ファンタジー俺達   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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ウッド姉妹

 お父様とお母様、それに今回の戦争で戦没者の合同葬儀を行う

 

 約1000名が出陣し、帰ってきたのは25名だけであり、改めて大敗したという事実に私達は悲しみを抱きつつも、未来に向かって歩まなければならない

 

 まず城で今回の戦争用に蓄えられた食料を領民に返却し、武器類をヒムラー公爵の商人達に売却してお金を工面する

 

 武器だけではとても足りないので城の家具や魔道具、宝物等も売却していく

 

 ヒムラー公爵の商人達は足元をみること無く適正価格で購入してくれたのでありがたい

 

 こうして工面したお金で戦没者の家族に少量ながらも遺族金を支払っていく

 

 良く一緒に遊んでくれていたお兄さんやおじさん、騎士団のお姉さん達が殆ど亡くなり、涙を流しながらお金の入った袋を渡していく

 

 サキやトキも渡す作業を手伝い、最低限の役割を全うする

 

「姫様、行かないでください! 残った者は姫様達を盛り立てますので……どうか! どうかぁ」

 

 おじいと呼んでいた村の長老が私を引き留める

 

 他の領民達からも引き留める声が上がるが

 

「大丈夫です。死ぬわけではございません。また皆さんの下に戻れる日も来るでしょう。交渉して支援をヒムラー公爵から貰ってきますから……どうか諦めないでください!」

 

 私は……私達はこれから戦場に向かう

 

 たとえこの体を支払うこととなってでも、ウッド領の領民が苦しまない為に……

 

 

 

 

 

 

 

 戦後処理から数日後、ヒムラー公爵からの迎えが到着した

 

 それは異質な乗り物であった

 

 4つのタイヤと金属のフレーム、そして引く馬が居ないのだ

 

 ヒムラー公爵の兵士が説明してくれる

 

 この乗り物は自動車と呼ばれる馬やゴーレムを必要としない乗り物なのだとか

 

 他にもバイクと呼ばれる乗り物やトラックという乗り物もあり、荷物などをてきぱきと兵士達が乗り物に乗せていく

 

「揺れますがしばらく我慢してください」

 

 ブロロと音が出ると自動車は動き始め、あっという間に村から森に移っていく

 

 揺れると言われていたがそこまで揺れることもなく、椅子も木製ではなく、革のカバーの下に何か入っている様に感じる

 

「あぁ、カバーの下にはスライムの液体を加工したゴム状の素材が入っているんですよ。木製だと痛いでしょ」

 

 と言われた

 

 確かに木製の椅子の馬車に乗った事はあったが隣の領地に行くだけでもお尻が痛くなった記憶がある

 

 森の中の道は整備されているとは言いづらいが、自動車はすいすいと進んでいく

 

「この車はオフロードカーと言って舗装されていない道を進むのに適した車なんですよね、まだ領内に2台しか無いんですがね」

 

「車というのは沢山あるのですか?」

 

「いや、多くは無いけれど、将来1家に1台の車が持てる様にヒムラー様は工夫しているよ。ちなみにだけどこの車は魔力で動いている訳じゃないよ」

 

「魔力じゃない!? ではどうやって?」

 

「スライムの液体を加工すると油になるんだ。僕らはエーテルと呼んでいてね。それを燃やして歯車を回転させているんだ。水車で歯車が回るだろ? それを燃料を燃やした爆発で回転させているんだ」

 

「そんなことできるの?」

 

「こらトキ」

 

「できる。こうして車が動いているからね」

 

「……それを使えば脱穀作業や粉を牽くのが楽になりそうですね」

 

「あー、そっちはまた別口のエンジンを使った方が良いんだ。エーテルエンジンはこうやって乗り物には向くけど、燃料が必要になるからね。ゴーレムエンジンや魔法エンジンの方が良かったりするんだ」

 

「お詳しいのですね」

 

「軍人をしているけど魔道具やこういう便利な物を開発するのが僕の仕事だからね……さて、森を抜けるよ」

 

「速いですね」

 

「まぁそれでも30分走ったからね。さて、ようこそヒムラー公爵領へ」

 

 森を抜けると平原が広がっており、所々に十字架が幾つも立っている場所がある

 

「あれは?」

 

「お墓さ。ここで戦闘があったからね」

 

 窓から外を覗くと幾つもの十字架が立てられている

 

「そのうちここも開拓されると思うから、そしたら別の場所にお墓を移動させるよ」

 

「……ちゃんと埋葬してくれたのですね」

 

「約束は守るさ。まぁ奇人変人は多いが、ヒムラー公爵様は真面目で誠実な方だから安心できるよ」

 

「そうなのですか?」

 

「イケメンだよー、身長も高いし格好いい方だよ。1ヶ月もすれば帰ってくると思うけどね。僕ら的にはお姫様の誰かがご結婚されれば良いなと本気で思っているよ」

 

「しかし……私達には後ろ楯や娶られる利点が少ないと思われますが?」

 

「ハッハッハ、領民の事をあれだけ考えられ、行動できる貴族は珍しいからね。村に到着するけど少し見ていくかい?」

 

「良いのですか?」

 

「我々の許可が有れば領内は自由に行動して大丈夫だよ」

 

 自動車を下車し、村を歩いていく

 

 まず目に入ったのは広大な農地だ

 

 ゴーレムが何体も動き、くるくると回る巨大な何かが水を撒いていたり、人々が芋を収穫する姿が見られた

 

「お芋だ」

 

「小麦畑にできそうな広さですがじゃがいもを育てているのですか?」

 

「ああ、1種類の作物に偏ると今回の冷害とか植物の病気が流行った時に全滅してしまうからね」

 

「あそことかくぼんだ畑に見たことが無い穀物が実っていますが」

 

「田んぼだね。夏場とかに水を張るんだ。水田とも言って米という穀物が穫れるよ」

 

「これ程の大きな畑では個人が管理するのは無理なのでは?」

 

「そうだね。だから畑を管理する商家を作り、商家が人を雇って畑を管理する方法を取っているよ」

 

「土地を商人が管理するんですか?」

 

「うーん、僕も上手く説明できないんだけど、元から居る村人は今までと同じような農業法の発展系をしているんだけど、更に農業を発展させるには広大な農地に大量の資本を投入してゴーレムだったり大型スプリンクラーを使って水を撒き、肥料を投入して土地が痩せるのを防ぐんだと」

 

「詳しくはソ連ていう農業組合があるからそこに聞きに行くと良いよ」

 

 村の中に入ると新しい家が目立つ

 

「ずいぶんと綺麗な家が多いですね」

 

「2年以内に建てられた家が多いからね」

 

「家の横に必ずある小屋は何ですか?」

 

「トイレだね」

 

「トイレが村人の家々にあるのですか!?」

 

「あぁ、トイレで糞尿を回収することで肥料を作っているんだ。糞尿を回収する仕事があるくらいさ」

 

「あれは何?」

 

「公衆浴場だね。覗いてみるかいトキ様、皆さんもどうですか?」

 

「「公衆浴場?」」

 

「今の時間はやってませんが、見ることはできると思いますよ」

 

 兵士に連れられて建物の中に入ると青と赤の暖簾がかけられていた

 

「いらっしゃい、まだ時間外だよ」

 

「番頭さんこんにちは、新しく領に来たお姫様達に村を案内していてね」

 

「あぁ、なるほど。掃除中で良ければ中を見るかい?」

 

「せっかくなので見せて頂けますか?」

 

「あいよ」

 

「僕は外で待っているからね」

 

 

 

 

 

 

 

 番頭と呼ばれた女性に中を見せて貰うと広いタイルの張られた部屋だった

 

「この壁に取り付けられているのは何ですか?」

 

「シャワーだ。こうやって手を当てるとお湯が出てくる」

 

「え? 魔道具ですか?」

 

「そうだね。壁にある器具は全部魔道具だ。そしてここに置いてあるのが石鹸だ」

 

「青い石鹸……確か安い石鹸が私達の領内にも流れてきていましたが」

 

「石鹸はうちの領の特産品だからね。こうやって領民にふるまわられているんだ」

 

「なるほど」

 

「こっちの今ブラシで洗っている場所は浴槽と言ってお湯を溜めて入浴することができる。1度に200人が入ることができるよ」

 

「ひろーい!」

 

「ここにお湯を!?」

 

「燃料が幾らあっても足りないのでは?」

 

「1度の湯沸かしに新品の魔石を3つ使うけど魔道具で賄われているよ」

 

「外にも露天風呂と言って入れるスペースがあるよ。雨が降ってなければここも100人が入れるね」

 

「こっちはサウナ。蒸し風呂と言った方が良いかな? 汗をかいて体の悪いものを体外に出す施設さ。1度に50人が入れるね」

 

 俺達からは全体的に見るとプールみたいと呼ばれていたがお風呂はお風呂である

 

「料金は取られているのですよね?」

 

「いや、無料だよ。体を綺麗に洗うことにより病気を防いだりしているんだよ。疫病対策になるからヒムラー公爵が無料で運営しているんだ」

 

「し、しかしこんなに沢山の魔道具を使っていたら魔石が幾ら有っても」

 

「うちの領内には凄腕の冒険者が多くてね。私もそうだけど暇な時にはダンジョンに潜って素材を取ってくるんだ」

 

「「だ、ダンジョンを!?」」

 

「危険じゃないの? ダンジョンは危ないところって聞くけど」

 

「みんなダンジョンに潜って強くなる、戦う、素材を取るを繰り返していたらどんどん強くなってね。そんじょそこらの魔物には負けないよ」

 

「番頭~掃除終わったよ~」

 

「は、ハイピクシー!?」

 

「やっぱり他の領土から来た人からしたら珍しいよね。私の相棒のハイピクシー。テイムしているから安心しな。領内では魔物が生活しているけど全部誰かしらにテイムされているから安心しな」

 

「魔物の力はうちの領土の原動力だからね! いちいち驚いていたらキリが無いよ」

 

「そ、そうなのですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、見終わったか?」

 

「凄かったです」

 

「夜はお姫様達も希望すれば入浴できると思うぞ」

 

「そうなのですね」

 

 次の場所に移動する

 

「ここはヤタガラス。様々なギルドの機能を集めた施設さ」

 

「ギルドの機能を集中すればそれは領政にも影響するのでは?」

 

「ヒムラー公爵様の領土では権限を集めることによる効率化とヒムラー公爵がこのヤタガラスのトップになることで公共事業として成立させているんだ。依頼から税金を取ったり魔物の買い取りから税を取ったり、商人達もここに所属するから、売り上げによって税金を取れる。穀物を売ることで税金が発生する仕組みになっているんだ」

 

 カウンターで座っていた男性がそう答える

 

「よう、ボチボチか?」

 

「まーな」

 

「どれくらいの税収なのですか?」

 

「あー、それはお嬢様……今ヒムラー公爵の代理をしているセシリアさんが詳しいハズだ」

 

「お嬢様? ヒムラー公爵の婦人ですか?」

 

「違う違う、商人出身なんだが立ち振舞いが高貴で皆からお嬢様って渾名が付いているんだ」

 

「領政を任されているとはヒムラー公爵から信頼されている方なのですね」

 

「あぁ、そうだな。改めてヤタガラスにいらっしゃい」

 

 ヤタガラスの建物の中を見ると壁に種類ごとに分かれた依頼と食品や消耗品が売られているのが目に留まる

 

「市場も開くが、簡単な売り買いはここで済ませられるようになっているんだ。ここは朝と夕方に混むからこの時間は暇なんだよ」

 

「混む?」

 

「ダンジョンに潜っている冒険者達が素材を持ち込んで買い取り作業を行うのが夕方、朝はその素材を買いに来た商人や職人達と依頼を受けに来た冒険者達で混むんだ。あと領民はヤタガラスに強制加入だ。労働人口の把握の意味合いもある」

 

「なるほど」

 

「そうだせっかくだ。お姫様達もヤタガラスに登録していくか?」

 

「良いのですか?」

 

「ヤタガラスに所属してランクが上がると割引が利いたりするから便利なんだ。代筆は……いらなそうだな。この書類に名前と年齢を書いて、この水晶玉に手を当ててみてくれ」

 

「……こうですか?」

 

「テル・ウッドっと、女性、15歳、人間、レベルは10ね」

 

「このレベルって何ですか?」

 

「この水晶玉に数字が浮かんだの見えるか?」

 

「あ、本当ですね。数字が浮かんでいます」

 

「これがレベルで魔物を倒すと魔力が体内に流れ込み成長すると言われている。今どれくらいの強さがあるかがわかるのがこのレベルだ」

 

「便利な魔道具ですね」

 

「半年前にできてな。冒険者の強さの基準になっているんだ。この数字が25を超えてテストに合格すればシルバーランクに上がれる」

 

「シルバーランクですか?」

 

「冒険者にはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナのランクが有ってランクが上がれば特典を受けとることができる。一番わかりやすいのは武器の割引だな。ゴールドランクはシルバーランクの者で功績を挙げたり、受付がゴールドランクに昇格させるべき人材と認めたら上がることができる。そのゴールドでも更に特筆すべき人物がプラチナに上がれるってわけだ」

 

「ちなみに兵士だとどれくらいなのですか?」

 

「熟練の兵士が45レベルと言われているな。年齢でも少しずつ上がるからまぁ魔物を倒した事の無い村人がだいたい15レベルだな」

 

「なるほど……詳しく教えていただきありがとうございます」

 

「おう」

 

「お兄さん、この講習ってなに?」

 

「ヤタガラスの組員に文字の読み書きや簡単な計算を無料で教えたり、ダンジョンに潜る前に10時間のダンジョンの魔物や倒し方、傷の応急処置や休憩の仕方、武器の手入れの仕方を教えたりするのが講習だ。3人ももしダンジョンに潜ることになったらこのダンジョン講習を受けて貰うぞ……はい、できたっと」

 

「銅のプレートですか?」

 

「レベル以外の情報が刻まれているから失くすなよ。再発行は1$かかるからな」

 

「ありがとうございます」

 

「おうじゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 他にも驚くべき事が多数あった

 

 魔物もそうだし、化け狐を保護していること、錬金術師を保護していること、その錬金術師が人造生命体を作っていること

 

「サンフランシスコサワーブレッドマンでござる」

 

「被り物?」

 

「いやいや、拙者はジャムおじさんから作られたホムンクルスの一種でござる……パンを焼く手伝いをしたり、パンを売ったりしているでござる。今は散歩中でござるが」

 

「サ、サンフラン?」

 

「まぁ長いのでサンフランシスコマンと呼ぶでござるよ」

 

「人造生命体って禁忌なんじゃ?」

 

「そうでござるが、ホムンクルスは魔物に分類されるでござる。テイムされているので反抗しない従順な労働力ともみられるでござるよ」

 

「あとこの領土では魔物と交わることも許されているでござる。何人も既に人と魔物のハーフが産まれているでござるよ」

 

「そ、それは……凄いですね」

 

「自由と実力主義の領でござる。何でも試すことで新しい発見が生まれて領地が豊かになるでござるよ……せっかくだからこれをどうぞ」

 

「パン?」

 

「食べてみるでござるよ」

 

「……アム……!? 美味しい! 柔らかい!」

 

「クリームパンでござる。お二人もどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ありがとう!」

 

「……甘い! 砂糖を使っているの!?」

 

「あまーい!」

 

「カスタードクリームという砂糖、卵、小麦粉、乳を使ったクリームでござる。今は量が作れないのと牛乳が無いので錬金術で作った代用乳で作られているでござるがなかなか美味しいできと自負しているでござる」

 

「美味しかったです。ありがとうございました」

 

「ありがとうパンのお兄さん」

 

「じゃあまたね」

 

 サンフランシスコサワーブレッドマンは歩いていってしまった

 

「人造生命体でも生きている者だから感情があるんだ。差別しないでやってくれ」

 

 兵士さんがそう言う

 

「驚きましたが、なぜ私の兄が負けたのかわかりました。どこまでも先に進んでいるのですね」

 

 貴族の常識や世間の禁忌を普通に破っている領地がここまで成長しているのだ

 

 私達も考え方を改めなければならない

 

 そう思う3人であった

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