転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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影法師

 

SNSに投稿した意味深文章のせいなのか、単純に燃え広がったのかは判別がつきませんけど、当初の予想よりだいぶ大事になってしまいました・・・。大事と言ってもアイドル界隈の中で、ですけど。

 

JIFの時には紫のサイリウムなんてほとんどなかったのに、一回目の小さいライブをした時には紫のサイリウムが激増してました。その時のセンターは譲ってもらったので、前より多めの愛の請求書(?)を全員に送りつけましたけど・・・。

 

JIFの前の時点で旧B小町を知っている古参アイドルファン(店長さんとか)は、新生B小町を知りませんでした。また、MEMさんのファン(若い人たち)はB小町自体を知らなかったようなので、それ以前に私の事がそこまで広がる事はありませんでした。

 

ところがJIFで古参アイドルファンが私を見た結果、アイさんに関連する何かしらだと勘違いして、ここから他の古参アイドルファンに広がっていったと考えられます。

 

SNSで私の正体はどれでしょう、みたいなアンケートを取った結果はですね。

1位は本人。理由はアイさんは無敵なので、実際には死んでないから(?)。

2位は隠し子。理由はアイさんには休業期間があったりするので、その辺から。

3位はクローン。理由は子供や姉妹だってここまでは似ていないから。

4位は生まれ変わり。理由は演技や表情が似てるから。

5位はゾンビ。理由はなんかこの国そういう事できそうだから。何この理由・・・。

6位は無関係。理由は一応無関係の可能性もあるから。

 

・・・やばいですね?無関係がゾンビより下に来るってどう言う事です?我が国は火葬必須のはずでは?他人のそら似です!

 

この他に、出待ちがいた事もありました。まるで有名なアイドルになった気分ですね。私に興味があるって事なので、手を振って笑いかけたらすごい嬉しそうにしてくれました。あの人たちの財布は私のものです。

 

2回目の小さなライブなんて、箱に入りきらないほどの古参アイドルファンが詰めかけていました。ライブの前に壱護さんから、しばらく私をセンターにするように言われているので、今回もセンターは私です。今はB小町の知名度と話題性を上げる時だ、だそうで。

 

ライブ自体は月に1〜2回ほどの頻度で行いましたが、定員に収まったのは初回だけで、後は全部オーバーしている、と言う具合。

 

ちなみにカミキはJIFからその後のライブまで全部皆勤賞、赤と紫のサイリウムを持って壁際に立ってました。振ってはいなかったです。どっか行って?

 

ところで、DNA鑑定用に衣装部屋にあったアイさんの服から髪の毛が取れたので、それを利用してみる事に。なんか毛根が必要とかなんとか・・・。無くても出来る事もあるらしいですけど。間違っても私の髪の毛と混同したら終わりなので、そこはしっかり分けないとですね・・・。鑑定出来なかったら諦めて、親とのDNA鑑定した結果で許してください。

 

そんなこんなで2ヶ月ほどした頃、壱護さんが番組の交渉に行ってきました。生放送で1時間の特番。生放送なのは今流行りの話題なので、情報には鮮度があります、って事らしいです。こんなのどうやって引っ張ってきたのかよくわかりませんけど、謎の男女二人組が手助けしてくれたんですって。・・・なんでしょう、嫌な予感がします・・・。

 

 

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視点変更:アクア

 

アクアが目を向ける先にあるテレビ。

 

そのテレビが映しているのは、とある特別番組だ。アクアの妹が所属するアイドルユニット、そのメンバーの一人であるサヤが今回の主役となっている。

 

内容としては、12年前に殺害された伝説のアイドル、アイと瓜二つであるサヤが何かしらの関連があるのではないか、というもの。SNS上ではかなり大きな反響を呼んでいる話題だ。

 

アクアはアイとサヤが関連がないのは知っている。アクアのDNAとサヤのDNAで鑑定した事があるからだ。

 

番組の中ではB小町の4人全員が出ている。有馬やMEM、妹であるルビーも当然目を引く容姿なのだが、アイそっくりのサヤはそれをものともせずに視線を全て持っていく。今日のメインは私!という主張が飛んでくるかのようだ。カメラがサヤから全然移動していないのが、それを物語っている。

 

アクアの目から見て、今テレビに映っているサヤは、テレビに出ていたアイと差があるように見えない。話し方もアイが話しているようで、アクアは必死にヘアピンを見て心を落ち着ける。

 

「・・・違う、アイじゃない・・・」

 

今の番組の様子は、生放送特有のSNSでタグ付きの質問を募集し出演者が回答する、というよくあるタイプ。B小町メンバー誰に対して質問してもいいはずなのだが、サヤに対する質問がほぼ全てを占めている。タグもトレンド入りを果たし、今なお順位を上げている。

 

司会者(MC)が流れてきた質問の中から適当に選んだり、他のメンバーが選んだりと様々だが、サヤの回答は半分ほどが秘密、内緒だった。回答が秘密なのかそうでないのか、どこにラインを引いて答えているのかさえ、アクアにはよくわからなかった。質問と回答の半分は意味をなしていないが、それでも許されるのは雰囲気ゆえか。

 

ふとアクアの思考が妹のルビーに向かう。アクアは心を落ち着けようとしているが、側にいるルビーはどうなっているのかと。サヤから目線を必死にずらすと、異様にソワソワしているルビーが目に入った。画面越しのアクアがこうなのだ、近くにいるルビーは余計にそう感じているだろう。

 

番組も終盤に入り、B小町の曲をいくつか演技してみよう、となったようだ。これが終わると時間的にはラスト、アイとサヤの関係性を示すDNA鑑定の結果が表示されるのだろう。

 

流石に演技が始まるとアイとの差が現れ、アクアは人心地ついた。ルビーも落ち着いて演技している。

 

曲が全て終わり、番組の締めに入る。DNA鑑定の結果と本人からの回答が表示され、答えは当然、一番不人気の無関係。SNSでは一番ないと思われていた答えなのだ、凄まじい勢いで広がっていく。

 

 

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一度歪んだ価値観、というのは簡単には変えられない。何を優先するか、それは人それぞれ。例えば愛であったりお金であったり。

 

ではアイという火にズラされてしまった価値観を持つ蛾たちは、アイを失った後どうなったのか?価値観に合う火を探しに行くしかないのだが、無敵のアイドルの代わりなど見つかるはずがない。違う火で価値観との差を許容し、満足感を得るしかない。

 

そこにアイと同じような、しかし比べると少し弱い輝きを持つ火が現れた。しかし12年ぶりに現れた、価値観にぴったり合う火。焦がされに行くしかない、昔と同じ様に。かつてのアイと、同じ輝きになる事を願って。

 

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