皆でお泊まりしたぞ!夏油先輩に褒められたぞ!皆に領域展開を見せたぞ!釘崎野薔薇と会ったぞ!五条先輩が領域展開を習得したぞ!夏油傑が闇堕ちしたぞ!
夏油side
理子ちゃんが殺され、私は天与呪縛のフィジカルギフテッドに惨敗した。
あの日、悟は死の間際で反転術式に覚醒した。
星漿体任務から数日後ーー…
ドォォォン!!
凄まじい轟音と共に校舎の裏に何かが落ちた音がした。
急いで現場に走るとボロボロの巌勝を前に悟がオロオロしていた。
「悟!何をした!」
「傑!どうしよう俺やっちまったかも!硝子呼んでくれ!」
「ハイハーイお呼びですかー……うっわエッグ。
悟後輩イジメてたの?軽蔑するわ〜」
硝子が巌勝の傷を反転術式で応急処置するが巌勝は気絶したままだ。
急いで三人で保健室に運び怪我を調べた…全身を骨折している。
「……それで?悟は巌勝に何をしたんだ?」
「どーせアレでしょ?さっき天逆鉾見せてもらいに行ってくるっつってたからトラウマ思い出させんなってボコったんでしょ?」
「俺の信用なさすぎない?」
「「そりゃそうだろ」」
硝子と一緒に悟を教室の椅子に縛って尋問する。
「二人とも落ち着け!俺も驚いてるんだ…鍛地が天逆鉾を作れるようになったんだよ!」
「「……は?」」
いくら巌勝が鍛地家だからって天逆鉾が作れるわけないだろ…。
「仮にそうだとしてもなんで鍛地ボコってんのさ」
「いやあいつがいきなり相手してくれって言うから何かと思ったらさ!
いきなり無下限突破してきたから咄嗟に赫撃っちまったんだよ!」
悟の感じから天逆鉾を作れるのは本当らしい…。
「「それは…鍛地が悪いな」」
「だろ!?だからさっさとこれ解け!」
「それくらい自分で解けんだろ。私保健室戻るから頼んだよ傑〜」
「了解硝子」
鍛地が天逆鉾を…悟の無下限を突破できるどころか下手したら天元様を殺す事が可能かもしれない…。
「悟…この事が知れ渡ったらどうなると思う…?」
「あ…?………ヤバいな」
「……なんらかの縛りで秘匿した方が良いんじゃないか?」
「………それはあいつ次第だ」
巌勝は悟に届く手段を手に入れた。
一年後 夏ーー…
「二人ともこれ投げて!」
「「?」」
悟から消しゴムを投げ渡される。
私が投げた消しゴムが悟の額に当たり、硝子が投げた鉛筆が無下限に阻まれる。
「うん、いけるね」
「げ!何今の!」
「…術式対象の自動選択か?」
「そ、正確には術式対象は俺だけどね。
今までマニュアルでやってたのをオートマにした。
呪力の強弱だけじゃなく質量・速度・形状からも物体の危険度を選別できる。
毒物なんかも選別できればいいんだけどそれはまだ難しいかな。
これなら最小限のリソースで無下限を"ほぼ"出しっぱにできる」
「出しっぱなしなんて脳が焼き切れるよ?」
「自己補完の範疇で反転術式も回し続ける、いつでも新鮮な脳をお届けだ。
前からやってた掌印の省略は完璧。
「赫」と「蒼」それぞれの複数同時発動もボチボチ。
あとの課題は領域と長距離の瞬間移動かな。
高専を起点に障害物のないコースをあらかじめ引いておけば可能だと思うんだ。
硝子、実験用のラット貸してよ」
「えー…」
悟は最強になった。
数日後ーー…
久しぶりに灰原と話した。
彼の根明さに少し気分が良くなった気がした。
「やあ、どんな女がタイプかな?」
「自分は沢山食べる子が好きです!」
「おい灰原」
「大丈夫ですよ!この人悪い人じゃ無いんで!僕そういうのわかるんです!」
突然やって来た特級術師、九十九由基。
彼女は私たちのやっていることを対処療法と断じ、自身のやっていることは原因療法だと語った。
そして彼女は私が天与の暴君に敗れたことを「仕方ない」の一言で済ませた。
少しイラついた私は彼女の議論に一石を投じた。
「なら…非術師を皆殺しにすれば良いじゃないですか」
「夏油くん…それはアリだ」
………………何を言っているのか分からない。
「というかそれが一番イージーだ。しかし…」
それから彼女が何を言っていたのかは記憶に無い。
去り際に彼女はこう言った。
「夏油くん!星漿体の事は気にしなくていい。
あの時もう一人星漿体がいたか…既に新しい星漿体が生まれたのか…。
どちらにせよ天元は安定しているよ」
……じゃあ…理子ちゃんの命は何の為にあったんだ…?
数日後ーー…
3連勤で任務を繰り返していたある日の夜、悟から電話がかかってきた。
『今日は灰原と七海が岩手に任務だったでしょ?アレ準一級じゃなくて特級だったんだよね〜!』
「……は?」
灰原と七海は準一級術師…!特級呪霊なんて倒せるわけがない!
二人は無事なのか…!?
『それに事前に気づいた鍛地と俺も一緒に四人で特級任務行ってきたんだけど…』
………とりあえず二人が無事だったことを喜ぼう。
『なんと!鍛地が領域展開使えるようになったんだぜ!』
「なっ!?本当か!?」
領域展開…呪術の最高到達点。
悟より先に巌勝が"至った"ということか…!!?
翌日ーー…
巌勝と灰原と七海が生捕りにしたという呪霊は私が持つどの呪霊よりもなお強い特級呪霊だった……今の私では倒すことすらできないほどに。
「三人に感謝しとけよ!」
「そうだな…鍛地、灰原、七海…俺のために生捕りにしてくれてありがとう」
三人共私に褒められて嬉しそうにしている。
…やめてくれ…私はそんな大した者じゃないんだ…。
「領域展開ーーー無量空処!」
「ーーー………!」
「フッ!」
黒閃!
「…凄いな悟」
……悟が領域展開を習得した。
…悟は凄い。後輩の領域展開を見本にすぐ習得して見せた。
灰原に七海も格上との戦いで一皮剥けたようだ…呪力の流れがこれまでと比較にならない。
…私はあれからどれだけ強くなった…?手持ちの呪霊で強い奴は軒並み悟に弱らせてもらったものばかり…今回の任務では後輩達が弱らせた呪霊を取り込むだけで何もしちゃいない…。
…………私だけが皆に置いて行かれてしまった。
その夏は暑かった。頻発した災害の影響か、蛆のように呪霊が湧いた。
祓う、取り込む。
私が目にしたのは周知の醜悪、何も珍しいことではない。
祓う、取り込む。
皆が知らない…呪霊の味。吐瀉物を処理した雑巾を飲み込んでいるような…魂で感じる悪意の味。
祓う、取り込む。
皆に置いて行かれた?本来なら喜ぶべきことだ…皆が強くなればより多くの弱者を救える…。
祓う、取り込む。
…悟は私に会うまで一人だった…私たちは二人で最強だった。…今は違う…悟は最強になって、巌勝が同じ高みに登ってきた…悟はもう一人じゃない。
祓う、取り込む。
あの拍手の音が頭にこびりついて離れない…巌勝が領域展開を習得したあの任務…巌勝と悟がいなかったら灰原と七海はどうなっていた…?
祓う、取り込む。
術師というマラソンゲーム…走った先にあるのが仲間の死だとしたら…私はどうすればいい…?
祓う、取り込む。
「猿共が」
ある日、私はこの世の地獄を見た。
「◻️◻️◻️◻️◻️!!」
「被害の原因は私が取り除きました、この子達は悪くない」
「◻️◻️◻️◻️◻️◻️!」
…………何を言っているのか分からない。
「◻️◻️◻️◻️!」
「…皆さん、外に出ましょうか」
《報告書》
・担当者(高専3年 夏油傑)派遣から五日後、旧◻️◻️村の住民112名の死亡が確認される。
・すべて呪霊による被害と思われたが残穢から夏油傑の呪霊操術と断定。
・夏油傑は逃走。呪術規定9条に基づき、呪詛師として処刑対象となる。
…………猿共は皆殺しだ。