ファンタジー俺達   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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南部領内の光景

 私の名前はハイジ……郷土騎士の旦那が居た未亡人です

 

 昨年の秋に領主様達が戦死した時に旦那も命を落としました

 

 旦那が着ていた鎧は戻ってきましたが、旦那の亡骸は戦没者の集団墓地に埋葬されており、私達は鎧の一部を家族の墓に入れて、旦那を弔いました

 

 私みたいな旦那を亡くした女性は多く、騎士団は9割が戦死と大損害を受けてしまい、ウッド領がヒムラー公爵領に吸収されると同時にウッド騎士団は消滅してしまいました

 

 領主様の一家のテル様が家財を売り、戦没者の家庭に遺族金を渡してくれましたが、とても私達一家が食べていけるお金には足りませんでした

 

 不幸中の幸い……と言って言いかわかりませんが、人口の3分の1が亡くなったことで食料には余裕ができましたが……とてもではないですが来年以降は若い男手が壊滅したことで影響が出そうです

 

 私達一家もそこそこの広さの畑がありますが、従者一家の男達も居なくなったので女と子供だけでは畑の管理もままなりません

 

 何より私達一家の場合は耕作に使っていた馬も今回の戦で何頭も失ったのが大きいです

 

 どうしょうかと悩んでいるとヤタガラスというお店がまずできました

 

 何でも様々なギルドを纏めた施設らしく、食料を売っていたり、仕事の斡旋をしてくれるとのことで、冬の間家族を連れて北部領土で働くことに決めました

 

 北部領土では魔物との融和を達成しているらしく、魔族の手先と言われた化け狐達が普通に商売をし、ピクシー達が遊び、ドライアドがウエイトレスをしていたりとカルチャーショックを受けました

 

 子供達はパン工房やレストランで未成年でも働けるとのことで送り出し、私は裁縫の腕があるからと服屋で雇ってもらえました

 

「ハリメ服屋へようこそ」

 

「あの、ヤタガラスからの紹介で来たハイジです」

 

「あぁ、ハイジさんね! 良く来てくれました!」

 

「あの、裁縫はやっていましたが、服屋で通用するとは思ってないのですが……」

 

「大丈夫大丈夫、1から教えるからね! 人形ネキ」

 

「ハイハイなんですか? 服飾ネキ」

 

 すると顔が無い……いや、マネキンの女性? が現れました

 

「ああ、ごめんなさい怖いよね」

 

「え、えぇ」

 

「人形ネキって言ってね、名前を捨ててるから人形ちゃんとか人形ネキって呼ぶと良いよ。あと乙女ニキって呼ばれているアスカ君って男の子とミルちゃん、メッサちゃん、サラダちゃんの合計6人の人間とハイピクシー10人、化け狐の奥さん方5人で回しているよ」

 

「多いですね」

 

「今日アスカ君達4人はダンジョンに潜っているからお休みなの。じゃあ工房を見せるね」

 

 広い店内には様々な服が折り畳まれて置かれており、サイズの様な木の札が置かれていた

 

 ただ色の着いた服は少なく、どれも茶色や灰色、白や黒といった感じだ

 

「染料を輸入しているんだけどどうしても高価になってしまってね。色の着いた服の店売りはしてないんだ」

 

「そうなのですか」

 

「ここにあるのは作業着とか下着類でね、消耗品って感じなの。本当はもっとこだわりたいんだけど高くなると売れなくてね。一応商売だし、私店長だから従業員のことも考えないといけないからさ」

 

「そうなんですね」

 

 裏に行くと工房になっており、綿を糸にしていたり、綿の汚れを落としたり、糸から布を作っていたり、布から服を編んでいたりとハイピクシー達が飛び交い、化け狐の奥さん達が機械を使って編んでいた

 

「ハイジさんは綿の汚れを大窯で煮込んで落とす役をやってほしいんだ」

 

 指を差された場所を見ると3つの大窯が並んでおり、化け狐の奥さん達が木ベラで煮込んでいた

 

「あれですか!?」

 

「うん、少し力が要るけど温度調整は自動で行ってくれるし、新人さんはハイピクシー以外はこれをやらせているの。クララさん!」

 

「はいはーい!」

 

 つなぎを着た化け狐の女性が返事をする

 

「新人のハイジさん。一応短期だけど農閑期は来てくれるらしいから色々仕込んであげて」

 

「ハリメさん了解しました! 私の名前はクララ! 17歳! よろしく」

 

「ハイジです。30歳になります」

 

「あはは、かしこまらなくていいですよ! では仕事を教えますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 服屋での仕事は私に合っていたらしくするするとやることを覚えていった

 

 子供達も仕事で余った食べ物を貰ってきて家で振る舞ってくれた

 

「どう? 楽しい?」

 

「うんママ、畑仕事よりも楽しい」

 

「私もこっちの仕事の方が楽しいな」

 

「あ、そういえば僕パン屋のおじちゃんから錬金術を学んでみればって言われたよ」

 

「え? 錬金術を?」

 

「うん。才能があるって言われたんだけど……審問官のおじちゃんが生きている時に錬金術師は悪い人だって言ってたから……でもパン屋のおじちゃんは悪い人には見えないし、錬金術を研究している人達に配達した時も悪い人には見えなかったな」

 

「石鹸作ってる人達なんだろ?」

 

「うん。兄ちゃん姉ちゃんはどう思う?」

 

「俺はお前がやりたいようにやれば良いんじゃないか? 騎士団も無くなったから継ぐ仕事が無くなったし……畑も俺達だけじゃ維持できないし」

 

「私も同じかな。先祖代々の土地って訳でもないし……料理人として働いた方が正直稼げるんだよね。賄いも貰えるし」

 

「ママはどう思う?」

 

「うーん、この領に来てから色々驚くべき事が多かったけど、領主様が保護するくらいだから大切な仕事だと思うの。話を聞くだけ聞いてみれば良いんじゃないかしら」

 

「わかった。パン屋のおじちゃんに相談した上で少し学んでみるよ」

 

「そういえばママ、お給料どうだった?」

 

「俺ら見習いだけどそこそこ貰えたんだよな1ヶ月で300$も」

 

「休みを貰ってこれだから高いよね?」

 

「騎士団の年収が6000$と畑の3000$で9000$だったよね家の収入」

 

「従者家庭に3000$払ってたから6000$か」

 

「あれ? 僕らの収入合わせたら超えない?」

 

「母さんも1ヶ月300$として4人で1200$、これを12で掛けるから14400$」

 

「うそ、2倍以上ってこと?」

 

「物の値段も高くないし、こっちで暮らした方が良いんじゃないか? 短期じゃなくてしっかり長期で働けば給料も技術も上がっていくし」

 

「ママ」

 

「……生活の向上が一番ね。実はね私達の農地を高く買い取りたいってソ連っていう組織が言っていてね。買い取らなくても土地代を支払うから貸してくれないかって」

 

「貸しちゃえよ。俺達と従者家庭じゃあの広さの畑耕せないし」

 

「うん、こっちで暮らしたい」

 

「わかったわ。従者家庭はソ連に雇ってもらってそのまま働けるようにするわね」

 

「それが良いよ」

 

「うん!」

 

 このように農地を手放さなければならない人も多く、それらの土地はソ連が借りて吸収していった

 

 北部領では南部領から最初は出稼ぎとして来る人が多かったが、予想よりも稼げるためそのまま住む人も増えた

 

 開拓初期の家が空いていたのでその家を借りて住み着いたり、アパートが建てられ、住民を受け入れていった

 

 余裕ができた家庭は子供を学校に通わせて更に技術を身につけて職につくという循環が発生するのだった

 

 

 

 

 

 

 

「最近南部諸藩との貿易が増えたよな」

 

「ええ、旧ウッド領を獲得しましたが、南部諸藩からの行商人の通行を止めなかったのでね」

 

「あぁ、道理で」

 

 ヒムラーは執務室にてヤタガラスから纏められた資料を確認していた

 

 今まではフレデリック王国内に限られていた交易だが、ウッドの姫達を手元に置いたことで彼女達の現状や、戦争で勝ったヒムラー公爵領の軍事力を探るために行商人とスパイが送り込まれていた

 

 この機会にヤタガラス職員達は増えてきた化け狐ネットワークを南部諸藩と接続させることに成功し、化け狐を尖兵として各地に散らばるコボルトをヒムラー領に来させたり、貿易でフレデリック王国では手に入らない物を輸入したりして稼がせて貰った

 

「軍馬としてユニコーンを使っているという噂は広がったようだな」

 

「はい、見せ札としては強力でしたね。フレデリック王にも何頭か献上しましたし、ヒムラー領のユニコーンは大人気ですよ」

 

「ユニコーンは賢いから馬泥棒がいると蹴り殺したり、角で殺すからな。これ以上の家畜は居ないよ」

 

「そうですね。お陰で盗まれたユニコーンも居ませんし……あぁ、そういえば鉄道を通したので巨大な魔物を使役したと噂になっていますよ」

 

「今年の冬には南部領に接続して物流を発達させなければ格差が広がるからな。まぁ魔物と言って誤魔化せるのなら誤魔化しておこう」

 

「そうですね」

 

「金の循環はどうだ?」

 

「やや貨幣不足でデフレが進みましたが、春に開設されたヤタガラス銀行とデビットカードの普及でデフレは止まりましたね。信用通貨効果で実質貨幣は数倍になりましたからね」

 

「俺達は金本位制のデメリットを知っているからな。というか貨幣経済だと金が足りないから経済発展の足枷になるし」

 

「もっとお金を作ってくれませんかね王家も」

 

「まぁ足りない分はこちらで工夫するしかないからな。領内で使える商品券の普及は?」

 

「問題ありません。紙幣代わりとして流通し始めています」

 

「領外では使えないことを徹底させろ。闇金として使用され始めたらまた戦争が起こるし、異端審問を避けることができないからな。領内だけなら各商家の商品券として扱うことができるからな」

 

「はい。外に漏れないように徹底させますね」

 

 ヒムラーは金の流れという循環を加速させることに力を入れ続けた

 

 その為公共事業が多く他の領からは浪費家と見られもしたが着実に領内は発展していくのだった

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