夏油傑が闇堕ちしたぞ!
巌勝side
「「…………」」
ぱちっ…ぱちっ…
パチパチとプラスチックの音が部屋に鳴り響く。
夏油先輩が呪詛師になった翌日。俺と五条先輩は気分転換にオセロをしていた。
「……なあ巌勝…なんで傑は…人を殺した?…なんで両親も…」
ぱちっ…ぱちっぱちっぱちっ
「そんなの知りませんよ…両親に関してはけじめか何かじゃないですか…?」
ぱちっ…ぱちっぱちっ
プルルルルルルル………
「……電話なってますよ」
「……今出るよ」
ガチャ
「もしもし〜!硝子どうしたの?」
『夏油いたよ〜今原宿〜』
……家入先輩が夏油先輩と遭遇したらしい。
「…オッケーすぐ行くよ!硝子は夏油殴っといて!」
『嫌だよ死にたくない』
ガチャ
「……セイッ!」がしゃん!
「あ」
俺とオセロしてた五条先輩がオセロ盤ひっくり返して瞬間移動で行ってしまった、あとちょっとで逆転オセロニアできたのに…。
「…………」
しばらくして、五条先輩は寂しそうな顔をして帰ってきた。
戻ってくるよう説得したが交渉は決裂、逃してしまったらしい。
五条先輩は黄昏れながら夜蛾先生に話しかけた。
「先生、俺強いよね?」
「あぁ、生意気にもな」
「でも…俺だけ強くても駄目らしいよ。
俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ」
……原作ならもう誰にも追い越せなくなってしまった五条悟の孤独を表す良いシーンなんだがこの世界では違う。
何故なら将来確実に五条悟を超えるであろう奴がいる…!
「五条先輩…あんまり孤独な人オーラを出さないでください」
「………?急にどうした?」
「俺の弟の縁壱は確実に五条先輩を超える超超天才呪術師ですよ?勝手に俺は一人だみたいに黄昏れるのやめて下さい。
縁壱が大きくなったらさっさと呪術界乗っ取って夏油先輩ボコって連れ戻せば良いんです」
「「……………………」」
俺の発言に五条先輩と夜蛾先生は唖然とする、あ…夜蛾先生立ったまま気絶した。
「……弟いるの初耳なんだけど」
「…言ってませんでしたっけ?」
「プッ………ハハッ…!お前やっぱ呪術師向いてるよ!」
「失礼な…本職は呪具職人ですよ」
「」
「…あ〜笑った笑った…巌勝、僕教師になるよ」
「ゑ?五条先輩一人称僕は似合わないですよ…?」
「いいんだよ!キャラ変だ!」
「え〜〜………」
「………はっ!此処は誰!?俺は何処!?」
「先生…僕教師になるよ、次世代を育てたい」
「………?疲れた……帰って寝る……」
「「お休み〜」」
……そうだな。
五条先輩が教師になって皆を強くするなら…俺は呼吸法の開祖として、呪具職人として皆を強くするか…。
………とりあえず縁壱の特級呪具作るか。
縁壱side
どうも、鍛地縁壱です。
私はテンプレ的な交通事故で死亡し、気が付くと真っ白な空間にいて、なんだか気が合いそうな青年の魂と共に呪術廻戦の世界に転生させられました。所謂神様転生というやつです。
私ともう一人の彼…巌勝は兄弟として、生まれる年に差がありました。
私が5歳になって前世の記憶が戻った頃には、巌勝は既に14歳。
原作にも登場していなかった鍛地家は、優秀な呪具職人も呪術師も生まれず、非術師の世界への影響力も一大企業を超えることはなく、呪術界的には寂れた一族でした。
そんな中生まれた巌勝は一級呪具の作製実績もあって呪術師の才能も最高レベル、その上シン陰琉や簡易領域と同じレベルの新技術まで編み出し、既に鍛地家当主になっていました。
そんな頃に私の術式が発覚、呪具作製に使えなくもないがそれよりも呪術師向けの術式、五条家当主の五条悟と同等の呪力量、そして禪院家から嫌がらせにやってきた一級術師の禪院扇に当時7歳で完勝するというざまぁ案件、極め付けに呪術師としての格が変わる反転術式を6歳で習得するという快挙、それにより兄上はうちの子天才!!と連呼していました。
普通の呪術師の家だったらお家騒動待ったなしの地獄の関係でしたが、神様的なやつが言った通り鍛地家はひとあじ違いました。
「縁壱、お前なら罪悪感なく当主を押しつけられる!!」
「頼んだぞ縁壱!」
「頑張れよ縁壱!」
「はぁ…?」
禪院扇をボコった日から家族から向けられる視線が生暖かいものとなり、いつの間にか私は次期当主となる事が決まっていました。
それもそのはず、兄上含め鍛地家にとって当主の立場は禪院家を筆頭に呪術師から嫌がらせの矢面に立つ罰ゲームそのものな役職、呪具職人でもなく呪術師として嫌がらせを跳ね除けられる実力を持った私は当主に据えるのに最適な人材。
皆が私が当主から逃げ出さないようにすごく優しくなり、呪術師として欲しいものがあったり作ってほしい呪具があったりすると家の総力を上げて用意してくれるようになりました。
お陰で私の術式…「眷属創術」の欠点、式神の創造の儀式の難易度がだいぶ低下し、私の才能とほぼ同等の才能を持つ式神を創れるようになりました。
兄上が高専2年生になり、私が8歳になった年の夏。
懐玉・玉折編を任せきりになっていた兄上が長期休暇を取り鍛地家に帰ってきました。
「縁壱〜〜……夏油先輩の闇堕ち阻止できなかったよ〜〜……」
どんよりとした空気を纏った兄上が私に抱きついてきます。いつもの気持ち悪いくらいの元気がないので少しキモイです。
「仕方ありません兄上、夏油傑の闇堕ちは原因を一つ二つ解消するだけで防げるほど簡単な問題ではない。
それに夏油傑の闇堕ちはあのメロンパンが関わっていた可能性があるとされています。元より失敗しても計画に支障はないと言っていたでしょう」
「でもな〜……闇堕ちしなくても夏油先輩が羂索に乗っ取られるのは変わらないと思うしその方が展開を予想しやすいのはその通りなんだけどよ〜…やっぱり五条先輩と夏油先輩が喧嘩別れするのは嫌だったんだよ…」
「わかる」
それから一週間、兄上は食欲が少なくなり、工房に篭って呪具製作にのめり込んでいました。
流石にこれだけ食べる量が少ないと体調を崩すと思い工房におにぎりを持っていこうとしたその時。
「ヒャッホーーーーイ!!完成したぞーーー!!ぶべっ!?」
「あぶねっ!?」
工房から勢いよく飛び出した兄上は足をもつれさせて顔面から木の床に飛び込みました。
私がその拍子で飛んできた抜き身の刀の刀身を摘むと兄上がガバッと顔を上げて言いました。
「出来たぞ縁壱!!例の刀が!」
「…………っ!?まさか!私の戦術の基本となるあの呪具ができたんですか!?」
「そう!まさにそれ!お前が持ってるのが俺の新・最高傑作!「涅刀」だ!」
私の基本の戦闘スタイルの根幹を成す刀を紛失する可能性を無くすためには呪具の眷属化が必須になってくる。
しかしそうなると将来習得する領域展延で得物が使えなくなる。
神様的な存在の領域で考えた私たちはあることを思い付いた。
そう、呪具と同一の存在になれば良いと。
そうなれば話は全て解決する。私の術式は血液そのものが本体。刀を作る工程の全てで呪術的に意味を持つ私の血液を使用し、私の術式・存在を馴染ませ続ければ眷属化した時に私と同一の存在になる。
そうと決まれば早速実行だ!
「やっちまえ縁壱!」
「やっちまいますよ!兄上!
眷属創術・拡張術式「簡易眷属化」!」
刀の刀身に私の血液を垂らし、術式を発動!その瞬間、刀身を摘んでいた手から私の中に涅刀がスルスルと入り込んできた。
………私の生得領域の中に涅刀が入ってきたのが分かる。これでこの刀は私の身体の一部だ。
ニョキッ!
「うお!?すげーー!!!」
私の手のひらから出てきた刀の持ち手に興奮する兄上。手のひらから一気に引き抜くと明らかに先程の大きさと異なる、私の背丈に合った大きさの刀が出てきた。
「おおーーー!!なるほど身体の一部になったわけだから年齢に応じて大きさが変わるのね!「バキッ」……ってイヤァァァァ!!何やってんの!?………っ!?ゑ…………?」
手のひらから出てきた刀を真っ二つに叩き折った私に兄上が悲鳴を上げ、折れた刀身の断面からメキメキと生えてくる新しい刀身に唖然とする。
「………あ!なーるほど!身体の一部だから反転術式で再生するのね!!そういえばあそこでそんな事言ってたわ!」
「そゆこと」
「って驚かせんなよな!?マジで恐怖でタマヒュンしたぞ!?」
「タマヒュンって言うな!」
下半身の刀がポッキリいくの想像しちゃうだろうが!!
※編集しました
眷属化→簡易眷属化