ファンタジー俺達   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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この世界の音楽 ペドロ・ウッド卿 異端審問官

 中世っぽいナーロッパであるこの世界だと音楽も今風ではなく昔の聖歌隊の集団合唱やオリジナルの詩曲を作って歌う吟遊詩人、呪歌を歌い傷を癒したり、呪いを与えて敵を混乱させたりする職種の者も居た

 

 ……で、転生者である俺達の中にも音楽家の俺達が存在した

 

 その中心人物は楽師ニキとマイケルニキ、アイドルネキである

 

 楽師ニキはこの世界にはアニソンが無いならば自分で広めれば良くね? と考えており俺達の活躍を英雄譚っぽく歌う事を酒場でよくしている

 

 自作の曲は微妙だが原曲のコピーが上手く、懐かしの曲が聞きたいといった要望により皇帝ラジオの1コーナーを任されていたりする

 

 マイケルニキは自分をマイケル○ャク○ンと思っている人物であるが外人の転生者は居ない為、マイケルニキが何者であるかよくわかっていない

 

 ただダンスと歌唱力は本物なので楽師ニキとライブを開いて盛り上げている

 

 最後にもう一人自称アイドルのアイドルネキ

 

 前世は売れない地下アイドルであったが、顔が良いことと、声が良かった為にこの世界ではトップアイドルを取ろうと奮闘しているネキである

 

 コイツは作曲の才能もあった為にギター擬きを弾き語りして酒場を中心に音楽の布教活動をしていた

 

 そんな3人が今回手を組みヒムラー領にて大規模ライブを開く許可を大皇帝から貰い、セッティングを始めていた

 

 この転生者3人は今回のライブを機に音楽や楽器を習う人が増えれば良いとも考えており、大皇帝も(安全な)娯楽が増えることは歓迎していた

 

 夜に行うためにライトの魔法で照明の代わりにしたり、3人が執念で作り上げたマイクとスピーカー、アンプといった拡声機をフルに使った500人が入れる野外コンサート会場も用意した

 

 このライブに商人達も乗り、屋台を出してお祭りの雰囲気が出始めていた

 

 

 

 

 

 3日間の設営が終わり、ライブが始まる

 

「良いか、俺達の働きで今後の音楽の行方が決まる! ハデに盛り上げるぞ」

 

「「おう!」」

 

 3人及び楽器担当の俺達が最終確認を行い、ステージに上がる

 

「ワン・ツー・ワン・ツー・せーの!」

 

 マイケルニキにライトが当たりキレッキレのダンスが始まる

 

 ポップ・ミュージックとも呼ばれるそれはアメリカやイギリスで流行り、世界的な普及をしてきた偉大なる音楽である

 

 マイケルニキはマイケルジ○クソ○の音楽だけでなく、様々なポップ・ミュージックに精通しておりJ-POPやK-POPも詳しく、音楽の普及という目的と俺達の中に眠る芸術性を呼び起こす全5曲の音楽を歌い、踊りきった

 

 勿論英語や日本語、韓国語等この世界の言語ではないため、こちらの世界の言語に合わせた言葉になるが、現地民や魔族、魔物含めて彼の音楽の完成度の高さに大興奮

 

 そしてアイドルネキにバトンを託して後半戦が始まる

 

 後半戦で特筆すべきは楽師ニキが同じ音質の音楽の提供を目的とした手回しオルガンを使い、アイドルネキがチョイスした歌いやすいかつ、耳に残りやすい曲をチョイス

 

 5曲中2曲のみであったがハンドルを手回しすることで音楽が流れるという技術は革新的であった

 

 勿論一定の速度でハンドルを回さなければならない等の技術は必要だったが、多くの俺達が過去の電子音楽を作るきっかけとなる

 

 ライブは500人の席しかない中、多くの人々が訪れ、立ち見で会場を埋め尽くした

 

 アイドルネキが歌うに合わせて仕込まれたオタクの俺達がペンライト擬きでオタ芸を披露し、ライブが終わると全種族が拍手と喝采をあげライブは大成功で終わる

 

 これを機に3ヶ月に1度音楽祭が開かれることとなり、妖精達の歌う妖精合唱、コボルト達のダンス等の新たな文化が生まれていくことともなる

 

 

 

 

 

 

 

「隣の領土の発展が目覚ましいな」

 

「その様ですなペドロ・ウッド卿」

 

 南部諸藩連合のウッド領領主ペドロは行商人に自国の兵士を護衛として送り出し、情報収集を行っていた

 

 ヒムラー領の東にあるフレデリック王国のヘンリー男爵とは婚姻関係を結んでおり、相互不可侵の間柄だったため、ヘンリー男爵の領経由で行商人を送り込むとフレデリック王国への通過が可能となっていた

 

 ヘンリー男爵も同様の方法で南部諸藩連合の情報を集めていたのでお互い様であるが

 

 2年も経たずに穀物の収入を跳ね上げ、魔物のテイムをして人口以上に力を蓄えている彼らをペドロは脅威に感じていた

 

「今はまだ我が領土の方が人口が多いが、そのうち人口を上回るかもしれん……早めに手を打つ必要がある」

 

「その為に私を?」

 

「そうだ。レベル審問官」

 

 レベル審問官……ウッド領の神官であり、異端審問官である彼は魔族の尖兵である魔物を多く抱えるヒムラー領を警戒していた人物であり、異端審問官は人類領内を自由に移動する権限が与えられていた

 

 もしレベル審問官が異端と判断した場合ペドロ卿は異端狩りとして正当な権利を持って侵攻することができた

 

 それどころか王国内部からの離反者を南部諸藩連合に組み込むことも可能と考えていた

 

 そうなれば南部諸藩連合においてペドロの地位と影響力は上がる

 

 ゆくゆくはフレデリック王国の一部を切り崩し、自領にしたいという野望を持つ人物でもあった

 

「護衛はこちらから付けるか?」

 

「いえ、あくまでペドロ卿の尖兵ではなく神官としての異端審問官で行きますので護衛は神官騎士を付けます」

 

「そうか。今年は冷害の発生の可能性も高い。我が領土を餓えさせない為にも頼むぞレベル」

 

「お任せあれ」

 

 地域によっては異端審問官は領主に買収され、この様に都合の良いように操られることも少なくなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なかなか長い旅になりましたね」

 

「ヘンリー男爵領を経由しての旅路になりましたから10日もかかりましたね」

 

「周辺の諸侯からヒムラー領主についての噂を聞きましたが……どうやら相当な変人らしいな」

 

「王族ながら降格を望み、辺境で領主になることを望み、そして他の領主との社交パーティーも欠席する。商人達からの評価は良く、社交パーティーに出れないくらい困窮している様子はない……か。確かに変人ですね」

 

「レベル審問官、そろそろ関所になります」

 

「うむ、さてどのような領土なのだ? ヒムラー公爵領は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 関所にて異端審問官とその一行であると身分証を提示すると比較的直ぐに通過が許可され、今夜は領主の屋敷にて歓迎の宴をするから領主の屋敷に来て欲しいと伝えられた

 

 兵士は成人して少したった幼い者が指揮官をしているらしく、軍事力はたかが知れているかもしれない

 

 領内に入り、少しすると村に到着した

 

「……そこらをピクシーやコボルト達が歩いているな」

 

「一応テイムされているらしいですが……多いですね」

 

「少し話を聞いてみましょうか。皆さんも聞き込みをお願いします」

 

「わかりました」

 

 馬車から降り、コボルトと仲良く歩く女性に声をかけた

 

「失礼婦人、ずいぶんとコボルトと仲良く歩いているので不思議に思い声をかけさせて貰いました」

 

「あ、神官さんですか? この領土だと初めて見ました」

 

「おや? この領土には神官が居ないのですか?」

 

「神官の代わりをしている治癒師の方は居ますが、辺境なので神官が居ないのですよ」

 

「おやそうですか。婦人、そのコボルトは婦人がテイムしているので?」

 

「ええ、ミカは私の家族でね。このお腹の子供もこの子の子なのですよ」

 

「……はい? 今なんと?」

 

「ですからこの子の子供がお腹の中に居ます」

 

(魔物を孕むだと!? それを愛らしそうにするとか正気かこの女)

 

「そ、そうですか。それはそれは……領主はこの事を知っているので?」

 

「ええ、知っていますよ。子供を作ることを推奨していますし」

 

「そ、そうですか……他の者にも色々聞いてみましょうか。ありがとう婦人」

 

「あ、もし色々な人に話を聞きたいならヤタガラスという場所に行くと良いでしょう。色々な人が出入りしていますし」

 

「ありがとう婦人」

 

 レベルは他にも通りかかった者やヤタガラスというギルドにて話を聞いていく

 

 曰く領主は素晴らしい方で開明的かつ領内で絶大な支持を獲得していること

 

 曰く魔物はこの領土では人間と同じように生活しており、最初は怖がっていたが、村を豊かにした原動力であるため、今は良きパートナーであること

 

 曰く娼館では魔物専門店があったり、交配することを変に思う人物は居ないとのこと……

 

 そしてトドメは

 

「僕アンパンマン!」

 

「な、なんだお前は!」

 

 パンを配る人造生命体が普通にそこらを歩いているではないか

 

「僕食パンマン」

 

「僕フランスパンマン」

 

「僕クロワッサンマン」

 

「私メロンパンマン」

 

「サンフランシスコサワーブレッドマンでござる」

 

「「「「おじさん! パンはいかが!」」」」

 

「ひ、ひぇぇぇ!」

 

 私はとんでもない場所に来てしまったかもしれない

 

「お前達、この領はヤバい」

 

「レベルさん、確かにおかしいですねこの領は」

 

「錬金術を推奨し、禁術の開発も盛ん……なぜ今までこの領が放置されてきたのか不思議なくらいです」

 

「どうします? 直ぐにでもこの領を発ちペドロ卿に知らせた方が良いのでは?」

 

「……2名を先行してペドロ卿に知らせる為に使わせる。1名は関所からヘンリー男爵にも知らせろ。もう1名は森を突っ切り直接ペドロ卿にこの事を伝えてくれ」

 

「「は!」」

 

「残りはヒムラー公爵に面会をするぞ。異端審問官としてこの異常な領土を正さなければならない」

 

「しかし、ヒムラー公爵はこの光景を推奨していると聞きますが」

 

「ペドロ卿の配下ではなく1神官としてこれ程酷いのは見過ごすことができん」

 

「レベル審問官……」

 

「ヒムラー公爵を正す。皆良いな」

 

「「「は!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒムラー公爵の家は質素であった

 

 それこそペドロ卿の家の3分の1程であり、ヘンリー男爵の館と比べても小さく、とても公爵という高い地位に居るようには思えなかった

 

 門番にレベル審問官であることを伝えると屋敷の中に案内され、応接室に全員が通された

 

「部屋数も少ない……応接室の他には執務室と調理場、使用人の部屋くらいしか無いのでは?」

 

「防御力も疑問があります。城壁に囲まれている訳でも堀があるわけでも無く、村と村の道の間に有りますから利便性は良いでしょうが……攻められることを考えてないのでは?」

 

「その割りには騎士団と呼べる組織も無いそうだ。自警団があるくらいで頼りないだろう」

 

 そう喋っていると扉が開き4名の男女が入ってきた

 

 メイドと執事、動きやすそうなドレスの女性に……小綺麗ながら見たことのない服装の男性が入ってきた

 

「お初にお目にかかりますレベル審問官。ヒムラー公爵でございます」

 

「ヒムラー公爵!?」

 

 ヒムラー公爵は下の身分である自分に頭を下げた

 

 これは貴族のマナーとしては異例であり、最上級の礼法とされた

 

「失礼しました。レベルと申します。この度は面会する場を設けてくださりありがとうございます」

 

「いえいえ、審問官の方が来るのは初めてですので少々気合いが入りましてね。この服どうでしょうか? 似合っていますかね」

 

「凄く動きやすそうな服装ですな。なかなかに奇抜な」

 

「モーニングと呼ぶスーツでね、我が領土の仕立屋が作った渾身の作品だそうだ」

 

「モーニングですか……なかなか面白い仕立屋があることで……」

 

「我が領内はいかがですかな? 面白い物が沢山有ったでしょう」

 

「失礼ながら公爵閣下、魔物との仲があまりに宜しいと思われますが……異端審問官の私としては些か目に余ると思われるが」

 

「でしょうな。錬金術師を擁護し、魔物を保護し、自国産業に組み込むこれが異端でないハズがない……冥土さん、全員にお茶と茶菓子を」

 

「はい、閣下」

 

「異端と知りながらも擁護し続けるのはなぜですか?」

 

「人類の発展に必要だと思ったからですよ。水車による粉引き機を発明したのは教会を作った勇者であったと記憶しています。機械は魔法が使えない者でも一定の成果を得ることができる。その仕組みの解明を錬金術師達は行っているのです。彼らは今、人類の仕組みを解き明かす最前線に居ます」

 

「その成果が人造生命体とでも?」

 

「ええ、神が天使を作ったのならば人はどこから生まれたのでしょう。天使の出来損ないが人類だとしたらなぜ人類が天使を打ち破り広大な領土を手にすることができたのでしょう。神の神秘に迫るのが人体錬成であり、勿論それが冒涜であることはわかっています」

 

「皆さまお茶でございます」

 

「紅茶です。茶狂いの家臣が居ましてね……彼女が栽培し、紅茶の良さを広めようと努力していましてね」

 

「……いただきます……美味しいですね」

 

「何事も知るところから始まるのですよ。良いも悪いも知らないと始まりません。最も神官であるあなた方と相容れることはできないともわかっておりますが」

 

「このままですと異端と認定することになるでしょう。領内は孤立し、豊かさを失い、民の人気も地に落ちる。民の話から公爵閣下は誰よりも民を愛する人だと聞いておりますが?」

 

「異端と認定するならするが良い。私の考えは変わらない。最もあなた方が私を異端とすることは無いがね」

 

「な? どう言うことだ?」

 

 公爵の目が光る

 

 いやこの部屋にいる公爵の部下達の目も光っている

 

 何かの魔法が発動しているらしい

 

 私は何が起きたかわからなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、お疲れ」

 

「乙、森の騎士は1人だよな?」

 

「尾行していたニキからの情報だと関所に1人、森を抜けようとするのは1人らしい」

 

「初めて銃で人を撃ったが……特に何も感じなかったな」

 

「だな、殺人への忌避感は日本時代よりも薄れた感じがするな」

 

「まぁあれだけ人型のゴブリンを退治していれば薄れるだろう」

 

「聖女ネキやブラックジャックニキに渡してもコイツ解体されるだけだろうからせめてもの慈悲だ。しっかり燃やして埋めてやろう」

 

「ゴーストになられても困るからな。火葬して弔ってやろう」

 

「……関所の方も洗脳に成功したらしい。これで異端になるのは少し時間が稼げたかな」

 

「まぁどうせそのうち異端にはなるだろうからその前にコイツとか戦車、機関銃を量産しなければな」

 

「だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レベル達一行はウッド領に戻り、ペドロ卿にヒムラー公爵領の話をする

 

「何も問題は無かったと?」

 

「ええ、確かに魔物は比較的多かったですが人間の下に置かれ、目くじらを立てる様子はありませんでした。ただ軍事力は自警団がある程度であり、攻め込めば一溜りも無いかと」

 

「異端認定ならば他の領からも援軍が期待できたが……やむをえんか。レベル審問官ありがとう」

 

「いえ、私の職務を全うしたまでです」

 

「……ペテル! ペテルは居るか」

 

「はい、お父様」

 

「収穫期が終わった秋にてヒムラー公爵領を攻撃する。お主が大将として騎士団と領民兵合わせて1000名で略奪してこい。冷害の兆候がやはり出ている」

 

「ヒムラー公爵領も冷害なのでは?」

 

「レベル曰く耕地面積が広かった為にこちらの領民を十分賄えると報告があった。自警団程度の軍に1000名は多いかもしれんが村1つや2つを襲うにはこれで十分だろう」

 

「わかりました。軍の錬度をそれまでに高めておきます」

 

「よし、頼むぞ息子よ」

 

「お任せください」

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