「んー、最近の子はこんな感じの部屋が流行りなのかな?そんなに物がない、アクアの部屋にちょっと近い感じだね。性別的にはルビーと同じような部屋かなって思ってたんだけど」
「・・・・・・」スヤァ
ーーーーキリトリセンーーーー
「おーい、起きてー。この部屋は十分見て回ったよ。そろそろ起きてー。今の私の声を聞き取れる初めての人なの、色々話したい!」
「ん・・・」
誰かに起こされているのはわかるけど、この声誰だっけ?最近は全然聞いてない、なんだったら忘れようとまでしてた気がするこの声。
(・・・!)
これは、起きたことを悟られないほうがいいやつ?とりあえずまだ寝たふりをしながら、現状の再確認と対応を考えよう。
仮面については、突然現れたのでなければ簡単には割れない。私の仮面を通して認識をずらしているので、不意打ちをもらわない限りは大丈夫だ、問題ない。精神的にはちょっと負担があるけど。
現在いるのは私の部屋。一軒家の二階に位置してる。ここが私の家なのでここを知られてしまった時点で、もしかして詰んでる?
いやまだだ、まだ終わっちゃいない!ここからなんとか逆転勝ちする手段を見つけるのが、この私!・・・!
だめだ私の足りてない頭では、一階に降りてお塩で攻撃して倒せなかったらあの世行きコースしか解決策が浮かばない!もっと頭がよかったら、この場面での最適解も思いつくのかな?でも私には思いつかない。さよなら今世の私・・・。
「うーん、ビックリさせ過ぎたかな?今の私は幽霊みたいだし、驚くのはわかるけど、ちょっとビックリし過ぎなような気もする・・・」
今の流れからして、命乞いが一番生き残れそう、かな?今のところ私は死んでないし、さっき話しかけて来た内容からして、話を聞く気(する気?)はあるみたいだし。この人の性格からして、じわじわなぶり殺しのしてやる、だからはよ起きろ、みたいなことはないでしょ・・・ないよね?一息に死んでゲームオーバーはいいけど、痛みを感じながらは嫌だなぁ。
よしっ!目を開けよう!ここから始まるのだ、命大事に作戦!頑張るぞ!
カッと目を見開き、目の前にいる幽霊を確認。アイも変わらず、おめめにはお星様が瞬いております。服装は外出用なのか、いつものアイドルのイメージとは違う感じなんですね。
「あ、やっと起き「ごめんなさい、命だけはお許しを!」はい?」
ーーーーキリトリセンーーーー
いきなり幽霊が現れたことで、呪い殺されるんじゃないかと思っていたことなどを説明すると、ケラケラと笑い出してしまった。
「あー笑った、それじゃあ何?私に殺されると思って逃げたってこと?」
「ハイ、その通りです・・・」
「そんなことしないのに〜。でも、すぐ幽霊だって良くわかったね?私、もしかして透けてる?」
「いえ別に透けてたりはしてないですよ?ただ・・・」
「ただ?」
「瞳が特徴的なので、すぐわかったんです。その人を惹きつける瞳、昔のドラマとか音楽番組とかで見たので。あなたが亡くなった時、ニュースでもよく写真や映像が流れていましたから」
「わかっちゃう?あちゃー、やっぱ溢れ出るオーラは隠せないんだね☆」
「あ、あはは・・・」
見たって言ってるけど、実際はそういった映像はほとんど見ていない。見てない訳ではないけど、どうして自分からトラウマに飛び込む必要があるの?
この仮面を被ってからは、出演がわかっていれば見ても多少心がざわめくくらいなので、見ても気にならないとはいえあまり自発的に見たい物ではない。それに、忘れたくても忘れならなかった、この瞳。あの事件からもう10年になるのにまだ忘れてなかったってことは、考えたくないけど、もしかして私が死ぬまでトラウマと格闘することに・・・?
あとすいません、瞳を見なかったらわからなかったので、オーラについてはよくわかんないです・・・。
「じゃあ、改めて自己紹介!私の名前は星野アイ!アイって呼んでね!今は幽霊だよ!あと敬語も別に要らないよ?」
「私は大空沙耶って言います。えっと、サヤと呼んで下さい。今は中学2年生です。敬語については、目上の人ですしほぼ初対面なので、ちょっと外せないです・・・」
目上の人に対して敬語使うのは社会人として当然ですよ?
「えーサヤはしょうがないなー。じゃあ仲良くなったら敬語外してね?」
「ま、前向きに善処致します、アイさん」
「めっちゃ堅い大人みたいな話し方になってる〜。あはは、絶対外してみせるよっ☆敬語もさん付けもね!さてと・・・」
なぜがニヤリと笑い出すアイさん。トラウマの原点みたいな人なので、見つめているだけでもそれなりにちょっと大変。ちょくちょく目を逸らしながら話を聞くしかないね、仕方ないね。
「幽霊になってから他の誰とも会話出来なくてさ。だから今から、私が満足するまで話に付き合ってもらうよ?」
ーーーーキリトリセンーーーー
アイさんがそれはもう驚くほどスイスイと自分の生い立ちから、アイドルになるまでの過程を話していく。そんなに時間をかけずにB小町結成までいってしまったのだが、この後を話すかどうか悩んでいるようだった。なんでこの人、自分の生い立ち話してるんだろう。他の話題にしませんか?
(この後に起こることといえば、B小町の仲がどうこうみたいな話やカミキ某、アクアとルビーが産まれた話かな?もう大部分は忘れちゃったけど、確かその辺りはちょっとこう、ダークでディープな話題なので、お近づきになりたくない・・・。なんだったら、母親から虐待受けてました施設に居ましたみたいな下りも言わないで欲しかった・・・。)
悩んでいるアイさんを見ながら、私はどうにか心を落ち着けようとしていた。私の心をいじめるのはやめていただきたい。忘れることが出来ていた、もうほとんど覚えていなかった部分が着々とアイさんにより復活していっているのだ。でもこれ以降はアイさんにとっても表には出しづらい話、その辺りで幽霊になった話に飛ぶのではないかと期待して見つめ直す。
「そんなに期待した目を向けられたら・・・。わかった!話すよ!B小町はさ、結成した当初は・・・」
(違います!期待した目で見ていたのは間違いありませんけど、そっちの方に期待していた訳ではありません!どうしてそんなことまで言ってしまうんですか?まだ私たち会って1時間くらいでは?その謎の信頼はどこから出てくるんですか?)
「あの、そんなに話していいか悩む話を、無理に私にしない方が良くないですか?まだ会ってすぐでお互いそこまで信頼もしてないはずですし、アイさんがそう言った秘密を言うと私がバラすかもしれませんよ?」
「それは大丈夫じゃない?この秘密を誰かにバラしたところで、サヤにそれほど良いことあるわけじゃないし。逆に、どこかのターゲットにされるかも?それに、最初からこういうのを知ってる方が・・・。ついでにさ、なんでか知らないけど、サヤ、私に罪悪感持ってない?」
「・・・なんでそう思うんです?」
「なんとなく?目線とか、ちょっとそらし気味だし?私の幽霊が現れたら、普通ならガン見じゃない?」
(この人、ちょっと自分に自信あり過ぎでは?目線そらしてたのは事実ですし、罪悪感もありますが・・・)
「だからかな?サヤに話しても私の、星野アイの不利益になるようなことはしないと思ったから話そうと思ったって感じかな、それに」
「それに?」
「本当に話せない部分はカットしてお送りするから大丈夫だよっ☆」
「あ、そうですか・・・」
カミキ某と子作りしたのは本当に話せない部分なのか、それとも話せる部分なのか。この謎を解明するべく、私はアイさんの奥地に向かった。
ーーーーキリトリセンーーーー
だいたい漫画と同じ内容をアイさんは話をしてくれた。覚えていたら刻々と私のSAN値を削ってくる知識、せっかく忘れかけてたのに・・・。ま、本当に忘れそうになると黒い影たちが私を棒で袋叩きにするので、完全に忘れることは出来ないのだろうと思っているけど。
漫画以降の話としては、
刺されて気を失ったあと、気づいたら刺されたマンションにいたこと。
周りの日付から、10年近く経っていることに気づいたこと。
サヤ以外の人からは認識されず、サヤを含めて人や物に触ったり出来ないこと。すり抜ける事はできるので、扉なんて意味ないよっとのこと。
苺プロでアクアとルビーは見つけられたので(ママの目は誤魔化せない!とのこと)暫く子ども二人に見ながらきゃわきゃわ言っていたこと。
でも流石に何日も愛する子どもたちに反応すらされず、抱きしめることも
可愛がることも出来ないのは中々しんどかったこと。
こうなれば、私、星野アイを認識してくれる人を探すしかないと、愛する子どもたちに涙ながらの別れを告げ、街に飛び出したこと。
でも、何日歩いても誰も私を見てくれなかった。街の中には多くの人がいるのに、私は一人。私のいる街には、誰もいない。
そんなことを思いながら一人寂しく歩いていると、一羽のカラスが目についた。まるで私を見ているかのような動き。私が動くとカラスの頭も動く。しばらく呆然と見てたけど、カラスがついてこいとばかりに飛び出したから、私はその後を追った。
「で、見つけたのがサヤってわけっ☆」
カラスェ・・・。なんてことをしてくれたんだ、せっかく私が完璧(?)な人生設計をしていたのに!。
「それで私がサヤを見つけるまでの話はおしまい。次の話題は」
何が始まるんです?
「うちの子たちがどれだけ可愛いか、話たかったんだー!アイドルの子どもなんて話題、他では出せないから誰にも自慢できなくて!バラした以上、もう我慢しなくていいし、私が満足するまで喋らせてね☆」
ーーーーキリトリセンーーーー
アイさんがそりゃもう延々とアクアとルビーのことを話している。今日は父は出張、母は帰りが遅い日なので、ずっと聞かされている状態だ。ちなみに、父は設計で母は公務員(今日は何かの集まりがあるらしい)のお仕事をしている。この話、私が晩御飯の時やお風呂の時、歯磨きの時ですら語っていたので、よっぽど言いたかったというのもあるのだろうが、幽霊になった後に誰にも見てもらえず、反応もされないというのはかなり寂しかったのではないかと思う。とはいえ、私はこの話を聞いているだけで精神にスリップダメージをいれられている気分になるので、なんとか切り上げさせたい。話を聞いている途中で、
(この人もしかして、こんな仲良し家族がお前のせいでバラバラになったんだぞ、みたいなことを言いたかったりしません?)
と思ったりした場面もあったのだが、幸せそうに子どもの話をしているので、それは無いかなと思い直した。
明日は土曜日とはいえ、本日は色々あったので夜更かしはご遠慮したい、精神的にも肉体的にも。ベッドに入りつつ、アイさんの話がいい感じの所で私のお願いを話し出す。
「あの、アイさん?そろそろ夜遅いですし、続きはまた今度というのは・・・?」
「まだ全然話したりないけど、結構いい時間だね。ここで一旦やめよっか。じゃあ最後、この質問に答えてくれる?」
「はぁ、どうぞ?」
質問?質問ってなんだろう。私の嫌な部分に触れる内容じゃありませんように!
「サヤさ、アイドルにならない?」
「?????」
何言ってるんだろうこの人?
誤字報告ありがとうございました!