家畜とは個人所有ではなく集団で管理し、人の生活に合わせて品種改良された動物のことを言う
ヒムラー領での家畜は鶏と馬であった
両方ともに数も少なく、鶏は半年で卵を産むようになり、比較的短期間で増やすことができるが、大型動物は1年1産が基本でありなかなか増やすことができない
その為開墾や田畑を耕したりする時にゴーレムやトラクターを使い、馬や牛の手を借りなくても高い生産性を維持しようというのが魔法文明におけるゴーレムの発展であり、転生前の日本、いや元の世界では重機が発達した要因とも言える
その為ゴーレムが比較的発展しているヒムラー領に大型の家畜の導入は見送られてきた経緯がある
今では試作のトラクターの運用も始まったので余計に大型家畜の需要は落ち込んでいた
しかし、豚や鶏といった大型とは言えない中型や小型の家畜の需要はたかまっていた
大まかな理由として2つあげられる
1つは食料として、ダンジョンや他の領土に頼らない肉の確保は必須であった
2つ目は糞尿であり、肥料に使えるからである
肥料の観点だけで言うと牛糞も使いたいのであるが、牛は他の領土では貴重な労働力とされることが多くなかなか市場に出回らない
フレデリック王国よりも南部諸藩連合からの方が購入できるかもしれなかった
牛の話は置いておいて家畜の話に戻すと現在3種類の家畜が牧場にて飼育されている
馬、豚、鶏であり、豚はつい最近耳無し豚の家畜化が成功したためだった
魔族の品種改良の技術と、約2年魔物を研究してきた魔物研究班の成果であり、次は肉質の改良に取りかかっていた
一方最初から増やすことを目的としていた鶏も順調に増えており、養鶏場と呼べる規模まで拡張されていた
が、依然として65%がダンジョン産の肉に頼っている現状
それを打開するためにある俺達が立ち上がった
「ホムンクルスの人造生命体の技術を流用してチョコボライダーになりたいなー……じゃなかった! 鶏を大きくした様な鳥を作ることにより食料問題を解決させよう!」
というコテハン名異端者ニキという人造生物の第一人者のニキであった
彼は錬金術師でありながら魔物研究班にも所属しており、夢のチョコボライダーになるためにチョコボの様な生物が存在しないか調べたが、既に絶滅していることを知り、錬金術の力で蘇らせようと計画していた
その為に求められるのは高い繁殖能力、何でも食べる雑食性、可食部の多さ、良質な毛皮などであった
知能は馬よりやや劣る程度有れば良く、頭が良すぎると家畜には向かないためである
彼は失敗したホムンクルスコアを使い錬成を繰り返すこと58回目、満足の行く生物を誕生させるに至る
コロコロ鳥とサンダーバードを素材に多用したことにより魔法が使えることを期待されたがそんなことはなく、チョコボというよりはモンハンのガーグァに近く、周囲からの多数の突っ込みからガーボと名付けられた
目立つのは大きさで高さが1.8メートルあり、ずんぐりとした胴体に鳥の脚が生えていた
雑食で肉でも魚でも穀物でも野菜でも何でも食べ、成長すると100キロにもなる
荷馬代わりにも使える汎用性もあったが、馬に比べると馬力が低く、2足歩行でバランスが悪く、重すぎると脚を痛めるという欠点と馬より速度が出ないなどがあったため、荷馬扱いするのは馬が買えない人用とされた
異端者ニキは10匹のガーボを産み出し、牧場に繁殖を依頼
卵生で1週間に1個の卵を産み、1年で成体となる成長の早さにより世代が進んでいくこととなる
ガーボは人造家畜として大成功の部類であり、ホムンクルス並みに錬金術の功績として語られることとなる
フレデリック王国 王都 王城
フレデリック王国の国王ジョーダン3世は悩んでいた
息子達についてだ
現在ジョーダン3世の子供は認知している者だけでも18人おり、10名が男性で、王位継承権を持っている
そして問題になったのが王位継承権1位の長男が無能なのであるが、生存能力だけは高く、排除しようとしても察知能力で毒を防ぎ、大貴族の家臣が付いたことにより貴族の言いなりになってしまっている
私としては次男に継いで欲しいのだが、次男は有能であるが貴族達からは嫌われている
親衛隊を作り軍に次ぐ武力を手にしているので早々に排除ということも無いだろう
次男は未来を見据えて改革を提言してくるが大臣達が防ぐと政治闘争を繰り広げていて頭が痛い
大臣達の言い分もわかるからだ
王たる自分は中立の立場で良いと思った政策を採用してバランスを取っておるが……次男はその手間も惜しいと感じているのだろう
三男は傑出した軍事的才能があり、若いながらも将軍として軍から人気がある
防衛任務も不利とされた戦場を何度も覆し、軍事的才能は初代フレデリック様にも通ずるとされていた
彼が死ぬと国防に大穴が空くため他の兄弟も手出しできないが、彼は外交音痴だから国王にはしたくはない
四男はカリスマがあり、端整な顔立ちと美声で宮廷貴族や官僚達から人気がある
彼が長男であれば全てが纏まったと思うゆえに惜しい
唯一四男には他の兄達も甘く、心を開いている節がある
そして五男は自ら炊き出しを行ったりしていることで民衆から人気がある
高い人気があるがゆえに暗殺されないで生きることができている
彼が死ねば暗殺の犯人が露呈すれば王になっても民衆が付いてこないからだ
長男が最低限の調停能力さえ有れば良かった……いや、もっと早いうちに処分できていれば良かったのだが……
私は問題を先送りにし、書類に目を通していく
「ほお、ヒムラーの奴上手くやっているようだな」
宮廷内では風変わり(変人)と言われていたが、安い石鹸を開発したりと上手くやっているらしい
ダンジョンの間引きで直臣が3名も亡くなったらしいが、住民を上手く使ってさほど混乱を起こさなかったらしい
「それにしても王都にもたらされた穀物の量だな。開拓村含め7村の収穫量にしては多い……何かしているのだろうか? 優秀な内政官でもいるのか? ……疑問は尽きぬが私から手を離れているからな」
「周辺領地の評判は可もなく不可もなくという感じか。社交パーティーをする余裕も無いと見られているな」
「……まぁどうせ私が死ねば理由をつけられてヒムラーは粛清されるだろう……しかし私の直感的部分に彼が生き残る様な気がするのだが……なぜだ」
ジョーダンの苦悩は続いていく
僕の名前はベル
ヒムラー領に住む一般的な村人だ
いや、一般的と言えば違うか
僕は4層に潜る冒険者だ
「ベル剥ぎ取りを頼む、レン、タップ周囲を警戒」
「「はい!」」
リーダーの凄いマッチョでナイスガイのレオンをリーダーに、ハイピクシーのレン、化け狐のタップと4人パーティーでダンジョンに潜っていた
タップが化け狐と知った時は驚いたが、レオンにテイムされていることと、俊敏な動きと炎の細かい魔法で撹乱しながらの高速アタッカーとしてうちのチームに居なくてはならない存在だ
ハイピクシーのレンは元々ピクシーだったのだがレオンが育ててハイピクシーに進化したのでレオンにベッタリだ
治癒と雷の魔法で援護してくれる
僕はサポーターとして荷物を持ったり弓で援護したり、食事を作ったり、解体をしたりと雑用を中心にやっていたが、いざというときは短剣でレオンの援護をすることもある
最初の頃はダンジョンに潜るのは怖かったが、タップが加入する前から3人でダンジョンに潜り続けていくうちに怖くなくなり、ヤタガラスで許可が出ている4階層まで行く上澄みの冒険者として活動することができている
ヤタガラスではレベルを測ることができるとのことでレオンは49、レンは45、僕が44、タップが39だった
レオンはゴールドランクの冒険者で、僕もシルバーランクとして恩恵を受け取っていた
例えば採取に使っているこの短剣には特殊な合金を使っていて刃こぼれしにくいかつ、手入れをすれば長く使える優れものだし、ファイヤーボールのカードで魔法を使うこともできた
まぁ魔法カードは高いし、使うと劣化するからここぞという時にしか使わないが
「よし、剥げたよ」
「ナイスベル!」
「いつ見てもベルの解体は素早くて正確だな。行商人の親父達も感心してたぞ」
「えへへ、レオン縮小と軽量化を頼むよ」
「おう」
レオンが手を近づけるとみるみる素材が小さく、軽くなっていった
素材を鞄にしまい、次の獲物を探す
「どうするレオン、サンダーバードはギルドが在庫が少ないから欲しいって言ってたけど。もしくはドライアドの生け捕りを狙う?」
「ベル! レオンがドライアドに浮気したらどうするの!」
「いやいや、レオンがレンにべったりなのは周知な事実だろ。束縛する女は嫌われるぞ~」
「むきー! タップ! なんですとー!」
「そうだぞレン、レオンはお前1人が相手できるほど性欲弱くないぞー、この前娼館行ったとき」
「ベル、内緒だって言ったじゃないか」
「え? レオン娼館行ったの!? 私だけじゃ足りないの!」
「……だって3回でレンへばるじゃん」
そんなことを喋りながらも周囲の警戒は怠らない
「ストップ、オリーブオードリーの巣だ。いつもの感じでいくぞ」
「「「了解」」」
レオンがタワーシールドを構えて巣の前に出る
グワッとオリーブオードリーが現れてシールドを噛みつこうとするが、タワーシールドに弾かれて怯む
その瞬間タップが伸びた茎の部分を剣で切断する
ごろんとオリーブオードリーの頭が転がる
「ナイスだタップ」
「へへん、どんなもんよ……お? おお? なんだムズムズする」
タップが四つん這いになると1本だったしっぽが2本に増えた
「タップ、しっぽが増えたぞ」
もふもふのタップの自慢のしっぽが2本に増えていた
「お? おお!? ほ、本当だ! 長老が昔言っていた二尾狐って奴か? お、俺二尾狐になった? てことか?」
「おめでとうタップ。進化だな」
「進化……これが」
「良かったじゃないタップ! 進化したら強くなれるわよ! 私みたいに!」
「お、おお! 確かに力が湧いてくる! これが進化か!」
「よし、じゃあ今日はこれで帰ろう。タップの進化した祝いをしないとな」
「「おー!!」」
「やべぇ、感動して涙が……」
俺達はなかなか良いチームだ
これからもレオンを中心に強くなっていっていっぱい稼がないと!