転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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文書を書き起こすのって思ってたよりすごい大変ですね、書き続けている皆様には頭が下がります。


導入

原作知識という文字を見て、あなたは何を思い浮かべたのでしょう?

 

 私はスマートフォンで漫画を読んでいる。

 

この場合では、元の世界からの転移、ないし転生したあとの別世界における、未来に起こる出来事・・・争い、平和、祝福、災い、などなど・・・それらを始めから知っている、という意味で使用しています。

 

 スマホの中では、一部ノイズがかかっているかのような画面が写っている。どこかの病院らしき建物が描写されている。

 

元々居た世界では、漫画やアニメの中で例え良くない、悪いと形容されるようなことが起きていても、それをどうこうすることは出来ません。

 

 ノイズがかかったページをめくる。医者のような格好の人が落下し、大きな傷を負ったようだ。

 

それは、実際にストーリーを考えている人が、面白いストーリーを書こうとした結果そうなったものであり、それを鑑賞している人ではどうしようも出来ないからです。

 

 次のページをめくる。瞳に星を輝かせる少女が、双子の赤ちゃんを出産したようだ。

 

では、それを原作としている別世界に転移や転生をしたあとならばどうでしょう?

 

 赤ちゃんは順調に成長し、星の少女はきゃわーと笑っている。

 

原作知識を持っているならば、未来に起こる出来事を知っているならばどうでしょうか?

 

 星の少女は仕事が上手くいっているのか、大きな催しに参加するようだ。双子の赤ちゃんたちも幸せそうに笑っている。

 

この少女や双子は、この後その身に降りかかる出来事を知りません。なぜなら、未来の出来事など知りようがないからです。

 

 ピンポーン、とこの家族が暮らしている家のチャイムが鳴る。

 

しかし、あなたは知っているはずだ。どのような悲劇が起こるのかを。

 

 対応に出た少女のお腹にナイフが刺さる。しかし、少女は果敢に何かを言い返し、ナイフを刺した犯人を追い返す。

 

どうして何もしなかった?

 

 双子のうち、近くにいた男の子が刺された母親に近づく。

 

真犯人が怖い?真犯人がわかっているならば、何かしらの対応を取れるのではないか?あなたは真犯人がどんな人物かも知っているのに?

 

 「ルビーはアイドル?アクアは・・・役者さん?」

男の子が刺された所から流れる血を止めようとするが、止まらない。

 

未来が変わるのが怖い?変わったとして、それがあなたに大きな影響を与えるのか?芸能界に入る予定もないのに?

 

 「ルビー、アクア・・・あいしてる。・・・あぁ、やっと言えた、この言葉は絶対、嘘じゃない」

 

ここは、非常に大きな転換点だった。3人・・・いや、刺した人も入れれば4人の人生に大きな影響を与える転換点。この内二人は死亡し、一人は子供の時から復讐に身をやつす。最後の一人もある程度大きくなってから、やはり復讐に身を捧げる。誰もが不幸せになったこの結末、これは一体、誰のせいなのか?

 

 突然スマートフォンの画面が暗くなる。さっきまで何も無かった私の周りに、複数の黒い影のようなものが立ち上がり、次々と私を責め立てる。

「どうしてなにもしなかった?」

「ここが漫画やアニメの中だとでも思っているの?」

「アイやリョースケが死んだのは、あなたのせいでしょう?」

「死んだ人は戻ってこないよ?」

「親に、人を助けられる人になりなさい、と言われたでしょう?」

 

・・・やめて・・・やめて・・・

 

「あなたが助けていれば、幸せな毎日を過ごせたのに」

「この悲劇を防げたのは、あなただけなのに」

「本当にあるかも、得られるかもわからない原作知識を使用した利益のために、私たちの人生を滅茶苦茶にしたの?」

「どうして、私たちを助けてくれなかったの?」

「お腹を刺されたらどれだけ痛くて、苦しくて、寒くて、怖いのか・・・あなたは転生前に知ったはずなのに」

 

・・・やめて・・・

 

「「「「「ねえ」」」」」

 

「「「「「どうして、起こることを知っていながら」」」」」

 

「「「「「私たちを見殺しにしたの?」」」」」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

朝というのは、夜が明けてからしばらくの間、みたいな意味である。つまり太陽が昇って来ているということなのだけれど。

 

(・・・あんまり眠れなかった・・・のに、もう朝なの・・・)

 

最近では生息数が減少したというスズメがチュンチュンと鳴いているのが聞こえる。生息数が増加したというカラスの鳴き声も聞こえるけど。

 

眠い目をこすりつつ、いつもは私が安眠を貪っているときに鬼のような勢いでこちらを叩き起こす目覚まし時計をチラリと見ると

 

(5時・・・まだ早い時間・・・)

 

目覚まし時計のアラームの設定は7時にしてある。まあ、大体その時間ではアラームを止めて終わりなので、7時5分にスマホのアラームも設置してある。どちらかで起床出来ればいいやの精神である。とはいえ、この体になる前は会社勤めだったので、その時の経験も知識としてあるのだ、そんな簡単に寝坊したりしない!・・・しないよ?ほんとだよ?ワタシウソツカナイ。

 

(でも、あの夢を見た後だともう一回寝ようって気にはならないね・・・)

 

あの夢っていえばあの夢(上記)である。流石によってたかって棒で叩かれるようなあの夢を見ると、眠い!あんな夢、気にしない!二度寝する!となるほど私のメンタルは頑丈ではない。というか、そんなに頑丈ならあの夢を見てないし、見たとしてもこんな時間に起きずにスヤスヤ寝ているに違いない。あの夢、私がいい感じに罪を忘れそうになると出てくるので非常にめんどくさい。私はそこまで気にしていないのに。

 

(あーしょうがない、もうどうにもならないから7時になるまでスマホでも見よ。なんかニュースあるかなー、もしくは学校で話す時のネタになるようなこと起きてないかなー)

 

こういう暇だからスマホを触りだしてニュースやネタを探す場合、えてして目につくような良い情報が出てくることはない。日経平均株価がどうの、違う県で火事がどうの、汚職事件がどうのといった話題が散見されるが、大学の研究室や職場でもないのにこんな話題を出す学生なんてそうそういない。遠い世界の出来事すぎる。

 

今欲しているのは芸能人のスキャンダルとかそういう類のものだ。あまり興味はないけど、学校での話題作り、もしくは話題に乗るためにこういったサーチは必須である。

 

(何もなし、と。仕方ない、コスメ眺めるかソシャゲでもするしかないかなー。お金があれば株式を眺めてても良いんだけど)

 

お金があれば、の話である。前の人生の知識があるので、株式やFXがどんなものかはわかっている。しかし、取引を行うにはある程度のお金が必要なので、親から自立もしていない、自由時間を満喫している私には難しい。未来の知識もあるにはあるが、前世の世界と今世の世界が同じになる保証はない。

 

(誰だっけ?子役の人・・・重曹だか酢酸だかみたいな人が、アメリカ株に投資して結構儲かってる、みたいな話してた気がする)

 

やはりアメリカか。いつ購入する?私も買おう。買えないけど。

 

(何にせよお金がない。あっちは天才子役、自由を謳歌している私と違って2歳くらいから仕事をして稼いでるから持っている金額が違うし。お金が欲しければ努力して仕事しろってことだよね。仕事・・・仕事かぁ・・・)

 

前世だと大学を卒業はしたものの、零細企業勤めだったのもありお給料は微妙だった。最終的には取引先との関係等もあって暴飲暴食などなど色々あって体を壊し、病院通いしながら仕事を続けていた。そして最後は突然、

 

(はぁ・・・。やめやめ、こういうことばっかり考えてるからあんな夢見るんだよね・・・。うん、今の私はまだまだ若い、何にだってなれる!できる!夢はお金を稼げる仕事!出来ればギスギスしない仕事!)

 

「よし!今日も頑張るぞ!」

 

もうすぐ7時!前世ではもうちょっと運動しましょう、と言われてしまったこともあるので、今世では目指せ!健康優良児!と意気込みながらベッドから降りたところで

 

ピピピッ!ピピピッ!

 

「ひゃっ!・・・め、目覚まし時計のアラーム切るの忘れてた・・・あ、スマホのも切っとこ・・・」

 

元気よく出発しようとした私の朝は、一歩目からつまずいたのだった。

 

ーーーーキリトリセンーーーー

 

さっきはすごい意気込んでいたけど、別に大層なことをやっているわけではない。7分歩いて、15分走って、8分歩く、大体30分の運動を朝と晩に一回ずつ、合計1時間の運動を行っているだけである。

 

「ふぃー、疲れたー」

 

運動したいなら部活に入れば良いのでは?と思う人もいると思うけど、私はそういった活動に入る気はない。加入してしまうと時間を縛られてしまうというのが大きな問題だった。

 

(靴を片付けて、シャワー浴びよーっと)

 

正直なところ、前世もそうだし今世もそうなのだが、基本的に私は頭が良くない。どちらかと言うと、頭を使うより動いている方が楽なのだ。今のところは大学まで一応行っていたのでテストなどは何とでもなるが、これは頭がいいではなく知っているだけだ。偏差値が高いのでは無く答えを知っているだけ。しかも、高校生後半になると化けの皮が外れるおまけ付き。

 

「〜〜〜♪」シャワー

 

お金がいっぱいな仕事は頭を使うものが大半であるという(日本では)。つまるところ、頭ザコザコの私は他より出来るだけ多くの勉強をするしかないのだ。そうして良い大学に入って良い企業に入る他ない。私にそれ以外のお金を稼げる才能があるなら別なのだけど。

 

「さあ、ご飯を食べて、学校に行こう!」

 

勉強、頑張るぞ!

 

ーーーーキリトリセンーーーー

 

カツカツと先生が黒板に問題を書いている。

 

私が勉強してお金欲しいのには、私の信条があるからだ。

私には3つ信条にしていることがある。今後増えるかも知れないけど。

一つ目は、前世の親から言われたこと。

「他人に迷惑をかけない大人になりなさい」

二つ目は、今世の親から言われたこと。

「誰に対しても進んで助けにいく大人になりなさい」

三つ目は、前世の教訓。

「できる限り短時間でお金を貯めて、仕事辞めてのんびり暮らしたい!お仕事辛い!したくない!お金欲しい!」

 

この3つである。こうやって並べると、親'sの人間の出来具合と比べてこの前世の私のなんと頭無惨なことか。とはいえ、前世で四捨五入して30まで生きてきた経験の集大(醜態?)成がこれであるので、私としては大事にしている。他の人がこうするといい、といったのではなく自分自身の経験からの信条。なので、私はお金のために勉強に邁進しているのだ。

 

「この問題の回答を・・・5番の人」

 

「はい!4xです!」

 

出席番号5番は私なので、回答を答える。現在は中学生だが、当然こんなところで間違えたりしない。

 

「違います」

 

あれー?そ、そんなはずは・・・。

 

「ここの計算をし忘れているようですね。答えは5xです」

 

高校後半どころか中学中盤から怪しくなってきました。ちょっと泣きそうです。

 

ーーーーキリトリセンーーーー

 

学校が終わり、家に鞄を置いてきた。服を着替えて、いつもの運動をしに出かける。

 

「まさか中学数学を間違えるとは・・・。はー、しんど」

 

よもやよもやである。昔から数学や化学、物理は苦手だった。それでも就職先を考えれば理系の方が良いと考え、前世ではそちらを専攻していたと言うのに。

 

「あーこの調子だとヤバイ。何がヤバイって超ヤバイ」

 

あまりのショックに、元々あまり無かった語彙力がさらに低下した気がする。

 

ーーーーその時、突然一羽のカラスが私のすぐ右を横切った。

 

「わっ!何々!?」

 

ビックリして右を見るが、カラスは通り過ぎてるので当然何もいない。何だったの、と思っていたらそのさらに右から声がする。

 

「もしもーし。ヤバイって何がヤバイの?ついでに、私の声聞こえてる?ほかの人みんな聞こえないみたいでさー」

 

この声を聞いた時、私はそちらを振り向くことを躊躇った。なぜかと言うと、私の記憶ではこの声の人物は私が4歳の時に死んでいるはずだから。原作知識と照らし合わせても、当然生きているはずがない。出来るだけ忘れるように努力したけど、なかなか忘れられないこの声。

 

(信条2つ目!誰に対しても助けられるなら!怖いけど!どうせ声が似てるだけでしょ!ヘーキヘーキ!)

 

強がりでも言っておかないと振り向けない、そう思った。

 

「はいは〜い!勿論聞こえてま〜す!他の人には聞こえ・・・」

 

ていないって言うのはどう言う意味、ヤバイのは数学!と答えるつもりだったが、言葉は続かなかった。なぜならば

 

「お〜すごいねあのカラス。しっかり私の言葉が聞こえる人のところへ連れて行ってくれた〜。他のカラスは私を認識してなかったみたいだけど、あの子だけ特別なのかな?」

 

そこにいたのは、間違いなくかつて私が結末を知っていながら見捨てた人物だった。はっきり言ってしまえば、顔はそこまでしっかり覚えていなかった。10年前の記憶、もしくは転生前の知識、さらに昔のことはできる限り忘れようとしていたのもあり、顔の造形など朧げにしか出てこない。ではどこで間違いないと判別したのか。

 

答えは瞳

瞳の中に輝く、嘘を本当だと人に信じさせる一番星

唯一無二、無敵のアイドルと言われた人物だけが持っていた瞳

 

「・・・え?・・・なんで・・・い、いや・・・」

 

なんで生きてるの、とは言えなかった。4歳の、目を逸らした時期から被っている仮面にヒビが入り、弱った素の私が一瞬表に出てしまう。が、素の私が罪の原点みたいなのをまともに認識してしまうと本当に精神が崩壊するので、防衛本能からかなんとか仮面を修復し、表に出た部分を隠す。

生きていることはないだろう、10年前の記憶では大きなニュースにもなっていた。あんな大々的なことをして死んでいませんでした、などということはあり得ない。万が一生きているのなら、そもそも私に会う前に大ニュースになっているに違いない。

 

(ヤバイ・・・殺される・・・)

 

私は振り返るのをやめて全力で走り出す。さっきまでの言葉を総合すると、この人は幽霊とか妖怪とかそういう種類だと予想した。他の人はこの人を認識できない?みたいだけど、私はなぜか出来るようだ。認識できた方がよかったのか、悪かったのかはわからないけど。

 

(私のところに来たってことは、間違いない!私を呪い殺しに来たんだ!どうして昔の私が見て見ぬふりをしたってわかったんだ!?幽霊だから、なんかこうエスパーてきなやつ!?)

 

「あ!待ってー!」

 

(追いかけて来た!ここはどうにかして撒いて家に帰って、対策考えてないと!)

 

曲がり角を余計にいくつも回りながら、家に到着した。辺りを見渡して物の怪がいないことを確認、家に飛び込んで自分の部屋に滑り込む。

 

「はー、はー、ビックリしたぁ・・・」

 

扉によりかかりながら、目を閉じて息を整える。全力で走ったせいで酸素が足りてない。深呼吸、深呼吸・・・。今まで幽霊とかなんて見たこともないのに、どうしていきなり・・・。

 

(そうだ、玄関にお塩でも置いとこ・・・)

 

良く知らないけど、良くお塩が幽霊とか物の怪とかに効くって言うよね。息はまだ整い切ってないけど、怖いから先に塩を振っておこうと思い立ち、目を開ける。

 

目が合った

誰もが信じ崇めてる星を戴く目と

 

「バァ!・・・どうかな?ビックリした?・・・あれ?」

 

「・・・キュッ・・・」パタッ

 




誤字連絡ありがとうございました!
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