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時は少しばかり遡り、ヒムラーが王都にて王宮主宰のパーティーへと参加していた
現代的なスーツを着ていたヒムラーは凄い目立つ中、ヒムラーに近づきたい貴族やヒムラー領の近隣諸候達が挨拶にやって来ていた
「いやはやヒムラー公爵、この度は戦勝誠に目出度い」
「先日ぶりでございますなテルピッツ大臣」
「うむ、ヒムラー公爵の領土から産出される石鹸と真っ白な磁器は貴族の間でも話題になっておるぞ。特に真っ白な磁器、あれはとても良い物だ。光沢があり、美しい。どのような鉱石をお使いになっておるのかな?」
「テルピッツ大臣、流石に我が領の大きな稼ぎである磁器は秘匿中の秘匿でございます。製法はご遠慮願いたい。代わりに磁器の大皿を進呈致します」
「おお、そうか、それは悪いな……そうだ、ヒムラー公爵は魔導書が好きだと聞いておるから代わりに我が家の蔵書を送ろう」
「テルピッツ大臣の蔵書となれば面白い発見があるかもしれません。楽しみにさせていただきます」
「うむうむ、なに、私はヒムラー公爵とは仲良くしたいからな。何かあれば私を頼ると良い」
「ありがとうございます」
「狸どもめ、どうせ魔導書といっても王宮に秘蔵されていた本には劣るガラクタなのはわかっているのだぞ……正確に魔導書の価値の分からぬ者たちめ」
ボソリとヒムラーは呟く
パーティーでは領地を持たない宮廷貴族が多くを占めたが、ヒムラー的には宮廷貴族はプライドばかり高く宮廷内部で権力闘争ばかりしているイメージが強く、事実彼らは国難にも関わらず団結すること無く他人の足を引っ張り、自分の家の利益優先で動いていた
勿論その状態を憂いている貴族も居るが、立場が弱かったり、親族が足を引っ張ったりしていて動けずにいた
「建国時の配下が多いと聞くが、それは建国王の時の先祖が凄かっただけで、お前らは何も凄くないのだぞ……分かっているのか?」
これだからパーティーは嫌いなのである
騙し合いや謀略が渦巻いているから……国を動かすのに必要なことだとは分かるが国難の状態なのだからもっと別の方法があるだろうと……ヒムラーはそう考えてしまう
ヒムラーの兄の次男はこの光景に嫌気が差して親衛隊を作ったが……
(俺達の仲間達も権力を持ったら……無いな、趣味の為に暴走する奴が居てもここに居る連中みたいに足を引っ張り合うことは無いだろう)
休憩がてら壁際に移動して壁に背を預ける
「大皇帝もお疲れかしら?」
「ん?」
「お初にお目にかかりますわアスタール侯爵家のアデルでございます」
「……あぁ、貴族俺達の」
「はい、大皇帝とは1つ領土を挟んだ場所にある領土を持つ貴族でございます」
「いや、なかなかな。パーティーは疲れるからあまり参加したくないんだよ」
「少し移動しませんか? 貴族の俺達が集まっている場所に」
「そっちの方が気が楽か……喜んで」
アデルと握手をしてヒムラーは場所を移動する
パーティー会場の端の方に若い貴族達が集まっていた
「アデルその方がもしや?」
「ヒムラー公爵よ」
「俺達なら大皇帝と言った方が良いかな?」
「ルール的にコテハンになれませんからね。サルファー男爵家次女のウルハです」
「サブレー準男爵家三男のグレンです」
「ネオアーム男爵家三男のアルミンだ」
「今日のパーティーにはこのメンバーしか来ていないけど、もう数人貴族階級の俺達が居るわね」
「もっともどいつもこいつも次男以下ばっかりで影響力は皆無だけどな」
「兄の予備として教育は受けているが、前世の価値観から逸脱したのが多くて苦労するぜ。貴族以外は人間ではなく家畜ってどんだけだよってな」
「どうにかしてヒムラー公爵領に行きたいんだが方法ねーかな?」
「女性陣の手っ取り早いのは婚姻だけどヒムラー公爵の領地を辺境扱いして許可が降りるかどうか……」
「ふむ……いや方法はありますよ」
「「「マジっすか?」」」
「騎士として雇ってしまえば良い。次男以下なら騎士として成り立たせると言えば喜んで差し出してくれるだろう。女性でも騎士にはなれるからその方法ならこちらに来れるんじゃないか? 幸い騎士の枠は余っているし」
「なるほど! 流石大皇帝!」
「君達の親に引き抜きの挨拶をしよう。ごねられたら成人後とでも良いしな」
流石に初対面で気に入ったから彼らを騎士として差し出せとは元王族といえども言えないので、色々オブラートに包んだ言い回しとなってしまったし、女性陣の親達は騎士よりも婚姻を望まれたので彼女らの為に婚姻を承諾したりと根回しの為に約2ヵ月近く王都に拘束されることとなる
家格が釣り合っているのでアデル嬢が本妻、ウルハが側室とされたが、2人には適当な時に離婚して自由に過ごしたり、俺が嫌だったら不倫しても良いからなと言っていたのだが……彼女らが離婚することも不倫することも無かったのだった……
後々アデル嬢はコテハン名が剣聖女、ウルハ嬢が縦ロールネキと名乗ると言っておこう
大皇帝が王都で根回しをしている頃、領内ではヤタガラスの有力者とオブザーバーとして天使のカルロと元ウッド家のテル嬢が参加していた
「さてお忙しい中皆さん参加していただきありがとうございます。ヒムラー様が不在の為代理のセシリアが司会をさせていただきます。よろしくお願いしますわ」
「さて、ではソ連(農業組合)の方からお願いしますわ」
会議は人数の都合でヤタガラスの本部の大会議室にて行われている
ヒムラー宅の会議室では小さすぎる為に大人数で集まる時はもっぱらこっちで集まっていた
「パウロさん、この会議はどの様な?」
いきなり連れてこられたテルとカルロはやや困惑気味であり、説明係としてコテハン名執事くんことパウロが2人の横に控えていた
「まず日常的な報告とかはカルロさんは知っていると思うけど掲示板という勇者のネットワークで行っているのは2人は知っていますよね?」
「はい、凄い量の情報が飛び交っていますよね」
「先進的な理由が異世界から来た勇者達が運営していたと知った時は驚きましたわ」
「そんな情報が飛び交っていても全部を把握することができないのでこうやって会議が定期的に開かれるんだ。ここに集まっているのはヤタガラスでも上位に位置する者達ばかりで役職を貰っているんだ」
「掲示板で渾名が付いている方達でしたっけ?」
「そうですね。その中でも更に一部です」
「ソ連代表として話させて貰います。今季の最終的な穀物の収穫が完了致しました。書類は事前に皆さんにお配りした通りになります」
「凄い量の穀物ですね。ヒムラー領では豊作だったのですか?」
パウロにテルが書類を見て質問する
「いや、不作でした。やはり冷害により発育不順の穀物が発生してしまったからですね。ただ冷害に強い品種を多く植えていたのでダメージは少なく済みましたが」
ソ連代表の話が続く
「ただ農地の囲い込みによる集団化及び大型化……輪栽式農法の必要条件である7項目を達成したことにより新規開拓地及び旧来の根付いた農民の土地以外では農業革命の条件を満たすことに成功致しました。来年度は旧ウッド領の農業改革を平行して行い、今年度の2倍の穀物生産を目指したいと思います」
「ソ連に統合された畜産部門より報告です。ウッド領の牛とこちらのゴーレムとの交換はスムーズに行われており、やはり家畜よりもゴーレムの方が餌がいらなかったり、長く使える分有り難がられました。その為牛は15頭、馬は10頭確保できましたので交配を行い数を増やしていこうと思います」
「また、家畜の品種改良も行い、肉質の改善と牛乳の出が良い牛を作っていこうと思います」
「ソ連さんは今後も農業や畜産関係をお願いしますわ。あ、そうそう養殖場の方はどうですの?」
「パウロさん、養殖とは何ですか」
「魚や海産物を育てる為の施設でして、川の魚の繁殖を行い食事に魚を安定して提供しようとしているのですよ」
「川の魚は泥臭くてとても食べられた物ではないと聞きますが?」
「綺麗な水で育てられた魚は泥臭く無くさっぱりとした味わいになりますね。また調理法で泥を抜く事をすれば泥臭さも軽減しますよ」
「なるほど」
ソ連代表の話に戻る
「現在の海の幸ニキが指揮を執り、大きな養殖池を建築しましたので再来年からある程度の魚を卸す事ができると豪語しておりました。魚の種類は鯉、ナマズ、ニジマス、カワスズメ(ティラピア)、そして鮭になると思われます。どれも人工孵化と生育に成功しており、産業化は可能かと」
「分かりました。ありがとうございます。続いて食品部門から」
「はい、食品部門ではベーキングパウダーが量産できるようになった為パンが食べやすくなったのと、香辛料を使った保存食の確保、陶磁器を用いた長期保存方法の確立を達成致しました。醤油や味噌等の和食に必要な調味料も量産体制に入りましたので、次は特産となりうるお酒の開発に注力したいと思われます」
「パウロさん、陶磁器の保存法とはいったい?」
「食べ物は空気を抜く……真空状態にすると目に見えない小さな生物が生きられなくなり、そいつらが食べ物を腐らせるのですが、真空にすることで食べ物が腐らずに長期間の保存が可能になります。うちの領内でこれくらい(カップラーメンの容器を1周り大きくしたサイズ)の陶磁器を大量に作り、スライムゴムで作ったパッキンを蓋に取り付け、熱湯に入れることで空気を抜き、真空状態にするんだ。まぁ長時間保存できる入れ物と思ってください」
「なるほど」
「レシピ集の第5弾も冬には完成すると思われます」
「なるほどありがとうございます。人口管理部はどうでしょうか」
「化け狐が重宝されているという噂と進化して上位種になることで短命という寿命の制約から脱したいという化け狐達が移民として移り住み始めました。最初はこちらの領を警戒していた化け狐の集落の面々も徐々に移り住み始めており、吸収は時間の問題です。また今回の冷害により廃民された村人を各都市から移民を募った結果が徐々に効果が出ております。今年の冬には旧ウッド領の領民を含め7000名まで領民が増える可能性が出ています」
「また領内が安定していることでベビーブームが起こっており、今まで収入が安定しなかったことで子供を作っていなかった、抑えていた家庭も子作りを再開したことが要因と思われます」
「この世界の平民の合計特殊出生率は4.6で病気等で成人できるのはこの内の半数と言われています。その為お産の産婆を増やすことと、医療制度を整えれば新生児の死亡率が下がり、人口を増やすことは可能かと」
「ソ連さん、農地を効率化して旧ウッド領の農地も農業改革をした場合何名くらいの人口を支えられますか?」
「昨年の試算だとヒムラー領だけで3万5000人と出したが、穀物の品種改良が進んでおり、順調にいけば5年以内に効率化した農地でも2.5倍ほど穀物が穫れるようになると思われるから不作を考慮しても10万人……いや、15万人は支えられる様にするつもりだ」
「出生に伴う人口の増加は今後も増えるでしょう。今年は現段階で500名の子供が産まれましたので、来年は人口の増加も合わさり1000名ぐらいの子供が産まれると思われます」
「ただ来年は気候が安定すると思われるので移民の数も減り、増加速度は安定化すると思われます」
「ただ15年後には子供達が成人して更に子供を作る数が増えると思うので食料もそうですが、仕事も考えなければならないかと」
「それは今考えることではないので今後の課題と致しましょう」
「はっ!」
「商人方はどうですか?」
「化け狐のネットワークが接続したことで今まで売れなかった地域のギルドと関係が改善し、穀物を中心に売れています。ただ今年は冷害でどこも食料が足りないため売れている感じなのでそこら辺は調整が必要かと思われます。また油の需要が高く、油の増産を希望します」
「他には紙が一定の品質のが出来れば新たな市場を作り出す事が可能ですが、ヒムラー領だけが儲けすぎると他の領から締め出されるのである程度の転売を黙認して商品を浸透させる方向に舵を切ろうと思っています」
「ですので馬車の動力となるゴーレムや、不自然の無い範囲で補助動力となる魔導エンジンを積んだ改造馬車の増産を希望します」
「あとやはり他の領地では山賊が出ますので俺達でなくても現地民の護衛を増やしてください。我々は良いですが化け狐達の商人が危ないです」
「分かりました。早急に対応しましょう」
「ありがとうございます」
「色々聞きましたが、貴族が決めるのではなく領民の代表が色々な事を決めるのですね」
「ここまで民に権限を与えると反乱の心配が出てくるように思えますが……」
「カルロさんの意見は他の領地では適応されますが、転生者達が牽引しているこの領地では元の世界では貴族制が廃れて民による統治が根付いている世界だったので、貴族の権限を強くするような統治だと逆に反発が出てしまうのです」
「こちらの世界では禁忌とされている錬金術が普通に浸透しているのは……」
「錬金術は元の世界だと科学に繋がる大切な学問でした。この世界では別の法則が働いており、簡単に結果を得ることができるので楽しいのでしょう。あと自分好みの容姿、体格、性格の人間を作れるという魅力は元の世界だと婚姻できなかった者が多かったので魅力的なのでしょう」
「なるほど……ヒムラー公爵様はどうなのですか?」
「ヒムラー公爵様はホムンクルスをメイドや執事として働かせるかもしれませんが、恋愛対象に思っているかと言うと別ですね。それよりもやるべき事がありますから」
「「やるべき事?」ですか?」
「まずは領地を豊かにすること……飢えさせないのは絶対だとして美味しい食事を毎日させること。住む場所に困らせないこと、寒さで困らないようにすること、自由を大切にすること……そして王になること」
「王になること?」
「掲示板の名前が大皇帝なのはそういうことなのですか?」
「皆がヒムラー様を王になればこの国は更に豊かになれると本気で思っているから……今は王位継承権も放棄しているけど、もし現王家が国を守れないと思ったら……ヒムラー様は立ち上がるよ」
「王……ですか」
「テル様はどうですか? 王妃になるのは」
「一領主の娘から王妃になるのは立志伝で良く見かけるものですが……大変ですよ」
「大変だから面白いんですよ」
「最後に輸出用の魔道具について話があります。魔法陣で動く物は輸出禁止技術な為輸出できませんが、一般的な魔石で動く魔剣等の武器は輸出しても問題ないと思いますが」
「しかし、魔道具を輸出するとなるとこの領地の重要性が上がり、場合によっては王家の直轄領になる可能性もあると思われるが」
「それならば魔道具ではなく普通の武器を輸出した方が良いのでは? 鋼の剣や盾は高い需要があるかと」
「しかし、そうなると高値で売買されないのではないか?」
「……オブザーバーのお二人は何か意見はありますか?」
「え! 私達ですか?」
「何でもよろしいので答えてみてください」
「……錬金術は薬学にも精通すると聞きますので消耗品で価値も高い回復のポーションや軟膏を売り出せば良いのではないでしょうか」
「……確かに薬類は高い需要がある」
「なるべく保管が利けば各領地の軍も欲しがるだろう」
「薬剤師の方はどうですか? 量産は可能ですか?」
「傷の治りを早くしたり、腹痛や頭痛、痛み止めといった薬なら量産は可能です。ただ千切れた腕を生やしたりとかのハイポーション等は量産には向かないので売りには出せませんが」
「薬は液体ですか? 固体ですか?」
「剤状や粉末がよろしいのならばそちらを作れますよ」
「では麻薬にならない程度の薬の量産を許可します。紙の製造と木綿で作る布を次の特産品となるようにしましょう」
「「「おう」」」
「それでは今回の会議は以上になります。お疲れ様でした」
評価者も感想も全員確認しております
ありがとうございます