「食料の売買はやはり大きいだなも」
「ええ、なかなか大きな収益になりましたね」
暗い室内で金貨や銀貨を数える2人の人物がいた
たぬきちニキとちひろネキである
たぬきちニキはたぬきの獣人であり、ちひろネキは茶髪をまとめた女性であった
「領内の貨幣は足りているだなも?」
「ええ、しっかりといきわたっています」
「それはよかったんだも、金がないと何も始まらないんだもの」
「それでは領内の主要な産業をまとめてみました」
「おお助かるんだなも」
たぬきちニキは渡された資料を読む
輸出品は食料が金額が多く、次点が石鹸、次がダンジョン産の革製品だった
レンガ、岩塩、農具、磁器も輸出品として売り出されていた
輸入品で多いのは魚系や家畜類、服類や茶葉、金属等
野菜や果実類も輸入していたが、緑の革命家ニキ達の尽力で大豊作と他国の戦争特需で大幅な黒字決算となる
領内の産業規模だとダンジョンによる関連利益と農作物系がほぼ同等
食料加工業や石鹸製造、磁器製造と続いていく
「うむ、うむ。サービス業はどうだなも?」
「行商人達が泊まる場所として賑わっていますが、利益はそこまでですね。建設業は後々民間の会社にした方が良いかと」
「今の家だと3人が生活するのがやっとでお風呂も無いんだなも(シャワーはある)。キッチンも魔導式にしたいとか色々要望が多数あるんだなも」
「一番成長しそうなのは魔道具を製造している部門ですかね。魔法陣式はどうしてもそこそこの大きさになってしまうので魔石用の魔道具は高い需要が外にもありますし、魔道具の武器は外の領土にも高く売れますよ」
「他の領土に武器を輸出して大丈夫だなも? 内戦になった場合非常に厄介になのではないんだなも?」
「我々は旧式の魔道具を売り、その金で新しい魔道具を作れば良いのですよ。技術格差を広げれば内乱で有利になるでしょう」
「まぁそうだなもな。あとは教育部門の設置と高度な現地人材の育成だなもな」
「ええ、今は俺達が経済を牽引していますが大多数は現地民であることには変わりませんし、その為には高度な人材や使える人材が増えた方が結果的に内需が拡大しますからね」
「内需が拡大すれば回るお金も多くなり、我がたぬきち商会もお零れがもらえるんだなも」
「私のアイドル商会にもね」
「しかし上手くやったなもねちひろネキ、この領地には無かった娼館を真っ先に建てるとは」
「ええ、性欲は抑えるのは難しいですからね。スッキリさせることで犯罪の抑制にもなりますし」
「いや、上手くやったのは魔物の娼婦を多数雇うことで人の人件費を抑えた点だなも。一時期爆発的に増えたピクシーを買い取り、それを育ててハイピクシーにしたり、ドライアドを生け捕りにし、教育して娼婦にしたのは流石としか言えないんだなも」
「身一つで企業したので初期投資は大皇帝に借りたり、育成のためにダンジョンに連日潜って稼ぎましたが、ピクシー20人くらいなら食料も人間換算で2人分で済みましたからね。ハイピクシーになる頃に娼館の認可が降りて良かったですよ」
「それが今じゃ現地民5人にハイピクシー20人にドライアド10人を従える大娼館の主だもの。並みの才覚じゃあ無理だなも」
「行商人の増加は娼館の利益に繋がったので良かったですわ。スライム製のコンドームが無ければ全員孕んでいたんでしょうがね」
「ここだけの話1日どれくらいの稼ぎなんだなも?」
「200$ちょっとですよ。従業員の給料や諸経費を引くと50$くらいの利益ですね」
「それでも1ヵ月1500$は並みの行商人でも出せない額だなも」
「そう言うたぬきちさんは手広くやっているじゃないですか。たぬきち商店……他の商店との違いはレストランが併設されていることですか?」
「喫茶店擬きだもの。お茶も麦茶とかしか出せないけれど買い物と食事が一緒にできるのは前世のコンビニカフェを彷彿とするんだなも。魔道具を俺達割引かつ大量に仕入れることで高い利率と現地民の雇用を守っているんだなも……目指すはデパートや複合商業施設だなも」
「家電の代わりに魔道具が並べば見映えも良いですし、レストランを建物の中に複数個入れればそれだけでテナント料も入りますからね」
「うはうはだなも! ……とと、その為には人口を増やす必要があるんだなも。というか娼館で俺達には生でやれるって本当だなも?」
「ええ、転生者は子供もSR確定ですからね。魔物の血と勇者のハーフ……強力な子供が増えそうじゃありませんか?」
「ちなみに俺達どれくらい来てるの?」
「それは個人情報だから言えないなぁ~まぁ勇者は下の方も凄くて抜かずに10発とか普通よ」
「バイアグラ無しにそれは凄いんだなも」
「おかげで今4人が妊娠中で戦線離脱しているんだよねぇ……まぁそういう子は裏方に回ってもらうけど」
「なるほどなるほど」
「今度男婦も雇おうかしら。いやでも店がシンデレラだからなぁ」
「下の話はそれくらいにしてっと、紙の値段の高騰問題をなんとかしないとだなも」
「黒板を使ったりして消費は抑えているけど難しいわね。錬金術師達が4層の壁の木材から紙を作る実験をしているらしいけど」
「ダンジョンは宝の宝庫だなもなぁ。他のダンジョンはこうはいかないのかだなも?」
「大きなダンジョンはここと似たり寄ったりらしいけど、縮小、軽量化ができないから採算が合わないらしいわ。魔石も1$の固定レートを国が決めているから出費を抑えたい貴族も同調して……そんなことをするから儲けが少ないのに命がけのダンジョンに潜る冒険者が減るのに……うちみたいに質による変動制の方が良いのにね」
「まぁ魔石も質が良ければ再チャージしたときの劣化や耐久性が高いことがわかっているんだなも……魔法使いは魔石のチャージで生計を立てている人も居るんだとか……」
「そうなるとやはり娯楽開発ニキの魔法陣は凄いんですね。MPが有れば魔法使いでなくても魔法を使えるのは」
「そうだなもな。量産性と耐久性が良くなれば領内限定で主力になれるポテンシャルはあるんだなも」
「……さてと、今週のお金もピッタリです」
「こっちも書類整理が終わったんだなも。どう? 1杯いかないかだなも?」
「良いですね。私豚貴族行きたいです」
「ステーキ居酒屋のあそこか。お金はこっちが持つんだなも」
「え! じゃあゴチになります!」
将来2人は結婚して商会も合併し、ヒムラー領でも屈指の商会に成長するのだがまだこの時はヤタガラスの同僚兼ライバルであり、飲み友であった
俺の名前はメルル・グリム……フレデリック王国の騎士だ
約1年前上からの命令でヒムラー・フレデリック王子の部下に移動となり、そのままヒムラー王子は臣籍降下し、公爵となり、王国でも辺境の村4つしかない場所を与えられ、領地の広さ以外は利点が無く、更に大きなダンジョンによるスタンピードで遅々として開拓が進んでいない場所であった
そんな場所に騎士であり真面目に行動していた自分がなぜこのような懲罰的な人事をされなければならないのかと連日家族の下で嘆いた
ヒムラー公爵は移民と共に領地改革を実行し、移民の殆どが魔法使いという凄まじい効率で開拓が進められていた
メルル以下騎士達は村は自分達の領土に任命されると思っていたがそんなことは無くヒムラー公爵は直轄領として田畑を広げ、川や道を整理していった
我々騎士達は連日書類仕事をさせられ不満が蓄積していった
そして数ヵ月前に人造人間が白昼堂々と村を歩きだしたり、ハイピクシー、コボルトを人のように扱い出したことで俺の堪忍袋が切れた
テイマーはそもそも竜騎士という例外を除けば魔物と心を通わせる下賎な輩であり、錬金術師は平和な世を乱す悪であり、魔物達は魔族の尖兵であると公爵に忠言したところ受け入れること無く出ていっても良いと言われた
その瞬間にこの人物は私が忠節を捧げるに値しないと確信した
仲間の騎士達もこの話をすると憤り、断罪されるべき悪だと断定した
そこからは書類仕事のサボタージュ等をおこなったり行商人に異端審問官に密告書を渡した(行商人の俺達はそれを燃やして握り潰したが)りしながら抵抗を試みたが、収穫時期が終わった頃、公爵はダンジョン4層の間引きを命令してきた
冒険者なるこれまた下賎な輩達が間引きを委託されていたが、使える冒険者がその日は居ないとのことで騎士達の実力を測ることもかねて間引きを行うためにダンジョンに潜った
1層、2層のゴブリンや洞窟コウモリを倒し、スライムを避けながら進み、3層に侵入する
広い空間であり、外のように明るかった
「どうせここもゴブリンとかだろう」
と仲間の1人が言ったが、俺達はそこで地獄を見た
首狩りウサギだ
別名騎士殺しと呼ばれ甲冑と兜の隙間の首の部分を狙って攻撃してくるからだ
ただのウサギだと油断した仲間がまず殺られた
喉仏を切り裂かれて出血しながら動かなくなった
俺達はウサギを囲んで袋叩きにして肉片にして仇を討ったが、仲間を弔う為引き返すか2人で悩んでいた時に遠くに居る何かと目が合った
5メートルもの巨体
蛇のしっぽ
鳥の頭をもつ化け物コカトリス
クエエエと叫ぶとこっちに向かって突っ込んできた
俺ともう一人は慌てて盾を構えて迎撃するが体当たりで俺と共に盾を構えた隣の奴が吹き飛ばされた
甲冑は打撃等の物理攻撃に強いが一定以上の打撃は衝撃が内部に伝わり甲冑内部で衝撃をもろに受けることになる
「いぎぁぁぁぁぁ! う、腕がぁぁぁ腕がぁぉ」
盾を持っていた腕が甲冑ごとベコベコに潰れていており、腕だった肉片が飛び散っていた
「馬鹿! 叫ぶな!」
「ベプ」
べちゃりとコカトリスが倒れていた仲間を踏みつけて潰した
甲冑は凹み、そこから胸部の内臓や肉、血液が周囲に飛び散る
「え?」
あっという間に公爵の愚痴を言い合い、同じ釜の飯を食い合っていた仲間を失った
俺に勇気が有ればここで剣を抜いて立ち向かえたのだろうが……仲間の呆気ない最期に呆然としてしまった
ダンジョンの……しかも戦闘中に呆然としてしまったら辿る道はただ一つ
俺が最期に見たのはコカトリスが鉤爪を突き立てながら跳び蹴りをしてくる姿だった
ぐちゃり
「ねぇなんか騎士っぽい人達が死んでいるよラトル」
「え? マジ?」
「ほら!」
「うわ、マジだ。さっき倒したバシリスクに殺られたんかな?」
「コイツ見たことある。いっつも偉そうにして私達を魔物だとかラトルのことを下賎なテイマーとか言っていた3人の騎士達だよ」
「あー、大皇帝の部下の人達か……えぇ、こんな雑魚に殺られるの? あのコカトリス20レベルだったが」
「私達が強いだけじゃないの?」
「あー、確かにそうかもね……どうしようかなぁ面倒な物を見つけちゃったな」
「領主様に報告した方が良いんじゃない?」
「大ちゃんの言うとおりだし、一応全部持っていくか……うえ、血だらけじゃんこいつら。内臓も飛び出てるし……縮小、軽量化っと……このビンに詰めてっと……うわ、触りたくねぇ」
「私こいつら嫌い!」
「私も!」
「そうは言ってもなぁ……はぁ、大ちゃん月ちゃん、今日は早いけど戻るか」
「「はーい!」」
ヒムラー宅にて
「あー、死んだか。まぁ統治に邪魔だったし。嫌われものとしての役割は全うしたかな?」
「スッゲー淡白だな。一応部下だろこいつら」
ヒムラーはラトルこと大妖精使いニキから部下の死骸を受け取り、少しばかりの謝礼を支払った
「こいつらが高圧的に振る舞うことで転生者と現地民の村人達に共通の敵にして連帯感を生み出すのに使っていた。コイツらダンジョンを冒険者でも行ける簡単な場所と誤認してたからな。いつか死ぬと思ったというか異端審問官に密告しようとしていたから合法的に処分した」
「えげつねぇ」
「あ、転生者は仲間だからこんなことはしないぞ」
「説得力ゼロだぞ」
「あー、コイツらの実家にダンジョンの間引き中に戦死したって報告して共同墓地に少しだけ良い墓石を設置して、肉はホムンクルスの素材に使うか」
「墓に埋めないのか?」
「ゴーストになられても嫌だし、錬金釜に魂まで溶かしてもらった方が良いだろ」
「まぁ良いわ。空いた騎士の座はどうするんだ?」
「なんだ大妖精使いニキ後釜になりたいのか?」
「嫌だね」
「あらバッサリ」
「大皇帝の部下になりたいんじゃなくてヤタガラスで出世してから部下になる方が楽しそうだからな。横入りで出世したくない」
「あー、そんな感じか」
「元自の人達を入れとけよ。前線指揮官だろ騎士って」
「この際名誉職にしておくか。騎士は……近代の軍の方が格好いいからな。騎士は空座ということで」
「まぁそれで良いなら」
「じゃあ駄賃ついでに錬金術師連中にその3体の死骸を渡してきてよ」
「ういー!」
この日ホムンクルスの実験は成功し、6人の女性ホムンクルスが誕生し、開拓に従事する俺達の性癖を詰め込んだ高性能ホムンクルス(現地民5:俺達の血肉5)が誕生し、彼らに配られるのだった
俺達が人体錬成という最大の禁忌の一線を越えた瞬間だった