましたのでどう対処するか裁量を伺いたく」

 

「わかった。とりあえず丁重に扱い、代表をここに連れてきてくれ」

 

「ここにですか?」

 

「パウロできるな」

 

「はっ! わかりました」

 

「お嬢とゼロは一応別室に……あ、ちっ、使えるメイドが居ないか」

 

「私でよければ」

 

「ゼロすまない、コボルト大好きの……コテハン付いてないなアイツは……バーゲストだ。確かバーゲストという女性がコボルトについて色々調べていたハズだから緊急掲示板でバーゲストを呼んでみるから屋敷に来たらコボルトと一緒にこちらに通せ」

 

「は! お嬢様ではこちらに」

 

「わかったわ」

 

「やれやれ、厄介ごとか? それとも奇貨か? ……とりあえず話してみないことには始まらんな」

 

 

 

 

 

 

 

 化け狐……魔物であるが高い社会性を持つ

 人間社会に寄生する形で暮らしており、商人の格好をして隠れ里などで作った野菜や布等を売り、生活している

 

 化けるという能力を持っており人間に化けることで商人をすることが許されていた

 

 豪商の中にも実はという事があり、普通の人間よりもよい暮らしをしていることもしばしば

 

 彼らは独自のネットワークを構築しており、そして化けていることがバレると人間から迫害されてきた歴史があった

 

 良くて財産の没収、悪ければ一族郎党死刑なんて事もあり、人間にバレないように慎重に生活していたのだが転生者の鑑定の魔法には敵わず看破されてしまったのだった

 

 ちなみに化け狐は5歳まで化ける事ができず、長くても30近くで亡くなるらしい

 

 なので早死にした商人は化け狐だったのではと言われたりする

 

 研究レポート 魔物研究班

 

 

 

 

 

 

 

 なぜバレた

 

 俺は行商人をしているフリックという化け狐だ

 

 今回辺鄙な片田舎に来たのは石鹸を安く仕入れるためと付近に新しくできた化け狐の集落の支援をするためだ

 

 化け狐の子供はどうしても5歳になるまでは人に化ける事ができないため一時的に身を隠す集落を作り、そこで子供を育てる

 

 俺の子供と妻もそこで暮らしている

 

 俺は行商人として父親の跡を継ぎ、仲間と共に5台の荷馬車に12匹の馬を引き連れられるほどに商人として成長していた

 

 化け狐の仲間達と共に今回の商売が上手く行けば更に裕福になれると盛り上がっていた

 

 盗賊等の襲撃も無く、関所に到着した俺達はヒムラー公爵領の関所を通過する時に事件が起きた

 

 関所に詰めていた若い商人が衛士に何か話したと思うと武装した兵士15名に取り囲まれた

 

「な、何をする! 我々はこの領に行商に来た者だぞ!」

 

「化け狐が! 姿はわかっているのだ! 大人しくしなければ命はないと思え!」

 

 そう言われて俺達は拘束されてしまった

 

 積み荷は没収され、牢屋に閉じ込められた俺達は絶望していた

 

「なぜバレたのだ。今までこんなことは無かったのに」

 

「大将……命があっても村に物資が届けられないと冬用に仕入れた毛布がないと子供らぁが」

 

「くっ! くそっ!」

 

 そんな感じに俺達が悲観的になっていたところに身なりの良い執事の様な男が牢屋の鍵を開けて中に入ってきた

 

「代表の者はいるか」

 

「……俺だ」

 

「領主様がお呼びだ」

 

「領主様が?」

 

「腕を出せ」

 

 縄で結ばれている腕を差し出すと男はナイフで縄を切った

 

「悪かったな。命の保証はする。場合によっては積み荷も戻ってくると思うぞ」

 

「ほ、本当か!」

 

「領主様次第だがな」

 

 俺は牢屋で汚れてしまったズボンを取り替えてもらい領主であるヒムラー公爵の屋敷に向かった

 

「ずいぶんと質素だな。公爵なのだろうに?」

 

「村人優先のお方だからな。最終的にはそこそこの屋敷になると思うが、今は仕えている者達が寝る場所と執務場、調理場くらいか?」

 

「それはどこで公爵は寝ているので?」

 

「執務室で寝ているよ。簡素なベッドが有るが気にしないでくれ」

 

「は、はぁ……」

 

「パウロです! 例の商人を連れて参りました」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

 屋敷の中も本当に最低限の部屋が……いや応接室が無いのを見るに最低限以下の木造の屋敷であった

 

 王都や大きな町豪商の方が良い家に住んでいるのではないかと思う

 

「悪かったね。いきなり捕まえたりしてしまって」

 

「閣下、我々はしがない行商人であり決して化け狐等では」

 

「あ、いやねぇ、ここの住民の大半は魔物か人か分かってしまうんだよね。君たちが化け狐という種族なのは分かっているの」

 

「っ! では私にどうしろと?」

 

「いやなに、化け狐でも普通に生活できる空間は欲しくは無いかな?」

 

「……どういうことですか?」

 

「我が領土は自由と能力主義がモットーでね。能力を伴い、敵対心が無ければ平民だろうが奴隷だろうが魔物だろうが魔族だろうが天使だろうが私は登用する。この村では行商人や行政の人員が不足していてね。お抱えの人員が欲しいのだよ」

 

「どうかな? 私に仕えては見ないか?」

 

「……閣下、お答え致しかねます。公爵閣下の話は理想的であり、現実的ではございません。もし私が化け狐だった場合魔族の尖兵と言われて迫害されてきた歴史が物語っています」

 

「まぁだろうな……お、来たか。入れ」

 

「失礼します」

 

 喋っているタイミングでノックがし、中にバーゲストとコボルトを入れる

 

 コボルトは俺に気がつくとグルグルと嘶き始めた

 

「バーゲスト! コイツ化け狐だ! 匂いが人間じゃない」

 

「……確かにそうだ! 公爵閣下お話というのは」

 

「仲裁と脅しとかそう言うのだ。商人のえっと名前は何かな」

 

「……フリックです。閣下」

 

「フリックが化け狐なのは私も知っているし関所でこの仲間達一行を捕まえてね。交渉材料として君たちを呼んだ」

 

「交渉?」

 

「フリック、もう君が化け狐なのはバレている。もう化けるのはよせ」

 

 コボルトを使役している者がいるのならばもう無理だ

 

 俺は諦めて変身を解いた

 

 ズボンからしっぽが飛び出て、狐の姿になる

 

「さて、では交渉といこう。我が領内には君達の仲間が追い出したコボルト達を数十名単位で使役している。使役といっても家族のように大切にしている者達が殆どだ。そんな彼らは君達が思っているよりも訓練やダンジョンで魔物を狩ることで急速に強くなっている」

 

「もし、コボルト達が復讐をしたいと言い出せば主人である彼女らも協力するだろう。そうなれば互いに結構な血が流れるとは思わないかね」

 

「……お前は前の集落の生き残りだったか」

 

「そうだ! 俺は家族を失った父も母も兄達も!」

 

「まぁここでコボルトの君が復讐をしてもどうしようも無いだろ。攻められたのは弱いからだ。これは自然の摂理だからどんなに理不尽でも受け入れるしかない」

 

「そんな! 公爵様はどちらの味方なのだ!」

 

「どちらでもない。我が領土に最善になるように動くだけだ……でだ、虐げられた化け狐の歴史を君達は飲み込みこちらに帰属する代わりに安全を私は保障する。なんなら居住も許そう。ただし全員俺が化け狐の一団をテイムさせてもらう。飲まなければ双方の血が流れると思ってくれ」

 

「……私だけでは決めかねます」

 

「いや、今は君が代表なのだから君がここで決めろ……そうだな。もう一つ良い条件を出そう。進化して短命の寿命を何とかしたくはないか?」

 

「な!?」

 

「私に仕えれば短命という枷を取り外そう……どうだ?」

 

 俺は凄く悩んだ

 

 確かに長くても30歳という寿命は抗いたい

 

 ここで条件を飲まないと人の手を借りたコボルト達が村をいつ襲撃するかわからない

 

 俺達の身も商品もどうなるかわからない

 

 交渉と言う名の脅しだ

 

 なぜ村の代表でもない俺がこんな役回りに

 

 しかし決めなければ……決めなければ息子や嫁達が……くぅぅそ! くそったれ! 

 

「公爵閣下に忠誠を誓います」

 

「よろしい。ではテイム」

 

 公爵閣下と繋がるような感覚を覚えた

 

 これで俺は公爵閣下を傷つけることや嘘をつくことができない

 

「テイム完了だ。バーゲストにコボルト君すまなかった君達を出汁にしてしまって」

 

「私は良いですがミカの気持ちはどうするのですか」

 

「……ミカ君だったか。ご主人は好きかい?」

 

「大好き!」

 

「ご主人が危険な目に遭うのと自身の復讐心どちらが高い?」

 

「うーん、バーゲストが危険な目に遭うのは嫌」

 

「君は偉い子だ。自身の気持ちに打ち勝ったのだから! 強くなれミカ! 強くなれば嫌いな奴も頭を下げるからな」

 

「強く……強くなる!」

 

 

 

 

 

 

 バーゲストとミカを下がらせた俺は、パウロとフリックを連れて牢屋に向かった

 

 フリックが先程の事を全て話し、集落のために公爵の条件を飲んでテイムされたことを話した

 

 フリックの仲間達は涙を流すフリックの葛藤を感じとりフリックを慰めると同時に俺にテイムを次々とされていった

 

「テイムしているとお前達の居場所もだいたい分かるからな。これで逃げられないと思ってくれ……ちなみに行商の目的は何だ?」

 

「石鹸を購入することです。ご主人様」

 

「よし、じゃあ普通に行商して良いぞ。荷物や荷馬車も返却しよう」

 

「……よろしいので?」

 

「無いと君達が困るだろ。行商が終わり集落に帰ったら今回の事を集落と相談してヒムラー領になるべく移住させろ。悪いようにはしない」

 

 そう俺は言った

 

 

 

 

 

 行商の目的は達成したが商人としてのプライドと化け狐のプライド両方をへし折られた俺達はすぐに化け狐の集落に向けて旅立つと、数日で化け狐の集落に到着した

 

 帰りを待っていた妻や幼い息子達と旅の話をしたいのをグッと堪えて長老の屋敷に集まり、ヒムラー公爵の話を報告した

 

「時代の流れかのぉ……化け狐の秩序としてお主達に同情したい気持ちはあるが、村を守る為にお主らとお主ら家族を集落からの追放処分と致す……すまない」

 

「いえ、これは仕方がないことです。仕方がないことなのです」

 

 自分に言い聞かせるように長老に話すと俺達は旅の支度を始めるのだった

 

 幼い息子達を連れてヒムラー領へ……

 

 

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