収穫用ゴーレムが連日収穫を繰り返し、脱穀機と製粉機が昼夜問わず動き続けている4年目の収穫シーズン
去年よりも更に収穫量が伸び、各所で嬉しい悲鳴があがっている頃
ヒムラー領から離れた場所ではヒムラー領から輸出される産物を観察するとある男が居た
「……ヒムラーの領土は少し肥え過ぎているな」
フレデリック王国4男のヘイグ・フレデリックである
彼は内政の才能があり、事務官として官僚達と仲が良く、色々な貴族の内政状態をある程度把握していた
「食料の輸出量が異常だな。豊作かつ税率を高くしてもここまでの輸出はできまい……上手くやっているのか……アイツはペタンの野郎に付いたからなるべく勢力を削りたいが……」
王都周辺の領地持ちの貴族を動かしてヒムラー領の商品に高い関税をかけて嫌がらせをすることも考えたが、王都にいる商人達から反発があると思い見送っていた
「ちっ、アイツの食料は王都でも多く出回っている。最近は大商人達の一部もヒムラー領に投資や拠点を移す奴も増えてきているからな……良くない流れだ」
ヘイグは考える
ヒムラーから下の弟達除く有力な王子は自分を含めて5人
無能の長男
有能だが人気の無い次男
将軍の三男
自分
人気はあるが裏で何かやっている五男
長男は無能だが大貴族が何人もバックにいる
次男は親衛隊、三男は軍がそれぞれバックにいる
五男はリード公爵がバックにいる
自分は下級貴族や官僚達からの人気はあるが武力、権力という点では下である
自分が殺されないのは殺すと行政が一時的にストップし、大混乱になるのがわかっているからだ
だから俺は各勢力の間をのらりくらりとしながら少しずつ力を蓄えてきたが……
「王になれるとは思えんな現状では……狙ってはいるが俺には正統性も推してくれる有力な貴族も居ない」
自分の母親が下級貴族出身じゃなければまだ芽はあったかもしれないが……まぁそのお陰で下級貴族からの人気は確保できたが
「親父の手腕は見事だが、自身に何か有れば諸外国に介入されるからな。姫を外国の王族に嫁がせてしまっているからその子供を担げばフレデリック王国の王にすることは可能だ。コスタギ連合王国の王族は姉さんの子供を担ぐ気満々だし、北部の貴族達も接触しているとの噂も聞く……その貴族達を粛清できないほど王族の力が弱くなってしまっているが……全く」
王にならなければ下手に力があるせいで自分以外の誰かが王になれば粛清は免れない
「それとなく軍の予算を削り、力を削ぐか。不満は親衛隊のペタンに向ければ大丈夫だろ……綱渡りだよ。まったく」
「実験開始」
騎士団こと軍の実験施設にて錬金術師や技術者、発明家が集まりとある最終実験が行われていた
空想再現ニキをリーダーに米帝ネキ、魔技師ニキ、ライザネキ、ドクニキといった著名コテハン達が3年の年月をかけて行っていた実験の最終段階であった(娯楽開発ニキは機密が守れないだろうと外された)
計画名 生命の泉
ホムンクルスの計画が成功したこと、魂が俺達、幽霊や天使ネキのお陰で観測できたこと
物に宿るアガシオンという魔物の存在……これらから付喪神を人工的に生み出すことが可能と判断され、実験が繰り返され、大型の物を操る生命体……艦これよりもアズレンに近いが、機械に生命体を宿らせて操らせることで操縦人員を減らすという役割を持たせていた
最初は機械に宿る魂や想いを擬人化させるというアプローチをしていたが、それは疑問視され、生体コアを載せるというタイプに切り替わった
生体コア……俺達からはメンタルキューブじゃね? とかトリオンキューブとか言われるそれは30×30×30センチの正立方体を試作ハウニブに設置し、起動を始める
「生体コア安定……動力問題なし」
「生体コア魔力発生、活動開始」
「なんかミュウツー創っていた映画の科学者の気持ちがわかりましたわ」
「反逆されない?」
「大丈夫なハズ……」
「え? 誰か制御の奴取り付けたんじゃ?」
「いや、枷はめるのかわいそうじゃね? って外した」
「「「馬鹿野郎!」」」
「生体コア魔力発生量増加、覚醒します」
『……おはようございます?』
軍服を着用した少女がハウニブから降りて出現する
「実験成功です」
『あのー、よろしくお願いします?』
「よし、ホムンクルスの学習能力を付与しておいて良かった。会話が可能だ」
「「「ふぅぅ」」」
『あ、あの?』
「あぁ、すまないね。僕は空想再現ニキ……まぁ博士と呼んで欲しい。君は……そうだね。イブと名付けよう」
『イブ……私の名前はイブ……』
「……はぁ、良かった実験に成功したわ」
真っ白な肌に白い髪、灰色の瞳、慎ましい乳房の少女が軍服を着用するその姿はなかなかゲームの様な感じであり、コスプレ感が凄かった
「ではイブ、君は君の体として繋がっているハウニブを動かせるかい?」
『はい、博士』
「ハウニブ魔力充填、エーテルエンジン起動」
『ゆっくり浮きます』
ハウニブは地面から浮き上がり空中にて制止した
ここに付喪神が完成した瞬間だった
付喪神の本体は生体コアであるため、生体コアが無事であれば他の機械に載せ換えてもその個体の意識は継続されることも判明した
生体コアは魔力を生み出せるのでエーテルエンジンよりもゴーレムモーターの方が相性が良い
生体コアの擬人化した分身は食事を摂ることも遊ぶことも学習もするため人間と同じような扱いが必要
生体コアが載せられる大きさの物でないとダメであり、現状だとハウニブと大型車両(戦車など)くらいしか生体コアを設置できそうにない
コストが高く量産は難しい
しかし自在に動かせるため人員を大幅に減らすことができる
ハウニブⅡの場合は操縦手、整備士、機長、機銃手2名だったが、生体コアが操縦、機銃操作ができるので整備士と機長の2人まで人材を抑えることができた
勿論大きな物を操るには生体コアのバージョンアップ(大型化)も必要だが、それを踏まえても人員を減らせるというのは大きな進歩であり、大型機械の半自動化をも意味した
「ただ生体コアから半径5キロ以内しか動けないのが欠点か」
「日常的には3輪車の荷台に設置して動けるようにしますか」
「だな」
軍服やセーラー服の少女が居たらだいたい付喪神というのが領内に浸透するのは数年かかるのだった
競馬場が完成して数ヶ月、ユニコーン達が走るレースは人々を魅了した
美しい毛並みのユニコーン達が一着を目指して走る
馬券が当たれば更に楽しいし、短距離でも2000メートルのダート戦、長距離だと4000メートルにもなり、スタミナとスピード、頑丈さが馬以上のユニコーンならではのレースとなっていた
秋の収穫期が終わり、一息つける人々は娯楽を求めて競馬場に遊びに来たり、美味しい食事を楽しんだり、カーバンクルを愛でたり、学校に通ったりと思い思いに過ごしていた
「去年も今年も安定していて良かった」
「そうですね。……来年の秋には剣聖女ネキと縦ロールネキも成人しますがどうするのですか?」
「ん? あぁ、本人達は結局決意は変わらなかったからなぁ……秋には子供6人の男に現代人が受け入れられるのか?」
「まぁ彼女達なら大丈夫でしょうが、剣聖女ネキの子供に男の子が産まれた場合揉めるのは確定していますよ。どうするのです?」
「……正妻を蔑ろにしているようにも見えるからなぁ……剣聖女ネキの実家とは敵対するかもしれないな。正妻なのに嫡男にしなければ」
「貴族の常識的にアウトでしょう」
「うーん、困った。何か良い案ない? セシリアお嬢」
「私はドラえもんではないのですよ」
「ですよねぇ……」
「子供の性格を何とかするしかありませんよ。なるべく野心を抱かせない、選民意識を持たせない、熱中する何かを見つけさせる」
「……スポーツでもやらせるか?」
「それが良いかもしれませんね」
ヒムラーの悩みは尽きないのだった