転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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アクアの考察

 

星野アクアの頭の中にある目標の中で一番大きいものは、当然アイが殺された事への復讐を果たす事。アイをあんな目に合わせたやつを見つけ出して、必ず同じ目に合わせる。これが第一であり、そのために芸能界へ潜り込み、アイ殺害の共犯であり、真犯人である父親を探している。

 

ところがここ数ヶ月で、突然よくわからない人物がアクアの周りに飛び込んできた。アクアの妹であるルビーも参加しているB小町、その一番最初のメンバー、サヤ、という少女である。

 

B小町のメンバーは4人で、サヤ以外にルビー、有馬、MEM、となっている。この内二人、有馬とMEMについてはアクア自身が連れてきたメンバーなので、人物像はある程度理解している。もっとも、何年も芸能界もしくはネットの世界で活動しているのもあって、全く知らなくても表向きの人物像を調べるのは簡単ではあるが。

 

ルビーについてはアクアの妹なので、上記の二人(有馬、MEM)と同じくどんな人物か理解している。アクアと同じく前世があるらしいが、アイ推しの女であった事以外はほとんどわかっていないのが懸念点。なんとなく思い浮かべる人物がアクアにはいるのだが。

 

ここでサヤと名乗る少女を見てみると、他3人と比べてわかる事がほとんどない。この少女は自分から苺プロに履歴書を送り、飛び込んで来たのである。アクアは履歴書の内容を無理を言って見せて貰ったが、中身は驚くほど薄っぺらいものだった。簡単に説明するなら、アイドルになりたい!これだけ。それなのに歌や踊りに関連するスクール等に通っていた、という経歴は書かれていなかった。

 

また当の本人を観察してみると、妙な点が数多くある。

 

まず最初に、外見がアイそっくりな事。アイ最推しを自称するアクアとルビーの目をもってしても別人だと判断するには、本人が独立性と誇示するヘアピンを探す必要がある。B小町の自己紹介動画を見た不知火フリルの言葉を借りるなら、一卵性双生児より似てる。

 

次に雰囲気。苺プロに最初に面接に来た時の雰囲気は、まるでライブ会場でアイを見たような感覚を覚えたほど。最初はアイが生まれ変わったのかと錯覚したが、本人曰く違うらしい。生まれ変わりなら年齢は最短でも12歳のはずなので、別人だというのは正しいと考えられる。一応DNA検査も行ったが関連無し。また、その後の演技ではアイには及ばなかった。

 

その演技自体も妙で、まるで発展途上のアイを見ているような感覚を覚える。本人曰く独学らしいが、ここまで同じようになるのだろうか?

 

その他、おかしいところを考えると枚挙にいとまがない。B小町が本格稼働しているのに家で自主練したいとか言い出したり、苺プロに着てくる服のセンスまでアイに似ていたりと、それはもう様々なおかしな点がある。

 

ここでサヤ本人に強く聞ければいいのだが、なまじ外見がアイに似ているのであまり強く聞く事がアクアには憚られた。最近はおかしいところだけでなく、おかしな言動や行動を取るようになってきたので、その際は心を鬼にして叱る必要があるが。

 

そのおかしな言動のせいで本人には伝えられていないが、サヤをできる限り一人にしないように、という社長命令まで出たのだから如何におかしいかを察せるというものだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

今のアクアはぴえヨンのマスクを借りて、B小町のメンバー4人にぴえヨンから伝えられる指示を代わりに伝えたり、その他のサポートをする役割となっている。

 

とある建物の一室、B小町のメンバー全員が集まって曲に合わせて演技を先ほどまで行っていた。今は休憩時間で、それぞれ会話をしたりスマホを触ったりしている。

 

アクアはそれぞれに経口補水液のペットボトルを手渡しながら、声をかけていた。

 

「水分補給はしっかりしないと」

 

「はい!ありがとうございますぴえヨンさん!」

 

ペットボトルを受け取ったサヤはそのままB小町のメンバーの一人、ルビーに走り寄ると楽しげに会話を始めた。これもサヤをあかねに会わせた後の変化の一つで、アクアとルビーに積極的に関わるようになった。前までは何本か線を引いていたように見えたが、今はかなり減ったように感じる。

 

「JIFが終わった後は、しっかりボイトレしないといけませんよ!ルビーさんは歌がヘタですからね!」

 

「辛辣ぅ〜」

 

「安心してください!死ぬほどレッスンすれば、嫌でも上達します!私がその結果ですよ・・・ふふふ・・・」

 

「いきなりサヤちゃんの目が虚に・・・」

 

 

ーーーーーーーー

 

B小町が練習場として使用している建物の玄関から、1人の少女が家に帰るために出て行く。アクアはそれを見送りながら、疑いたくないながらも疑念を抱いていた。

 

それは、サヤは何かしらの隠し事をしている、という事。

 

サヤは親が心配するというが、終電の夜遅い時間に女の子一人で帰らせる方がよほど心配だろう。こちらは一応しっかりとした芸能事務所、この練習場所自体の位置も知らせてある。泊まっていっても心配するほどではない。

 

つまり、家に帰る別の理由があるという事。これが何か、まではアクアにはわからない。

 

サヤが家に執着しているのは今に始まった事ではない。苺プロに所属した当初から、サヤは基本的にレッスンを苺プロでは行わなかった。B小町が稼働した後でさえ、苺プロに来るのは一日置きだ。最低でも2日に一回は家で何かをしている事になる。

 

誰にだって隠し事の一つや二つある。実際、アクアにも他の人には言えない秘密、例えば前世であったり、母親がアイであったり、といったことがあるわけで。

 

少し考えを巡らせていたアクアだったが、とある事に気がついてしまった。

 

それは、サヤの隠し事が最近の頭おかしい言動や行動に相応しいものだった場合、新生B小町ごと吹き飛ぶ可能性がある、という事。いきなり枕営業とか言い出すやつなのだから、何をしていてもおかしくない。16歳、アイと同じく子供出来ちゃった、とか言い出しても不思議ではないのだ。

 

どうにかして隠し事の内容を確認しないと、とんでもない事になるかもしれない。しかし問い詰めてもサヤは本当の核心は絶対に言わない、そんな予感があった。そんなところまでアイに似なくてもいいだろ、とアクアは思いつつ他の手段を考える。

 

別に隠し事を詳らかにする必要はない。何かやばい事に関わりが無さそうならそれでいい。

 

一度、サヤの家に行ってみるのがいいかもしれない。家に友達として遊びに行く、という体で連絡しておけば、サヤも拒否しづらいだろう。そこで部屋等を確認して、何かおかしな点がないか探す、といった具合だ。

 

連絡なしは拒否される可能性もあるし、そうでなくても心象的に良くないことが多い。特に何もなかった場合、亀裂の原因になりかねないのだから先に連絡しておくほうが無難。サヤは頭が緩そうなので、証拠を消されたとしてもどこかに痕跡は残るだろう、とアクアは予想した。

 

もう一つ取れる手段をアクアは思いついたが、こちらは非常によろしくない手段だと感じていた。具体的には、あかねに軽くプロファイリングしてもらい、ぼんやりでもいいから何を隠しているのか推測してもらう、というもの。アイの考え方を推測できるのだ、同じく何を考えているのかわからないサヤの考えも推測できるに違いない。

 

ただ相手は生きている人間、プライバシーが当然あるし、常識的にも良いとはいえない。もしプロファイルしているのがバレた場合、修復不可能な関係になる可能性すらある。こちらは最終手段と言えるだろう。

 

とんでもない事になるかもしれない、そう思いながらアクアは明日の練習の準備を始めるのだった。

 

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